惡の華(The Flowers of Evil)のネタバレ解説・考察まとめ

『惡の華』とは、『別冊少年マガジン』(講談社)2009年10月号から連載が開始された、押見修造による漫画作品だ。多くのファンを集める知る人ぞ知る日本の名作であり、2013年にはテレビアニメが放送された。
誰もが一度は経験する、中学生頃の思春期をそのまま形にしたような作品で、テーマは「絶望」。クラスの美少女である佐伯奈々子の体操服を盗んだ春日高男。そしてそれを目撃した嫌われ者の仲村佐和。春日と佐伯、仲村という遣る瀬無い自我を抱える3人の思春期を描く。

『惡の華』の概要

『惡の華』は『別冊少年マガジン』にて2009年10月号から連載を開始した押見修造による漫画作品。「絶望」をテーマに、思春期特有の精神的彷徨と自我の行方を描いた青春漫画。単行本は全11巻。 タイトルはボードレールの詩集『悪の華』からきている。
「このマンガがすごい!2011」ではオトコ編10位にランクインしている。物語の舞台となる地方都市の情景や登場人物には、作者の故郷である群馬県桐生市と学生時代が1つのモデルとなっている。
『週刊少年マガジン』に出張読み切り版が掲載されたことがあり、これは単行本の第3巻に収録されている。

テレビアニメは2013年4月より6月まで、TOKYO MX、サンテレビ、BSアニマックスなどで放送された。監督は蟲師やOVA版デトロイトメタルシティ の長濱博史。また実写映画が2019年9月に公開された。
主人公春日高男が、恋愛や友人関係、人との関わり方について苦悩しながら成長していく。中学編と高校編があり、物語は2部に分かれている。

『惡の華』のあらすじ・ストーリー

衝動的な犯行とその代価

佐伯奈々子の体操着を盗んでしまったが春日高男(上)と高男の後ろの席に座る仲村佐和(下)

埼玉県のある田舎町に住む春日高男は、地味で至って普通な中学生だった。
しかしある日の放課後、彼は密かに思いを寄せている佐伯菜々子の体操着が教室に落ちているのを発見し、衝動的に盗んでしまう。
その光景をクラスメイトの仲村佐和に見られてしまい、これから仲村佐和の奴隷になることを約束させられてしまう。

仲村佐和は周りの人間のことを「クソムシ」と呼び、周りの人間を忌み嫌う態度から周囲の人間にも敬遠されている人間である。
さらに大人に対しても反抗的な態度を取るなど、人間的にもかなり婉曲した性格の持ち主だ。

初めは命令も他愛のないものだったが、徐々にエスカレートしていき、次第に「街中のパンツを盗む」「教室部屋いっぱいに落書きする」など、犯罪行為に手を染めていく。
その頃には春日高男自身も仲村佐和の思想に傾倒していき、恋人同士になった佐伯奈々子すらも、仲村佐和の思想に影響されていくのであった。

春日高男と仲村佐和の二人は、この街から抜け出す計画を立てたり、世界を破壊しようとするがうまくいかない。
鬱憤が最高潮に達した二人は町のお祭りで焼身自殺を図るが、失敗に終わりここで中学編が終了する。

常盤文の影響

高校編では春日が普通の高校生となって現れる。
中学時代の事件後、引っ越して日常を生きる、ただの高校生になっていた。

しかし事件で失った代償は大きく、家族との関係もギクシャクしていた。

そんな平凡な生活をする中で、常盤文という女性に出会う。
彼女は小説を書いていることもあり、春日と意気投合し、二人は深い仲へと発展していく。

そんなときに春日は過去の忘れられない存在の一人である佐伯に出会う。
しかし、そこには以前のような優等生らしい姿はなく、笑顔で本心をさらけ出していた。

「祭りでの出来事をテレビで見て、突き飛ばされた春日を見て、ぶざまで笑いが止められなかった」

「常盤さんは仲村さんの代わり?一生そうやって逃げ続けてくんだね」

「がっかりした」
そんな言葉に圧倒され、過去の過ちを思い出し、大きく心が揺れていく春日だったが、常盤の小説に勇気づけられ、春日の心は開放されることとなる。
家族とも前向きに接するようになり、常盤と前を向いていくために、もう一度仲村に会うことを決める。
仲村は海にいた。
彼女はそこで母と暮らしていた。
二人は話し始める。

