ジョーカーも驚くバットマンと対決したヘンなヴィランまとめ
アクションもさることながらダークな世界観とリアルな人間描写で世界中のファンを虜にし続ける長寿アメコミ、バットマン。そんなバットマンが今まで戦ってきたヴィラン(悪役)たちは凶悪で残忍な犯罪者ばかり。だが、そんなヴィランたちの中にも一風変わった変なキャラクターがいる。バットマンの人気を支えた縁の下のヘンなヴィランを紹介する。
『バットマン』の概要
バットマンは1939年にボブ・ケインとビル・フィンガーによって創造されたDCコミックスのヒーローである。
架空の街、ゴッサム・シティを舞台に、かつてマフィアに両親を殺害された億万長者ブルース・ウェインが悪と戦うために己を鍛え、武器を作り、ヒーローとして活動し始める。それがバットマンである。
39年に登場してからすぐに人気になったバットマンであるが、1986年にフランク・ミラーによって描かれた「バットマン:ダークナイト・リターンズ」によって人気が最高潮に達する。また、この作品は映画「ダークナイト」の元ネタとしてもよく知られており、今でもアメコミ屈指の傑作としても名高い。
なぜ「バットマン:ダークナイト・リターンズ」がボブ・ケインとビル・フィンガーの作品ではなくフランク・ミラーの作品なのかというと、アメリカでは一つの作品に対し様々な作家が独自の作品を発表するからである。作者によって独自の世界観が切り開かれ、とある作者の作品では善人として登場していたキャラクターがまた別の作者の作品では悪人として登場したりする。
日本の作品で例えると、尾田栄一郎作「ワンピース」を「キン肉マン」の作者、ゆでたまごが連載する、といった感じだ。
これが成立するのは、キャラクターの版権をDCコミックスが所持しているため、その作者には版権はないからだ。なので、フランク・ミラーにはバットマンの版権はないが「バットマン:ダークナイト・リターンズ」の版権はある。キャラクターではなく、一つの作品として捉えられているからこういった構図になるのである。すなわち日本では「ワンピース」のルフィ、「銀魂」の坂田銀時、「NARUTO」のうずまきナルトが共闘する作品を作られることはないが、アメリカではバットマンやスーパーマン、アクアマンが共闘する「ジャスティス・リーグ」やマーベルコミックスで言えばアイアンマンやハルク、ソーが共闘する「アベンジャーズ」を作ることができるというわけである。
だが、バットマンとアイアンマンが共闘することはない。日本に置き換えると、ルフィと「グラップラー刃牙」の範馬刃牙が共演しないのと同じである。
なぜなら、お互いに別の会社が権利を持っているからである。お互いに権利を放棄して別の会社が二つの権利を有することになればこの両者の共演は有り得るようになる。
『バットマン』に登場するヴィラン
様々な作者が独自の世界観で描くと書いたが、一貫したベースの雰囲気作りは行われている。
例えばスーパーマンならアメリカを代表する強くてたくましいヒーローであるべきであって苦悩し、へこたれたりはしないと設定されている。
バットマンは一貫してダークであり、後輩した街、ゴッサム・シティの陰険な雰囲気は損なわないように設定されている。
これらの雰囲気作りはヒーローではなく、ヒーローと対峙する悪役、「ヴィラン」による力が最も大きいとされている。設定を大幅に変更しないよう、個々の世界観に合わせつつ、ベースを一貫させるために逸脱させすぎないキャラクターを登場させるのだ。
日本でも馴染みの深いヴィランであるバットマンの宿敵・ジョーカーは、バットマンの世界観を語る上で外せない存在と言われている。
ジョーカーには特筆すべき能力は持ち合わせていない。人を操れる念力や最強の怪力を持つヴィランではないのだ。
なぜジョーカーが世界観を語る上で外せない存在と言われているのか。それは、「人間の暗部を描いている存在」と言われているからである。ジョーカーはその狡猾な性格だけで形成された凶悪な犯罪者である。自身が悪事を働いているという思いは微塵もなく、ただバットマンを追い詰めてやりたいという強い思いからの行動しかとらない。その結果、善良な市民たちが巻き添えを食らい、バットマンにとって「ジョーカーは自分を追っている。市民を危険に晒しつつもこのままジョーカーを追うべきか、市民の命を最優先にして自分は引退し、警察に任せるべきか」という選択を迫らせる。派手な戦闘やアクションが目立つ作品だが、その葛藤こそがダークさを生み、バットマンの世界観を形成していると言われている。
