おみおくりの作法(Still Life)のネタバレ解説・考察まとめ

『おみおくりの作法』とは、2013年に公開された映画。イギリス、イタリア合作のヒューマンドラマ作品で、第70回ヴェネツィア国際映画祭のオリゾンティ部門で初上映されて高い評価を獲得し、同映画祭では監督賞を含む4賞を受賞した。「孤独死した人物の葬儀を行う仕事」に焦点を当て、実際にその仕事に就いている人に同行しての取材を行って制作されている。勤続22年目にして解雇を申し渡された民生係の中年男性が、最後の「依頼人」が残した写真を手掛かりにして、故人の人生を辿る旅に出る姿を描く。

『おみおくりの作法』(Still Life)の概要

『おみおくりの作法』(おみおくりのさほう)とは、2013年に公開された映画。イギリス、イタリアの合作のヒューマンドラマ作品である。『おみおくりの作法』は邦題で、原題は『Still Life』。監督と脚本をウベルト・パゾリーニ、高い演技力に定評があるエディ・マーサン、ジョアンヌ・フロガットらが出演した。
『ガーディアン』紙上に掲載されていた「孤独死した人物の葬儀を行う仕事」に関する記事からインスピレーションを得て、実際にロンドン市内の民生係に同行して取材を行った上で制作された。
2013年8月末から9月にかけて開催されていた、第70回ヴェネツィア国際映画祭のオリゾンティ部門で初上映されて高評価を獲得し、同映画祭では監督賞を含む4賞を受賞。日本国内でも2015年の第40回報知映画賞における海外作品賞に輝いたほか、第89回キネマ旬報ベスト・テンの外国映画ベスト・テンの第10位に選出されている。
また、本作を原作としたリメイク作品として、日本では2022年に『アイ・アム・まきもと』が公開された。同作の主演は阿部サダヲが務めている。

イギリス、ロンドンのケニントン地区で民生係を務めるジョン・メイは、孤独死した人たちの遺族を探し、葬儀を挙げることを生業としていた。自身も独身で身寄りがなく、1人寂しい暮らしをしていたジョンは「依頼人」たちに真摯に向き合ってきたが、勤続22年目のある日、彼は突然職場から解雇を申し渡されてしまう。
ジョンにとって最後の仕事となったのは、自身と同じアパートに住む老人、ビリー・ストークの葬儀の手配だった。ジョンはビリーの残した写真を頼りに、彼の人生を辿る旅をすることになる。

『おみおくりの作法』(Still Life)のあらすじ・ストーリー

孤独な民生係

ケニントン地区の民生係をしているジョン・メイは、亡くなった人の親族を探し、葬儀を上げる仕事をしていた。雑な仕事をする同僚もいたが、生真面目で優しい彼は決して手を抜かず、故人の宗派に合わせた教会でお気に入りのBGMを流して葬儀を挙げ、ひとりひとりに自ら弔辞を書いて彼らを見送ってきた。こうして丁寧に故人を見送り続けて22年になる。
ある日、そんなジョンの元に、二日前に遺体が発見された女性の身元を特定し、家族を探すという仕事が舞い込んだ。ジョンは早速彼女の遺品を探り、身元の特定を急ぐ。女性は猫が好きで独り身のようだ。自宅への来客も1年間なし。孤独だった女性の境遇を憐れむ大家に、ジョンは沈黙するしかなかった。
別に調査していた故人の親族から、ジョンに電話が入った。その故人の息子は、早くに父の元を去り、幸せに暮らしていたことが判明する。ジョンは息子が見つかったという喜びを露わにして葬儀の案内をするが、息子は父を恨んでいたので電話を切ってしまう。
ネコ好きの女性の遺族も見つからず、電話をくれた息子も結局葬儀には来ることはなかった。ジョンは今日もたった一人で、自分とは縁も所縁もない故人を静かに見送る。公営の合同墓地は、行き場のない依頼人で溢れていた。
葬儀を終えたジョンは家に帰り、ひとりで食事を摂って眠る日々を過ごす。彼らと同じく、ひとりぼっちだったジョンは、虚しい毎日を送っていた。

ビリー・ストークとの出会い

ジョンはある日、自分と同じアパートに住むビリー・ストークという老人の訃報を受け取り、彼の家を尋ねていた。ビリーは白髪で長髪、立派なひげをたくわえた老人だった。しかしジョンは突然、職場からリストラの宣告を受けてしまう。ジョンの仕事は丁寧だが、時間がかかりすぎるというのが理由だった。ジョンにとっては今回引き受けたビリーの仕事が最後の仕事になる。
期限を3日間と定められたジョンは家に帰るが、帰ったところで身寄りのない彼を迎え、労ってくれる存在はない。
半ば呆然としながらビリーの遺品をぼんやり眺めていたジョンは、レコードの隙間から写真のネガを見つける。現像してみると、パン工場で働くビリーの姿が収められていた。
ジョンは仕事をサボり、ビリーの人生を辿る旅に出ることを決める。
ジョンがパン工場で聞き込みを開始すると、当時の彼の同僚がまだ働いていた。無頼派だったというビリーの評判は芳しいものではなかったが、ビリーにはメアリーという恋人がいたという情報を手に入れる。同僚から集めた情報を元にメアリーを探すと、彼女は夫と娘、そして孫に囲まれ、幸せに暮らしていた。そこでジョンは衝撃の事実を知らされることになった。メアリーの娘の父親は、ビリーだったのだ。
メアリーはビリーが突然帰ってこなくなった、という事情を語り、彼をあまりよく思っていないことをジョンに打ち明ける。ジョンはビリーの葬儀に来てほしい、と頼みこんだものの、メアリーが首を縦に振ることはなかった。

