ノー・ガンズ・ライフ(No Guns Life)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ノー・ガンズ・ライフ』(NO GUNS LIFE)とは、カラスマタスクによる漫画。体の一部を機械化した「拡張者」と生身の人間が共存する近未来の地球を舞台に、全身を機械化した過剰拡張者の青年の活躍を描いている。
拡張者絡みの揉め事の処理を生業とする乾十三は、ある時巨大企業ベリューレン社に追われる子供の保護を依頼される。荒吐鉄朗という名のその少年は、ベリューレン社の人体実験の被害者であり、拡張者を操る力を持っていた。鉄朗を巡る陰謀に巻き込まれた十三は、ベリューレン社との対決を余儀なくされていく。

『ノー・ガンズ・ライフ』の概要

『ノー・ガンズ・ライフ』(NO GUNS LIFE)とは、カラスマタスクによる漫画作品。集英社の『ウルトラジャンプ』で、2014年から2021年にかけて連載された。
体の一部を機械化した「拡張者」(エクステンド)と生身の人間が共存する近未来の地球を舞台にしたSF物で、全身を機械化した過剰拡張者の青年が巨大な陰謀に巻き込まれ、己の過去と対峙していく様を描いている。

後にマッドハウスによってアニメ化され、2019年に第1期、2020年に第2期が放送される。浅井健一や澤野弘之といった実力派シンガーがOP曲を担当したことで話題となった。

拡張者絡みの揉め事の処理を生業とする乾十三(いぬい じゅうぞう)は、ある時巨大企業ベリューレン社に追われる子供の保護を依頼される。荒吐鉄朗(あらはばき てつろう)という名のその少年は、ベリューレン社のCEOである荒吐総一郎(あらはばき そういちろう)の息子にして同社による人体実験の被害者だった。
「依頼人は必ず守る」ことをモットーとする十三は、鉄朗を回収しようとするベリューレン社と事を構える形となってしまい、腐れ縁の拡張技師メアリー・シュタインベルグも巻き込んで巨大な陰謀と対決。やがて彼らの戦いは、十三に自身の過去との対峙を強いていく。

『ノー・ガンズ・ライフ』のあらすじ・ストーリー

乾相談所の珍客

十三(上)、メアリー(左)、鉄朗(下)。物語の主要人物たち。

体の一部を機械化した「拡張者」(エクステンド)と生身の人間が共存する、近未来の地球。全身を機械化した過剰拡張者(オーバーエクステンド)の乾十三(いぬい じゅうぞう)は、拡張者絡みの揉め事を処理する「乾相談所」を開設し、街で起きる様々な事件を解決しては日銭を稼いでいた。
そんなある日、十三は誘拐犯として警備局に追われる拡張者の男から、「ベリューレン社に追われている子供を保護してほしい」との依頼を持ち掛けられる。成り行きからこれを引き受ける十三だが、護衛対象の荒吐鉄朗(あらはばき てつろう)は拡張者を操る特殊な装置「ハルモニエ」を搭載した拡張者であり、彼が「適当な拡張者の素体(十三の前に現れた依頼人)を自分の力で操って逃げていた」というのが真相だった。

ベリューレン社は戦争で巨万の富を稼いで急成長した巨大企業で、その影響は政治にも根深く食い込んでいた。何か大きな陰謀が関わっていることを感じながらも、十三は「依頼人は必ず守る」という自身のモットーのために奮闘。過酷な人体実験を繰り返され、手足も動かせなくなっていた鉄朗を救出する。
十三の腐れ縁の拡張技師であるメアリー・シュタインベルグの施術により、鉄朗は自分の足で歩けるまでに身体機能を回復。「乾相談所」を拠点として、十三はベリューレン社との対決を余儀なくされていく。

戦争の闇が生み出したもの

ベリューレン社に狙われる立場となった十三は、彼らと敵対する関係にあるEMSこと復興庁拡張者対策局を巻き込むことを考える。EMSの局長オリビエ・ファンデベルメは十三と旧知の間柄で、協力する代償に過剰拡張者の連続殺人犯ヘイデン・ゴンドリーの確保を手伝うよう要求してくる。
ヘイデンは史上初の過剰拡張者にして戦争の英雄たるメガアームド斎時定(メカアームドさい ときさだ)という人物を狙っていた。EMSのクローネン・フォン・ヴォルフという人物と共に護衛に就く十三だったが、その中で「ヘイデンが何者かに操られている」こと、「英雄としての顔を守るため、メガアームド斎が数々の犯罪に手を染めている」ことが明らかとなる。

