細野晴臣さん、大瀧詠一さん、鈴木茂さんらとともに、バンド「はっぴぃえんど」のメンバーとして活躍していたアーティストです。
1969年からバンド活動を開始し、1972年に解散。
その後、音楽プロデューサーとしての地位を確立し、作詞家としても活躍。
女性アイドル、ジャニーズ、バンド、アニメソングなど、松本さんによる歌詞を歌いあげるアーティストは幅広いジャンルに及んでいます。
1981年、寺尾聰さんの歌手としての活動を印象付けさせる楽曲となった「ルビーの指環」は、寺尾さんのダンディな歌声と、有名な冒頭部「くもり硝子の向こうは風の街」の一節に代表される、松本さんのアダルティな世界がマッチした、言わずと知れた名曲です。
はっぴぃえんど時代のバンドメンバーである、大瀧詠一さんの「カナリア諸島にて」は、夏らしさをイメージさせる爽快な歌詞が魅力。
その中に、なにかを諦めているような悲しい雰囲気を残し「語られていない歌詞」を想像させます。
太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」は、椎名林檎さんなどによってもカバーされ、世代を越えて愛されています。
ストーリー性の高い歌詞は、読み物としての役割も果たしそうな仕上がり。
斉藤由貴さんの「卒業」は、アイドルソングでありながら「卒業式で泣かない女の子」の大人びたたくましさを表現。
今も、春には欠かせない楽曲として人気を博しています。
ドラムボーカルと言うスタイルで話題となったC-C-Bの代表的な楽曲、「Romanticが止まらない」も松本さんが歌詞を手掛けています。
作曲は、同時期のヒットメーカーとして松本さんと並ぶ話題をさらっていた筒美京平さん。
こうして楽曲を並べてみると、若い世代には馴染みの薄い曲が多いかもしれません。
しかし、「マクロスF」挿入歌の中島愛=ランカ・リー「星間飛行」も、松本さんによる作詞なのです。
松本さんは、初代からマクロスに関心があったことも明かしています。
松田聖子「渚のバルコニー」
松本さんの描き出す歌詞に共通しているのは、「歌」というコンテンツに縛られない深みのある世界ではないでしょうか。
イントロ・アウトロ・間奏を含み平均3分~5分程度で構成される音楽の中では、歌詞で表現できる内容は非常に限られてしまうものです。
しかし松本さんの歌詞は、奥行きを想像させるものが多いのが特徴です。
少ない文字数の中で必要最低限まで言葉を削り、それどころか「語るべき重要な事件・キーワード」さえも隠してしまうことにより、曲の世界はより深くなっていくのです。
アイドルソングにしても、バンド曲にしても、歌詞がウエイトを占めすぎないことによってメロディやバックサウンドの魅力が引き立ちます。
こうした「語りすぎない」「埋めすぎない」という配慮が、音楽の価値をより高める役割を果たしているのではないでしょうか。
45年以上にも及ぶ長い作詞家活動の中で、常に新たな挑戦を続ける松本さんから、まだまだ目を離せません。