溺れるナイフ(漫画・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『溺れるナイフ』とは、朝倉ジョージによる大人気少女漫画である。2004年より『別冊マーガレット』により連載された。思春期の危うく繊細な感性と切ない恋を描いた人気作であり、2016年に実写映画化された。
父の仕事の都合で東京から田舎町の浮雲町に越してきた夏芽は、華やかな生活を思い出しては拗ねる日々を送っていた。そんなある日、美しい少年・航一朗と出会い、航一朗を手に入れたい、勝ちたい、と強く思うのであった。

『溺れるナイフ』の概要

『溺れるナイフ』とは、朝倉ジョージによる大人気少女漫画である。
2004年より『別冊マーガレット』において連載され、思春期の危うく繊細な感性と切ない恋を描いた本作は大人気となり、2016年には小松菜奈、菅田将暉を主演に実写映画化された。

望月夏芽は父の仕事の都合により、東京から浮雲町へと引っ越すことになった。東京で読者モデルをしていた夏芽にとって、田舎である浮雲町での暮らしは退屈以外の何物でもなかった。そんな中、夏芽は浮雲町の地主の跡取りである長谷川航一朗と出会う。刺激を欲していた夏芽は美しく、そして粗暴な航一朗にどうしようもなく惹かれていく。

『溺れるナイフ』のあらすじ・ストーリー

東京でモデルとして活躍する小学6年生の望月夏芽は、父が実家の旅館を継ぐことになり、田舎町の浮雲町に引っ越すこととなる。東京で華やかな生活を送っていた夏芽は、浮雲町にもクラスメイトにも馴染めなかった。そんなある日、夏芽は近づいてはいけないと注意されていた海で水面に妖しく光る美しい少年を発見し、心を奪われる。少年はあまりにも美しく、その美しさは「神さんがいるから近づいてはいけない。」と注意されていた夏芽が神様だと勘違いをするほどでした。少年の名は長谷川航一朗(通称:コウ)。夏芽はコウと出会った日から普通の恋愛感情とは少し違う、「コウに勝ちたい」「自分の力を見せつけてやりたい」という思い抱くようになる。

東京にいるときはモデル活動をしていた夏芽は、田舎町では人目を引いた。そんな夏芽に写真集の話が舞い込む。夏芽はコウの気を引くためにオファーを受け入れ、芸能活動を再開させる。コウに力を見せつけてやりたいと思っていた夏芽は、自分が求められていることや、活躍できる場所があることを誇らしく思い、精力的に活動し、人気モデルとなる。

中学生になり、夏芽もコウも、そしてクラスメイトたちも少しずつ大人へと近づいていくなか、夏芽の写真集が発売する。これでコウに自分の力を見せ付けられる、と考えていた夏芽だったが、実際に写真集を手にすると自信をなくしてしまう。目の前でコウに写真集を見られながら、夏芽はコウのそばにいたい一心で動いていたことを告げる。夏芽の想いを聞いたコウは「だったら付き合っておくか?」と意外な一言を返す。
こうして夏芽とコウは付き合うことになり、その日から夏芽の世界は変わる。

コウと付き合うことになり、夏芽はまるで世界を手に入れたかのような気分になります。そんな時、『火つけ祭り』に出かけた夏芽はファンを名乗る蓮目匠に拉致されてしまう。夏芽はレイプされるすんでのところで逃げ出すが、その先の山で穴に落ちて失神してしまう。コウは夏芽を探して山に入るが、夏芽を見つけたところで蓮目に石で殴られ、首を絞められてしまう。そこへ夏芽の父親たちが助けに入り、蓮目は逮捕されることとなった。夏芽は大けがを負い、左耳が聞こえづらくなってしまう。そしてコウは夏芽を守り切れなかったことに傷つき、夏芽もそんなコウの苦しむ姿に心をすり減らしていく。
そして二人は徐々にお互いの心が通い合わなくなり、ついに二人は破局を迎える。夏芽は絶望を感じ、コウは思いを振り払うかのように暴力的になっていく。

そんな夏芽を見たクラスメイトである大友勝利は、夏芽に親切に接する。大友はコウとは幼いころから親友だったが、暴力的に変わっていく姿を見て愛想を尽かす。大友は夏芽のことを「コウをたぶらかしていた女」と思い込んでいたが、徐々に親しくなり、やがて夏芽と付き合うことになる。夏芽はコウと付き合っていた時とは違う、穏やかで幸せに満ち足りた気持ちになり、性格も朗らかになる。

