君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heron

君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heron

『君たちはどう生きるか』とは、義母を救うために不可思議な世界を旅する少年の姿を描いた、宮崎駿によるアニメ映画。宮崎が「これで本当に最後」と明言して制作した作品で、宣伝も無く、公式HPも無く、一切情報を隠したまま公開されるという独特の手法で話題となった。
太平洋戦争が激化する最中、牧眞人は父と共に郊外へ引っ越し、そこで叔母で新たに自身の義母となるナツコと再会。どう接すればいいのか互いに戸惑う中、ナツコはいずこかへと姿を消し、眞人は彼女を連れ戻すために謎のアオサギに導かれて異界へと旅立っていく。

君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heronのレビュー・評価・感想

君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heron
8

心の旅路を描いた壮大なファンタジー

「君たちはどう生きるか」は、現代社会に生きる私たちが直面する問いに対する答えを探すための映画です。宮崎駿監督の作品で、彼の独特の視点と世界観が存分に表現されています。本作は、原作の精神を受け継ぎつつも、現代の観客に向けてアレンジが加えられた作品であり、そのメッセージ性とビジュアルの美しさは見る者の心に深く響きます。

物語の中心にいるのは、主人公の少年・将吾です。彼は戦争を背景にした時代に生きる少年であり、祖母との別れを通じて成長していく姿が描かれています。将吾は祖母から受け取った青い石を手に、奇妙な異世界へと引き込まれていきます。異世界での冒険を通じて彼は自分自身の内面と向き合い、自らの存在意義や生き方について考えるようになります。

この映画は、宮崎監督が得意とする幻想的な世界観と、深い哲学的テーマが見事に融合しています。特に、異世界の描写は圧巻で、細部に至るまで丁寧に描かれたビジュアルが、観る者をその世界へと引き込んでいきます。また、登場するキャラクターたちもそれぞれ個性的で、特に将吾が出会う異世界の住人たちは、どこか不気味でありながらも魅力的です。

映画のテーマは、成長と自己発見、そして人間関係における葛藤です。将吾が異世界での冒険を通じて学ぶことは、単なる自己啓発にとどまらず、より広い視野での「生きる意味」を探求することです。彼の旅路は、観る者自身にも問いかけを行い、自らの人生においてどのように生きるべきかを考えさせられます。

一方で、この映画には少々難解な部分もあります。物語の展開が時折抽象的であり、象徴的なシーンが多く、解釈が難しい場面も存在します。特に、異世界での出来事が現実との接点を持たないため、一部の観客にとっては理解が難しいかもしれません。また、全体的なテンポがやや遅く、冗長に感じる場面もあり、観る者の集中力が試される瞬間もあります。

それでもなお、「君たちはどう生きるか」は、宮崎監督の豊かな想像力と哲学的な探求が結晶化した作品として、観る価値のある映画です。私たちが日々の生活の中で直面する問題や疑問に対して、この映画はひとつの答えを示してくれます。そして、その答えは決して単純ではなく、観る者自身が考え、感じ、そして成長するための手助けとなるでしょう。

君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heron
4

今でもジブリ作品が好きですが…

古くは『未来少年コナン』や『パンダコパンダ』、『アルプスの少女ハイジ』など様々な作品を歴代の監督が、素晴らしい形で世に送り出してきました。ジブリとの出会いは『風の谷のナウシカ』から作品から始まりましたが、初めて見た時にとても心に、多くの驚きを感じた方は多かったのではないでしょうか。
それぞれの作品で練り上げられた話、視聴する方に対して伝えたいことに全力を挙げて取り組まれ、アニメーションを通して世の中に問いかけるような問題提起もしてきてくれました。
今でこそ、アニメーションスタジオで有名な会社も多くありますが、現代日本のアニメーションを牽引してきたジブリという会社の影響力は大きかったと思います。それぞれ作品に触れた世代ごとに思い入れのある作品は存在すると思いますし、賛否が分かれる事も、それだけ期待値が高い現れだと思います。
今回の『君たちはどう生きるか』も公開後に見させて頂きましたが、息を吞むような素晴らしい映像表現がある一方で、いまいち物語に入り込めない、何を伝えたいのか掴みきれない、ワクワク感を感じないまま終わってしまったという体験をしました。思い描いていた内容と違いはあれど、やはりジブリの存在感はあったと思います。それでも監督には、多くの作品でかけがえのない感動とロマンを頂きました。ジブリと共に駆け抜けさせて頂いた日々は、これからも心に残り続けます。夢を与え続けてくださり、ありがとうございましたとお伝えしたいです。

