色づく世界の明日から(第13話『色づく世界の明日から』)のあらすじと感想・考察まとめ

時間魔法の儀式の準備が整い、魔法写真美術部は1人1人瞳美にお別れの挨拶をした。最後に葵の順番になり、葵は自分の想いを告げることなく瞳美を未来へ送り出そうとする。その時、琥珀の時間魔法とは違う魔法が発動し、葵と瞳美は2人だけの空間に閉じ込められ、お互いの想いを告げた。すると、瞳美が見る景色に色が戻り、瞳美は無事に未来への帰還を果たした。
今回は「色づく世界の明日から」第13話『色づく世界の明日から』の内容(あらすじ・ストーリー)と感想・考察を紹介。
「色づく世界の明日から」第13話『色づく世界の明日から』のあらすじ・ストーリー
お別れの儀式

時間魔法のための魔法陣の中央に立つ瞳美と琥珀。
時間魔法の儀式が整い、瞳美が2018年に帰る時が迫っていた。その時、葵は自分の絵に対する思いと瞳美への想いについて考え込んだ。
葵「1人で描くのが好きだった。好きに描いていられれば、それで充分だと思っていた。だけど、瞳美は…、俺の絵を、特別だと言ってくれた。彼女の最初の印象は、寂しげな鈍色。いつも不安を滲ませて、周りの世界を伺っていた。1人になった俺は、きっと何度も思い出す。色とりどりの君を、鮮やかな痛みと共に…。」
葵の胸の中の呟きを余所に、魔法写真美術部のメンバーは星砂を瞳美と琥珀がいる位置から放射線状に伸ばしながら撒いた。時間魔法の魔法陣が描かれた。
琥珀「ひとちひみ。星の真砂のその内に、永らく眠れる月の光よ。我が呼びかけに応じたまえ。我は今宵、大いなる時の流れの先に愛し子を送り出す者なり。星の真砂の力よ、今こそ目覚めたまえ。この場に満ちて、時の道を開きたまえ!」
琥珀が呪文を唱えると、星砂時計が回りながら浮き上がり、星砂を自身の中に巻き込み始めた。
琥珀は瞳美の方を見ると、「星砂の光が充分な強さになるまで、まだ少し時間あるよ。」と教えた。星砂が光り出すまでの間、みんなにお別れを言うようにという意味で瞳美に話しかけたのだ。
それを聞いた将は、「じゃあ、俺から。」と言うと、瞳美の前まで行き、立ちどまった。
将「瞳美。いつも自信なさそうだったけど、そんな必要全然なくて…。俺は…、お前の写真、好きだった。これからも撮り続けてほしい。」
瞳美「はい…。」
将「元気でな。」
将は放射線状に描かれた魔法陣の外側に戻った。すると将が戻った位置に続く星砂が光始め、星砂時計に取り込まれた星砂も呼応するように光を増した。
次に千草が瞳美の前に進み出た。
千草「えぇ~っと…。最後なんで。瞳美先輩。一言だけいいですか?」
瞳美「はい…。」
千草「もっともっと笑えばいいのに。そしたら、もっと写真の撮り甲斐があるっていうか…、もったいない。」
胡桃「あんた最後にそれ!?」
瞳美「ううん、ありがとう、千草くん。私、本当に笑うのが苦手だったの。でも…、これからは、きっと大丈夫!」
千草「あぁ!」
瞳美と千草はハイタッチをして、千草は自分の位置に戻った。千草が通った後、将の時と同じように星砂が光始め、星砂時計もさらに光を増した。
次に瞳美の前に来た胡桃は、瞳美を抱きしめた。
胡桃「瞳美のおかげで、思い出がたくさんできたよ。」
瞳美「私…、胡桃先輩に、いつも元気をもらいました。先輩なのに、友達みたいで。」
