リリイ・シュシュのすべて

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リリイ・シュシュのすべて
8

十四歳のリアル。

ネットと現実世界のはざまでもがく14歳の物語。主人公の蓮実雄一役を演じる市原隼人はこの映画がデビュー作。数ある岩井俊二監督作品の中でもかなりセンセーショナルな作品だと思う。テーマはいじめ・売春・レイプ・自殺とあまりにもネガティブである。中学生の多感さは計り知れない。僕自身にとっても絶対に戻りたくない時代。大人でも子供でもないような曖昧さを含んでいる。タバコを吸ったり、初めてのセックスを経験する年代。誰の責任も取れない。主人公の雄一もまた周りの大きな負の流れに巻き込まれながら生活していた。ある意味、必死に。かつて、いじめられっ子だった親友の星野修介を演じたのは忍成修吾。沖縄で死にかけた経験が学年トップの優等生を鬼畜に変えてしまった。なんのために生きているんだろう?そんなの考えている暇はない。とにかく今を楽しむことを優先する。たとえ誰かを深く傷つけたとしても。そんな蓮実と星野にも共通の希望があった。それは謎の歌姫、リリイ・シュシュのライブに行くこと。蓮見が運営するサイト《リリフィリア》の中でだけ自分の存在意義を認めることができる。ネットに、リリイ・シュシュの歌声だけがリアル。エーテルという概念がそれに拍車をかける。リリイを聴きながら田んぼで絶叫する星野。日常などただの暇つぶしに過ぎない。それは最も普遍的な感情であったりする。子供も大人も自分に飽きている。灰色の時代。ニンゲンは飛べない。