たかがアニメと侮るなかれ、現実を見つめさせる名作
映画『クレヨンしんちゃん』シリーズの中で1.2位を争う感動作品となっている、本作の魅力について紹介しよう。
内容の濃さでは1位と言えるだろう本作は大阪万博を舞台としており、社会人になり子供の頃の夢を忘れて疲れ果てた大人達、その逆で早く大人になりたい子供達を描いている。
大阪万博へ足を踏み入れた大人達は懐かしい世界に浸り、「仕事に行きたくない」「子供でいたい」「遊びたい」と現実逃避をしてしまうのだ。そこで子供に返ってしまった大人達を助けようと立ち上がる子供達。
しんちゃんが子供の頃のひろしに靴の匂いを嗅がせ、「父ちゃんおらがわからないの?」と問いかけるシーンは感動的だ。
敵であるケンとチャコは昔に戻せるパワーのボタンを押しにいこうとするが、転んでも鼻血が出ても階段を駆け上がり必死に止めようとするしんちゃん。2人は溜めていたパワーが子供達の協力でどんどん減っていくのを目の当たりにし、終わりを悟った。
タワーの頂上で夫婦ともに死を迎えようとするが、やっとの思いでケンとチャコのもとへ辿り着いたしんちゃんが「ずるいぞ!」と言葉を投げかける。「2人だけでバンジージャンプをするのはずるい」との思いで言った言葉だったが、その言葉によって2人の死を阻止することができたのだ。
設定上は敵であるケンとチャコだが、事実上の敵はいないのではないだろうか。あくまでも2人は大人達の夢を現実に導いているだけに過ぎない、本当に悪いのは大人達自身だとも考えられる作品になっている。
実際大人になってみると子供の頃の純粋な気持ちはどうしても忘れがちになってしまう。社会に出て仕事、人間関係、家族と様々な悩みを抱え生きている人達に、良い意味で現実を見つめさせる、本当の名作と言える本作をぜひ見ていただきたいものだ。