サトコとナダ(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『サトコとナダ』とは、ユペチカによる異文化コミュニケーションの4コマ漫画である。アメリカの大学に通う日本人留学生のサトコと、サウジアラビアからの留学生のナダが、ルームシェアをして友情を育んでいく物語である。日本人のサトコの目を通して、イスラムのしきたりや文化をわかりやすく解説し、日本との違いや共通点もわかる作品である。Twitterアカウント『ツイ4』と、星海社ウェブサイト『最前線』に2017年1月から2018年11月まで掲載されていた。

『サトコとナダ』の概要

『サトコとナダ』とは、ユペチカによる異文化コミュニケーションの4コマ漫画である。アメリカの大学に通う日本人留学生のサトコと、サウジアラビアからの留学生のナダが、ルームシェアをして友情を育んでいく物語である。日本人のサトコの目を通して、イスラムのしきたりや文化をわかりやすく解説し、日本との違いや共通点もわかる作品である。Twitterアカウント『ツイ4』と、星海社ウェブサイト『最前線』に2017年1月から2018年11月まで掲載されていた。

「このマンガがすごい!2018」オンナ編3位と第3回「次にくるマンガ大賞」Webマンガ部門4位に入賞している。米国在住でイスラム教徒のジャーナリストである西森マリーが監修を務めるが、客観的な目でチェックしてもらうために編集者が間に入っている。また、関連書籍としてイスラム入門書『「サトコとナダ」から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史』が、星海社新書より2018年12月に発売された。

アメリカへ留学してきた日本人のサトコは、イスラム教徒であるナダとルームシェアをすることになった。ナダはサウジアラビアの出身で、黒い被り物をいつも身につけている。サトコはその姿に初めは驚いていたが、ナダの明るい性格に触れ、徐々に心を開いていった。ナダを通じてイスラム教徒の文化や、日本との文化の違いを学んでいくサトコは、自分がいた世界が小さいものだったと考えさせられる。幼い頃から自分の意見を持てない性格だったサトコは、それを変えたくてアメリカへと留学してきたのであった。ナダもサトコを通じ、日本の文化に触れ、様々な国の人達との交流を持つようになった。サトコがアメリカに留学して日本に帰ってくる1年間を、サトコの目を通じて見られる物語となっている。

『サトコとナダ』のあらすじ・ストーリー

日本人のサトコがナダを通じてサウジアラビアの文化に触れる

日本からアメリカの大学へ留学生としてやってきたサトコは、サウジアラビア出身のナダという女の子とルームシェアをすることになった。ナダは同じ大学に通っている生徒で、イスラム教徒である。ナダはニカブ(全身を覆うスタンダードなペール)を身につけており、目しか見えていなかった。初めてイスラム教徒を見たサトコは、まだナダの国の文化を知らないため、「私はこの人と仲良くしていけるのだろうか…」と不安になっていた。しかし、ナダと一緒に生活をしていく中で、サトコはナダの活発的でチャーミングなところを知り、ナダの国の文化にも興味を持つようになる。

日本の文化と全く異なるイスラム教徒やサウジアラビアの文化は、日本人のサトコにとって驚くものばかりであった。ムスリマ(イスラム教徒の女性)は常に顔以外の部分を布で隠さなければならないが、髪を綺麗に整えていたり、中の服装はとびきりのオシャレをしていたりする。サトコが「綺麗な髪なのに布で隠すのはもったいないなぁ」と言った時、ナダは「あら、ありがとう。でもねサトコ、綺麗だから隠すのよ。隠れているから手入れは念入りにね」と髪を手入れしながら言った。イスラム教の聖典、コーランによると、女性の髪や肌は綺麗なものとされており、綺麗だから隠さなければならないとされている。ナダの言葉を聞いたサトコはその日、シャンプーのランクを2段ほど上げていた。

ナダは大学でもムスリマの人たちと主に交流しており、男子学生とはなるべく接しないようにしている。ナダとナダの友達数人でお家女子会をした時、被り物としている時と脱いだ時のテンションとオシャレさのギャップに、サトコの頭は混乱していた。ナダの国のことを違う宗教の人に話すと、驚かれたり可哀想といわれることが嫌だったナダは、自国の文化のことをあまり言わないようにしていた。ナダは驚きながらも偏見を持たずに話を聞いてくれるサトコに心を許していった。