胡桃「泣かせないで…。メガネ曇って見えなくなっちゃうじゃん。」
既に胡桃の目には涙が溢れており、瞳美は「胡桃先輩…。」と呟いた。胡桃は瞳美を抱擁から解くと、改めて瞳美を正面から見た。
胡桃「ありがとね、うちの部に来てくれて…。後輩になってくれて、楽しかった。」
瞳美「ありがとうございます。」
胡桃「じゃあね…!」
胡桃は名残惜しそうに自分がいた位置に戻り、星砂時計はまた光を強めた。
次にあさぎが瞳美の前に来たが、あさぎの顔は既に涙でグショグショになっている。
あさぎ「瞳美ちゃん…。せっかく仲良しになれて、嬉しかったのに…。」
瞳美「ごめんね、あさぎちゃん…。」
あさぎは瞳美の両手を自分の手で包み込んだ。
あさぎ「違うんです…。泣いたらいけない、心配かけちゃうって胡桃先輩と言ってたのに…。やっぱりダメ!一緒に卒業したかったです…。写真見せ合ったり、パフェ食べに行ったり、放課後おしゃべりしたり…!もっともっと!」
瞳美の目にも涙が溜まっている。
瞳美「うん…。友達になってくれて、ありがとう。」
あさぎ「手紙…、書きます。何回でも、ずっと…。未来の友達に…!」
あさぎは振り切るように自分の位置に駆け戻り、星砂時計はさらに光った。
次に琥珀が瞳美を抱きしめた。
琥珀「瞳美…、遠くまで来てくれてありがとう。大好きよ。」
瞳美「琥珀…。」
琥珀は瞳美の身体から両手を解いた。
琥珀「60年後、2人で思い出話ができるの、楽しみにしてるね!」
瞳美「私も…。時間魔法、よろしくお願いします。」
瞳美は改めて琥珀に頭を下げてお願いした。琥珀は嬉しそうに笑い、「うけたまわりました。」と冗談めかした声で答えた。
最後に葵が瞳美の前に進み出た。葵は顔を俯けたまま、言葉を切り出した。
葵「俺は…、瞳美に…会って…。未来でも、幸せでいてほしい。忘れない、瞳美のこと。」
瞳美「私も…、忘れません。」
それだけ言って瞳美に背中を向けた葵に、「もういいの?本当に…?」と琥珀は声をかけ、葵はその場に立ち止まり、自分の手を握った。
琥珀「全部言っておいたほうがいいよ。会えるのは…、今日がもう最…。」
葵「いいんだ。」
その時、瞳美が「待ってください!」と切り出し、葵は瞳美の方を振り向いた。
瞳美「私からも、言わせてください。今まで…、ありがとうございました。はじめは1人で心細くて、こっちのことも学校のことも分からなくて…。でも、みんながいてくれて、忘れられないたくさんの気持ちをもらいました。私はそれまで、自分から閉じてしまっていたんです。でも…、勝手な思い込みで、自分を追い詰めるのはもう止めようって。きっと…、気持ちひとつで世界は。」
その時、急に星砂時計の青い光が迸り、稲妻のような閃光で辺りを照らした。琥珀は「ひとやたな、しじまに沈む暗黒の…。」と呪文を唱えかけたが、青い閃光が琥珀の手元を撃ち、呪文を言い終わることが出来なかった。
琥珀「何かが邪魔してる!まるで…、別の魔法みたいな!」
瞳美は「帰りたくない。」という自分の気持ちが無意識に魔法を発動したのかと思い、「まさか…、私のせい?」と考えた。その間にも青い閃光は瞳美の周りを取り囲み、瞳美の身体が光に包まれていく。葵は咄嗟に瞳美に向かって手を伸ばし、瞳美の手を掴もうとして駆け寄った。しかし葵も青い閃光に巻き込まれ、瞳美と一緒にその場から消えてしまった。

