ロスト・リバー(Lost River)のネタバレ解説・考察まとめ

『ロスト・リバー』(Lost River)は、2014年に公開されたアメリカのドラマ映画。ハリウッドスターとして有名な俳優、ライアン・ゴズリングが自身初の監督作品として手掛けたことで話題となった。カンヌ国際映画祭でプレミア上映された際、ブーイングと喝采が同時に発生するなど、賛否両論を読んだことでも知られている。デトロイトの中にある架空の町「ロストリバー」を舞台として、貧困の中を懸命に生きる母子の姿や、彼女らを取り巻く人々の悪意を描く。美しい映像と難解なストーリーで多くの考察を読んでいる。

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『ロスト・リバー』(Lost River)の概要

『ロスト・リバー』(Lost River)は、2014年に公開されたアメリカのドラマ映画。ハリウッドスターとして有名な俳優、ライアン・ゴズリングが自身初の監督作品として手掛けたことで話題となった。分類上はダーク・ファンタジーだが、ファンタジーの要素は多くはない。元のタイトル原案は『How To Catch A Monster』だったが、公開に際し『Lost River』に変更されている。
2014年5月にティーザー映像が初公開され、同月の20日に第67回カンヌ国際映画祭でプレミア上映されたが、上映終了後にはブーイングと喝采の両方が発生するなど、評価は真っ向から二分する形となり、批評家からの評判は芳しいものではなかった。
しかし、こだわり抜いた映像美やBGMは高い評価を獲得しており、2015年3月には本作のサウンドトラックが発売されている。
デトロイトの中にある架空の町「ロストリバー」を舞台として、貧困の中を懸命に生きる住民たちを描いたヒューマンドラマ作品。場末の悪趣味なキャバレーと自然豊かな風景の対比を写し取った美しい映像と、説明を最低限に抑えた難解なストーリー展開で多くの考察を読んだ、まさに「芸術」というにふさわしい1本となっている。

『ロスト・リバー』(Lost River)のあらすじ・ストーリー

貧しい母子の暮らし

シングルマザーのビリーは、ボーンズとフランキーという2人の息子と共に「ロストリバー」というゴーストタウンで暮らしていた。
廃れた町での貧しい暮らしの中、ボーンズは空き家から鉄くずや銅管を盗み、それを売り払うことで生活費を工面していたが、地元で幅を利かせている犯罪者のブリーも、金儲けの手段として銅管を狙っていた。ボーンズがいつものように作業をしていたところ、ブリーに見つかって銅管を奪われ、その場から逃げ出すことになってしまう。自分の取り分の銅管は何とか取り戻したボーンズだったが、ブリーに目をつけられて暮らすことを余儀なくされてしまうのであった。
その頃、ビリーは銀行職員のデイヴに借金の相談をしに訪れていた。彼女たちが暮らす家は祖母から受け継いだものだが、生活費や維持費が工面できなくなったため、やむなく銀行から借金をしていたのである。しかし失業中だったビリーは借金を返すことができない状態にあったため、返済についての相談でデイヴを訪ねていたのだ。それを知ったデイヴはビリーに職を斡旋すると申し出てきたが、その詳細については決して語ろうとしないのであった。

湖の底の街

ある日、貯水湖の底へと続く古道を発見したボーンズが友人のラットにその話をしたところ、彼女は「湖の下には1つの町が沈んでおり、この町を沈める時に一緒に沈めてはならないものを沈めてしまったから衰退した」という逸話があることを教えてくれる。ラットは続けて「この町の呪いを解く唯一の方法は、湖底にある町に住む怪物を捕らえて湖面まで引き上げること」とも言っていた。

仕事を斡旋するというデイヴの誘いに乗ったビリーは、親切な男性が運転するタクシーに乗って仕事場に向かっていた。ビリーが連れてこられたのは、グロテスクなマジックが行われ、観客がそれに熱狂するような悪趣味なキャバレーだった。従業員の案内で地下室に連れて行かれたビリーは、「シェル」と呼ばれるプラスチックのケースに入れられた女性たちと、シェルの中の女性を取り囲み、その体を弄んでいる男性たちの姿を目撃する。