サトコ連れ去られ事件

サウジアラビアでは女性は車の運転免許証を取ることはできなかった。コーランによると、サウジアラビアでは「砂漠ではか弱い女を守ろう」と言われているとのことだ。女性が運転免許を取得できないというのも、「車の運転をしなければ事故も起こさないだろう」という意味がある。そのため、アメリカではサトコがよく運転していたが、しばらくしてナダはアメリカの運転免許試験に合格したのであった。

アメリカのバスは日本ほど時間が正確ではなく、サトコはよくバスに乗り遅れていた。ある日、サトコはいつものようにバスに乗り遅れたところ、サトコの住むブルーシティの方へ向かうという男に声をかけられる。サトコは「助かりました!」と言い、男の車に乗ってしまう。ナダに親切な人が送ってくれると連絡したサトコだったが、ナダはなんだか怪しんでいる様子であった。ちょうどテレビで「若い女性の失踪事件が後をたちません。彼女たちは皆、路上で車へ乗り込む姿を最後に…」というニュースを聞いて、ナダは車を運転してサトコを助けに向かった。サトコは男が車から離れている間に現在地を確認したところ、ブルーシティとは反対側にいることに気づく。ここでようやく危ないということを認識したサトコはナダと現在地を共有するが、男が帰って来てしまい車に戻るように言われる。車に戻されそうなサトコだったが、突然現れたナダに助けられた。ナダは泣きながら「ばか、ばかばか。私がここまで来てなかったら今頃どうなっていたか」と車を運転していた。
無事にサトコは家に帰ることができたが、ナダからの信用はゼロになり、しばらく変なやつに引っかからないようにとナダがどこにでもついてくるようになった。

しばらくして、サトコは大学の近くで女性が男の車に乗せられそうになっている場面に出くわした。サトコは「お…お待たせ!」と言って、自然に女性を助けることに成功した。サトコが助けた女性はアメリカ人の「ミラクル」といい、サトコとナダがよく行くカフェの店員であり、二人のことを覚えていた。このことをきっかけに、ミラクルはサトコとナダと仲良くなった。
大学では授業外で英語と他国語を教え合えるパートナーを作れる組合があり、サトコは日系アメリカ人の「ケビン」とパートナーを組んでいる。サトコとナダは新しく知り合ったミラクルとケビンを通じ、大学での交流を広めていった。

ナダの婚約者

ムスリマの人が国境を超える時は、親族の男性が付き添わなければならないという決まりがあり、ナダがアメリカに来る時は兄のラフマンも一緒にアメリカへとやってきていた。隣町でSE(システムエンジニア)をしているラフマンは、サトコとナダの元を訪れ、ナダの結婚相手が見つかったと言う。サウジアラビアでは父親や男兄弟が娘の結婚相手を決めてお見合いをするのが一般的である。ナダの父や兄がナダのことを思って結婚相手を見つけてきたことはナダもわかってはいたが、何も知らない人との結婚生活に不安を感じていた。結婚の話があってからナダは物思いに耽る時間が増えていた。そんなナダを見て、サトコはナダをとうもろこし畑に連れ出した。ナダは一人で色々と思い悩んでいたが、金の砂漠のように一面に広がるとうもろこし畑を見て、「…結婚はいつかしたかったし…あーやだやだ辛気臭い!べっつに私が結婚したところで私の人生が終わるわけじゃないのよねー!むしろ選択肢が増えるって~の!(たぶん)」と叫び、吹っ切れたようであった。