突然、瞳美の周りを青い稲妻のような閃光が包み込み、葵は瞳美を助け出そうとして駆け寄る。
色づく明日

瞳美と葵が閉じ込められた謎の空間。
光が収まった時、葵は不思議な空間に立ちすくんでいた。目の前にいたはずの瞳美の姿が見当たらず、葵は必死に瞳美の名前を呼んで探した。
葵の脳裏には、先ほど瞳美が口にした「勝手な思い込みで、自分を追い詰めるのは、もう止めようって…。」という言葉と、自分が幼い瞳美に出会った時に「渡れるよ。ほら。」と声をかけた時のことを思い出していた。
「あの時…、俺が小さな瞳美に伝えたかったこと…。自分を閉じ込めないでほしかった。諦めないでほしかった。同じじゃないのか、俺も…。自分の気持ちを…、無理矢理閉じ込めて…。」と心の中で呟きながら瞳美を探す葵の背後に、金色の鯉が突然現れ、葵は驚いてその場に立ち止まった。
金色の魚は「渡れるよ。渡れるよ。」と葵に言葉を繰り返し語りかけた。
ふと前方を見た葵は、立ちすくむ瞳美の姿を見つけ、名前を呼びながら彼女の元へと駆けて行く。「苦しくても…、叶わなくても、大切な気持ちは…、決して消えない。」と葵は気づいたのだ。
葵は必死な形相で「瞳美ぃーっ!」と呼びかけた。すると金色の魚が瞳美のすぐ側に現れ、周囲の風景が突然変わった。瞳美と葵は幼い瞳美と葵が出会った暗い部屋の中に居て、瞳美は幼い頃の自分が描いたたくさんのモノクロの絵を見ていた。
葵が「瞳美!」と呼びかけると、瞳美は葵の方を振り向き、葵の目の前に立った。
瞳美「唯翔くん!よかった…。私、まだ伝えたいことがあったの。最後まで私、助けてもらってばかりだった…。絵を見せてもらって、色を見せてもらって、魔法を褒めてもらった時、嬉しかった…。嫌いだった自分を見せても、変わらずにいてくれた…。私を全部受け止めてくれた…。一緒にいるだけで、幸せだった…。ありがとう!唯翔くんが、私のこれからに魔法をかけてくれた。」
葵「俺もだよ…。俺も、瞳美からたくさんの大切な物をもらったから。」
瞳美「私…?」
葵「本当は、絵を描く道は諦めようと思ってたんだ。けど…、瞳美に会って気持ちが変わった。人に喜んでもらうこととか、絵を描く楽しさとか、そういうことを思い出したんだ。自分を閉じ込めてたのは、俺だって同じ…。瞳美は、俺の絵に光を射してくれたんだ。暗い色も…、明るい色も…、全部が瞳美を作って…、何も消さなくていい。未来でも笑ってて。」
瞳美は泣きそうな顔になりながら、葵の顔を見上げた。その時、瞳美が見るモノクロの世界に突然色が戻り、瞳美は驚いた。
葵は瞳美を抱きしめ、「好きだよ…、瞳美。」と自分の想いを告げた。瞳美は涙を流しながら、「私も…、大好き…!」と返事をした。
瞳美「唯翔くんの髪の色…、肌の色…、瞳の色…、心の色…。私…、忘れない…!」
葵「俺も忘れない…。俺たちはきっと、お互いの未来に色を取り戻すために出会えた。」
気が付くと、瞳美と葵の周りを覆っていた白黒の世界が次第に崩壊し、2人は元の公園に戻っていた。瞳美と葵は驚いて周囲の景色を見渡した。瞳美の見る世界には、色が戻っていた。
他のみんなは突然消えて再び現れた瞳美と葵に驚き、立ちつくしている。
琥珀「瞳美!」
瞳美「琥珀…。私…、色、見える…。」
呟きながら瞳美は、「気持ちひとつで世界は変わってゆく…。」と心の中で感じていた。

