ぼくんち(西原理恵子)のネタバレ解説・考察まとめ

1995年から1998年に『ビッグコミックスピリッツ』にて連載された西原理恵子の代表作。第43回文藝春秋漫画賞を受賞。田舎町を舞台に、母親が出て行った3人姉弟の生活を描く。キャッチフレーズは「シアワセって、どこにある?」。2003年に観月ありさ主演で映画化され、2010年と2016年には舞台化された。

一太が独り立ちを決意するシーン

一太はこういちくんと出会ってから、自分がかの子に養われるままなのに疑問をずっと抱いていた。
自分がねえちゃんを守りたいのにそれができない、という葛藤に悩まされていて、ある日意を決して独り立ちする。

「人は一人では生きられない。」

こういちくんの「大好きな人」は自分の姉さん。
ある日つらい仕事をしたあと、こういちくんは姉さんに甘える。
姉さんは「じゃあねえちゃんが許してあげる」と言い、こういちくんを許して受け入れる。
こういちくんほど強くて恐れられている人間でも、誰かに認めて許してもらわなければ生きていけない。
それを見た一太は、「人は一人では生きられない」というのを実感する。

「ううん、今まで寝たなかで、多分最高の男」

一太はある日、かの子に似合いそうな靴を見つけ、それを盗み出す。
かの子に靴をプレゼントするが、かの子の同僚はそれをプレゼントしたのが弟だと知らず、バカにしようとする。
それをかの子はこのセリフでかわし、あっけにとらせる。
一緒に寝たことがあるのは嘘ではないし、かの子は一太を頼もしく思っているので「最高の男」というのも間違っていない。
おそらく盗んできたものだろうということはわかっているが、それでも自分のために何かをしてくれる一太をかの子は自慢に思っていることが伺える。

一太の失恋シーン

一太はある日、あけっぴろげな女の子と出会う。
その子は笑美と名乗り、一太と一緒に日々を過ごす。
しかし彼女はある日病院に搬送され、一太はベッドに横たわる彼女の名札に見覚えがないことを噛み締めながら、「自分は彼女のことを何も知らなかったのだ、失恋したのだ」と実感する。
こういちくんはシーツにくるまって笑美になりきり、一太が言いたかったが言えなかったことを言わせて慰める。

「わし、この目ぇ、生まれてから50年きたないもんしか見てないんですわ。やから子供にはきれえなもん見せとうて。またどっか、そうゆうとこさがしますわ。」

一太は仕事(こういちくんの商売の手伝い)をしている最中、昔の自分に似た子供たちを見つける。
その子たちに仕事を手伝わせようとすると、子供の父親だと名乗る男が「仕事ならなんでもします!!!」と食いついてくる。
男は「末吉」と名乗り、末吉の子供たちはなんと末吉のタネではない可能性の方が高いという。
しかし、末吉は子供たちを捨てずに育てる。
ある日末吉の家に火がつけられ、末吉一家は引っ越すことになる。
その時一太に末吉が言ったセリフがこれで、末吉の優しさが出ているセリフでもある。

かの子の小さな頃の回想

一太と二太がかあちゃんを待っていた家(すでに抵当に入っていて今は住んでいない)で、一太と二太がうんと小さい時に、かの子とかあちゃんととうちゃんで住んでいたことがあるとかの子は言い出す。
一太と二太にはその記憶はない。
かの子はその時が一番幸せだったといい、「幸せはある日突然見つかるから嬉しい」という自説を二太に展開する。
この後一太は二太からこの話を聞いて、涙する。
バラバラに見える家族でも、一緒だった頃があるという胸が締め付けられるようなエピソード。

こういちくんに家族ができるシーン

こういちくんの姉さんは、ある日突然病気で亡くなった。
こういちくんは姉さんが苦しんでいるのにも気づかなかったことに深く落ち込む。
そのちょっと前からこういちくんの家に住み着いていた女の子「まりあ」は、こういちくんに、「あんたの姉さんは娼婦だったから、娼婦に捨てられた子供を引き取ろう」と提案する。
そういう子供を見つけて、こういちくんは抱きしめながら「さみしかったかい?」と聞く。
この日からまりあは正式にこういちくんの妻になり、娼婦の子供はこういちくんの子供になった。

「ああ おれは、おやじに捨てられたんじゃなかったんだ」

昔住んでいた家の屋根裏から、すでに残高が0になった通帳が出てきた。
それには一太の父親だと思われる男の名前で毎月送金があり、一太は初めて父親に捨てられたわけじゃないことを知る。
ずっと「捨てられた」と思い込んでいた一太への救済の話で、一太は今までひねていた自分を反省することになる転機でもある。

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