ARMS(アームズ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『ARMS(アームズ)』とは、七月鏡一原案をもとに1997年から2002年にかけて少年サンデーで連載された、皆川亮二の大ヒットSF漫画である。
主人公は、右腕にナノテクノロジーで生み出された金属生命体「ARMS」を移植された少年「高槻涼」。彼が同じARMS移植者である3人の仲間と供に、ARMSを狙う謎の組織「エグリゴリ」の刺客と果てない戦いに身を投じていくという物語である。
本作は「人間とは一体何か?」をテーマとしたSF漫画作品でもあり、登場する名言は人間の心や成長にまつわるものが多い。

『ARMS』の概要

『ARMS』とは、第44回小学館漫画賞を受賞し、2001年にはテレビアニメも制作されたSF漫画である。緻密な描き込みと、キレのあるアクション描写などで評価の高い皆川亮二が、博学で有名な漫画原作者・七月鏡一の原案協力を得て制作され、当時の少年サンデーとしては珍しくハードSF的な設定が特徴の漫画である。

原作者・皆川亮二は1988年に、『HEAVEN』でデビューし、翌年、たかしげ宙の原案で『スプリガン』の連載を開始し、端麗で迫力のあるバトル描写で人気を博す。以後、『D-LIVE!!』や『PEACE MAKER』、『海王ダンテ』など、ヒット作品を多数連載し、ゲームのデザインも手がける等幅広く活躍している。映画好きで知られ、臨場感ある描写や、独特のフェードアウトなどにその影響が見られる。
原案を担当した七月鏡一は、『ジーザス』や『闇のイージス』などのハードなアクション物のストーリーを得意とする漫画原作者である。博識であることでも有名で、本作のSF設定に一役買っている。クトゥルフ神話のファンであり、『ARMS』では、第三部に登場する、ARMSの原型となった金属生命体「アザゼル」を発見した「ミスカトニック大学」は、クトゥルフ神話に登場する大学名が由来になっている。

『進撃の巨人』の諫山創や、『テラフォーマーズ』の貴家悠、橘賢一など(三人とも『ARMS』の文庫版にイラストとエッセイを寄稿)、21世紀にデビューした数多くの漫画家達が、『ARMS』に影響を受けたと公言しており、本作は名実ともに20世紀終盤を代表する漫画作品である。

物語は、異能の能力を持つ高校生を主人公としたSF漫画であり、内容は大友克洋の『AKIRA』や、『寄生獣』、『MASTERキートン』の影響が見て取れる。本編では、主人公の敵対組織、エグリゴリの企む陰謀、「プログラム・ジャバウォック」という、世界を破滅させて、金属生命体と人類のハイブリット種である「ARMS」を新たなる人類として、新世界を築くという計画があり、本作の特徴の1つである、終末観を感じさせる要素となっている。
本作が発表されたのは、90年代後半、世紀末ということもあり、大ヒットアニメ『新世紀エヴァンゲリオ』」のように、90年代は終末観を漂わせるような内容の漫画、アニメ作品が多く出回っていた。本作も90年代後半の暗い世風が反映された作品である。

タイトルにもなっているARMSとは、ナノテクノロジーによって生み出された金属生命体の総称で、主人公や敵キャラクターの体の中に移植され、欠損した腕や足の代わりに形作り、戦闘時には、強大な能力を持った異形の手足になることが出来る。そのARMSを生み出したのは、謎の組織「エグリゴリ」である。この組織の名前の由来は、キリスト教の聖典「エノク書」(教会によっては偽典とされていることもある)に記されている、人類に知識と技術を与えた堕天使「グリゴリ」である。

エグリゴリはアメリカを本拠地として、独自の軍事力を持ち、全世界のコンピュータネットワークを掌握して、世界各国の政府を手玉に取れるほどの権力を持っている。第二次世界大戦時には巨大な軍産複合体を背景とする秘密結社として、すでにアメリカに存在しており、敗戦国となった日本やナチス・ドイツの技術を回収し、非人道的な研究と実験を繰り返すことにより、一般的社会に浸透している技術より遥かに優れた科学技術を持った組織である。

