糸

『糸』とは、2020年に公開された日本の恋愛映画で、中島みゆきの楽曲『糸』にプロデューサーの平野隆が着想を得て制作された。監督は瀬々敬久。平成元年生まれの高橋漣(たかはしれん)と園田葵(そのだあおい)は、美瑛で出会い恋に落ちる。しかし大人たちの都合で引き裂かれ別々の人生を歩む。出会ってから18年経って平成という時代も終わりを迎えるとき、互いを忘れられなかった漣と葵は再び手を取り合うために動き出していた。この物語は、漣と葵、その周辺の人々の軌跡を「平成」という時代にのせて描く作品となっている。

糸のレビュー・評価・感想

9

人と繋がることをあきらめないと、お互いに温めあいながら誰かのことも温めうる

・主題となっている「糸」の歌詞やメロディーから受け取れるぬくもりが、ひとりひとりの人生を通して描かれている。
平成という時代の流れとそれぞれの人生の山あり谷ありをこれでもかと盛り込まれた激しいストーリー展開のなか、
シーンごとに強く印象付けられる登場人物の心情に触れて、人生観を養える映画となっている。

・主演の菅田将暉さん小松菜奈さんは、本当の夫婦になり、この映画がまた一つの通過点かと思うとますます感慨深い。
脇を固める豪華なキャスト陣の演技は流石といいたい。子役の漣と香の娘ゆいちゃんも素晴らしかった。
『泣いている人がいたら抱きしめてあげる』というワードが後半、幾度か出てくるが、このシーンからストレートに、
人と人が出会い、紡いだ糸が布になってまただれかを温めるということが連想できた。

・中島みゆきさんの歌が、登場人物の心にも観客の心にも染み入る。
劇中、カラオケダイニングバーで香役の榮倉奈々さん、のちに竹原役の成田凌さんも歌唱する「ファイト!」は力強くてそれぞれのキャラクターの想いがこもっていたし、心に響いた。
昭和を代表する応援歌であり、人生のさまざまな苦難を乗り越える時に聴くとパワーをもらえる。

主題歌も挿入歌も、映画を通して中島みゆきさんの歌がいつの時代にも聴き続けられる理由がわかった。

10

糸の良さ

私が初めて映像を見て涙したのがこの映画でした。糸は菅田将暉さん演じるれんと小松奈々さん演じるあおいがすれ違いながらも最終的に結ばれるお話です。お互い中学生の頃に出会い、子供ながらに惹かれあい、よく二人でいましたが、実はあおいの家庭環境はとても悪かったのです。母の愛人に暴力を振るわれていて、それを助けるためにれんはあおいと逃げるのですが、見つかってしまいそこから離れ離れになってしまいます。そして友人の結婚式で二人は再開します。あおいには彼氏がいました。一方れんも職場の先輩と付き合い始めます。しかし、あおいとれんは二人で行方の分からなくなったあおいの母を探しに行きます。わかったのは母が亡くなったということでした。あおいは一度でいいから抱きしめてほしかったと言って泣きます。それをみてれんが優しくあおいを抱きしめます。ここはとても感動します。その後二人は自分たちの恋人のもとに帰ります。れんは結婚し子供が生まれます。しかし、妻の乳がんが発覚し、亡くなってしまいます。亡くなる前に妻がれんにいった言葉は涙なしでは見られません。一方あおいも彼氏と別れることになります。お互い仕事がうまくいかなかったり失敗が続いたりしながらも、周りの人たちに背中を押され、再び二人は出会います。最後に出会うときの二人の歩んできた回想シーンは忘れられません。一番感動しました。是非いろいろな世代の方に見ていただきたいです。

9

中島さんの世界観が

中島みゆきさんの糸をテーマにした話です。
人と人が出会って、それぞれに影響を与えてってところが、すごく歌のイメージに近いなと思いました。ずっと同じ人を想っていると言っても、彼、彼女に固執するのではなく、それぞれはそれぞれで大切な人を作ってるところがリアルでいいです。そんなもんだと思います。
榮倉奈々さんが子どもを残して亡くなる役で、そのところは全て泣けます。最初、主人公と出会った時は気のいい先輩という感じだったのに、主人公と結婚するというのも運命だし、短命だったのも運命だったのか。でも、子どもと一緒にいたかっただろうと思うと涙が止まりません。そのときの主人公は、ほんとに奥さんのことを想っていたと思います。そこがいいです。不倫純愛ものとかとはぜんぜん違います。ほんと、人と人の出会いは不思議なもので、結局は2人が付き合うのだとしても、他の人と付き合ったことにも、意味があったのだというのがわかりました。
それに、やっぱり主題歌の糸がいいです。ほんといい曲で、この歌が流れ出すと、グッときます。歌発信の映画ってたまにありますが、そのなかでも最高級にいいはなしだったのではないでしょうか。ただの恋愛ではない、人と人とのつながりを感じられました。

9

※ネタバレあり ラストにいくまでに何度も泣いてしまう作品

中島みゆきさんの名曲の糸を豪華俳優陣で映画化した糸は予告を見た時からとても気になる作品でした。予告でストーリーはなんとなく予想できていたので、豪華俳優陣を見たいがために鑑賞し始めました。そこで美瑛の素朴ですが雄大な美しさにまず圧倒されました。