結婚とは言ってもまだ婚約も成立しておらず、お互いの了承が得られて初めて結婚となる。ナダもナダの婚約者候補の「アブダーラ」もお互いの写真だけを知っている状態であった。イスラム教徒同士でも男女が会うときには親族がついていかなければならず、簡単には会うことはできない。サウジアラビアにいるアブダーラは、写真だけで結婚が決まることに納得しておらず、自分の目で判断したいと言い、突然アメリカへやってきた。やっと落ち着いたナダの心を乱すようなことはしたくないと、サトコやラフマンが二人を合わせないようにしていたが、アブダーラの持ち前の行動力で大学にまでたどり着いてしまった。サトコやミラクル、ケビンはアブダーラが「結婚してから豹変する男じゃないのかどうか…!」「そうよ浮気症じゃないか!」などと質問攻めにしていたが、アブダーラは「…ナダさんが(結婚を)断れなくても俺が断ることはできる。戸惑ってるのはきっとナダさんも同じだ。ナダさんが断りたいなら俺が断ってやる」と言う。ナダの気持ちを尊重しているアブダーラは、ナダのことを「写真で見る限りはすてきな笑顔の人だ。きっとだんだん好きになると思う」と言っていた。必死に引き留めようとしているサトコ達を見たアブダーラは「会いたくないと行ったら嘘になる、けれどこれだけいい友人がいるならナダさんがどんな人かはよくわかる」とナダに会わずに帰ることにしたようであった。罪悪感に押しつぶされそうであったサトコは、このことをナダに言い出すことはできなかった。アブダーラがサウジアラビアへ帰るとなった時、サトコは突然「ねぇナダ、婚約者に会いたい?」とナダに聞く。ナダは思ってもいなかった言葉に「…へ?」と固まってしまっているが、サトコは「婚約者のアブダーラさんに今すぐ会いたいかって聞いてるの!」と勢いよく言ったのであった。サトコはナダを連れて空港に急いで車を向かわせ、アブダーラを乗せたケビンの車を走行中に発見した。ケビンの車に接近して窓を開けた時、ナダとアブダーラはお互いの姿を見ることができた。だが、空港へ向かう道とレッドシティへ向かう道が別れており、ナダとアブダーラは一瞬しか姿を確認できなかった。「引き返そうか?」と焦るケビンに、アブダーラは「フライトの時間があるからいい…」と満足そうに言った。一方、「空港まで行こうか」と言うサトコにナダは「…いらないわ…もう十分よ。私のためにアメリカまで来てくれた人をひと目見れた。それでいいわ」と嬉しそうに言うのであった。

アブダーラがサウジアラビアへ帰ったことで一件落着したと思われたが、アブダーラが学生ではなく社会人で働いていること、結納金や遺産の取り分けのことをナダとアブダーラの親族で話し合ったことをナダは初めて聞かされた。ナダは「…あぁそう そうやって私は売られたわけね!」と兄のラフマンに涙ながらに訴えたが、アブダーラとの婚約を破棄するつもりはなく、隠し事はせず一人の人間として扱って欲しいと思っていることをナダはラフマンに伝える。その後、ナダは間にラフマンを挟んでアブダーラと連絡することを許されたのであった。

サトコは様々な国の文化に触れ、引っ込み思案な性格を変えていく

サトコはナダを通じてサウジアラビアの文化を徐々に知っていった。ナダも偏見なく話を聞いてくれるサトコには快く自国の話ができると嬉しがっていた。日本にいた頃は引っ込み思案で、自分の考えを持ったり言ったりすることが苦手なサトコだったが、ナダのはっきりと物を言う姿に影響され、徐々に自分の意見を堂々と言えるようになってきていた。ナダに教えてもらった「ヘナタトゥ」という植物由来の染色ペーストで肌を彩るアートを描くのが上手であったサトコは、ある日ミラクルに「今度ボランティアでマーケットブースを借りて、ヘナを描いてみない?」と誘われる。瞬時に(初心者だし…プロじゃないし…恥かきたくないし…だめだよー)という否定的な考えも浮かんだが、サトコは思い切って「いいね!やってみたい!」とボランティアをやってみることにした。教会で行われるボランティアは改宗や礼拝を強制しないため、どんな宗教・宗派の人でも参加できる。教会はサトコが思っている程きらびやかではなく、十字架があればいいという所であった。その十字架の前には様々な楽器が置いてあり、キリスト教の神様への熱い歌が信者のバンドによって披露されたりもする。ナダとの生活で、文化や宗教の違いをたくさん見て驚いてきたので、サトコはこれ以上宗教で驚くことはないだろうと思っていた。しかし、信者のバンドはとても熱狂的であり、賛美歌のような厳かなイメージを持っていたサトコは静かに驚いていた。

