わたしの幸せな結婚

わたしの幸せな結婚

『わたしの幸せな結婚』は、顎木あくみによる小説で、明治・大正期を意識した和風の世界を舞台にしたシンデレラ・ストーリーである。主人公の美世は、虐げられた過去を持つが芯の強さを持つ女性であり、彼女の成長物語が描かれる。作品の舞台設定には、顎木が和風の世界を描きたいという強い意欲があり、明治・大正期の日本をモチーフとして選ばれた。歴史的な時代背景に基づく華やかさや日本文化と西洋文化の融合が、作品の魅力の一部である。また、本作はファンタジーの要素を含み、明治・大正期の舞台におけるラブロマンス的な要素もある。映画やコミカライズなどのメディアミックス展開も行われ、多くのファンを魅了している。
高坂りとによる漫画が『ガンガンONLINE』にて2018年12月から連載している。また、映画はTBSスパークルにより制作され2023年3月に公開された。映画では、明治・大正を思わせるイメージを求め、京都府京都市・舞鶴市、滋賀県東近江市・大津市・高島市、三重県津市・桑名市、奈良県橿原市などでロケが行われた。

dakuro2のレビュー・評価・感想

わたしの幸せな結婚
10

異能がなくても本物の愛は消えない

和風異世界ファンタジー。しかしファンタジーにとどまらず、それぞれの登場人物の心情を丁寧に追って物語は進んでいく。

異能の家系に生まれながら、その能力を受け継がず虐げられて育った斎森美世。親にも愛されず、誰にも必要とされなかった人生を歩んでいたが、物語を追っていくと気にかけてくれる使用人や幼馴染の愛も描かれている。

異母兄弟のかわりに美世は冷酷無慈悲と噂される久堂清霞に嫁ぐことになるが、実際は女性との付き合い方が分からない朴念仁系男子だった。清霞は母親との確執もあり、女性から誤解されやすい性格で、素直に言葉にできない昭和風の男性。しかし、言葉にこそ出ないが、表情に出やすく分かりやすいまっすぐな青年である。

美世は人との関わりが少なく、極端に偏った家庭で育ったので清霞の表情の豊かさを感じる心の余裕やヒダはなく、物事を悲観的に捉えてしまう。美世の幼いままで止まっている心を溶かしてくれたのは、気にかけてくれる婚約者清霞と、清霞を幼い時より育てており、食事を作りに来ているゆり江だった。

物語が進んでいくうちに、美世のたくましさや芯の強さが垣間見られるようになる。美世本来の魂の美しさが個性的な登場人物、出来事を通して上手に引き出されていく作品である。