いぬやしき / Inuyashiki

『いぬやしき』とは、2014年4号から2017年16号まで『イブニング』(講談社)に連載された、奥浩哉によるSF漫画である。コミックスは全10巻刊行され、累計発行部数は2018年4月時点で310万部を超えた。第9巻では特装版が同時発売され、『週刊少年マガジン』(講談社)で掲載した読み切りがフルカラーで収録された。
物語は宇宙人のせいで機械の体に生まれ変わった冴えないサラリーマンの犬屋敷壱郎(いぬやしきいちろう)と、高校生の獅子神皓(ししがみひろ)の活躍と苦悩を描いている。
テレビアニメは2017年10月から12月まで放送され、犬屋敷壱郎の声を小日向文世、獅子神皓の声を村上虹郎が担当した。また実写映画が2018年4月20日に公開され、犬屋敷役を木梨憲武、獅子神役を佐藤健が演じた。この映画は「第36回ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭」のインターナショナルコンペティション部門でグランプリとなるゴールデン・レイヴン賞を受賞した。

いぬやしき / Inuyashikiのレビュー・評価・感想

いぬやしき / Inuyashiki
9

棒読みと呼ばれているが、それこそが必須だったアニメ

奥浩哉先生原作のアニメ。
放映当時、重要キャラクターである「獅子神晧」の声が棒読みだと大変叩かれた作品でした。しかし、この棒読みこそが必要でした。
獅子神晧というキャラクターは主人公である犬屋敷壱郎と対比させるためか、様々な面で犬屋敷壱郎とは正反対の存在として描かれています。
主人公の犬屋敷は子供二人がいる大変老け込んだ、冴えない中年サラリーマン。獅子神晧は今どきの若者。
犬屋敷は窓際気味で家族からもぞんざいに扱われるような生活でしたが、正義感は強く、弱くとも他人を助けようと考えます。対して獅子神晧はいわゆる陽キャで、自分の周りに対しては優しいが他に関しては不気味なほどに無関心。
この獅子神晧の無関心は、若者にありがちな自己顕示欲に拍車をかけ、いたずらをエスカレートさせ簡単に命を奪うようになります。
この無関心からくる簡単に行われる殺人事件、普通であればアニメだし「あ~、やっちゃったねえ」くらいになるのですが、ここで獅子神晧の棒読みが活きてきます。
人は人と違う存在は違和感を抱きます。簡単に人を殺せるようになってしまう獅子神晧のその棒読みが、感情を一切持たないロボットのような無機質さを生み、周囲の人間には優しいはずの獅子神の二面性を際立たせているのです。
母親が死に、自分を助けてくれた女の子が自分のせいで警察に連れていかれ、獅子神晧は絶望ややり場のない感情を警察や、全く関係のない人々に向け、「バン」「バン」と口で拳銃の音を出しながら大量殺人を行います。
この、獅子神晧の絶望を知りながら聞こえてくる棒読みが、一度は他人に対して感情がないのだろうと思わされた視聴者に、「その感情を持っていたならなぜ今まで出さなかったのか」とやるせなさを覚えさせます。
物語自体ははこの犬屋敷壱郎と獅子神晧の対決で終わるのかと思いきや、想像外の展開に発展します。是非見てほしいと思います。

いぬやしき / Inuyashiki
7

冴えない親父がヒーロー

その辺の、どこにでもいる、冴えない親父が最後に人類を守るスーパーヒーローに。
悪人として登場する少年も、最後には人の役に立とうとする物語です。
タイトルだけを見て「犬の屋敷?」と勘違いしてしまったのは自分だけでしょうか。
「いぬやしき」は主人公、犬屋敷壱郎の苗字でした。
この主人公、会社でも家庭でも誰にも相手にされない透明人間みたいなうえに、病まで患って落ち込んでいたところで事故に巻き込まれある意味、死んで生き返るのですが、この生き返って手に入れた身体が未知のテクノロジーの塊でありいろいろな事が出来てしまう。
例えば、不治の病を治してしまったり。それを全て世の為、人のために役立てようとするのですが、善があれば悪もあり。
同じように未知のテクノロジーの身体を手に入れた少年が、自分勝手に好き放題やらかすもんだからもう大変。
気に入らなければ躊躇なしに人を殺してしまうもんだから、ヒーローの登場ということで大バトルが始まります。
そして何とか勝ってやれやれのところに、今度は地球人類の危機がやってきます。
そんな最後は善と悪が手を組んで人類の危機を救おうとするのですが…。
とにかくヒーローが親父で悪が少年の、感動アクション物語です。

