『プリンプリン物語』完全再放送を熱望する理由
1979年から82年にかけ、NHKで放送されていた『プリンプリン物語』。600回を超えるほどの長大なる物語ですが、古さはあっても十分現代人の鑑賞に堪えうると思うのです。一部のエピソードが発見されていない状態で一部が再放送されDVDも発売されましたが、どれだけ時間がかかっても完全再放送してほしいと思うのは懐古趣味というだけではありません。
あらすじ・ストーリー
アルトコ市に流れ着いた箱。そこには猿と王冠、女の赤ん坊が入っていた。赤ん坊は「プリンプリン」と名付けられて美しく成長。15歳になった時、生まれ故郷を探す旅に出る。冠が入っていた以上、どこかの姫かもしれない。それ以前に故郷を見たいという気持ちから、三人の幼馴染、一緒に箱に入っていた猿のモンキーとともに故郷探しの旅へ。
(物語の都合なのかお遊びか)プリンプリンの故郷探しが報道された際、「彼女と結婚すれば王になれる」との野心を持った「死の商人」怪人ランカー一味などのキャラに追いかけられながら、様々な国を訪れることになる。
再放送を願うわけその1・メッセージの伝え方が巧妙
今現在だってそういった作品はいくらでもありますが、子供向けの人形劇ともなると「分かりやすさ」も視野に入れなくてはなりません。軍事ネタ、政治ネタ、理想論その他諸々のメッセージや風刺を、うまく子供向けに描き直しているんです。たとえば、2003年に再放送された『ドオンブリカ編』。
惑星直列の影響で宇宙に飛ばされたこの国は、文明が中世ヨーロッパ辺りで止まっています。仕方のないこととはいえ、現代人には「引きこもっていると遅れちゃうよ」というメッセージを送ることができます。ドビンチ先生という天才科学者だけが「空を飛べる装置」を作ろうとしたり、引きこもらなければならない事情があるにせよ努力をしていたのも意味深長。ラストでは、ランカー(武器商人として成り上がった)がこの国に、それまでなかった銃を大量に売りつけるのですが、ドビンチ先生は「どう使うかが問題」といった趣旨のことを言っていたと思います。
再放送こそされていませんが、「ルチ将軍」の率いる『アクタ共和国編』では独裁体制というものについて分かりやすく、真摯に伝えていました。子供に対して真剣に、社会というものを教え込むための姿勢が伺えます。
再放送を願うわけその2・緩急も巧妙
今現在では「子供が怖がるかも…」という「規制」でカットされるであろうシーンも多々ありました。研究のためとはいえ丹精込めて育ててきた植物を燃やされたり、親友同士が憎み合い、決闘して相打ちに終わったり、子供が死んだり。物語に影を落としても暗いだけのトラウマ物語にならないのが「ミュージカル要素」です。
主人公プリンプリンをはじめ、皆持ち歌が存在し、或いは各国ごとのテーマ曲が歌い上げられます。わざとらしいといえばそれまでですが、プリンプリン役の石川ひとみさんは歌手が本業なため、歌唱力も歌声も惚れ惚れするほどの腕前。時には敵キャラさえコミカルに歌うこともありました。
再放送を願うわけその3・深いキャラ設定
「敵キャラ」と称されるランカー一味ですが、よく聞くのが「ランカー、子供のころは嫌いだったけど今は好き」というもの。「死の商人」にして国際シンジケートのボスたる彼の信条は金。ですが、プリンプリンとの結婚を決意した理由が「王になりたい」というものだったのが、段々「本気」になっていくようにも感じました。ロリコンじゃないかと思われるでしょうが、彼女の為に一級のホテルに部屋をとったり、故郷かもしれない場所を治める王や王妃を「父母」と呼んで尽くす姿。存在すら知らなかった弟に、兄だと名乗ってかわいがる姿。「ほんとに悪役かい?」と聞きたくなります。
ついでに言うとこの人、貧しい国の出身なんです。夢を持って国を出て、のし上がり今の地位を得たのです。無論、それなりの信念も持っています。思春期特有の青臭い潔癖さを持ったプリンプリンには理解しがたい信念を。敵キャラに限らず、大概のキャラが分かりやすくも深い要素を抱えているのがこの物語。広く、深いスタッフ陣の考えと熱意が伝わってきます。
まとめ
現代作品に負けていないと思うのですが、諸事情で80話以上のエピソードが未発見状態。一応DVDは出ているようなので、そちらで我慢するしかないみたいですね。機会があったら見ていただきたいです。成人でも結構引き込まれること請け合いですよ。