観る前と後で印象が変わった作品。ラブストーリーが苦手でも楽しめる要素あり。
映画を観る前は、ラブストリー要素が高い作品と思われがちだが、実際の印象は違った。物語のポイントとなっている゛異能゛と呼ばれる特殊能力が映像として見ごたえあるものにしていた。物語は、異能を受け継ぐ者たちがその能力を使い、国を治める帝と国を守っており、優れた異能を持つ者が評価されていた時代。名家に生まれながら、継母と腹違いの妹に使用人扱いを受け、毎日地獄のような生活を送っていた斎森美世が、家の政略結婚のため、能力は高いが冷酷無慈悲な軍人の久堂清霞のもとに嫁ぐところから展開していく。最初は警戒しあい距離感があった二人だったが、久堂家の使用人ゆり江が二人の間を上手く取り持ち、段々とお互いに興味を持ち惹かれあっていく。しかし美世には隠したい事実があった。異能を持つ家同士の政略結婚だったが、美世には異能の力はなかったのだ。互いを必要としていることを認識し始めた矢先、国に様々な゛災い゛が起こり、国を守るため命を懸けて戦うことになった清霞。そんな中、美世の抑えられていた゛異能゛が目覚める。このように、劇中では異能の話が常に絡んでくる。異能を使ったアクションシーンも多いので、男性でも意外と見やすいラブストリーになっている。作品の中で印象的なのは、美世の目だ。斎森家では、使用人扱いでいじめを受け続けていた美世。自分には、異能の力がないことで劣等感も感じていた。自信のなさ故、いつも人と目を合わせることもできず、うつむき、目の輝きが失われていた。しかし嫁いだことで、初めて清霞から存在を認められ、ゆり江からも人として大事に接してもらったことで、次第に自身を取り戻していく。物語終盤では、人と目を合わせて会話をし、目に意思が感じられるようになってくる。美世の精神状況の変化を見事に目で表現しているので、序盤から注目して観ていくとより楽しめる。