旅の終着点

上司から「お前の仕事は意味がない」と馬鹿にされてしまったジョンは、初めて怒りを露わにする。ジョンは誰が何と言おうとこの最後の仕事をやり遂げると決意し、その足でビリーが収監されていた刑務所へ向かった。なかなかビリーの知り合いが見つからないことに肩を落とすジョンだが、そんなジョンを見ていた職員はビリーについて「慈善募金を目当てに、ベルトを歯で噛んで4階からぶら下がったことがある」という思い出話を教えてくれた。
ジョンは遂に、ビリーが刑務所にいたころに唯一面会に訪れていた女の子を見つける。彼女はビリーの娘で、名前はケリー・ストーク。犬のシェルターで働いていた。ケリーは葬儀に参列することは拒否したが、10年前にビリーを探していたという人物の情報をくれた。彼がパラシュート部隊に在籍していた頃の親友で、名前はジャンボだという。
ジャンボは既に老人ホームに入っており、尋ねていったジョンに快くビリーの話をしてくれた。ジャンボいわく、ビリーは乱暴者ではあったが、彼にとっては命の恩人なのだという。
除隊後に戦争の影響で心を病み、ホームレスになってアルコールに溺れたというビリーの事情を聞かされるジョンだが、同時に、この当時の仲間は誰一人としてビリーを恨んでいないという事実を知る。
確かな手ごたえを感じたジョンは、ビリーの知り合いだというホームレスと共に酒を酌み交わした。ジョンがビリーを追う旅は、ここが終着点となった。

「おみおくり」の迎えた結末

ビリーの墓石を作り、棺桶を選んだジョンは、いずれ自分が入る時のために用意していた眺めのいい墓地を、彼に譲ることにした。どこか空虚に日々をこなしていたジョンは、最後の仕事をやり遂げた達成感に静かな笑みをたたえていた。ビリーの人生を辿る旅を続けるうちに、ジョンの中で彼の存在はとても大きなものになっていた。最後の仕事を終えたジョンは仕事部屋を整理していたが、そこにビリーの娘であるケリーからの電話がかかってきた。
翌日、ジョンはケリーと葬儀の打ち合わせをするためにカフェで待ち合わせていた。ジョンの必死の説得は、ケリーの心を動かしたのだ。故人のために必死に働くジョンに惹かれ始めていたケリーは、「父の葬儀の後でお茶をしないか」とジョンを誘う。ジョンは微笑んでこれを了承し、新しい出会いの予感に胸を高鳴らせるのであった。

買い物に出かけたジョンは、ケリーを思い浮かべながら犬のマグカップを買っていた。しかしその帰り道、道路を横断しようとしていたジョンに、大きなバスが突っ込んでくる。

ジョンは助からなかった。身寄りのない彼の葬儀に参列していたのは、牧師ひとりだけ。今までジョンが担当してきた故人たちと同じように、彼は孤独のうちに自身の葬儀を終える。
しかし、同じ日、同じ場所で行われていたビリーの葬儀には、ジョンがその死を知らせたすべての人が集まっていた。
ひっそりと埋葬されたジョンの前に、ビリーが現れる。さらに、遺族が見つからなかったネコ好きの女性、息子を捨てて葬儀への参列を拒否されてしまった父、今までジョンが弔ってきたすべての人が訪れていた。
誠心誠意、故人を送り出す仕事に取り組んできたジョンに救われた彼らは、次々にジョンの墓標を訪れ、その死を悼んで見送るのであった。

『おみおくりの作法』(Still Life)の登場人物・キャラクター

主要人物

ジョン・メイ(演:エディ・マーサン)

ロンドンのケニントン地区を担当する、44歳の民生係。独身。身寄りのない死者の身内を探し、葬儀に立ち会う仕事に就いている。遺族から葬儀への参列を拒否されてしまったり、何の手がかりも見つからなかった孤独な故人を、たった一人で見送ってきた。真面目で几帳面な性格のため、仕事に手を抜くことをせず、故人の宗派に沿った葬儀を挙げ、弔辞も自ら手掛けるなど真摯に取り組む。
自身も独身で身寄りのない暮らしをしているためか、今まで見送ってきた故人たちにはシンパシーを感じている節があり、彼らの写真を自宅のアルバムに保管して時々見返している。
勤続22年目にして職場からの解雇通告を受け、最後の「依頼人」であるビリー・ストークの人生を探す旅に出る。

ビリー・ストーク

ジョンと同じアパートに1人で暮らしていた老人。パラシュート部隊の軍人として戦争に参加していた過去がある。孤独死しているところを発見され、ビリーが担当することになった最後の依頼人。家族の有無や人物像などの詳細は一切不明だったが写真を残しており、これがビリーの職務上で重要な手掛かりになった。
口調も態度も粗暴で孤立していたが、ビリーの尽力もあって葬儀には多くの人が駆け付けた。事件を起こして刑務所に収監されていた際、寄付金ほしさに歯でベルトを噛んで建物の4階から3分半にわたってぶら下がるという特技を見せたタフな人物。
キャスト名のクレジットもなく、周囲の人々の回想にしか登場しないが、物語としては非常に重要な鍵を握る存在。

ビリーの関係者

ケリー・ストーク(演:ジョアンヌ・フロガット)

画像左がケリー

ビリー・ストークの娘。犬のシェルターで職員として働いている。刑務所での喧嘩別れ以降、生き別れていた父の死を知って動揺し、葬儀に出ることを拒絶する。しかし、ジョンの熱意に心を動かされ、父の葬儀を取り仕切ることを決意。同時に、真摯な人柄のジョンに惹かれていくようになる。

メアリー(演:カレン・ドルーリー)

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