有名なヴィランたち
バットマンのようなスーパーヒーローを題材にしたコミックの読者は、ヒーローのファンであるために読む読者と、ヴィランのファンであるために読む読者の二つに分類される。特に前述したジョーカーにはファンも多い。その大きな理由として、2008年に公開された映画「ダークナイト」が大きく関わっているという指摘が多数見られる。日本においてもアメコミライト層と呼ばれる新規ファンを取り込んだのも「ダークナイト」が原点だと言われている。
「ダークナイト」でジョーカー役を見事に演じ、世界中から大絶賛された俳優、ヒース・レジャー。彼はこの撮影の後、ジョーカー役が抜けきれず、そのまま混沌に陥り死亡してしまった。一部では薬漬けにならざるを得ず、衰弱したとも報じられている。しかし、ヒースのクールなジョーカーがアメコミの間口を広げ、「今までのアメコミ映画の概念を覆した」とまでも言われ、今現在のアメコミの多角度メディア化に貢献したのだ。続く2016年に公開された映画「スーサイド・スクワッド」では、実写映画ではヒース以来となるジョーカーを演じる俳優となったジャレッド・レトがヒースのジョーカーを超えるかどうかという期待も多くなされていたが、結果的にはそもそもあまり出番がなく、確認する前にフェードアウトしてしまったという意見が多かった。
他のメディアでも活躍するヴィランは特に人気があり、コミックを読まない世界中のファンから支持される傾向にある。
例えばポイズン・アイビーだ。
ロバート・カニアーとシェルドン・モードッフによって創造され、誕生した1966年から今に至るまでボツになることなく登場し続けている人気のあるヴィランだ。他人の心を制御する植物のフェロモンを使い、絶滅の危機にある種や自然環境を保護することを目的としているエコテロリストである。1997年の映画「バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲」にも登場し、当時人気だったユマ・サーマンが演じている。
2016年の日本のハロウィンで最も多く見受けられたという声も大きかったハーレイ・クインは、もともとジョーカーを担当していた精神科医であり、ジョーカーの魅力に取り憑かれて自らもヴィランとなった女だ。ハーレイ・クインは前述した映画「スーサイド・スクワッド」でも登場し、演じたマーゴット・ロビーは主演のウィル・スミスを食う怪演を見せたと絶賛された。ハーレイはコミック出身のヴィランではなく、初登場はアニメ版バットマンである。その後、コミックに逆輸入され、人気となった。
こういった、映画やアニメに出ることのできるヴィランはほんの一握りだ。映画制作会社は、ファンが登場してほしいヴィランを最優先にする傾向があるので別メディアに参戦することができるのは必然的に人気のヴィランになる。だが、そんな他のメディアに出ることはない、極めてカルト的な、ヘンなキャラクターがいるのもバットマンの人気の秘訣とされる。次項からはそんなヘンなヴィランを紹介していく。
ヘンなヴィランたち
カレンダーマン
その名の通り、カレンダーを模したコスチュームを着ているヴィラン。
彼の本名はジュリアン・グレゴリー・デイといい、自分の名前に「デイ」という言葉が入っていることから「日」にこだわるようになった。
曜日や記念日によって彼のコスチュームは異なったものになり、そのコスチュームによって使える技や武器が違うため、日によって強さが異なる特異なヴィランだ。土曜日には土星人の格好をして宝石店で強盗するなど、曜日に引っ張られすぎている可笑しな一面も持っている。
その特性から365日使いまわせるキャラクターのため、作者としても使い勝手のいいキャラとなり得るはずだったのだが、如何せん人気がなさすぎたためにあまり活躍の出番はなく、マイナーヴィランとして活動した。最期はアーカム・アサイラム(ゴッサム・シティの刑務所)内でダイナマイトを口に詰められ、爆死している。きっとこの先もフィーチャーされるはずのないであろう、哀れなヴィランだ。