そんな時、夏芽は再会したカメラマンの広能省吾からドラマ出演へのオファーを受ける。夏芽はカメラに映る高揚感を思い出し、そんな夏芽をみて勝利もドラマに出ることを勧める。しかし、そのドラマにはレイプを思い出させるようなシーンがあった。そのシーンに臨んだ夏芽は事件をフラッシュバックし、撮影が終わって迎えてくれた大友のことが蓮目にダブってしまっていた。
その後、大友と初詣に出かけた夏芽は、蓮目ととダブった大友の手を払ってしまう。しかし大友はそれをショックを受けることなく、笑い飛ばして不安定な状況にいる夏芽を受け入れたのだった。夏芽はそんな大友にさらに想いを寄せる。
しかし、大友は突然、夏芽との距離を置くという。夏芽はドラマに出たことで有名人となっていた。そこに大友の写真が夏芽の恋人としてネットにアップされており、騒動になっていたのだ。大友は夏芽のマネージャーから距離を置くことを提案され、夏芽の邪魔になりたくないと考えた挙句にそれを飲んだのであった。一緒にいることで大友が批判されるかもしれないと、夏芽は苦悩する。
ネットに大友の写真が流出することになった原因は、夏芽のクラスメイトであり、コウに想いを寄せる松永カナにあった。カナはコウに想いを寄せているが、コウには自分ではなく夏芽が最も合っているとして、二人を神聖化していた。そのために夏芽と大友を別れさせようとしていた。そして自身の初体験を報酬に、見ず知らずの男に大友の画像を流出させたのだった。それを西条桜司から聞いたコウはカナを睨みつけて去っていった(桜司はコウの祖父の愛人の子供であり、コウのことを「兄ぃ」と呼んで慕っている。母親がコウの父親に取り入ろうとして、こっちに越してきた)。
大友との関係に悩み、高校受験の前日だということもあり、夏芽は神頼みをしに神社へ向かう。その時、神社の古屋に明かりがついているのを発見する。中には誰かと喧嘩したのか、傷だらけのコウがいた。
夏芽はコウのために薬を買いに走った。コウは夏芽に「大友に今日のこと絶対に言うな」「助かった。じゃがよ、おまえ二度とここに来るな」と言って去っていった。
その翌日、夏芽は風邪をひいて薬を間違えて飲んでしまい、受験の最中に寝てしまう。その結果、大友と夏芽は違う高校へ通うこととなった。

違う高校に通い、大友はバンドを始めた。会う時間が減った二人だったが、それでも合間を縫って合っていた。そんな中、夏芽は「大友の初めての女になりたいな」と告げる。そうして二人はセックスをする日を決めるのであった。
そんなある日、仕事帰りに夏芽はコウと鉢合わせる。コウは桜司と、その彼女といた。コウは夏芽を見るなり、コウの彼女に無理やりキスをした。テレビのCMで夏芽は俳優とキスをしており、それに対抗したのだ。それを察した夏芽は心が揺れる。コウがカナと会っているという噂を聞いた時も胸がザワついていた。

