電波と田園。
監督・脚本ともに岩井俊二による問題作。2001年公開。
テーマは中学生のいじめ・援助交際・レイプ・殺人事件など陰湿さを極めた内容。今作で俳優デビューしたのが市原隼人であり、蒼井優である。岩井氏の作品に出演の多い伊藤歩や忍成修吾が脇を固めた。
田園風景を流れるドビュッシーの《月の光》《アラベスク》《亜麻色の髪の乙女》をバックに、物語は淡々と進む。岩井作品の中でも一番と言えるほど映像美は素晴らしい。現実世界とネット上に広がる架空の世界の対比を中心に十四歳のリアルは描かれていく。イメージではビョーク主演のダンサーインザダークに近いかもしれない.リリイ・シュシュというのはsalyuが演じる歌手の名前で、主人公を含めた登場人物の多くがファンでもある。映画に先行して公開されたリリイ・ホリックというネット上の一般参加型の掲示板と岩井氏の書いた小説を交錯させるシステムを取り入れたのは非常に斬新な手法であった。誰もが映画に参加することができるというのだ。今現在もその掲示板は残されている。一見の価値アリ。どんより曇った空を自分の放ったテキスト文字で埋め尽くされるのは楽しかった。あれから約17年もの月日が経過した。僕たちは変われたのだろうか?それを問われる稀な作品である。