インパクト強!胸熱人情漫画『世紀末リーダー伝たけし』

主人公の顔、シュール系ギャグと見せかけ泣きも入る意外性、そしてシリアス時のバトルなど、すべてに置いてインパクト、胸熱だった漫画『世紀末リーダー伝たけし』。好き嫌いの分かれる作品かもしれませんが、『少年ジャンプ』で『トリコ』を描いている島袋光年氏の作品なんですね。ところどころに『トリコ』の原点と思しきところもあるかと思われます。

主人公「たけし」

どー見てもおっさん顔の上胸毛ボーボーですが、7歳です。生まれた時から父をもしのぐおっさん顔。そして「リーダー的存在」。元々この作品は読み切りからだったんですが、その時点で色々と胸をわしづかまれた読者が多かったんですね。ビジュアルのインパクトも含めて。数回の読み切りを経て連載化しました。

7歳です。

「リーダー的存在」であって「リーダーと言わない、偉ぶってない」なんてのたまいます。が、彼の言う「リーダー像」を『ジャンプ』本誌は「権力欲」と表現しました。といって皆を踏みにじるのではなく、守りたい、助けたいという気持ちから強さを望むのがたけしだと語られていたように思います。

「庇う」ために我が身を犠牲にしもします。

そのため、読み切り版でも連載版でも正義感の強い性格です。社交的で前向きな面もあり、強烈なルックスの割に友達は多いし、言っていることも道徳の模範のよう(間違った知識を披露することもありますが)。勿論それは上っ面のものではなく、信念によるもの。「リーダー」と呼ばれた父を見本に、世の理不尽に立ち向為の信念。胸に輝くリーダーバッジがその証です。

リーダーバッジ

ギャグ要素的なアクセサリーかと思ったら、ガッツリ泣かせに来るアイテムでした。たけしは小学校入学前「リーダー保育園」に通っていましたが、そこは戦闘力、優しさを兼ね備えた「リーダー的存在」を輩出する場所。何か養成所っぽい所ですが、卒園の際、「最もリーダー的だった」子にだけこのバッジは渡されます。単なる勲章ではなくリーダーとしての「重み」を忘れないためのもの。そして「持ち主を守る」とか。裏に「何期生」と書かれているため所有者が分かるわけですが、これも『マミーファミリー編』で重要な要素に。

実際作られてたりする。

バッジを受け取った児童は、「バッジの墓場」に案内されます。早く言えばバッジを捨てに来る場所です。それも、ただ捨てるのではなく、無数に突き出した鋭い針のようなものに刺して二度と使えなくなるというもの。リーダーになるということは、心身を疲弊させるに十分な仕事。耐え切れなくなった者がバッジを叩きつけるように「墓場」に刺していく。これからリーダーとして巣立とうとしている未就学児童に早くも現実を突きつけるわけです。事実、『マミーファミリー編』ではトニーという脱落者が登場。

園長の手の温もりを求めたくても、もうできないと思い込んでいました。

彼はスラム街のような場所で来る日も来る日も「悪」と格闘。しかしいくら戦ってもその街に「平和」は訪れず。先輩も殺されて、子供を助けられなかったという事実により墓場へ。しかし、バッジはまだ彼を見捨ててはいませんでした。「完全に心が折れた者のバッジだけが貫通する」という設定があるようで、トニーのバッジはいくらやっても貫通しませんでした。後ろから撃たれても、ズボンのポケットに入っていたバッジが銃弾を防いでくれるほど。『マミーファミリー編』の際、彼を有望視していた園長は墓場の「針」にトニーのバッジがないことに一旦は安堵するのですが…。

人情ものとしての要素

基本的にはシュール系統のギャグで、「しまぶー」こと作者の島袋氏さえ劇中に出張ってくることも。人によっては抵抗の多い下ネタも多々ありましたが、「人情」の部分で泣かせに来る。読み切りは泣かせの要素が強かったように思います。

チョーさんの声が違和感ない7歳による励ましに涙腺崩壊…。

強すぎるいじめっ子、嘘つきな少年、貧乏子沢山な家の少女など。たけしがその信念で時に打ち負かし、時に励ますさまが実に爽快で温かいのです。

シリアス時はとことん「重い」

時折シリアス中編や長編が描かれたこともありました。何でもありの世界観の中、レギュラーキャラでも片腕切断、超獣化など、色々な意味で「大丈夫なの!?」と言いたくなる展開。しかし、のめり込んでしまうんです。随所に『ドラゴンボール』のオマージュが見られますが、そんなことも気にならないほどにどシリアス。

画像のマリオは兄のため血を求め、化け物と化してしまいました。

『モービー編』より。「どんな病気をも治す」という「モービーの血」の正体は毒。未熟な者が飲む、もしくは浴びれば精神に多大な傷を負い化け物となってしまうことも。

「悪役」にも救済を

大概「悪役」はそのまま制裁されて終了。「気の毒な過去」があっても特に救済があるわけじゃありません。が、『たけし』においては、時に「悪役」も救済するんです。『マミー編』のトニー、(たけしと戦い、園長の言葉と手の温もりに救われる)『モービー編』のマリオ、『バーバリアン編』の安藤兄弟など。救いようのない下衆以外にはそれなりの救済措置が与えられているのが人情的。

まとめ

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