たぶんこれは監督さんの思い出の昇華
レビューを観ると、「感動した」等の高評価と「難解」等の低評価にパックリ分かれています。そりゃ、そうでしょうねと、作品を観た後に思いました。確かに難解です。でも、「風の谷のナウシカ」とか「魔女の宅急便」みたいに観る人誰にでも腑に落ちるようなストーリーを、そもそも求めていないような作りである気がしました。
おそらく監督さんの幼少期の実体験が基になったんだろうなぁと思うと、これは、監督さんがお母様の死を「単純な戦争に巻き込まれた無駄死に」としてとらえたくなかった、という強い意思を感じました。「空襲で焼けて死んだ」のではなく、「何か、世界の大きな使命を持って異世界に旅立った」のだとしたら、その死は大きく意味を持ち、決して無駄でなく誇らしい。そういう風に、お母様の死を価値あるものにしたいという、母への強い愛情と思慕の作品であるように感じました。なので、いわゆる「難解」とされる展開は、お母様の死を意味付けするためだけの、いわゆる「不思議の国のアリス」のような脚色でしかない。作品を通じて、「母の死は無駄ではなかった!」「この死は必然であった!」「父の再婚もまた必然であった!」という叫びを聞いているような作品だと思いました。
ですが、色々小難しい面を差し引いても、やはり、宮崎作品。人の動きやストーリー展開の躍動感は、やはり他の人には出せない味です。この疾走感・躍動感を味わうだけでも、映画館に足を運んで良かったなと、思わせます。