いぬやしき / Inuyashiki
8

相反する

『いぬやしき』は、あの有名な漫画『GANTZ』を手掛けた作者の作品です。
内容は、冴えないサラリーマン「犬屋敷壱郎」と高校生の「獅子神皓」が、ある日、同じ時間に2人が偶然いた公園に突然UFOが落ちてきた事故に巻き込まれます。その2人は、体がメカに改造され超人的な力を手にします。そして、2人の視点で物語が進んでいき、徐々にお互いの存在に気づくようになっていきます。

最も注目してほしい部分は、犬屋敷は善のために、その力を行使することに喜びを感じ、獅子神は悪のために、利用することに喜びを感じる点です。
犬屋敷は圧倒的悪をさらに圧倒的な力でねじ伏せるので、見ててスカッとします。例えば、悪ガキの軍団に殺されそうになってるホームレスを救うために、悪ガキ軍団の悪事を動画配信で晒すなどして、成敗します。また、さらわれた1人の女性を助けるために、ヤクザのアジトにも乗り込んで無双します。あとは、人の病気を治せることも魅力的です。
獅子神は、とにかく殺人を犯していきます。例えば、友達をいじめる学校の人や、全く罪のない家族など、結構ひどいことをします。獅子神は指名手配されるのですが、警察など全く意にも介さないほどの力で返り討ちにします。しかし、自分が指名手配されたことで、実の母が自殺してしまい、獅子神の行動はさらに加速していきます。でも獅子神自身の葛藤が残酷に描かれているので、こちらにまで感情が伝わってきます。

先程も述べたように全く違う2人の物語が交錯していき、最終的には2人が出会うのですが、さて、そこでは何が起こるのでしょう。
『いぬやしき』は全体的にスカッと感じる場面が多いですが、残酷なシーンも混ざっているので、あまりサイコパス的なシーンが苦手な方にはおすすめしないです。
でも、テレビアニメは全11話で、結構気軽に見ることができるので、ぜひまだ見ていない方は一度でも見てほしい作品です。

いぬやしき / Inuyashiki
10

新宿、見知った街が弾けていく衝撃

佐藤信介監督は「GANTZ」や「図書館戦争シリーズ」、「アイアムアヒーロー」などでスピード感あふれるアクションを多々撮っている人です。
今回はひょんなことから宇宙人に身体を改造されてしまった高校生・獅子神(佐藤健)と、ガンを宣告された余命いくばくもない初老の男”犬屋敷(木梨憲武)”の二人が人類の存亡をかけて、そして家族の命を懸けて壮絶なバトルを繰り広げる、という物語です。
アクションが展開される舞台は東京、新宿ですが、見知った街が尋常でない力で破壊されていくシーンは、もしそこに自分がいたら、と思うと怖さが倍増します。
普通の、日常の空間が壊れる怖さとでも言いましょうか。
世の中のあらゆる不幸を背負い、存在そのものが人類の中の異物のようになってしまった獅子神と、彼の行いを止めて、娘の命を守ろうとする父親としての犬屋敷の攻防戦は、木梨憲武さんの見事な老けメイクとメカニカルな体の融合というギャップによってむしろリアルさを増していくのです。
この作品で不思議な魅力を放っていたのが獅子神を助ける少女を演じた二階堂ふみさんでした。
どちらかというと存在感の濃いイメージの女優さんでしたが。
この作品の中では見事にそのオーラを消して、普通の女子高生、でも結構苦労している女の子、というイメージを作り上げていて、最初は彼女とは気づかないほどの変貌ぶりでした。それだけでも一見の価値あり、です。

いぬやしき / Inuyashiki
9

知ってる街が吹っ飛んでる…!