君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heron
9

宮崎駿の叡智と技術の結晶!成長と想像力の壮大な物語

宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』は、長年のファンを魅了してきた監督の集大成とも言える作品です。本作は、吉野源三郎の同名小説をもとに、監督独自の世界観と哲学を織り交ぜた壮大な物語を紡ぎ出しています。

物語の中心となるのは、主人公の少年・真人(まひと)です。彼は母を亡くし、叔父の元で生活を始めますが、そこで不思議な出来事に遭遇します。鳩たちが人間の姿で現れる幻想的な世界に引き込まれた真人は、自身の成長と向き合いながら、人間とは何か、生きるとはどういうことかを探求していきます。

本作の魅力は、何と言っても宮崎駿監督特有の細密な映像美にあります。鳩たちの世界は驚くほど繊細かつ壮大に描かれ、観る者を幻想的な雰囲気に引き込みます。特に、空を飛ぶシーンの描写は圧巻で、宮崎作品の真骨頂とも言える「飛ぶ」ことへの憧れが存分に表現されています。

ストーリーラインは、一見すると複雑で難解に感じられるかもしれません。しかし、真人の成長と、彼を取り巻く世界の変化が結びつき、観る者に深い感動と思索をもたらします。特に、人間と自然の関係性、生命の尊さ、そして成長に伴う責任と選択の重要性といったテーマは、宮崎駿監督の作品に一貫して流れる思想を色濃く反映しています。

キャラクターの描写も秀逸。真人の心の機微や、彼を支える周囲の大人たちの姿が丁寧に描かれており、それぞれのキャラクターに深みを与えています。特に、真人と叔父の関係性の変化は、本作の重要な軸となっており、両者の成長を通じて家族の絆の大切さを訴えかけています。

音楽面では、久石譲による珠玉の楽曲が物語を彩ります。繊細かつ壮大な音楽は、映像と完璧に調和し、観る者の感情を揺さぶります。

また本作の制作には、かつてスタジオジブリで活躍し、その後独立していったアニメーターたちが再結集しています。例えば、『新世紀エヴァンゲリオン』で知られる庵野秀明をはじめとする才能豊かなクリエイターたちが、制作に携わっています。この事実は、本作が単に宮崎駿個人の集大成というだけでなく、日本のアニメーション界全体の叡智と技術の結晶であるとも言えるでしょう。

『君たちはどう生きるか』は、単なるファンタジー作品ではありません。人生の意味を問い、成長の過程で直面する困難と向き合う勇気を与えてくれる作品です。アメリカ映画界で最高の栄誉とされるアカデミー賞(長編アニメーション賞)を受賞した今作は、宮崎駿監督のキャリアを締めくくるにふさわしい、芸術性と娯楽性を高次元で融合させた傑作と言えるでしょう。

君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heron
6

たぶんこれは監督さんの思い出の昇華

レビューを観ると、「感動した」等の高評価と「難解」等の低評価にパックリ分かれています。そりゃ、そうでしょうねと、作品を観た後に思いました。確かに難解です。でも、「風の谷のナウシカ」とか「魔女の宅急便」みたいに観る人誰にでも腑に落ちるようなストーリーを、そもそも求めていないような作りである気がしました。
おそらく監督さんの幼少期の実体験が基になったんだろうなぁと思うと、これは、監督さんがお母様の死を「単純な戦争に巻き込まれた無駄死に」としてとらえたくなかった、という強い意思を感じました。「空襲で焼けて死んだ」のではなく、「何か、世界の大きな使命を持って異世界に旅立った」のだとしたら、その死は大きく意味を持ち、決して無駄でなく誇らしい。そういう風に、お母様の死を価値あるものにしたいという、母への強い愛情と思慕の作品であるように感じました。なので、いわゆる「難解」とされる展開は、お母様の死を意味付けするためだけの、いわゆる「不思議の国のアリス」のような脚色でしかない。作品を通じて、「母の死は無駄ではなかった!」「この死は必然であった!」「父の再婚もまた必然であった!」という叫びを聞いているような作品だと思いました。
ですが、色々小難しい面を差し引いても、やはり、宮崎作品。人の動きやストーリー展開の躍動感は、やはり他の人には出せない味です。この疾走感・躍動感を味わうだけでも、映画館に足を運んで良かったなと、思わせます。

