プラスチック解体高校(日本橋ヨヲコ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『プラスチック解体高校』とは、日本橋ヨヲコによる漫画作品。『週刊ヤングマガジン』にて、1997年第39号から1998年第19号まで連載された。全2巻。
名門進学校・大段高校の特別進学クラスに入学した主人公とその仲間たちが、担任の教師や生徒会との対立、人間関係の難しさなどに悩む青春ストーリー。
作者初の連載作品だった。

「どうせならトコトンカッコつけろや 見せろよガリ勉の余裕っぷり」

三成がテスト中倒れたことになり再テストをすることになった特別進学クラス。
しかしその際、一誠が「ある程度の点数を取れない奴は普通クラスに落としましょう」と提案したことにより、84点以上取らなければならなくなる。
その際にクラスメイトの不満が噴出し三成に向けられるのを、直視が一喝するセリフ。
普段は勉強ができることを得意げになっているくせに、いざ自分が普通クラスに落ちるかもしれないとなると人に責任を押し付けようとするクラスメイトに苛立ちを感じたゆえのセリフだが、これがクラスメイト一同を奮い立たせる喝となる。

「…ところで生徒へのさし入れは禁止のはずだが?」

再テストで良い点を取るために三成たちが発案した放課後の勉強会に、副担任の板橋が差し入れを持って教室を覗き込んでいたら、その後ろから一誠に声をかけられる。
一誠は幾らかお金を板橋に渡し、差し入れを増やすように支持する。
一誠は一見非道な人間に見えるが、実は頑張っている人間にはきちんと評価をする性格だと言うことを示すエピソード。

「俺もやり直せるなら古屋さんから生まれたいぐらいだよ」

田岡に襲われた直視を解放した三成が言ったセリフ。
直視から生まれれば無条件に直視に愛してもらえると思って言ったセリフで、それだけ三成のなかで直視の存在が大きいことを表している。
自分自身はどうでもいい、と投げやりに思っていた直視だが、母性を人から感じられることにより、三成に好意を持つようになるきっかけのセリフ。

「お前は俺の弟だ できないわけがないだろう」

電車待ちをしている最中一誠が三成に言ったセリフ。
「数学満点とれると思わなかった」と話しかけた三成に、一誠が返した初めての肯定的なセリフで、三成はその言葉を照れながらも喜ぶ。
一誠が今まで自分に冷たくしていたのは、ただ自分を嫌っていたからではないことに気づく。
しかしこの直後一誠は電車に轢かれて死亡してしまい、三成はコンプレックスの対象を失い茫然自失となる。

「あんたもう一人じゃないよ」

兄の背中を追い続けたが、その目標がなくなり、呆然としていた三成。
もう高校にいる意味もなく、しかし「認めてもらった」という嬉しさから、堂々と自主退学することになる。
その三成を追いすがる直視が「またひとりぼっちになっちゃう」と言ったことにたいしてのサキたちのセリフ。
初めは距離を置いていたクラスメイトたちが、どんどん直視たちと仲良くなり今は仲間と言っても過言ではない状況で、直視は自分らしく振舞っても逃げないでいてくれる友人を手に入れたことを表している。

「上手くなったろ?」

教師になって再会した直視と三成。
桜の舞う中三成は突然直視にキスをし、このセリフを言う。
三成と直視の出会いは入学式の前で、やはり桜が舞っていた。
その入学直前のエピソードを伏線とし、「キス事件」のあと、三成が直視へ恋愛感情を抱いたり母性を感じたりするようになり、兄に対してのコンプレックスを乗り越えたことを示す見事なラスト。

『プラスチック解体高校』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

実は繋がっている!日本橋ヨヲコの構築する世界

日本橋ヨヲコの作品は「極東学園天国」以外はどれも同じ世界の作品とされている。
デビュー作の「ノイズキャンセラー」の主人公・板橋がこの「プラスチック解体高校」では大段高校特別進学クラスの副担任になっているように、主人公の三成は「G戦場ヘブンズドア」という作品では主人公たちの担任教師になっている。
どの作品を読んでも繋がっているこの世界に、日本橋は箱庭を構築するように愛を注いでいるのがわかる。

町田都のデビュー作は学園ものだった

この後に執筆された「G戦場ヘブンズドア」にて、主人公・町蔵の師匠として町田都は登場する。
その時すでに漫画家としては大成しており、町蔵に「多少失敗しても自分の漫画は変わらないから安心して失敗しろ」と言うほどスタイルを確立させている。
その都のデビュー作が、この「プラスチック解体高校」である。
物語のラストで「こういう漫画を描く」と都が鉄甲に話すシーンがあり、それが自分たちの高校時代とかぶることを鉄甲は指摘する。
つまりこの作品は都たちの実体験であり、都のデビュー作の内容だということがわかるのである。

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