夏芽と大友がセックスを約束した日が来たが、その日は大友の母が邪魔で出来なかった。その時、大友の母が桜司の母親がコウの父親の子を宿し、コウの家での立場が悪くなることを話した。夏芽はコウのことが気になり、以前にコウとあった神社の古屋へ行く。古屋はコウにより黒く塗りつぶされていた。
夏芽が古屋の中に入ると、「…なんでおる」と言ってコウが現れ、夏芽を殴りつけて暴行を働こうとする。蓮目がフラッシュバックした夏芽は、近くにあったビンでコウを殴りつける。しかし、夏芽は頭から血を流すコウを見て、蓮目に石で殴られたコウを思い出し、抵抗するのをやめてしまう。コウは一線を越えることはなかったが、夏芽の写真を撮り、「大友にばらされたくなかったら、呼び出したらすぐ来い」と告げて去っていった。
その後、なんどもコウに呼び出される夏芽だったが、コウは最後まですることはなかった。夏芽は大友への罪悪感を募らせ、ある日、バットでコウに襲いかかる。しかし、コウは夏芽をあっけなく抑えつけた。
夏芽は「どうせやんないくせに、できないくせに。この小屋っコウちゃんの心の中だもんね。わかりやす!こうやってわたしのこと呼び出すのもほんとはSOS的な?」と感情を爆発させる。「ゴメンねっゴメンね、事件のとき助けてくれなかったこと、アイツにズタボロにされて泣いてたこと、こんなのコウちゃんじゃないって思っちゃって、そう思った自分を見せたくなくてコウちゃんにせぇむけて!わたしだけ大友に救い出してもらって…」と夏芽が続けると、コウは「救い出してもろうた?お前が傷モンなんは変わらんじゃろうが」と指摘する。夏芽は「そうだよ!いいモノになった気がするだけ。消えないの一生ッ。あんたもねっ…!!あいつの呪いにかかったまんま…!!わたしたちの時間、止まったまんまなんだよっ……!」と、二人があの事件出来得ることのないトラウマを背負ったことを認める。そして二人はそのまま一線を超えてしまう。
その後も夏芽とコウの関係は続いていた。夏芽はコウに抱かれている間、蓮目がチラつくこともあったが、コウの顔を見ると安心できた。
一方、夏芽は大友に対して抱えきれない罪悪感を抱きながら会っていた。そして、大友にキスをされた時、大友ことが大好きなはずなのに嫌悪感を感じてしまう。自身の気持ちを自覚した夏芽は大友に別れを切り出す。突然のことに呆然とする大友だったが、「コウ…け?…ウソじゃろ…?…なんねっいつからっ…ちゃうか。俺とおった時間ずっとコウがおったんじゃのう」と、夏芽が別れを切り出した理由がコウであることを察する。首を振って泣き崩れる夏芽をよそに、大友は「俺はよう、おまえが思うちょるよりよっぽど大丈夫じゃないど…」と言い残して去って行く。
夏芽は泣き腫らした顔のままオーディションへと向かう。当然オーディションは落選となるが、夏芽のその異様な様子を気に入ったプロデューサーは、ドラマのキャストに夏芽を選ぶ。仕事の関係上、東京の学校へ転校しなければならなかったが、夏芽はその仕事を受けることにした。その頃、コウは真っ黒に塗りつぶされた小屋の中で苦悩していた。

夏芽は一人で苦悩するコウに、東京へついて来ないかと誘う。コウは夏芽が差し出した手を握り、胸の中に飛び込むが、東京へ行く気は無かった。
その頃、桜司は、コウの異変に気付いていた。コウの暴力性は身を潜め、付き合いも悪くなったのだ。そんな時、桜司はコウと夏芽が会っているのを目にする。以前のコウを崇拝する桜司はコウを殴りつけ煽る。しかしコウは反撃することなく「けんか飽きたわ」と返すのだった。それを見た桜司は、目の前にいるのが本来のコウで、それを夏芽が引き出したことを察する。桜司は信じていたものをなくし、暴力的になって行く。そして、人を刺して、「兄ィがしたくてたまらんくせにできんことを…」という思いで長谷川家に火を放つ。その火事によってコウの父親が危篤の重体となる。これまでコウは父親に反抗してきたが、この時は父親を助けようとしていた。
東京にいた夏芽はそれを聞いてコウに電話する。コウは父親のことを笑いながら「都合が良くなった」と言っていた。コウを心配した夏芽はコウに会いに行こうとするが、夏芽の邪魔になることを知っていたコウはそれを拒否した。そして「ほれ、テレビ観ちょれば会うちょるようじゃけ…それでええけ…」と言うのだった。しかし夏芽はコウに会うために浮雲町に戻るのだった。
その頃、コウはカナと連絡をとっていた。コウはカナにヤレる女を紹介するように命じていたのだが、しびれを切らして「もうええけぇ、おまえでええけぇ今から来い」とホテルに呼び出すのだった。