「拡張者が世に受け入れられるためには自分のような存在が必要だった」と豪語しつつ、ヘイデンを始末した上で、メガアームド斎は秘密を知った十三たちを排除しようとする。戦争の英雄たるメガアームド斎の力に追い詰められる十三だが、戦争を終わらせるためだけに作られた戦略兵器型エクステンド「ガンスレイブユニット」としての力を発揮してこれを返り討ちにする。
自身の父の仇でもあるメガアームド斎を捕らえたオリビエは、ベリューレン社も関わっている戦争の巨大な闇にメスを入れられると期待する。しかしメガアームド斎は「私を捕らえても何も変わらない、次の英雄が作られるだけだ」と嘯き、砲撃さながらの強力無比な銃弾によって殺害される。これを放った人物こそは、ヘイデンを操っていたベリューレン社のエージェントたるペッパーと、その相棒にして十三とは別のガンスレイブユニットのセブンという拡張者だった。

やがてペッパーたちは十三の前にも現れ、「ガンスレイブユニットとその相棒(ハンズ)」がそろっていることの強みを見せつけて彼を追い詰める。
しかし鉄朗が十三を庇うのを見るや「ハルモニエの使用者を傷つけるわけにはいかない」と撤退に転じ、彼らは九死に一生を得るのだった。

ヴィクターの依頼

オリビエの下にあったメガアームド斎の証言データは、回り回って十三が手に入れることとなる。然るべき形で公になればベリューレン社の支配も拡張者の扱いも一変するだろうこのデータは、当然ながら様々な権力者から狙われるが、中でも特に強固にこれを狙ったのは反拡張者を掲げるスピッツベルゲンというテロリストたちだった。
スピッツベルゲンのエージェントたちに乾相談所が襲撃され、鉄朗たちが拉致される。この時の襲撃者の中にはメアリーの兄であるヴィクター・シュタインベルグの姿もあり、「拡張者の殲滅」を唱えるその姿にメアリーは衝撃を受ける。十三はヴィクターとは旧知の仲で、彼から「妹を守ってほしい」との依頼を受けていた。鉄朗を助けるために、「ヴィクターと話がしたい」というメアリーの願いを叶えるために、何より別人のように変わってしまった彼を叩き直すために、十三はスピッツベルゲンとの対決に臨む。

戦いの中、相談所を襲ったヴィクターが「拡張者用の補助脳によって暴走した、ヴィクターの自我の一部」を搭載した分身だったことが明らかとなる。本物のヴィクターは今もどこかから遠隔で十三たちの様子を見守っており、自身の居場所は明かさないまま「いつか本物のヴィクターを見つけたら、自分の補助脳を破壊してほしい」と謎めいた依頼を残していく。
その頃、鉄朗はスピッツベルゲンの指導者の1人であるアンディ・ウォシャウスキーという男と対面していた。ウォシャウスキーは「鉄朗はベリューレン社のCEOの息子で、自分たちのパトロンだった。その事実を知られたことでベリューレン社に切り捨てられ、人体実験の被験者となり、過去の記憶も失った」との衝撃の事実を教えられる。ウォシャウスキーはこの事実の証拠として、必要なのは十三の持つデータでありあなたに危害を加える意図は無いと語り、鉄朗と彼と共に拉致された仲間を解放する。

ガンズスレイブユニットたちの戦い

ウォシャウスキーの話で過去を思い出した鉄朗は、「ベリューレン社を変えたい、人を人とも思わぬ彼らの暴挙を止めたい」という思いからスピッツベルゲンに出資したことが、数々のテロの引き金になったことを悔やむ。「反拡張者に向けて暴走している今のスピッツベルゲンは自分にも止められない。少しでも被害を少なくするために協力してほしい、ガンスレイブユニットたる十三をハルモニエで支配して我らの下に連れてきてくれ」とウォシャウスキーに頼まれた鉄朗は、自分の後悔を十三に打ち明けた上で、彼と共にスピッツベルゲンの下へと向かう。
しかし実は鉄朗は十三と申し合わせており、「拡張者がはびこる世界を覆す可能性を持つハルモニエ」と「ベリューレン社のCEOの息子」という自分の身柄を取引材料にしてスピッツベルゲンにテロからの撤退を要求しようとしていた。十三は彼の考えを聞いた上で、“鉄朗に支配された”風を装って協力していただけだったのである。ウォシャウスキーはこの申し出を「理想論に過ぎない」と切り捨て、協力が得られないならハルモニエだけでも回収しようと鉄朗に襲い掛かる。鉄朗はこれに“ハルモニエを自分自身に使用して自己強化する”という荒業で対抗し、ウォシャウスキーを打ち倒した上で「どれほど困難でも自分は理想を捨てない」と宣言する。