第二次世界大戦終結後に迎えた冷戦時代、エグリゴリは世界各国が核兵器を持つようになり、人類が第三次世界大戦によって、世界を破滅させてしまうことを危惧していた。そこでエグリゴリは、人類の進化を人工的に行う計画を立てた。それは、ナノテクノロジーによって精製された金属生命体を、人間の体に移植することによって、人類と金属生命体のハイブリットを造り出すことだった。それがARMSなのである。エグリゴリは、ARMSを造り出す為に何十年にもわたって非道な実験を繰り返していた。その副産物で生まれたのが、天才児やサイボーグ、エスパー、クローン、強化人間などである。

本作の特徴として、金属生命体ARMSや、サイボーグ、エスパーなど、天才児など、人類が新たなる進化を辿って誕生した、新人類を暗示させるようなキャラクターが多いことがあげられる。本作が発表された90年代後半は、ヒトゲノムの解析が進歩し、バイオテクノロジーが発達したおかげで、人類という種が遺伝子レベルで解析されていた時代であったことが背景になっている。(例として1996年にはクローン羊が誕生していた。)さらに、連載当時は、インターネットが一般化され、IT機器が目覚しい進歩を遂げた時代であった事から、エグリゴリが全世界のコンピュータネットワークを統括しているという設定がある。
その他の特徴として、ARMSのコードネームに「不思議の国のアリス」や「鏡の国のアリス」のキャラクターの名前が使われていることが挙げられる。

物語は第一部から第五部まで存在しており、当時の少年漫画としては珍しく、日本だけじゃなくアメリカも舞台にしているのが特徴である。

第一部、主人公の高槻涼は、父親からサバイバル技術を教え込まれている以外は、ごく普通の高校生だったが、転校生の新宮隼人と出会った時に、彼の日常は一変した。隼人は左腕を金属で出来た異形の腕に変身させる力を持っていた。そして、涼は、隼人をつけ狙っている謎の組織「エグリゴリ」の襲撃に遭ってしまう。そして一緒にいた涼の幼馴染・赤木カツミが敵に捕らわれてしまったとき、頭の中で何者かが涼に言った。「力が欲しいか?」すると、涼もまた右腕が異形に変わってしまった。異形となった右腕は、強大なパワーを誇り、一瞬で敵を蹴散らしてしまう。

その後、涼は隼人から事情を聞くと、隼人は、子供の頃、鐙沢村という所に住んでいたが、ある日、エグリゴリによって突然村を焼かれたうえに、両親と、自分の左腕をキースという男に切られてしまったとの事を話した。その後、彼は無くした左腕の代わりとして、何者かにナノテクノロジーで造られた特殊兵器「ARMS」を移植されたのだと言うのだ。そして涼は隼人から、自分の右腕もまたARMSなのだと聞かされる。
二人は同じ学校にいた、足がARMSになっている少年・巴武士を仲間にして、赤木カツミと、天才少年のアル・ボーエンとともに、ARMSの秘密が隠されているという鐙沢村へ向かった。そこで涼達は、自分らが反エグリゴリ組織「ブルーメン」によって、ARMSの適合者を造るために、人工授精で生みだされた存在であったと知る。

第二部、涼は、自分の幼馴染である赤木カツミを失って意気消沈していた。おまけに鐙沢村で暴走したARMS「ジャバウォック」のコントロールに苦慮していた。そこへ涼達にARMSを移植した反エグリゴリ組織「ブルーメン」の一員で、涼と同じARMSの適合者・久留間恵が現れた。彼女は涼達に、カツミが生きている可能性があることを教えた。一方、エグリゴリからは、エスパーによって構成された超人部隊・X-ARMYがジャバウォックを倒すべく、涼達の街にやってきた。

第三部、涼達はブルーメンの協力を得て、カツミのいるアメリカのグランドキャニオンを目指した。しかし途中で立ち寄った街、ギャローズ・ベルで、身体能力や感覚器官を高めた強化人間(ブーステッドマン)の部隊、「ハウンド」に襲撃される。街の正体はエグリゴリの実験施設で、アルと同じエグリゴリの実験によって生まれた天才児「チャペルの子供」達によって支配された街であった。そして街の地下には、ARMSの元となった金属生命体「アザゼル」があった。