コウは自分のことを神様だと言うカナをホテルに置いて、友達のところへ行く。早朝に浮雲町へ着いた夏芽は神社の古屋を訪ねるがそこにコウは居なかった。コウを探して町を歩く夏芽はホテルから出てくるカナに遭遇する。夏芽は奇妙な笑いを浮かべるカナに胸騒ぎを感じる。
コウは夏芽が残していた留守電で夏芽が戻って来ていることを知る。しかし、カナが帰る時間が迫っており、コウは駅へ急ぐ。結局コウは電車の時間に間に合わなかった。しかし、夏芽がはその電車に乗っておらず、コウの目の前に現れる。コウは夏芽を抱き寄せるが、「ほんますまんの…俺はよ本物のお前の眼に映るのが……しんどい」「もう会いたくない」と言って夏芽を電車に乗せた。
コウに会いたくないと言われた夏芽だったが、夏芽は再びコウの前に現れる。そんな夏芽にコウはビンタをして逃げ出す。それでも夏芽はコウに追いつき、以前の神さまのようだったコウを取り戻してほしい、と伝える。夏芽は今後合わないことを条件に、火つけ祭りに出て欲しいとコウに頼む(神事はコウが行なっていた)。コウはその条件を飲んだ。夏芽が祭りの前日にコウの元を訪ねると、そこには憑き物が落ちたかのようなコウがいた。コウは「俺がよう、それはもうめっさ格好よくてもよう、頑張ってふっきれよ。今までで一番いいとこ見せちゃろ思うてよぉ、お前が心底くやしがるくらいのよぉ…ほんでその俺のことだけ神さんみたいな俺のことだけ覚えとってくれぇ。」と夏芽に言うのだった。
夏芽は火付け祭り前にコウに会いに神社に行く。しかし、夏芽の前に現れたのは、以前夏芽をレイプしようとした蓮目だった。

夏芽は殴られながらも隙を見て逃げ出すが、デジャヴのように山から落ちて気を失ってしまう。そこへカナから蓮目のことを聞いたコウが駆けつけ、殴りつける。コウは目の前の男に消えない傷をつけられたことを思い出す。蓮目はそんなコウを挑発する。コウはそんな蓮目の首を絞めるのだった。その光景をおぼろげに見ていた夏芽は「蓮目を殺してほしい」と願い、再び意識を失った。

家に戻った夏芽は、最後に見た光景が夢か本当かわからなくなっていた。夏芽はコウに電話するが、コウが電話に出ることはなかった。次の日、再度コウに電話すると、コウは馬鹿にしたように笑い、「まぁ火付け祭りの俺見てそがぁ夢見たんならよ…抜け出せたいうことじゃの」と言うのだった。
夏芽には、コウが言っていることが本当なのかわからなかった。しかし、夏芽は約束があるゆえにコウに会うことができなかった。その時、コウとカナが産婦人科にいた、という噂を聞く。夏芽はカナなら火付け祭りのことを知っていると思い、カナの元を訪ねた。目の前に現れた夏芽に、カナは泣きながら「本当のこと話しちゃる」と言って夏芽とコウが初めて会った海へ連れていった。

夏芽が見た光景は全て本当にあったことだった。ただし、コウは蓮目を殺してはいなかった。蓮目はコウから逃げ出していた。しかし、その後カナから語られた話は、夏芽の想像が及ばないほどに衝撃的なものだった。蓮目はガソリンを自分にかけて火を付け、崖から転落して死亡していた。それを見たコウは蓮目の死体を隠そうとし、カナにそれを手伝うよう言う。その際、コウは「俺んこつたすけてぇや。そしたら俺はよ、おまえの言うことなんでも聞くけぇ。一生おまえのもんじゃ。」と言うのであった。コウが蓮目の死体を遺棄したのは、夏芽のためだった。蓮目が死んだとなれば、警察やマスコミの手が入り、夏芽の芸能活動の妨げになる、とコウは考えたのだ。そして蓮目が自殺した理由も夏芽の芸能活動を辞めさせるためだったと、コウは予測する。カナはその考えが合っていると話した。なぜカナがそれを知っているのか。カナは「私のことを犯しながらずっとそんなことを言っていた。」と告白した。カナは山で蓮目とはちあわせ、暴行されていたのだった。

全てを知った夏芽は泣き出した。カナはそんな夏芽に対し「なしてっ夏芽ちゃんが泣くんね!ウチの惨めさに泣いちょるんけ?ほうじゃの2人は美しいけぇの!ウチかてそっちがよかった!」と打ち明けるのだった。そして「はよぉコウちゃんとこ行ってぇや!ウチは夏芽ちゃんにしゃべってしもたけぇコウちゃん裏切ってしもたけぇ、ウチはコウちゃんを光を一生失ってしもた…!」と言い、泣き崩れた。
夏芽は次の日、コウを見かけた。コウは初めてあった時のように美しかった。夏芽はコウに話しかけることができなかった。夏芽はカナに電話で「ずっと…コウちゃんをよろしくおねがいします」と告げ、浮雲町を離れた。