瞳美が見る世界に色が戻った瞬間。
星砂時計が発する青い光が強くなり、琥珀は「瞳美!」と呼びかけ、時間魔法が発動する時が近いことを瞳美に告げた。
瞳美と葵は見つめ合い、お別れの言葉を口にする。
瞳美「ありがとう…。唯翔くん。」
葵「さよなら…。瞳美…。」
2人が繋いでいた手は、名残惜しそうに離れた。葵が瞳美の側を離れると、琥珀は「ひとやたな。しじまに沈む暗黒の、久遠の流れ、照らせよ光…。空に星満ち、地には球満つ。丘の上の学び舎よ…。」と仕上の呪文を唱え始めた。
青い光に全身が包まれていく瞳美の姿に、あさぎは「瞳美ちゃん!」と声をかけ、それを皮切りに琥珀の呪文の言葉の合間を縫って、他のみんなも瞳美に最後の言葉をかけた。
琥珀「星降る砂浜よ…。」
胡桃「行ってらっしゃい!」
千草「また会おうね。」
琥珀「雨に濡れる坂道…。」
将「じゃあな!」
あさぎ「さよなら、瞳美ちゃん!」
琥珀「黄昏…。共に過ごした今日、今や満ちぬ。とこしえの時の流れよ、戻したまえ!」
瞳美と葵はそれぞれの想いを打ち明けたことで晴れやかな表情を浮かべ、お互いのことを見つめ合う。
呪文の最後の言葉を唱える寸前に、琥珀は瞳美の方に顔を向け、「瞳美!未来で待ってる。必ず生まれてきてね!」と言葉をかけ、呪文の最後の言葉を唱えた。
琥珀「時よ、還!」
瞳美の身体を強烈な青い光が包み込み、光が消え去った時には、瞳美の姿は既に消えていた。みんなは瞳美が未来に帰ってしまったことに寂しさを感じ、暗い表情を浮かべたり、涙を流したりしていた。
琥珀は地面に落ちた星砂時計を拾い上げると、時間魔法の途中に発動した別の魔法のことを考えていた。
琥珀「そうして瞳美は、未来へ帰っていった。瞳美を未来に帰したのは、あたしの時間魔法じゃない。そのことは、あたしだけが知っている。瞳美の無意識の魔法が解けることが、旅のリミットだったんだ。未来のあたしがかけた大きな魔法…。今はまだ届かない。けど…、いつか…、きっと!」
琥珀は決意を新たにして、公園から帰って行くみんなの後を追おうとした。
その時、琥珀のスマートフォンがメッセージを受け取った音がしたため、琥珀はスマホを見た。琥珀のスマホには、「KOHAKU LEVEL77」という宛先から「瞳美、無事に帰りました。お疲れさま。琥珀より。」というメッセージが届いていた。
琥珀は未来の自分からのメッセージだと気づき、瞳美が無事に未来に帰ったことを知って、嬉しそうな表情を浮かべた。

瞳美の身体を一際強い光が包み込み、瞳美はみんなの前から消え、無事に未来へ帰った。
瞳美は気が付くと、2018年に行った時と同じバスに乗っていた。運転手の「次、止まりまーす。」という声を聞いて瞳美は席を立ちあがり、運転席の方へ向かった。
運転手「到着。」
瞳美「着いたんですか?」
行きのバスを運転していたのと同じ運転手は瞳美の方へ振り向き、「君の行くべき所。」とだけ言った。そして行きのバスで瞳美が運賃として出したポポッキーの箱を取り出し、「往復分もらってます。」と告げた。
瞳美「ありがとう…。」
瞳美はバスを降りようとしたが、突然目の前に棒が出現して通せんぼをした。瞳美は戸惑い、「今、往復分って…。」と運転手の抗議の声を上げかけた。運転手は左手でピースサインを作りながら、ポポッキーを瞳美に差し出し、「おつり。」と言った。
瞳美は可笑しくて笑いながらポポッキーを受け取り、バスの出入り口から思い切って下に見える雲の中に飛び込んだ。

