リリイ・シュシュのすべて

リリイ・シュシュのすべて

『リリイ・シュシュのすべて』とは、2001年に公開された日本映画。インターネットの掲示板を用いた「誰でも書き込みができる」実験的なインターネット小説を原作としている。インターネット小説が発表されたあと、書籍と映画が制作された。小説の原作者、映画の監督は岩井俊二である。いじめを受けつらい日々を送っていた主人公が、大ファンの女性歌手リリイ・シュシュのファンサイトを運営し、そこで仲間を見つけようとする。市原隼人、忍成修吾 、伊藤歩、蒼井優などが出演している。

mitimiti11のレビュー・評価・感想

リリイ・シュシュのすべて
8

津田詩織について。

原作では星野たちに集団レイプされた久野陽子(伊藤歩)が自殺するが、映画で実際に死んだのは津田詩織(蒼井優)の方だった。結果的にはその方が印象的でよかったと思うが、映画のオーディションで蒼井優を初めて見た監督(岩井俊二)は『今回はこの子に死んでもらおう』と決めたらしい。
津田詩織がなぜ鉄塔から飛び降りて自殺する必要があったのか?それを考えるのもまた、この作品の大きなテーマの一つだと思う。久野陽子は自ら髪型をスキンヘッドにすることで星野にやられたことを抗議した。それを見た津田詩織は心の底からショックを受ける。あの強い久野陽子でさえも星野に屈したのだと。自分が援助交際の仕事で星野に利用されているというのとは比べものにならない。誰一人として星野を止められる人間はいない。自分は助からない。そう絶望する。涙が溢れて止まらない。主人公である蓮見に無理だとわかっていながら救いを求めるフリをする。『頭スキンヘッドにしたら仕事辞められるかな?』蓮見に返事はなかった。蓮見は久野陽子がレイプされている最中に見張り役をしていたのだ。愛するひとを救えなかった。いや、救わなかったが正しいかもしれない。もはや生きている理由さえ疑わしい。そして、津田詩織は飛んだ。『空飛びたい』という言葉を言い残して。