それから2年後、夏芽は順調に芸能活動を続けていた。そんなある日、夏芽は当たると有名な占い師に占ってもらう。占い師は評判の通り、夏芽の過去を言い当てた。そしてコウに不幸な未来が待っていると告げる。夏芽はコウが心配になり、カナに久しぶりに連絡を取った。カナはコウが自殺を図った事を話し、コウを浮雲町から連れ出すように夏芽に頼んだ。夏芽は一度は断ったものの、結局はコウに会う事を決意した。

2人振りに夏芽とコウは再会した。それを見ていたカナは嬉しそうに涙を流し、去っていった。
夏芽は2年間ずっとコウに会いたかった、と話した。コウは祖母からもらった数珠を一粒夏芽に渡し、会いたくなったら念じろ、と伝える。夏芽がコウと会っても良いのか、と尋ねると、コウは「俺も同じじゃ。つまらん2年間じゃった!もう一生会わんなんて約束はつまらんのう…いつ会うてもはずかしくないよう大丈夫であろう。そう思える約束のほうがええ。」と返した。そして「ずっと見ちょるけぇ。俺の願いはよう、おまえがその武器で天下取るの見ることじゃぁ」と眩しい笑顔を見せた。
それから、女優業を頑張る夏芽の手の中にはコウの真珠が握られていた。

それから時が経ち、「女優の望月夏芽さん(55歳)が幼馴染の資産家の男性と入籍されました。お相手は息子で俳優の望月春太(16歳)さんの実父でもあり…」というニュースが流れるのであった。

『溺れるナイフ』の登場人物・キャラクター

望月夏芽(もちづき なつめ)

父が実家の旅館を継ぐことになり、浮雲町に引越す。そこで長谷川航一朗と出会う。小学生のころからモデル活動をしていて、常に周りの人から注目されている存在。人を引きつけてやまない、不思議な魅力のある美しい航一朗に、どうしても勝ちたい、自分だけのものにしたい、という特殊な感情を持つ。

素直を自分の気持ちをぶつけ、航一朗と付き合うことになった夏芽は、まるで世界が思い通りになったかのような気持ちにる。これまでは、航一朗に勝ちたいという特殊な感情で動いていた夏芽が恋に酔いしれる普通の少女になってしまい、それを航一朗に見透かされてしまう。このままでは航一朗の気持ちが離れていくのではないかと不安にかられるが、二人は二人だけの速度で恋を育てていく。
しかし夏祭りの日に、自身のストーカーだった蓮目に暴行されそうになる。航一朗が自分を守ってくれなかったことに対する失意と、苦しみ続ける航一朗の姿に夏芽もまた苦しみ、破局を迎える。

その後、大友と付き合うことになる。夏芽を受け入れる大友のことを心から好きになる。そんな時、コウからレイプされそうになる。その時に一線は超えなかったが、写真を撮られて脅されたことで、その後もコウからの呼び出しに応じなければならなかった。そして、互いに蓮目の件で傷ついていた二人はついに一線を超えてしまう。その後、罪悪感を持ちながら大友とキスした時に、自身がコウのことを思っていることに気づき、大友と別れることとなった。

芸能活動を再開し、家庭環境の問題や、蓮目の事件のことで悩むコウを気にかけながら上京する。
そして火付け祭りの日に再び蓮目に襲われる。その際にカナが蓮目に暴行されたことや、どんな形になろうともコウに付き添うカナを見て、コウをカナに託して街を出る。
それから2年後、コウと再会し、互いに思いあっていることを確認した。

55歳でコウと結婚したことがニュースになった。その時すでに16歳になる子供がいた。

長谷川航一朗(はせがわ こういちろう)