第四部、エグリゴリの本拠地のあるニューヨークまでやってきた涼達は、エグリゴリの科学部門最高責任者のティリングハースト博士の拉致に成功する。彼はアザゼルの発見当初からARMSの研究に関わっていた人物であった。当初は涼達に心を開こうとしなかったティリングハースト博士だが、涼達がどんな事があってもめげずに、エグリゴリと戦っている様子を見て、ARMSに関するすべての秘密と、ARMSの生みの親となった少女・アリスについて話す決意をした。
アリスとはエグリゴリが人工的に生み出し、アザゼルと融合を果たした少女である。金属生命体と人間のハイブリットとなった彼女は、巨大なスーパーコンピューターとなってエグリゴリの支配者となったのだ。そしてアザゼルと融合した際に、彼女の身から出てきた四つの球体こそ、涼達に移植されることとなるオリジナルARMSのコアであった。

第五部、カツミを取り戻し、日本に帰って元の暮らしに戻った涼達。しかしカツミの体に異変が起きはじめた。傷がすぐ治り、急に人が変わったようにイラつき始め、右腕には強力なパワーが宿っていた。カツミをブルーメンの施設で検査してもらうと、彼女の体内からARMSが検出された。一方、エグリゴリの残存勢力は日本に集結しつつあり、新たなる計画「プログラム・バンダースナッチ」が開始されようとしていた。バンダースナッチとはカツミの体に宿ったARMSの名前で、エグリゴリはジャバウォックに代わり、カツミを使って人類を粛清しようとしていた。
一方、涼達はニューヨークの戦いでアリスに取り込まれてから、いかなる理由か定かではないが、ARMSの力を無くしてしまっていた。一同はARMSの力無しで、最後の戦いに向かうことになる。

主人公達(オリジナルARMSの4人)の名言・名セリフ

高槻涼の名言・名セリフ

高槻涼
本作の主人公。冷静で穏やかな性格。凄腕の傭兵である両親からサバイバル技術と、格闘術を仕込まれている。
ARMSは、ありとあらゆる物質やエネルギーを吸収し、自らの力に変える能力を持つ「魔獣(ジャバウォック)」。名前の由来は「鏡の国のアリス」に出てくる詩に記された「ジャバウォッキー」という怪物からである。

わからんのはお前の考え方の方だ!!なんで世界を敵と味方の二つに色分けして考えるんだ!?つかれんだろ、そーいうの!?

第2巻出典(すべての出典はARMS文庫版よるものである)。アルを家にかくまったときに、涼が言った言葉。

オリジナルARMS4人のうち、涼・隼人・武士の3人が通っている藍空高校に、突如、エグリゴリの刺客が襲撃してきた。一見すると、仮面をつけた2人組の大男。だがその正体は、双子の天才少年、アル・ボーエンとジェフ・ボーエンに操られる、「プラス」と「マイナス」という自我意識の無いサイボーグであった。
アルとジェフは、まだ小学生くらいの子供だが、高度に発達した頭脳を持っていた。彼らの正体は、民間の夫婦を使って天才児を生み出すエグリゴリの実験「チャペル計画」によって生み出された、天才児「チャペルの子供」であった。
そんな2人は学校に通っていた頃、優れた能力をやっかんだ同級生から、ひどいいじめを受けた過去があった。2人は報復として特殊なガスを製造して、自分達をいじめた者を殺害した。そうしたことが背景になり、2人は学校を嫌悪していた。
2人はその後、彼らの頭脳を見込んだエグリゴリによって、技術屋として雇われた。そして彼らは、オリジナルARMS奪取の任務に志願した。ボーエン兄弟は、任務のために武士の妹を拉致して人質にし、涼達に学校にとどまるように脅迫した。その一方で学校に爆弾を仕掛け、他の生徒達を爆弾の餌食にするつもりでいた。そうしたやり方で、ボーエン兄弟は、任務を遂行するだけでなく、学校そのものに復讐しようとしていた。

涼達は力を合わせて、ボーエン兄弟の企みを打ち破り、彼らを追いつめた。しかし、そんな彼らの前に、エグリゴリのシークレットエージェント「キース・レッド」が現れた。レッドの目的は、ボーエン兄弟の始末だった。ボーエン兄弟は、エグリゴリの隠蔽工作の限界を超えて、学校を荒らしたために、とうとう上層部から処分命令が下ったのだ。
レッドは、己のARMS「グリフォン」で、ジェフを無慈悲に殺してしまう。そして、その凶刃はアルにも向けられたが、殺される寸前の所を武士に助けられた。居場所の無くなったアルを、涼が引き取り家に連れ込んだのだ。

アルは、敵である自分を助ける涼に不信感を露にしたが、涼は「わからんのはお前の考え方の方だ!!なんで世界を敵と味方の二つに色分けして考えるんだ!?つかれんだろ、そーいうの!?」と言って、アルの考え方のほうに疑問を持った。