瞳美は再び過去と未来を往復するバスの運転手と出会う。
瞳美の明日に届いた色

2078年に戻った瞳美が見る色づいた世界。
瞳美が目を開けると、そこは2018年に行く直前に祖母と一緒に花火を見ていた場所と時間であることに気づいた。瞳美のイヤリングに搭載されている機械が、「バッテリースタンド確認。これより、通常モードに移行します。今日の日付は2078年9月19日。時刻は午後7時41分です。」という音声を発しながら起動したからだ。
瞳美の目の前には、色鮮やかな花火が咲き誇っており、「色…。数多の色…。」と瞳美は思わず呟いた。ふと瞳美が隣を見ると、祖母である琥珀が笑みを浮かべて瞳美を見ていた。
琥珀「おかえり、瞳美。どう?楽しかったでしょ。」
瞳美は琥珀と向かい合った。
瞳美「楽しかった…。でも…、悲しかった…。不安で怖くなって、嫌になった…。夢中になってドキドキしたり、嬉しくなって…、切なくなって…。怒ったり、泣いたり…。胸が締め付けられるほど、苦しくなったり…。帰りたくなくなるくらい、恋しかったり…。でも…、幸せだった。」
琥珀「見てきたのね…。瞳を逸らさずに。」
瞳美は思わず琥珀を抱きしめた。
瞳美「ねぇ…私、幸せになっていいんだよね。」
琥珀「もちろんよ。全部あなたが自分で手に入れたのよ。私はほんの少し手伝っただけ。」
琥珀は辛そうな表情を浮かべると、瞳美に告げた。
琥珀「私の願いは、魔法で人を幸せにすること…。でも、一番親しい人たちを、幸せにすることができなかった…。許してちょうだい…。」
瞳美「ううん…。私の方こそ、琥珀がどれだけ私のことを想ってくれてたか、気付かなくてごめんなさい…。私、もう大丈夫よ。」
瞳美は琥珀の身体に回していた両腕を解くと、晴れやかな表情で言った。
瞳美「私、お母さんを探して会いに行きたい!琥珀と一緒に!」
琥珀は瞳美が成長したことに嬉しさを感じ、思わず涙ぐんでしまった。

