交互に訪れる胸糞感と爽快感が絶妙
とある名家で生まれた女性が母親を亡くし後妻としてやってきた継母と実の父親との間に生まれた腹違いの妹からの執拗な嫌がらせを受け、その後家から追い出されるところから物語は始まります。時代背景上では嫁に出される流れですが、嫁がされた先は「冷酷無慈悲」という悪名高い名家の当主のところでした。実の母親の形見も無く荷物は古着のような着物2着と壊れかけの櫛のみ。付き添いもなく1人で簡易な地図を頼りに嫁ぎ先へ向かった主人公。当主へ挨拶にいくと理不尽な言葉が返ってきます。「私が出て行けと言ったら出て行け。死ねと言ったら死ね。反論は許さない」。しかし、主人公は「承知致しました」と答えるのでした。その言葉に少し違和感を覚える当主。
この嫁ぎ先から追い出されたら帰る家もない主人公は、翌日早起きをして当主の為に朝食を準備します。当主を幼い頃からお世話してきた優し気な中年女性が主人公を労い、一緒に当主の元へと朝食を運ぶのでした。お口に合うだろうかと心配していた主人公。ですが、当主から出た言葉は意外なものでした。「ここに来て食べてみろ。毒でも盛ったか、次からはもっと上手くやれ」。朝食に手を付けずに仕事に出掛けた当主に呆然としながらも、その日の夜に帰宅した当主に頭を下げ名家の当主が見知らぬ者の食事を口にしないのは当然のこと、自身の配慮が足りなかったと謝罪するのでした。