誰でも分け隔てなく接し、時に敵でさえも助けてしまう涼に対し、アルは過去に同級生からいじめられ、自分に手を差し伸べたのはエグリゴリのみだったが、そのエグリゴリからも見限られた。そんなアルから見て涼の行動は理解に苦しむものであった。しかし、涼からすれば、敵だの味方だのにこだわって、相手と理解し合おうとしないアルの考えの方がおかしく思えたのであった、涼はたとえ戦った相手であっても、人と話し合おうとしたり、理解しようとすることを決して放棄しない男なのである。

この時アルは、涼の言ったことをいまいち吞み込めて無い様であったが、彼らと行動を共にするうちに、いつしか涼と同じ考え方になっていくようになる。

誰が何と言おうとオレはオレだ!!他人の押しつけた運命なんかに従うものか!!他人の勝手な都合で消滅なんかさせられるもんか!!

第2巻出典。鐙沢村の地下にあった、ブルーメンのARMSの実験施設で、自分の出生を聞かされたときに涼が激昂して叫んだ言葉。

藍空高校でボーエン兄弟の始末に来た、エグリゴリのエージェント「キース・レッド」は、涼達に、「真相が知りたければ、鐙沢村に行って見ろ」という言葉を残して立ち去った。
鐙沢村は隼人の故郷だった。しかし、村はいかなる理由なのかは不明だが、エグリゴリによって焼かれてしまったのだ。隼人はそこで左腕を無くし、何者かによってARMSを移植されたのであった。一同が事情を知っている隼人の祖父「新宮十三」の話を聞くと、鐙沢村にはARMSの出生の秘密が隠されているとのことであった。
涼・隼人・武士・アル・カツミの5人は鐙沢村へ向かったが、廃村になったはずの鐙沢村はいつの間にか再建されていた。しかし不審な点がいくつもあった。再建されたにもかかわらず、鐙沢村は地図には載っていなかった。おまけに、村の住民達に10年前に村が焼かれたことを聞いても、彼らは何も知らないと答えるばかりであり、そして村には子供が1人もいなかった。
涼達は、廃墟となった隼人の生家に一晩泊まる事にした。しかし夜間になると、村の住民が涼達に襲いかかってきた。アルによると、住民達はマシンナリーインプラント(脳にチップを入れて、遠隔操作をする技術)によって洗脳されていたのだという。
村はエグリゴリによって支配され、実験施設になっていたのだ。涼達は村人達の包囲網から逃げ出すことができたが、村を警護しているサイボーグ兵士の3兄弟、「クリムゾン・トライアッド」が襲い掛かってきた。
強力なパワーを持ち、戦闘経験も豊富なクリムゾン・トライアッドに苦戦を強いられる涼達であったが、一同は更なる進化を遂げたARMSの力によって、辛くもクリムゾン・トライアッドを退けることに成功した。
そして涼達は、実験施設の本部になっている、教会に向かった。そこに辿り着くと、一同を待ち受けていたのは、この実験施設で働いている女性科学者、「メアリー・カッツ」であった。彼女の正体は反エグリゴリ組織「ブルーメン」の一員で、この実験施設に潜伏していたのだ。

メアリーの案内で、一同は教会の地下に下りた。そこで目撃したのは、ARMSの実験体となり、失敗してARMSに体を侵食されてしまった者達の酷い姿だった。この実験を行っていたのはエグリゴリではなく、反エグリゴリ組織、「ブルーメン」であった。ブルーメンはエグリゴリに対抗する切り札として、エグリゴリから強奪したオリジナルARMSを適合させる人体実験を行っていたのだ。そして、数多くの実験体の犠牲の果てに、ARMSの適合者の製造に成功する。それが涼達、オリジナルARMSの適合者であった。涼達はARMSの適正因子を持って生まれたデザイナーベビーであったのだ。

自分達が造られた人間と知って、衝撃を受ける涼、隼人、武士の3人。そこへ、組織の秘密を隠蔽するために、エグリゴリの爆撃ヘリが鐙沢村に襲来した。メアリーは研究のために、多くの人間の尊厳を奪ったせめてもの償いに、涼達に真相を伝えたのであった。
「誰が何と言おうとオレはオレだ!!他人の押しつけた運命なんかに従うものか!!他人の勝手な都合で消滅なんかさせられるもんか!!」涼はそう言って憤った。
作中ではじめて見せた涼の激昂する場面。この時に涼が言った言葉は、涼の人間としての尊厳を守るために、己を奮い立たせるべく言ったようにも、絶望的な己の出自と、自分に身勝手な運命を押し付ける者に対する募りが込められているようにも思える。