ゴリラ・ボス
もともとマフィアのボスだったヴィラン。
ゴリラ・ボスがゴッサム・シティを侵攻する際、ゴリラ・グロッドという「フラッシュ」(高速で移動するヒーローを主人公としたDCコミックスの作品)で登場したヴィランの力を借りている。
このゴリラ・グロッドはテレパシーによる洗脳、またサイコキネシスを使える超能力ゴリラであり、身体能力も抜群。
さらには科学者でもあるので他のヴィランたちもゴリラ・ボス同様、彼を一目置いている。
出身地はゴリラ・シティ。日本での知名度はほぼゼロに近いため、かなりマニアックな存在である。
ゴリラ・ボスのヘンなところは自身の脳を野生のゴリラに移植させ、スキルを怪力に全振りさせてしまっているところである。だが、ゴリラ・グロッドは能力的にはさらにそれの上をいく超能力ゴリラのため、もともと人間であるにもかかわらずゴリラ生まれゴリラ育ち、生粋のゴリラであるゴリラ・グロッドにバカにされてしまっている。ゴリラ・ボスという、何のひねりもない安直にもほどがある名前も可笑しい。
マッドハッター
本名をジャービス・テッチと名乗るこのヴィランはルイス・キャロルの小説である「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」に魅了されており、特に「マッド・ティーパーティー」の章を好んでいる。
マッドハッターは科学者であり、人の心を操るデバイスを使って人々を混乱に陥れる。そのデバイスを収容するため、彼は自分の頭よりも少し大きい緑色の帽子を被っているのだ。
マッドハッターは元々かなり気まぐれキャラクターとして描かれていたが、長年の連載によりゴッサム・シティの世界観に合わせるようにして暗いキャラクターに変化していった。
また、ジョーカーの手下にはトゥイードルダムとトゥイードルディーを模した双子のギャングのヴィランも存在する。
マッドハッターのヘンなところは、不思議の国のアリス以外の何者でもないところである。そちらの版権がとりにくい影響か、マイナーとは言い難い立ち位置に存在するヴィランであるにもかかわらず未だ映画作品には出てきていない。権利問題的にヘンなヴィランである。
スターロ
バットマンは前述した通り極めてダークでリアル路線が強く、悪役もまたリアリティのある、特殊能力を持たない犯罪者や狂人が多い。
だが、このスターロはどっからどう見ても宇宙生命体である。人間でもなんでもない宇宙ヒトデだ。世界観から大幅に逸脱している。
これはジャスティス・リーグが初めて対峙したヴィランである。
巨大な本体から小さな分裂体を大量に作り、その分裂体によって洗脳された人々やヒーローによってジャスティス・リーグは大いに苦しめられることとなった。
この宇宙生命体のヘンなところはズバリ、宇宙生命体であるところだ。バットマンが今まで戦ってきた敵からは想像もつかない、ただのエイリアンだというところで逆に既存のファンを興奮させたが同じような飛び道具は何度も出せず、それ以来、あまり完全に別世界のものは出ていない。
カルキュレーター
自身はあまり戦うことがなく、それよりもネットを駆使して他のヴィランにバットマンたちヒーローの情報を横流しする現代型サイバーヴィラン。
脳をネットとコネクトし、自分の中にネットそのものを取り込んで自分自身がスーパーコンピューターになるという離れ技を披露することもできる。
そのおかげかヒーローの全てを知り尽くしており、ヒーローと直接戦う時には一回も触れさせることなく倒すという超人的強さを誇っていた。
だが、そんな卑怯なやり口かつ裏方的立ち位置も相まってか日本での人気は全くない。というより、日本のメディアではほとんど紹介されたことがない極めてマイナーなキャラクターだ。彼のヘンなところは自分で戦うタイプではないというところだ。他のヴィランに情報を流すことがメインのキャラクターは正直なところ必要ないのではとされ、結果的に自分でも戦うようになった。
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