仲村は普通の人生を歩みだした春日を見て「みんなが行く道を選んだんだね」と言って去ろうとするが、そんな彼女を砂浜に引き倒し、「僕はうれしい、仲村さんが消えないでいてくれて」と春日は泣きながら告げる。

「二度と来んなよ、ふつう人間」と最後の言葉を仲村は残す。

仲村と会って、ようやく春日は自分が成長していてあの頃の自分からはすでに解き放たれており、前を向いて進んでいけることを悟った。

『惡の華』の登場人物・キャラクター

主人公と取り巻く少女達

春日高男(かすが たかお)

春日高男(かすが たかお)

CV:植田慎一郎 / 演(舞):清水尚弥 / 演(映):伊藤健太郎

本作の主人公。
地味でクラスでも目立たない性格をしており友達も少ない。
中一の頃から佐伯に片思いをしている。趣味は読書、中でもボードレールの『悪の華』がお気に入りであるなど、すこしオタク気質な中学生。
佐伯の体操着を盗んでしまったところを仲村に目撃されたところから、物語は大きく動いていく。

仲村佐和(なかむら さわ)

仲村佐和(なかむら さわ)

CV:伊瀬茉莉也 / 演(舞):花奈澪 / 演(映):玉城ティナ
本作のヒロイン。
茶髪でボブカットの眼鏡が特徴的。
漫画ではそれなりに可愛いが、アニメではかなり顔を改変されてしまった。
普段は無表情かつ冷淡だが、春日と2人きりになった時には感情表現豊かになり、時折笑顔も見せる。
暴力的な性格で、大人などにもすぐに楯突くため、周りの人間からはやばいやつ認定されている。
反抗期を超えた、理解不能の問題児として疎まれている。
偶然に春日が佐伯奈々子の体操服を盗む場面を目撃したことから、春日を自分の思うままに動かし、自分の欲望を満たそうと企む。

佐伯奈々子(さえき ななこ)

佐伯奈々子(さえき ななこ)

CV:日笠陽子 / 演(舞):秋月成美 / 演(映):秋田汐梨
本作のもう1人のヒロイン。
黒髪のロングヘアーで、いわゆる清純系お嬢様。
成績も優秀で周囲からはしっかりした優等生のイメージを持たれているが、それ故に悩み事を多く抱えている。
性格は真面目だが、それゆえに悩みもたくさん抱え込んでおり、時折その悩みが表面化し、暴走することになる。
突然の春日の告白を受け入れ、二人は付き合うことになるが、仲村と仲良くする春日に不安の気持ちを抱えたまま、悶々とする日々を送ることとなる。

仲村佐和に接していくことで徐々に影響されていき、佐伯自身も壊れていく事となる。

常磐文(ときわ あや)

常磐文(ときわ あや)

演(映):飯豊まりえ

高校編のヒロイン。茶髪のボブカットで外見はどことなく仲村に似ており、春日が関心を抱くきっかけになった。みぎわ高等学校の2年生で、春日とは別のクラス。高身長でスタイルのよい美人で男子に人気がある。アルバイト先の他校の先輩と付き合っているが、上辺しか見ようとしない態度に苛立ちが募り、春日の告白を期に破局を迎える。後に春日と交際、春日の親友たちとも打ち解けるようになる。
学校ではいつも友人に囲まれており、快活さばかりが目立つが、実は文学好きで、小説家志望。春日と知り合う以前は趣味を共有できる者はいなかった。島田荘司や筒井康隆のファン。自身もノートに小説のプロットを書いており、春日に激賞されている。後に小説家デビューを経て春日と結婚、女の子をもうける。

その他の人物

山田正和(やまだ まさかず)

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