オレ達…同じ運命の下で生まれた兄弟みたいなもんじゃねーかってね… たとえ血がつながっていなくとも…どれだけ過酷なことが起きようと決して置き去りにはできない…

第4巻出典。 涼に助けられた恵は、周囲から孤立し、家族と呼べるものがいなかったために、仲間にこだわる涼を見ている内に苛立ち、ヒステリーを起してしまう。その時に涼が恵に言った言葉である。

第二部邂逅編で、涼は反エグリゴリ組織、ブルーメンから、カツミが生きているという情報を貰い、隼人と武士と旅に出る決意をする。しかし、出発の前にエグリゴリの超人部隊「X‐ARMY」が現れた。X‐ARMYは、サイコキネシスやテレパシーなどの超能力や、超視力や再生能力のような優れた身体機能を持った人間達で構成された部隊である。彼らは、隼人と武士の自宅に襲い掛かり、それを涼に知らせようとした恵にも襲い掛かってきた。
X‐ARMYは組織内における自分達の地位を高めるために、オリジナルARMSの中で最強の戦闘力を持つジャバウォックを倒そうとしていた。鐙沢村で涼は、カツミが殺されたと思った時に、エグリゴリへの憎悪から、ジャバウォックを完全体に覚醒させたことがあり、そのことを知ったX‐ARMYのリーダーであるクリフは、涼のジャバウォックを覚醒させるために、隼人・武士・恵を人質に取り、彼を窮地に追いつめようとした。
X‐ARMYは強敵であったが、涼は戦いを潜り抜け、どうにか恵を救出した。ボロボロになりながらも、今度は隼人と武士を救おうとする涼に、恵はかつて自分が親も兄弟もいない境遇であったために、心が荒みきり、ブルーメンの仲間達とも打ち解けることができなかった時を思い出した。そして、仲間にこだわる涼を見ている内に、劣等感を感じてヒステリーを引き起こし、「私まで仲間だと思わないで!」と涼に当り散らした。それに対し涼は「仲間っていうとニュアンスが違う」と言った後、「オレ達…同じ運命の下で生まれた兄弟みたいなもんじゃねーかってね… たとえ血がつながっていなくとも…どれだけ過酷なことが起きようと決して置き去りにはできない…」と言った。

涼は鐙沢村から帰ってきたとき、カツミを失ったことで心がボロボロになり、自宅に戻ろうともせず、廃工場で寝泊りして、ジャバウォックに乗っ取られそうになるのを必死で耐えてきた。その時彼を支えていたのは、同じ運命を共有する隼人と武士だった。付き合って数ヶ月のみだが、過酷な運命を共有し、苦楽を供にした三人の絆の強さがわかる言葉である。

新宮隼人の名言・名セリフ

新宮隼人
直情的で喧嘩っ早い性格だが、義理人情に厚い男。祖父・新宮十三から学んだ、新宮流古流武術の使い手である。ARMSは硬質のブレードで接近戦を行う「騎士(ナイト)」。名前の由来は「鏡の国のアリス」に登場する騎士から。完全体になると、右手がARMS殺しの宿った槍、「ミストルティンの槍」となる。