生身で空を飛ぶとこんな感じなのかなー、というシーンがたくさん出てきます。
宇宙人によって機械の体に変えられてしまったのが初老の男(犬屋敷)と少年(獅子神)でしたが、彼らはその体と凄まじい力を得たものの、それぞれの思いから真逆な方向に進んでいってしまいます。守るものと壊すもの。ことに獅子神の悲しみ、絶望は大量殺りくへと向けられてしまい、そんな彼を思うがゆえに助け、そしてかばって哀しい結末を迎える同級生を二階堂ふみさんが演じています。
最初、彼女とはわかりませんでした。それほど地味で、オーラを消した状態のお芝居を見せてくれていましたが、獅子神と空を飛ぶ時の絶叫で「あ!」とわかる感じ。シアワセとは言い切れなかった彼女の小さな恋は、獅子神のちいさなやすらぎになれたのかどうか…本編で、そのシーンは最も切なく、悲しいものとなっていました。
さて、機械の体を使ってフルパワーで暴れまわる獅子神と、それを押しとどめようとするいぬやしきですが。その対決シーンは新宿の街をぼこぼこに吹き飛ばしています。ヘリコプターを吹き飛ばすアクションの凄まじさは佐藤信介監督ならではのお得意分野だけあって、凄まじい迫力とカメラワークでした。

いぬやしき / Inuyashiki
9

タイトルなし

コミックで人気の作品を映画で観ました。木梨憲武さんのサエないお父さん役の演技が素晴らしかったです。
ミスばかりするサラリーマンの主人公は病気になり、家族に連絡するにも誰からも相手にされず、このままの人生でいいのか考えていました。ある日、このサラリーマンと、長女のクラスメイトの同級生男子が同じ場所で突然の事故にあい、不思議な体に変化しました。
クラスメイトの男子役が「るろうに剣心」の佐藤健さんで、高校生役にしては違和感のない演技力で魅力的でした。
家族や地球の人類を守り、命を救う決心をしたサラリーマンと、人類を滅亡させる憎しみを持った高校生の対決。お二人の演技力もが素晴らしかったですが、それ以上にCG効果・音響や迫力あるシーンが圧巻でした。上空を飛びまわったり、ピストルがなくても人を撃てる不思議な手、そして頭や腕も機械のように変形する姿が笑えました。
都心を次々に殺す高校生に対し、立ち向かおうとするサラリーマン、佐藤健君の方が個人的に好きな俳優さんですが、平和を守り続けようとするお父さん役の木梨憲武さんを応援してしまいました。力の差がありましたが、結果的にはサエないサラリーマンの勝利で終わりました。平和を取り戻しましたが、続編がでる事を楽しみにしたいです。

いぬやしき / Inuyashiki
7

ちょっと悲しい、そして怖い

名前だけは聞いたことがあったのですが、内容は良く知りませんでした。ネットで読んだのですが、最初は結構辛いな~と感じました。
4人家族の戌屋敷家。父親はまだ50代なのに、見た目は70代くらいに感じます。それだけ苦労しているということなんでしょうね…。
奥さんはパートで働いていて、高校生の娘と中学生の息子がいるようです。ある日、戌屋敷家は引っ越しを決意。念願の一戸建てです。しかし、隣に大きな家が建ち、日中は全然日が当たらないという物件でした。それでも念願のマイホームということで、父親は満足しています。ただ、やっぱり他の家族はテンションが下がってます。

とにかくお父さんが可哀そうすぎて、読むのがちょっと辛いなと感じました。一人で牛丼食べたり、柴犬のはな子をペットとして飼っても、家族はうるさいとかしつけができていないと文句ばかり。こういう家って普通なのでしょうか。お父さんの肩身狭すぎです!そんなある日、お父さんにガンが発覚!誰も悲しんでくれないのかなと思ったら、泣けてきます。公園で犬のはな子と二人でいたら、上から何かが落ちてきます。それは宇宙船で、この事故がきっかけで、お父さんの体はアンドロイドになってしまうのでした。人間の体が割れてメカニックな部分が出て来たりと怖いです。
気持ち悪い部分もあるのですが、それまで勇気が出ず言い返したり、人を助けるということもできなかったお父さんが変わっていきます。
今後の展開も気になりますし、もう一人アンドロイド化された青年がいるので、その人も今後どうなっていくのかが気になります。