そこから少年時代の2人の出会いから始まり、心を通わせあっているのに幼いが故になにも出来ない歯がゆさ。そこに中島みゆきさんの歌が流れると鳥肌が立つと同時に涙がこぼれるという、これが感動するということかと思わされる体験をしました。
そこから時は経ち、美瑛で葵を待ち続ける漣。対照的に世界を飛び回る生活をする葵。そしてそれぞれに恋の相手が現れて、お互いの気持ちに区切りをつけた2人。しかし漣の結婚した香はガンで幼い子供を残して亡くなってしまう。ここは幼い子供を持つ方なら大号泣必至ではないでしょうか。

そこから葵も裏切りや別れを繰り返して美瑛に帰ってきます。昔お世話になっていたおばあちゃん食堂に行くのですが、そこでのおばあちゃんと葵のやり取りが演技とは思えない自然で温かくて本当に引き込まれる演技でした。何度もすれ違いを重ねた2人ですが、最終的には運命的な再会をして映画は終わりを迎えました。

正直この終わり方だけスッキリしなかったです。これだけ再び出会い幸せな2人を見たいところを焦らされてこの終わり方か…と思いましたがまだ続きがありました。エンドロールで2人の結婚式の映像が流れました。こじんまりとしているけど温かさで溢れた式の映像に枯れたと思っていた涙がまた…。糸の歌詞を聞きながらそのシーンを見ていると、仕合わせとはこのような関係のことをいうのかなぁ…と余韻を引く映画でした。

エンディングだけ少し思うところがありましたが、全体的にはとても素晴らしい映画でした。人間の本当の幸せはなにか、今までの人生で自分はどのような糸(人間関係)を仕合わせてきたのか。とても心地よく幸せなことを考えるきっかけをくれたこの映画にお礼を言いたいです。

8

泣きたい時に観たい恋愛映画

この映画は、主人公の『高橋漣』と『園田葵』がすれ違って離れ離れになり、それぞれ別の人生を歩み、そして再会する愛のストーリー。漣と葵は互いに北海道に生まれる。二人の出会いは、13歳の夏。花火大会の日だった。漣は、親友の『直樹』と終了時間が迫った花火大会の会場に猛スピードで自転車を飛ばしていく。しかし花火大会は既に終わってしまっていた。疲れ切ってしまった漣は自転車ごと倒れて、怪我をしてしまう。その時、会場にいた女の子が怪我をしている漣に絆創膏を渡してくれる。漣はその子に一目惚れをした。その女の子が葵だった。そして互いに惹かれ合い、二人の初恋が始まる。しかし葵は突然姿を消す。養父からの虐待を受けていたのだ。そして31歳になって二人は再会する。劇中に流れる中島みゆきの名曲が切なさを引き立てる。この映画は主人公の菅田将暉、小松菜奈の他にも成田凌、榮倉奈々、二階堂ふみなどキャストがかなり豪華。そしてエンドロールでは、ミュージシャンとしても活躍する菅田将暉、石崎ひゅーいが歌っている糸が流れるのでそこも注目の一つだ。この映画は、思いっきり泣きたい、優しい気持ちになりたい人にお勧めだ。

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中島みゆき作曲の【糸】に絡ませた映画

4人の幼なじみが平成、令和の時代を駆け抜け、その半生を懸命にかける物語。リーマンショック、東日本大震災、令和の幕開けとともに主人公たちの人生を時系列で描写。日本人なら誰でも知っている災害や人災に想いをめぐらせ、主人公の人生を観ているつもりが気がつけば自分の人生を振り返り、なぞらえて物語を観ていた。自分ではどうしようもない災害、震災、経済ショック…ただ普通に生きたい、穏やかに生きたいだけなのに、そんなに多くを望んでいないのに、それさえも叶わず翻弄され流される人生。
映画の中で使われる中島みゆきさんの作曲【糸】と【ファイト】。映画のストーリーにすごくマッチしており、曲が流れるたびに観ている人の心を揺さぶる。琴線にふれて涙があふれだす。
コロナ禍のなか、色んな事を我慢している人が多いように思う。私もいつからかちゃんと泣いておらず、映画の感動もあり久しぶりにちゃんと泣いた。泣くって大切な事なんだなと改めて思った。
【糸】の歌詞にあるように、なぜ人が巡り会うのか、なぜ人が出会うのかきっと誰も知らない。それでも糸のように人生の中には運命の出会いがいくつもあり、ほつれたり切れそうになりながらも必死に生きていく。そんな主人公の姿に心を揺さぶられ、大切な事を思い出した。

8

ツインレイの物語

よくある一般的な恋愛に関するストーリーというよりも、少し複雑な心境を綴った物語です。
主役の二人が惹かれ合っているにも関わらず、世間や常識などに邪魔をされながら思うように結ばれない。お互いにそれぞれの幸せを持ってはいるものの、繋がっている心の奥底では相手を求めずにはいられなくなっていく。
「ツインレイ」と呼ばれる二人としての物語であり、「無償の愛情」を常にテーマとして挙げているように感じます。
主題歌である「糸」になぞらえて「ミサンガ」を使用したり、どのような形でもお互いに繋がっている事を何度も確認しながら、それでもお互いの道を歩んで、様々な事を学びに変えていく。
信用し、裏切られ、人間の醜い部分を沢山見てきても尚、人を信じてしまう主役の二人が一番幸せである「一緒に居る事」を望んで、最終的には「阻まれていた世間からの後押しも相まって、幸せな結婚」へと歩みを進める。
決まった仕事を飛び出して挑戦し続けていく事の大切さ。
「努力」が必ず功を奏すという大切な価値観。
認められる事の大切さ。
幼い子供の意見をきちんと聞く素直さ。
その気持ちが大切であり、持ち続ける事で、「血縁」「様々な契約」などを飛び越え、自分のみならず周囲を幸せ空間なっていく。
とても色々と考えさせられました。