サトコはボランティアで食料配布を手伝うことになった。サトコのいる州の食品会社や農家は、商品の一部を定期的に寄付する仕組みがあり、訪れた人に無料で食料を配布するイベントが行われる。サトコが配給を手伝っていると、ひと家族パンは2袋までという決まりのところ、たくさんパンを持って帰ろうとしている女性がいた。サトコは声を荒げて「ルールなんですってば!」と止めようとするが、一緒にボランティア活動に参加していたミラクルの祖母がその女性の話を聞き、子供が10人もいるということがわかる。ミラクルの祖母は「いいのよ必要なぶんだけ持っていきなさい」と優しく声をかけ、サトコにも「あの人にはあれだけ必要だったの、分かってあげてね」と優しく諭してくれた。その言葉に影響されたサトコは、「チョコのセールに並んでたらね、前の人が10個も買ってたの!ちょうど売り切れよ!せっかく並んだのに~」と怒っているナダに、「10個チョコが必要な人だったんだよ、きっと」と諭すように言った。そんなサトコを見て、ナダは「…サトコ、最近言い回しがなーんか聖職者っぽくなってきたわね」と言われていた。

日本から留学してきたマチコと出会う

サトコがお気に入りのアーティストのコンサートに出かけた時、日本人が困っているところに出くわした。日本語が聞こえると、ふと足を止めて聞き耳を立ててしまったサトコは、最終バスが行ってしまって困っている女の子二人を車でブルーシティまで送っていくことになった。二人はサトコと同じ大学だったが、サトコが日本人のコミュニティにいないため、お互いの姿を見たことはなかった。サトコは二人に誘われて日本人のコミュニティに顔を出すことにした。そこで日本人の女の子にムスリマの人とルームシェアしているという話をすると、女の子は「正直怖くないっすか?私、ドキュメンタリーで観たことあるんすよ。(イスラム教は)名誉のために女の人(ムスリマ)が殺されちゃうんだって!コワイなーって」と言った。サトコもナダに会うまではイスラムの文化を怖いと思っていた部分もあるため、複雑な気持ちになってしまった。その女の子は「マチコ」と言い、ホームステイでアメリカに滞在している。マチコはホームステイ先のホストファミリーに恵まれず、ご飯は冷凍物で宿題の質問も聞けず、家事でこき使われるために、ステイ先では落ち着けないようであった。

マチコがアメリカで使いきれなかった日本食などをサトコに譲る時、サトコの代わりにナダが対応して荷物を受取ることになった。マチコは初めて見るムスリマの姿を見て驚いてしまったが、ナダは「あ~この感じ懐かしい!サトコはもう驚いてくれないのよね」と笑っていた。明るく接するナダにマチコは、(ちょっと変わってるけど…ふつう…だった…)とムスリマへの偏見が少しなくなったようであった。マチコが日本へ帰る日、サトコが空港まで車で見送りにいくと、それにナダもついてきた。ナダがマチコに「(ニヶ月のステイは)それは忙しかったんじゃないかしら」と話しかけると、マチコは「いえ…私にはとても長く感じられました…。やっと、という感じです」と言って泣き出してしまった。マチコはアメリカに来て、生まれ変わって帰りたかったが、思っていた留学にならなかったことを悔やんでいた。
マチコは最後に、ナダやイスラム教徒に対して抱いていた「イスラム教徒は怖い」、「ムスリマは虐げられていてかわいそう」という偏見が間違いだと気づけて良かった、と言って日本に帰った。

サトコは日本へと帰る

アブダーラはサウジアラビアへ帰った後もずっとナダのことを考えていた。ある日、アブダーラからラフマンへ「シャウファ」をしたいという申し込みがあった。「シャウファ」は「見る」という意味で、結婚することになった二人がお互いの家族同伴のもとで顔を合わせて話をすることを指している。アブダーラはシャウファでナダと結婚について話し合いたいと考えているようであった。ナダもそれを受け入れ、話はトントン拍子に進んだ。シャウファの日、アブダーラは兄と姉が同行し、ナダは兄のラフマンとサトコが同行することになった。シャウファは花嫁が初めて花婿の前で顔を出す機会のことであるため、ナダはラフマンの許可を得てベールを外した。アブダーラは初めてナダの顔を間近で見た際に涙を流しており、サトコは(うわ!!泣いたよこの人)と内心思っていた。親族たちが見守る中、二人は初めて会話を交わす。そこでナダは初めてアブダーラに「私、大学卒業後はメディカルスクールに通いたいの。来年も再来年もまだまだ学生。これからどうなるかってだってわからない。アブダーラさんならきっと私より素敵な人もいるでしょう。本当に私でよかったのかと思うのよ」と、将来は医者になりたいこと、アブダーラにふさわしいかどうかわからないと思っていることを明かした。それを聞いたアブダーラは「待ってナダさん。それって私のお嫁さんがお医者さんになるかもしれないってこと?」ととても嬉しそうな顔をして言った。それを見たナダはあっけにとられた顔をしていたが、アブダーラは「お医者さんのお嫁さんか…」と繰り返し嬉しそうにつぶやいていた。このことで正式に婚約者となった二人は、いつか結婚したら世界中をドライブするという約束を交わした。大事な人の人生が大きく動く場面を見て感化されたサトコは「私もそろそろ私のコマを進めなくちゃ」と、ますます勉強に励むようになった。

