彩雲国物語

彩雲国物語のレビュー・評価・感想

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彩雲国物語
8

累計650万部を超えた中華風ファンタジー『彩雲国物語』

『彩雲国物語』は、2003年10月から2011年7月の間に角川ビーンズ文庫から刊行された女性向けライトノベルです。
本編と外伝を合わせると全部で22巻にもなる大作で、挿絵はゲーム・アンジェリークシリーズのキャラクターデザインを担当した由羅カイリ先生が手掛けたことでも話題になりました。

『彩雲国物語』のシリーズ累計発行部数は650万部を超えており、これは女性向けライトノベルの分野ではトップレベルの発行部数だとか。その人気からライトノベルにとどまらず、コミカライズやアニメ化も果たしています。
しかもアニメはNHKでのアニメ化。2006年から2008年の2年の間、ほぼ休みなく放映されました。

(以下『彩雲国物語』のあらすじ・本編のネタバレあります)

『彩雲国物語』の物語の舞台は、架空の中華風の国・彩雲国。
その彩雲国の名門貴族である紅家の直系長姫である紅秀麗が主人公(以下秀麗)秀麗は名門紅家の姓を持ちながら貧乏な生活を送っていましたが、「官吏になりたい」という夢を持っていました。
しかし彩雲国では政治は男性のもので、女性は官吏になるどころか、登用試験を受けることもできない、そんな時代でした。秀麗も一度は夢を諦めます。

ですがある日秀麗はとあることをきっかけに「官吏になりたい」という夢を再び追い始めます。
女性の台頭、活躍を拒否する男社会である政治の世界の中で、秀麗は自分を妬む人々からの嫌がらせや、立ちはだかる様々な困難にもめげずに、ただひたすら夢を追いかけて走り抜けます。

『彩雲国物語』は貧乏貴族であった一人の少女・秀麗の山あり、谷ありの人生を描いた物語です。

『彩雲国物語』の見どころはなんといってもヒロインの秀麗の人間性と、秀麗を助けてくれる周りの人々との関係です。秀麗はまっすぐで、頑張り屋で、夢に向かってがむしゃらに頑張っていき、そんな秀麗を周りの人間も助けます。
しかしただ助けるわけではありません。
無条件に何でも秀麗を助けるのではなく、秀麗が考えて考えて考え抜いたことに手を貸すのです。
ただ甘やかすのではなく、自分で考えるように導き、秀麗が間違ったほうに進んだらあえて失敗を経験させる。
そんな教育的な場面がとても印象的です。

夢を叶えるために何が必要で、どうすればいいのか。
秀麗がそれらを考えて進む姿は、現代社会においても重要視されるようになった思考力に通じるところがあるように感じてとても読んでいて面白いです。
それにまだ少女の秀麗が逆境に立ち向かっていく姿にはなんだか勇気づけられます。

夢をおいかける女性方に是非読んでいただきたい作品です。

彩雲国物語
10

壁にぶつかったときに見てほしい!

物語の世界観は中国調のファンタジー。
女性は政治に参加できない時代。完全な男尊女卑の世界観。その世界の主人公の少女は名家の生まれだが、現在はとても貧しい家。その為、少女はアルバイトを掛け持ちする生活。そんな彼女の夢は国の政治を担う官僚になること。それはこの時代ではかなわない夢。叶わない夢を封印しつつも、子供たちに学業を教えながら彼女は「学ぶこと」を続けていた。その彼女に転機が訪れる。彼女は家柄と才を買われて、貧しい家を救うために金と引き換えに王の妃候補として王宮に行くことになる。本当は官僚として憧れた王宮での生活が始まる。しかし彼女の相手である「王」は国の統治に関心がなく、やる気が無く、妃候補にも関心が無い。いつまで経っても王に会うことさえできない何もすることの無い生活に彼女は痺れを切らしてしまう。そんな彼女は男の子として王宮で官の見習いとして二重生活を始めることとなる。憧れた官としての仕事を始める彼女。ハードな仕事を彼女は持ち前の努力で全てを諦めずにこなしていく。男の子として仮の姿で働く彼女を周りの人間も高く評価していく。そこに女性としての甘えはない。ただ、憧れた官の仕事を出来ることに感謝し、もっと多くのことを学ばなければいけないと学ぶ。そんな彼女は「王」に怒りが芽生える。女性だから諦めるしかない自分が無力な自分には出来ないことを「王様なら出来るのになぜしないのか!」諦めない彼女の姿が周りをどんどん変えていくを是非見てほしい。