ジブリの素晴らしさがぎゅっと詰まった、美しくて、でも少し不気味で難解な作品
ジブリファン、宮崎駿作品のファンであれば、絶対に見るべき作品である。というのも、作中には、過去作品へのオマージュと思えるシーンがいくつも存在しているのだ。「となりのトトロ」を思わせる草むらの表現、「崖の上のポニョ」を彷彿とさせる水のダイナミックさ、おいしそうな食べ物の描き方など、「あれ知ってる!」「この感じどこかで見た事ある!」とジブリファンがワクワクするシーンがいくつもちりばめられているのだ。
しかしながら、ストーリーの難解さは否定できない。冒頭のシーンは、圧巻の火の表現から始まる。この“火”は、過去のジブリアニメ作品では見た事のない迫力ある、注目すべきシーンといえる。一体どんなストーリーが展開されるのだろうと、ぐっと身を乗り出してスクリーンに見入るのだが、ここからしばらく静かな展開が続く。足音などの効果音をあえて響かせるような、主人公の悲しいやるせない心持ちに寄り添うような静かな運びと油断していると、アオサギや老婆たち、ワラワラや人間を食らうインコなど可愛いのか怖いのかわからない独特なキャラクターが押し寄せ、ストーリーを理解しようと泡を食っていると映画に乗り遅れてしまう。
宮崎駿作品にかつて感動した事のある人は、彼が“描きたいように描いた”この世界観を1度は味わうべきではないだろうか。