サトコは留学期間の一年が経とうとしているため、徐々に帰るための準備をし始める。サトコの荷造りを見て、本当に日本に帰ってしまうことを実感したナダは、荷造りに少しだけ邪魔をしたりしていた。サトコは大学の人達に別れの挨拶を言い、グレイスピリオド(学生ビザで学校へ申込した期間が修了した後に付与される、60日間の出国猶予期間)を利用して、ナダとニューヨークを観光していた。思いつきでナイアガラの滝も見に行くことになり、ニューヨークから1時間半のフライトをすることになった。ナイアガラの滝を見ていると、他の観光客が「カナダ側に行けばもっとすごいナイアガラが見れるよ」と教えてくれた。サトコとナダはパスポートを持っているため、すぐに国境を渡ることができる。サウジアラビアでは女性は男性の親族の同伴なく国境を超えることは許されてはいないが、ナダはカナダへと渡る。国境を超えた時、ナダは「やったわ!ついにやったわ!兄も父もいないのに、国境を超えてやったわ。サトコとよ!」と嬉しそうに言った。大きな滝をナダと一緒に見たサトコは「あ いけない。帰りたくなくなっちゃうな…」と少しだけ涙を流していた。
サトコが日本に帰るのなら、ナダも部屋を出ていくと言い、ナダは学生寮の個人部屋に住まうことになった。ナダが日本へ帰るサトコを空港に送ったとき、お別れを言ったはずの大学の友達がサトコを迎えてくれた。ナダが用意してくれたサプライズであった。笑顔でサトコを見送る中、ナダは一人澄ました顔をしていたが、サトコと二人きりになると「サトコのばか。ばかばか」と泣きじゃくるナダ。絶対にまた会おうと約束し、ナダは最後に「インシャーアッラー」という言葉をサトコに教えた。「インシャーアッラー」は「もしも神が望むなら」という意味で、未来のことや希望を語るときに使う言葉である。この言葉を最後に、サトコは日本へと帰っていく。

日本に帰ったサトコは、コンビニで鮭のおにぎりを買って食べていた。あまりにも日本に馴染むのが早かったので、サトコは「私本当にアメリカに行ってたのか!?夢ではなかったか!?」と思っていた。迎えに来てくれた母親と行ったレストランでハラールマークを見て、「あ!サトコ、このマーク、あの子のマークじゃないの?」と母親が言った時、サトコはナダを思い出して泣き出してしまった。それがようやく日本に帰ってきた実感が湧いてきた瞬間であった。

『サトコとナダ』の登場人物・キャラクター

主要人物

サトコ

アメリカの大学に留学生としてやってきた日本人。目鼻立ちは素朴で、背が高く痩せているのが特徴。小さい頃から自分の意見を主張することができず、周りに合わせるようにして生きてきた。次第に、自分のことを誰も知らないところへ行きたいという気持ちが高まり、自分を変えようと思いアメリカに留学する。一緒に暮らすナダの影響で、物おじせずにはっきりモノを言えるようになり、おしゃれにも気を使うようになった。大学内のカフェテリアでアルバイトをしており、仕事ぶりは非常にまじめである。

ナダ

サウジアラビア出身でイスラム教徒(ムスリム)の留学生。アメリカの大学で一人暮らしをしていたが、新しい事に挑戦しようとルームシェアの募集をかけた。宗教上、外ではヒジャブ(一般的なかぶりものでデザインや色は多様)とニカブ(全身を覆うスタンダードなペール)で、全身を覆い隠しているが、実はすごくおしゃれに敏感な女の子である。長くて綺麗な黒髪と、背が低いのが特徴。サウジアラビアでは宗教上の理由で満足に治療を受けられない人が多いため、将来は医者になりたいという夢を持つ。

大学の友達

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