ここにペッパーとセブンが現れ、ウォシャウスキーを殺害。ベリューレン社は「スピッツベルゲンが起こすテロ」を利用して拡張者への支持を増やしてきた側面を持ち、自分たちにとっても替えの利かないハルモニエを手に入れようとしたウォシャウスキーを排除しようと判断したのだった。スピッツベルゲンとの戦いで消耗していた十三だったが、鉄朗を守る意味もあり、「自分たちに勝てたらお前の相棒の居場所を教えてやる」というペッパーの口車に乗ってセブンと交戦する。
かつて戦争中、全身を機械化する前の記憶を失っている十三は、軍の上層部に命じられるままに力を振るっていた。彼の当時の相棒は、「記憶が無くても、戦うための力しか持っていないとしても、それを向けるべき相手は自分で決めるべきだ」と常々語り、十三に翻意を促していた。迷いながらも相棒の言葉に耳を貸さずに戦い続けた十三は、「反乱を起こしたガンズスレイブユニット」の鎮圧任務に赴き、戦友たちを殺害。ここで初めて「ただ兵士として、道具としてあり続けた自分は間違っていた。ただ誰かの意思に従うだけで、何も選んでこなかった」と悟り、己の生き方を見詰め直そうと決意したのだった。

相棒の存在の有無はガンズスレイブユニットの戦闘力に大きな差をもたらし、十三はセブンに叩きのめされる。しかしハルモニエを使った鉄朗に叱咤されたことで、十三は「今こそ自分の意志で撃つべき敵を決める時だ」との思いを新たにし、相棒無しでガンズスレイブユニットとしてのフルパワーを発揮。セブンを撃破する。
ベリューレン社は「ハルモニエがどこまでの性能を発揮しうるのか」について実地でのテストを行っており、鉄朗の脱走も想定の行動でしかなかった。彼らは鉄朗がハルモニエの機能を使いこなしつつあることに満足し、さらに経過を見守ることを決定する。一方、EMSに捕らえられたペッパーから、約束通りにかつての相棒の所在地を聞いた十三は、ベリューレンとの決戦の時が近いことを感じていた。

『ノー・ガンズ・ライフ』の登場人物・キャラクター

主要人物

乾十三(いぬい じゅうぞう)

CV:諏訪部順一

「頭部が巨大な拳銃」という奇怪な姿をした過剰拡張者。戦争を終わらせるためだけに作られた戦略兵器型エクステンド「ガンスレイブユニット」の13番目の個体であり、機械化される以前の記憶を失っている。
ハードボイルドな大人の男だが、セクシャルな話題になると途端に狼狽する初心な一面を持つ。拡張者の神経を安定させる成分を多く含んだ「種子島」というタバコを愛用している。

荒吐鉄朗(あらはばき てつろう)

CV:山下大輝

ベリューレン社による実験の被検体となり、拡張者を遠隔で操る特殊装置「ハルモニエ」を埋め込まれた13歳の少年。被検体となる以前の記憶を失っており、孤児だとされていたが、物語が進む中でベリューレン社のCEOである荒吐総一郎の息子であることが明らかとなった。
年齢相応に青臭いところがあり、十三の下で残酷にして無慈悲な現実を学んでいくが、それでもなお理想を捨てない強く高潔な意志の持ち主である。

メアリー・シュタインベルグ

CV:沼倉愛美

年若いが優秀な拡張技師。十三とは腐れ縁の間柄で、彼の専属技師を自称している。
自分と同様に戦災孤児だったヴィクター・シュタインベルグのことを兄として慕っており、拡張技師となったのもヴィクターがその道を選んだことが理由。それはそれとして機械類に目が無く、「十三が死んだら自分が解体して調べさせてもらう」と語っている。仕事代はきっちり取り立てるが、十三や鉄朗にはなんだかんだで危険を承知で付き合っており、根っこのところはお人よしである。

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