浮雲町のカリスマ的存在の少年。通称コウ。長谷川家は浮雲町の大地主であり、父親は企業経営者で有数の資産家である。そんなコウは、浮雲町の人々にとって特別な存在であり、一瞬で夏芽の心を奪ってしまうほど妖しい魅力に満ちた美しい少年だった。自分に張り合う夏芽に興味を持ち付き合うようになる。しかし、恋愛関係に固執するあまり、自分らしさを失っていく夏芽に少しずつ気持ちが離れていく。
そんな時、夏芽が蓮目に襲われる事件が起こる。駆けつけたコウだったが、蓮目に石で殴られ、夏芽を守ることができなかった。大人達が駆けつけたため夏芽が一線を越えることはなかったが、この事件がコウに大きな傷を残す。それから夏芽と別れ、喧嘩や女遊びに明け暮れるようになる。

祖父と母親の間にできた子である。母親はそれによって気が狂ってコウの首を締めた。それが見つかった母親は海へ身投げしている。

父親が桜司の母親を妊娠させてショックを受けていたことも手伝い、夏芽をレイプしようとする。最初は体を舐めるだけで一線を越えることはなかったが、何度か夏芽を呼び出しているうちに、蓮目からつけられた互いの傷をなめ合うように抱き合い、行為に及んだ。
火付け祭りを最後に夏芽と合わないようにしようとするが、そこで再び夏芽が蓮目に襲われる。蓮目を打ちのめすが、蓮目に挑発され、首を締めた。しかし蓮目は逃げ出し、ガソリンを被って火を付け、最後は崖から落ちて死んだ。蓮目の死が夏芽の芸能活動の妨げになると思ったコウは、カナと共に死体を遺棄した。
その後、カナに付き添う事を決めたが、自殺未遂を起こし、それが夏芽に知り渡り再会することになった。そこで、夏芽に会えなかった2年間が退屈だった、と言い再び交流を持つようになった。
その後、夏芽と結婚し、子供を設けている。

大友勝利(おおとも かつとし)

コウの幼馴染の少年。素朴で朗らかな性格で、コウとは対照的な存在。当初は夏芽の事を「コウをたぶらかした女」としていたが、コウと夏芽が別れてから交流を深め、付き合うようになった。一方、大友の友人がリンチを受けた際、コウが素知らぬ顔をしていた事で不仲となった。
蓮目の事や、コウの事で苦悩する夏芽を理解し、夏芽の大きな支えとなる。しかし、夏芽の心はコウへと揺らいでしまい、二人は破局する。
コウが自殺未遂を起こした時、コウを助けたのは大友である。

松永カナ(まつなが かな)

夏芽やコウのクラスメイト。自分の容姿にコンプレックスを持つ故に、容姿端麗でモデルをこなす夏芽に強い憧れを抱いている。登場当初は、ぽっちゃりとした体形の目立たない少女でしたが、夏芽に近づきたいと思う一心で美しく生まれ変わる。幼いころからコウを密かに思い続けている。その思いはコウを神格化するほどに強い。コウと夏芽を『特別で完璧な二人』とし、コウと釣り合うのは夏芽だけ、夏芽と付き合っていい男もまたコウだけ、と歪んだ思いを持つ。その考えゆえに夏芽と大友を別れさせようと動いたこともあった。

山で蓮目とはちあわせ、レイプされた。その後、自殺を図った蓮目をコウと一緒に海へ遺棄した。夏芽にコウを託されたが、コウが自殺未遂をして夏芽にコウを連れ出すように頼んだ。コウと夏芽が再会したのを見たときは笑顔で涙を流していた。

西条桜司(さいじょう おうじ)

コウの祖父の愛人の娘・西条薫の子供。コウの父親に取り入ろうとする薫についてきた。
当初はコウを目の敵にしていたが、自身と同じく複雑な家庭環境を持っていることや、その暴力性に惹かれ、「兄ぃ」と呼んで慕うようになった。
しかし、夏芽とコウが会うことによって、コウの付き合いが悪くなったり、暴力性が影を潜めたことが許せなかった。その後、コウが乗り移ったように暴力的になり、人を刺した。そして「コウが出来なかったことを…」と考え、長谷川家に火を放った。

西条薫(さいじょう かおる)

桜司の母親。コウの祖父とその愛人の間に出来た子供。
コウの父親い取り入り、長谷川家に住むようになった。コウにも取り入ろうとしたが、こうは「当主になったら手始めに殺してやる」と拒絶された。それ以降は、コウを家から追い出そうとしていた。その際に、息子である桜司を見捨てるような発言をして、桜司からも拒絶された。

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