かくかくしかじか(東村アキコ)のネタバレ解説・考察まとめ
『かくかくしかじか』とは、『Cocohana』にて2012年~2015年に連載された東村アキコによる自伝漫画である。幼い頃から漫画家を夢見るお調子者で夢想的な少女・アキコは、美大受験に備えて通い始めた絵画教室で一風変わった講師・日高と出会う。絵画一筋の情熱を貫き独特の人生観を持つ彼に様々な影響を受けながら、アキコが高校生活、大学受験、OL時代を経て漫画家としての人生に至るまでが描かれている。
佐藤/はるな檸檬
アキコが日高の絵画教室でアルバイト講師をしていたときの生徒。地方大学の美術学科に合格するも、卒業後は就職がなく漫画家としてデビューしていたアキコのアシスタントとして活動し始める。後に「はるな檸檬」として漫画家デビューする。「日高先生のことは描かないんですか」とアキコが本作品を描くきっかけとなる示唆を行った人物でもある。
『かくかくしかじか』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
日高との出会いのシーン
美大受験を控えたアキコが二見に紹介され通うことにした絵画教室で講師である日高にはじめて絵を見てもらったシーン。
アキコの中ではそれなりに自信のあったデッサン絵を、ほぼ初対面にもかかわらず酷評しまくる日高。後に人生の恩師となりアキコにとって多大な影響を与える存在になるが、初対面では最悪だった印象の日高との強烈すぎる出会いのシーンである。
「ただ描けばいいんや、目の前にあるものを」
二人で個展をすることを持ちかけられたアキコが「今描きたいものがないから」と断ろうとしたとき、日高が返した言葉。
絵描きにとどまらず、何か一歩が踏み出せない人間にいつも付きまとうモチベーションという言い訳。
自意識や他者への見栄えといったハードルをシンプルにクリアする日高のパーソナリティを表したセリフになっている。
病床に伏しながら制作を続ける日高
病におかされ弱々しく咳き込みながらもキャンパスに向かう日高の背中をアキコが見つめるシーン。
かつての力強い姿とは裏腹に、薄くなってしまった日高の背中。けれどキャンパスに向かい作品を描き続ける姿勢だけは全く変わっていなかった。
「ただ描く」という作中のテーマを最後まで体現する日高の、本作のクライマックスのシーンの一つとなっている。
日高の最期の言葉
スランプに陥り絵が描けなくなってしまった今田に、死の直前でほとんど声も出ない状態で搾り出すように囁いた日高の言葉。
車椅子で今にも逝きそうな日高の最期のメッセージは「描け」という一言だった。日高の死後、最期までいつもと変わらない叱咤をする日高を今田が回想しながら語る本シーンは、本作屈指の切ないシーンとなっている。
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