高槻も武士もそしてこのオレも…誰かの勝手な都合で「こんなもの(ARMS)」を押し付けられてんだ!!そんなオレ達はARMSを鼻にかけたりしねーんだよ。

第2巻出典。涼に成りすました、クリムゾン・トライアッドのサイボーグ兵士・フェイスの変身を見破った時の隼人の言葉。

涼、隼人、武士は、ARMS出生の秘密を知るために、隼人の生まれ故郷である、鐙沢村に行くことになった。鐙沢村はエグリゴリの実験施設となっており、涼達はそこを警護するエグリゴリの3兄弟のサイボーグ部隊・クリムゾン・トライアッドと対峙することになった。クリムゾン・トライアッドは、強力なパワーを持つへヴィー級サイボーグである長兄のガッシュレーと、亜音速で空を飛ぶ事ができる飛行試験型サイボーグである長女のビイ、そして、容姿擬装能力(顔を別の人間に変える能力)を持つフェイスの3兄弟で構成されていたサイボーグ部隊である。
隼人は変身能力を持つ「フェイス」と戦うことになったが、フェイスは一瞬の隙をついて雲隠れしてしまう。その後、物陰から涼が現れ、隼人に自分の敵は倒したことを伝た、そして「オレのARMSにかかれば軽いもんだ…」と軽口を叩いた。しかし、隼人は涼に似つかわしくない軽口を聞いて、彼をARMSで切りつけた。それは涼に変身して隼人を暗殺しようとしたフェイスであった。
フェイスの姑息な手段を看破した隼人は「高槻も武士もそしてこのオレも…誰かの勝手な都合で「こんなもの(ARMS)」を押し付けられてんだ!!そんなオレ達はARMSを鼻にかけたりしねーんだよ。」と言ったのだ。

隼人も、涼も、武士も、本来なら普通の高校生として生きるはずであったのに、エグリゴリに、そしてARMSによって運命を狂わされてしまったのだ。ゆえに彼らは、自分のARMSの力を疎ましく思うことはあっても、鼻にかけようとはしないのだ。隼人は涼に変身したフェイスの言葉に違和感を感じて、瞬時に正体を見切って攻撃した。

隼人は直情的な性格で、アルや恵から「バカ」呼ばわりされているが、実は冷静に頭を使って戦っている場面もあり、彼が単なるバカでないことがわかる貴重なセリフである。

オレはジャバウォックなんか恐れちゃいねえ!! 本当に怖えのは、何もかも自分の中に取り込もうとするてめーの“心”だ!! おまえ…心まで“化け物”になりてーのか!?

第9巻出典。 ニューヨークにて、ジャバウォックの暴走を恐れる、涼の心の内に秘めた葛藤の声を聞いたときに、言った隼人の言葉。

ニューヨークを舞台にした第四部のエピソードで、涼達を支援する反エグリゴリ組織・ブルーメンはエグリゴリとの総力戦を行うための準備を進めていた。そこに現れたのは、ブルーメンに協力する元エグリゴリのサイボーグ部隊で、現在はブルーメンのヨーロッパ所属、特殊作戦チーム「竜(ドラッケン)部隊」であった。しかし、味方であるはずの彼らは、ARMSに戦いを挑んできた。
ドラッケンはかつて、エグリゴリに所属していたサイボーグ達であった。エグリゴリにとって、サイボーグはARMSの研究の途中過程でしかなく、自分達がARMSのための捨石にされたことに対して怒りを感じ、エグリゴリに反旗を翻す決意をした。そんな彼らは、たとえ目的が一緒であっても、ARMSの移植者である涼達と、共闘することを認めることは出来なかった。
ドラッケンのリーダー「ヨハン・ホルスト」は涼との戦いを望み、彼を痛めつけたが、ジャバウォックの暴走を恐れる涼は、どれほど挑発されても戦おうとはしなかった。その腑抜けた態度に呆れ返ったドラッケン達は、その場を退いた。
その様を見た隼人は、涼と本心をぶつけ合うために、彼に勝負を挑んだ。しかし、隼人から勝負を挑まれても、ジャバウォックの暴走を恐れる涼は攻撃しようとはしなかった。涼はいつか自分のジャバウォックが暴走して、カツミや仲間を殺してしまうのではないかと、ずっと一人で恐れていたのだ。涼の内に篭っていた葛藤の声をようやく聞いた隼人は、涼に「オレはジャバウォックなんか恐れちゃいねえ!! 本当に怖えのは、何もかも自分の中に取り込もうとするてめーの“心”だ!! おまえ…心まで“化け物”になりてーのか!?」と言って叱咤した。

第四部は隼人の成長を描いたエピソードであった。第三部まで、彼は直情的な性格で、幼い一面が目立ち、ARMSに頼った戦い方ばかりする男だった。しかし、第三部の終盤で、自分のARMSがジャバウォックをカウンターとして生まれたということを知り、悩みぬいた。そして第四部で武士がやられて植物状態になったとき、ショックで仲間達からはなれ、ニューヨークをさまよってしまう。そんな彼を、涼達を見守る謎のキャラクター「風(ウインド)」が匿い、彼の導きによって隼人は成長し、涼を励ますまでに強い心を持つようになった。そんな彼の成長を感じさせる名言であり、同時に涼と隼人の絆の深さがわかる言葉でもある。

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