ボーンズの決意

ラットとボーンズは夜の町を散策していた。2人は廃校でダンスをしながら、「町を出る時は一緒だ」と約束をする。2人はその帰りにガソリンスタンドに立ち寄るが、そこでブリーとその手下に遭遇してしまう。銅管を奪い返した件でブリーに恨まれているボーンズは見つからないよう身を潜め、ブリーの申し出に応じたラットは彼の車で帰宅することにした。
ラットの家についた後、ブリーはラットが可愛がっていたネズミをイタズラで殺してしまう。

その日、ボーンズがラットと一緒に外出していたため、ビリーはフランキーを連れて仕事場に向かっていた。何とか仕事を終えたビリーはデイヴに送られて帰宅することになった。
ビリーとフランキーを送り届けたデイヴはそのままビリーを口説こうとしたが、ボーンズがすぐ近くにいることに気が付き、それ以上の事態に発展することはなかった。

ほどなくして、ビリーがどんな仕事をしているかを知ってしまったボーンズは、母にこれ以上の負担をかけたくない、という一心で、町の呪いを解くために湖の底に潜ることを決意する。
湖に向かって出発するボーンズの後ろには、ブリーの姿が迫っていた。

町を去る4人

貯水湖に沈んだ公園の跡地で恐竜の銅像を見つけたボーンズは、その頭を持ち帰ることにした。
その頃、ラットの自宅はブリーの手下の襲撃に遭って放火されていた。彼女は祖母を救出しようとするが、時すでに遅く、祖母は息を引き取ってしまう。
恐竜の頭を携えたボーンズが湖から上がってきた頃には、ブリーが彼の車にも火を放っていた。
ボーンズはブリーの乗った車にひき殺されそうになるが、銅像の頭部を彼に向かって投げつける。驚いたブリーはハンドルを変な方向に切ってしまい、燃えさかるボーンズの車に衝突する。そのまま車から放り出されたブリーは、水底へと沈んでいった。

一方、出勤したビリーはシェルに入れられており、デイヴが彼女に対して扇情的なダンスを見せつけていた。救いの手を差し伸べたかに見えたデイヴは、ビリーの体を目当てにした嗜虐趣味の変態だったのだ。恐怖に怯えるビリーをよそに、デイヴは遠隔操作でビリーの入ったシェルを開けて襲い掛かろうとする。覚悟を決めたビリーはケースを飛び出し、隠し持っていたナイフでデイヴに抵抗してその場を逃げ出す。
ビリーが帰宅すると、自身の子供たちと唯一の身内である祖母を失ったラットが燃えた家の前でうなだれていた。親切にしてくれたタクシーの運転手の力を借り、ビリーとボーンズ、フランキー、ラットの4人は荒廃した町を出て行くのだった。

『ロスト・リバー』(Lost River)の登場人物・キャラクター

主要人物

ビリー(演:クリスティーナ・ヘンドリックス)

日本語吹き替え:立石めぐみ
ボーンズとフランキーの母親。シングルマザーとして必死に彼らを育てるが、銀行にローンの返済が滞っていることを告げられ、生活に困窮してしまう。バンカーであるデイヴから紹介された、悪趣味なキャバレーでの仕事に就いて生計を立て直そうとする。

ボーンズ(演:イアン・デ・カーステッカー)

日本語吹替え:おおしたこうた
ビリーの長男。年の離れた弟のフランキーを溺愛している。家計を助けようと、廃墟からクズ鉄や銅管を拾ってきて売っていたが、それが原因でトラブルに発展した悪党のブリーに目をつけられ、追われる身になってしまう。

フランキー(演:ランディン・スチュワート)

抱き上げられている子供がフランキー

日本語吹き替え:熊谷彩
ビリーの次男。まだ幼い子どもで、貧しいながらも母のビリーや歳の離れた兄であるボーンズに溺愛されている。

ラット(演:シアーシャ・ローナン)

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