君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heron
7

ジブリの素晴らしさがぎゅっと詰まった、美しくて、でも少し不気味で難解な作品

ジブリファン、宮崎駿作品のファンであれば、絶対に見るべき作品である。というのも、作中には、過去作品へのオマージュと思えるシーンがいくつも存在しているのだ。「となりのトトロ」を思わせる草むらの表現、「崖の上のポニョ」を彷彿とさせる水のダイナミックさ、おいしそうな食べ物の描き方など、「あれ知ってる!」「この感じどこかで見た事ある!」とジブリファンがワクワクするシーンがいくつもちりばめられているのだ。
しかしながら、ストーリーの難解さは否定できない。冒頭のシーンは、圧巻の火の表現から始まる。この“火”は、過去のジブリアニメ作品では見た事のない迫力ある、注目すべきシーンといえる。一体どんなストーリーが展開されるのだろうと、ぐっと身を乗り出してスクリーンに見入るのだが、ここからしばらく静かな展開が続く。足音などの効果音をあえて響かせるような、主人公の悲しいやるせない心持ちに寄り添うような静かな運びと油断していると、アオサギや老婆たち、ワラワラや人間を食らうインコなど可愛いのか怖いのかわからない独特なキャラクターが押し寄せ、ストーリーを理解しようと泡を食っていると映画に乗り遅れてしまう。
宮崎駿作品にかつて感動した事のある人は、彼が“描きたいように描いた”この世界観を1度は味わうべきではないだろうか。

君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heron
9

心に響く生き方への問いかけ

映画「君たちはどう生きるか」は、人生の選択と成長を描いた感動的な物語です。最大の特徴は、主人公の少年が直面する人生の課題と、それに対する成長の過程がじっくりと描かれていること。彼は家族や友人、社会との関わりの中で自分自身と向き合い成長していきます。
この映画を通じて、私たちは人生の難しさと美しさを感じることができます。また、困難に立ち向かう勇気と、自分自身を受け入れる大切さを教えられるのです。映画を見て、自分自身の人生について考え、何が本当に大切なのかを再認識する機会を得るだけでなく、人生の多様性と可能性を感じ取ることができるでしょう。

スタジオジブリは、感動的な物語と美しいアニメーションで世界中にファンを持つ日本のアニメーションスタジオです。「君たちはどう生きるか」では、ジブリ独特の芸術性と深い人間ドラマが見事に融合しています。インターネット上でも高い関心を集め、人間の成長と選択をテーマにしたストーリーは、世代を超えて多くの人々に共感を呼んでいます。

「君たちはどう生きるか」は、人生の意味を深く掘り下げた傑作です。この映画は、見る者それぞれに異なるメッセージを投げかけ、多くの人々に深い感動を与えています。人生の選択と成長について考える貴重な機会を提供するこの作品は、誰もが1度は観るべき映画。もしまだ観ていない方は、ぜひこの映画を体験してみてください。きっと、あなたの心に残る作品となるはずです。

君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heron
6

見返したい作品

映画館で鑑賞しました。さすがジブリなだけあって、映像が非常に綺麗で見入ってしまいました。
最初は「主人公の孤独感」や「家族に対して言葉にできない思い」を、少しづつ時間をかけて家族との信頼関係を築いていく中で「言葉」として紡いでいくことを描いたストーリーなのかなと思い、拝見していました。

ですがストーリーが展開されていくなかで、よく分からなくなっていきました。
ファンタジー要素が強くて、気持ち悪い鳥たちやその他の登場人物も多く、関係性や繋がりを整理することが難しかったです。監督が作品を通して伝えたいメッセージは何なのかを考えながら拝見していましたが、よく分からなかったです。

普通「よく分からない映画」となると「もう見たくない」となりがちなのですが、この作品に関しては全くそうは思わず、むしろ「もう一度見て理解したい」という気持ちにさせられました。よく分からず、見た人を考えさせるのが魅力なのかなとも思いました。

