ぼくんち(西原理恵子)のネタバレ解説・考察まとめ

1995年から1998年に『ビッグコミックスピリッツ』にて連載された西原理恵子の代表作。第43回文藝春秋漫画賞を受賞。田舎町を舞台に、母親が出て行った3人姉弟の生活を描く。キャッチフレーズは「シアワセって、どこにある?」。2003年に観月ありさ主演で映画化され、2010年と2016年には舞台化された。

『ぼくんち』の概要

1995年から1998年に小学館『ビッグコミックスピリッツ』にて連載され、単行本は全3巻。
第43回文藝春秋漫画賞を受賞し、2003年に観月ありさ、矢本悠馬、田中優貴主演で映画化。
2010年には舞台化され、2016年に再演された。
高知県高知市沿岸部の浦戸地区をモデルとした町で、母親に捨てられた3人姉弟の生活を描いている叙情作品。
「ぼくんち」がある町は、住民のほとんどが貧しく、山と海しかない田舎町である。
男は成長すると町を捨て、女は色々なものを抱えて生きる。
子供の半分は非行に走り、もう半分は大人になるまでに死ぬと言われるほど過酷な町だが、山の上には富裕層が住む一帯がある。
田舎町といっても、競艇場や新幹線の駅もある。

『ぼくんち』のあらすじ・ストーリー

二太は兄の一太とともに、三年前に買い物に行ったっきり帰ってこない母親を待ち続けていた。
その母親はひょっこり帰ってくると、「今まであんたらのお姉ちゃんを買いに行ってた」と、姉であるかの子を連れてくる。
かの子は優しく、二太と一太に親切に接してくれる。
しかしすぐに母親はまた男を作って家でし、三人での暮らしが始まる。
二太は鉄じいという、金属ならなんでも買い取ってくれるおじいさんと過ごしたり、さおりちゃんという、お父さんに虐待されながらもそれを「どうしようもないおとうちゃんや」と困ったような笑顔で世話する女の子に恋をしたりしてひねくれず育つ。
「ぼくんち」のある町は子供の半分が非行に走り、もう半分は死ぬと言われるほど犯罪が身近な場所。
その中でもこういちくんという、トルエン販売や車のガソリンを抜いて別のところに売る「商売」をしている不良に、一太は憧れて弟子入りする。
母親は家を抵当に入れ、完全に3人を捨てる。
かの子は愛人をすることにより二太と一太を養っていくが、一太は早く大人になりたいと願い、かの子が住まいとして愛人に用意してもらったマンションを飛び出る。
かの子は一太の帰りを待ち続けるが、一太の目的が過去に家族で暮らし、母親が抵当に入れた家を買い戻すことであるのを知り、その家で姉弟3人で鍋をした後に、火を放つ。
一太はその時、かの子より自分が身長が伸びていることに気づき、自分がただ「家を買い戻したい」「家族を守りたい」と意地を張っていたことは意味がなかったのだと知る。
そして一太は別の土地でやっていこうと町を出て、おでん屋さんとなる。
しかし一太からの連絡は途絶え、かの子は二太を養いきれなくなる。
二太はかの子に言い含められ、遠い土地で親戚のおじいさんに引き取られて暮らすことになる。
二太は漁船に乗り、町が遠ざかっていくのを見ながら、「こういうときは笑うんや」と言う。
それは過去にかの子が、二太が辛いことがあって泣いているときに言った言葉でもあった。

『ぼくんち』の登場人物・キャラクター

一太

「ぼくんち」の長男。
二太のことを常に気にかけ、なんとかまともに育って欲しいと願っている。
かの子に甘えたいがプライドが邪魔しておおっぴらに甘えることができない。
のちにこういちくんに弟子入りし、遺体処理やトルエン販売などの汚れ仕事をするが、心根が優しいこともあり、それに葛藤する様子が描かれている。

二太

「ぼくんち」の次男。
物事に偏見を持たず、犯罪者などとも親しく付き合う。
その性格を一太は好ましく思っているが、同時に心配もしている。

かの子

「ぼくんち」の長女。
ピンサロで働いている。
兄弟二人をとても大切にしていて、男の愛人になってまで二人を養おうとする。

かあちゃん(今日子)

男を作っては家出する「ぼくんち」の母親。
かの子を捨てた後一太と二太と暮らすようになり、「買い物に行ってくる」と言ったのち3年も帰ってこなかった。
帰って来たときにかの子を連れていて、「あんたらのお姉ちゃんを買いに行ってた」とうそぶく。
物語のかなり早い段階で姉弟を捨てる。

こういちくん

町で一番の不良だが、それは「商売」を行う上でついた呼称。
自分をそっくりにして色っぽくしたような姉がおり、とても大切にしている。
トルエンの小売りや宅配注射器販売、暴力ホテトルなどを経営していたが、姉の死をきっかけに商売を一太に譲り、道楽漁師となる。

こういちくんの姉

暴力ホテトルをしている。
暴力ホテトルとは、チェンジできない状態に追いこんで行為をせずに客から金をむしるホテトル。
将来の夢は「南の島に住んで自給自足の生活をする」こと。

さおりちゃん

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