琥珀は瞳美に、魔法写真美術部が未来の瞳美に向けて用意したタイムカプセルを渡す。
その後、瞳美と琥珀はまほう屋に戻り、琥珀はテラスの隅の花壇を掘り返し始めた。瞳美は琥珀の行動を不思議に思いながら、側に立って眺めた。
琥珀「今日は泊まっていけるんでしょ?」
瞳美「うん、お父さんもいいって。でも…、それは何?あ…、おばあちゃん!」
琥珀は瞳美にウィンクをしながら「おばあちゃんは止めて!琥珀って呼んで。」と過去に交わした瞳美とのやり取りを繰り返した。瞳美は変わらない琥珀の様子に「ふふっ。」と笑いがこぼれた。
琥珀が花壇から掘り返したのは、古いトランクだった。2人は庭に設置されているテーブルに座り、琥珀は2人の間にそのトランクを置いた。
琥珀「これはね…、タイムカプセル。あなたに渡そうと思って。魔法写真美術部のみんなからよ。」
瞳美がトランクを開けると、中には何冊かのアルバムが収められていた。
琥珀「時間を超えるのに、手荷物は無理だったじゃない?だから…、未来の瞳美に向けて、アルバム作ろうって。懐かしいわ…。」
瞳美がアルバムを開くと、瞳美が2018年で撮ったモノクロの写真や、みんなで撮った集合写真がたくさん入っていた。
瞳美は琥珀の方へ視線を向けると、「60年前のこと、全部分かってて送り出してくれたの?」とずっと気になっていたことを聞いた。
琥珀「そりゃそうよ!私にとってもあの日々は宝物。これでやっと…、やっとあなたと話ができるわね。それからもう1つ。覚えてる?あなたが小さい頃読んでいた絵本。」
琥珀から手渡された絵本を見て、瞳美は驚いた。絵本のタイトルは『なないろのペンギン』で、作者は『あおい ゆいと』と書かれていたのだ。
瞳美「思い出した…。この本にだけ色がついて見えてたの。お母さんと何度も読んでたからだって思ってたけど…。それだけじゃなかったんだ…。」
瞳美は思わず涙ぐみながら、絵本の表紙をめくった。
絵本の物語は、このような内容だ。
『ペンギンさんは白と黒。ペンギンさんの部屋も白と黒。今日もペンギンさんは、お気に入りのお部屋の中で1人のんびりお茶を飲んでいました。
すると、どこからか…「こっちにおいでよ!」と声がします。ペンギンさんがおそるおそる扉に近づくと、うさぎさんがぴょこんと顔を覗かせました。「おいしい野いちごがあるの!こっちよ!」
「驚かしてごめんね!」ムササビさんは、飛行メガネをかっこよく頭の上にずらし、リュックサックの中からクルミを取り出しました。「これ、おいしいんだよ!一緒に食べよう!」
今日は、初めてのことばかり…と、ペンギンさんはこっそり思いました。
「風はいろんなにおいを連れてくる」とくまさんが言いました。「草のにおい、花のにおい、お日様のにおい、海のにおい。」
「水平線が光ってる!」いぬさんは海に向かって、カメラを構えました。うさぎさんは、いぬさんの隣に立って海のにおいを嗅いでいます。
「明るくても暗くてもどっちでもいいけど、歩き回るにはちょっと暑すぎ~…こんな日は日陰でお昼寝がいちばん!」とねこさんが言うと?
「さんせーい!」とムササビさんが手を上げました。
インコさんは、きょとんと目を開きました。「私は飛べるけど泳げない…あなたは泳げるけど飛べない。でも…タマゴで生まれて羽根があるから、鳥仲間だよ!」
ペンギンさんは怖くて怖くて泣きそうでした。稲妻は光り、雷は轟き、風は吹きすさび、雨はどんどん降って…みんなを濡らしました。
どれくらいそうしていたでしょうか…気がつくと雨雲が切れて、ひとすじ陽が射しました。
みんなが森のほうを振り返ると、そこには大きな虹がかかっていました。世界には、こんなにいろんな色があったんだな…。
それから、ふと考えました。私の色は…何色かしら…。』
読み終わった瞳美は涙を浮かべた。絵本に出てくる動物たちは、魔法写真美術部のメンバーをモチーフにしていることに気づいたからだ。
ペンギンは瞳美、うさぎはあさぎ、ムササビは胡桃、くまさんは葵、いぬさんは将、ねこさんは千草、インコは琥珀のことだ。絵本を読みながら瞳美の頭の中では、それぞれのセリフが魔法写真美術のみんなの声で再現されていた。そして絵本の裏表紙には、虹色に染まったペンギンが描かれていた。
涙ぐむ瞳美を琥珀は優しい眼差しで見つめていた。

葵が未来の瞳美に向けて描いた絵本。
その後、瞳美は学校でも積極的に友だちを作り、魔法写真美術部に入ってカメラの使い方を教えるなど、積極的に人との関わりを持つようになった。他にも、まほう屋の店番をするようになり、魔法の練習も始めた。
ある晴れ渡った日、瞳美は葵と訪れた展望台から海を見渡し、「海が青くてよかった…。空が青くてよかった…。」と感じていた。
そんな瞳美の前に、瞳美にしか見えない金色の魚が再び現れる。瞳美は金色の魚を見ながら「あなたがくれた色…。私の明日には、たくさんの色がある。」と感じ、晴れやかな表情で空を見上げた。
瞳美は2018年で出会えた仲間たちのおかげで、自分の中にわだかまっていたしがらみやトラウマを解消し、明るい未来へ歩き出したのだ。

2078年でできた瞳美の友人たち。

魔法写真美術部で昔の写真の使い方を教える瞳美。

まほう屋で店番をして、星砂の調合もする瞳美。

瞳美は晴れやかな表情で、明るい色に溢れた未来に向けて歩き始めた。
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