またゲスト声優を起用していることが作品の魅力の1つですが、聞くと素人だと分かるような演じ方をされてる方もいました。そこは違和感が満載で世界観が歪んでしまったように感じられて、残念だったかなと思いますが、全体的には良い作品だと思います。

君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heron
9

ジブリ作品を体現している映画『君たちはどう生きるか』

君たちはどう生きるか。観終わった後、私たちはどう生きればよいのか明確な答えはわからなかった、というのが正直な感想だ。だが、それでよいのかもしれない。
この作品は、吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」が作品のヒントとなっている、宮崎駿監督のオリジナルストーリーである。この作品には、ジブリファンなら気が付くであろう、ほかの映画を連想させるようなシーンがたくさんちりばめられている。さらに声優も木村拓哉さんのように、以前のジブリ作品にも登場した声優さんも出演しており、ファンにはうれしい仕掛けが多い。
映画を観て、難しかったというのが本音だ。一言でまとめてしまうと主人公の男の子が冒険を通して成長していく、という話なのだが、これだけでは言い表せないほど多くの人との出会い、様々な場面が登場する。その混沌さが、映画を観た人の評価が分かれる点なのではないだろうか。例えば、主人公が急に異世界に連れていかれ、キリコという女性にあった後、大量のインコが占拠する城へヒミという女の子と向かう…という展開。流れが描かれてはいるが、シーンの変わり具合に驚いた方もいるのではないだろうか。だが、私はいちジブリファンとして、その混沌こそがジブリだよな、と感じた。思えば「ハウルの動く城」だって、主人公のソフィが急に魔女に呪いをかけられたり、「千と千尋の神隠し」だって、千尋が急にお湯やで働くことになったりと、不思議なことは多い。そう考えると、やはりこの作品はジブリを体現している、不思議で素晴らしいファンタジー作品である。

君たちはどう生きるか(映画) / The Boy and the Heron
8

酷評が多いようだが実際はそんなことはない

公開1週間後、劇場に足を運んだ。
なぜすぐに行かなかったかというと、情報が少なすぎたからであり、レビューの酷評があまりにも多かったからである。
また、前回の宮崎駿監督作品の”風立ちぬ”は個人的にそれほどヒットしなかったのでハードルは非常に低かった…。

開始10秒で舞台は戦時とわかる。
”火垂るの墓”か”風立ちぬ”?と観客全員思ったであろう。
でもそこからジブリの不思議ワールドへと徐々に入っていく。
最終的には時代は戦時中であるということは頭からなくなり、一緒に連れて行った6歳と11歳の子供は夢中になっていた。

主人公はもののけ姫のアシタカと千と千尋の神隠しの千尋の幼さを混ぜたような感じであり、ヒロイン(?)は魔女の宅急便のキキを思わせる。
お父さん役はキムタクでハウル。これだけで宮崎駿の集大成とわかる。

またメタファーが非常に多くて1度の鑑賞では絶対に理解できない。
理解できないのを酷評の材料としている輩が非常に多くて残念である。
理解しやすい心に響くアニメを見たいのであればアンパンマンをお勧めする。
理解できないものを楽しめないのは大人のエゴで、連れて行った子供たちは感覚でこの作品を名作と捉えていた。

それがいつもジブリで掲げるテーマである「大人と子供」。子供にしかトトロは見えないのだ。子供の様に純粋に見ればこの作品は名作で、大人の様に味わい深く深堀りすればこれまた名作。
その間のそのような鑑賞能力がない人物は理解できずに置いて行かれて、駄作と刻印を押す。

また、鳥が今回キーとなっている。
鳥と言ったらカラスやハト、スズメであるがこれに出てくるのは青サギとインコ、ペリカンである。
敵であるインコとペリカンは戦時中の時代背景において誰を表しているのだろうか。
青サギは味方になったり敵になったり戦時中の時代背景において誰を表しているのだろうか。
また、空に飛んでいく無数のワラワラという白いすみっコぐらしは精子を表しているのではないだろうか?とか色々な考察が出来る。
合ってるかどうかはわからないがそれが名作というものである。
簡単に理解できるようなものは芸術ではなく娯楽というカテゴリーである。宮崎駿は最後に娯楽作品ではなくアーティストとして芸術作品を作り出したのだと思う。