ストッパー毒島(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ストッパー毒島』とは、『週刊ヤングマガジン』で1996年から1998年まで連載された、ハロルド作石の野球漫画。舞台は1996年から1997年シーズンのプロ野球パシフィック・リーグ。当時存在していた6球団に主人公・毒島大広が所属する「京浜アスレチックス」が加わっている。160km/h以上の剛速球を武器とする毒島がチームのストッパーとして仲間たちと切磋琢磨しながら成長し、リーグ優勝を目指す。当時活躍していた選手や監督をキャラクターのモデルにしており、実名で登場する人物もいる。

三木 源三郎「育てながら勝つだ!」

ダイエーホークスとの最終戦、不調の本上を交代させずに最後まで使うことを決断した三木監督。その後、本上ヒットを放ち、試合はサヨナラ勝ち。そこで監督が口にしたのが「育てながら勝つだ!」であった。不調だからとすぐ交代させるのではなく、将来性のある選手たちを育てながら、試合に勝利する。監督の強い意志が感じられるセリフである。

毒島 大広「倒れているのは佐世保さんだぞ、アクシデントで済むか!」

近鉄バファローズとの最終戦で、佐世保が頭部に死球を受けた際に毒島がバファローズナインに言ったのが、「倒れているのは佐世保さんだぞ、アクシデントで済むか!」の一言。これまでチームを引っ張ってきた佐世保。彼を尊敬する思いや、チームメイトの厚い信頼が感じられるセリフになっている。

三木 源三郎「いつ以来だ?今年のようにチームが一丸となったのは」

近鉄バファローズとの最終戦で、佐世保が頭部に死球を受けた際にチームメイトが一斉にベンチを飛び出した。バファローズナインに怒りの感情を見せるチームメンバーを目にした三木監督が言ったのが、「いつ以来だ?今年のようにチームが一丸となったのは」である。弱小球団でなんの目標もなかったアスレチックスメンバーの成長を感じ、それに感動した素直な気持ちが表現されている。

毒島 貴志「笑いたきゃ笑えよ、俺は自分の思った通りに生きているだけ、つまらない人生を歩んでいる奴にはわからないだろうよ」

アスレチックスとロッテの最終戦、自分の納得いく球が打てそうだと思った毒島貴志。自分の納得のいく球が打てた時に髭を剃ろうと思い、それまで伸ばしていた髭を試合中に剃った。するとそれを見た観客は笑う。しかし毒島貴志は、「笑いたきゃ笑えよ、俺は自分の思った通りに生きているだけ、つまらない人生を歩んでいる奴にはわからないだろうよ」と言い放った。他者にどう思われようとも自分の信念を持ち、決してそれを曲げない彼の心の強さが感じられる一言である。

チック君「お前はウチの守護神だ、お前が打たれようと誰も文句は言わない、もちろん俺が言わせない。」

ロッテとの最終戦でチック君がマウンドに向かい、毒島に言った言葉が「お前はウチの守護神だ、お前が打たれようと誰も文句は言わない、もちろん俺が言わせない」である。問題児として入団した毒島であったが、彼のこれまで努力をチック君はちゃんと見ていたのだ。信頼されるストッパーへと成長した毒島に対しての最大の賛辞である。

『ストッパー毒島』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

作者の野球に対する深い愛が感じられる作品

作品には、1996から1997年当時のプロ野球パシフィック・リーグの監督や選手、所属球団が登場する。西武からは東尾修監督や松井稼頭央が、オリックスからイチローや田口壮、谷佳知。ダイエーからは王貞治監督や城島健司、工藤公康などである。当時の各球団のマスコットキャラクターも登場。チックくんによく喧嘩を売られる描写がある。作者のパ・リーグへの並々ならぬ愛が感じられ、プロ野球ファンならクスっとくるような小ネタや、「ロッテの初芝がヘビメタ好き」など、コアなファンでも知らないトリビアが作中に散りばめられている。

『BECK』とのつながり

本作の後に描かれ、実写映画化もされたハロルド大石のヒット作『BECK』。その作中に『ストッパー毒島』とのつながりが描かれている。『BECK』の登場人物が、「今季絶望か」と毒島の怪我について書かれているスポーツ新聞を読んでいる描写が登場。またショートの火野勝は『BECK』の主人公・コユキ達が通っていた一枝学園高校出身である。

続編の可能性についての作者のコメント

ハロルドが『BECK』を執筆していた2000年頃、『ストッパー毒島』の続編が近日中に連載開始するという情報が一部マスコミによって報道された。報道自体は偽情報だったが、続編の構想自体は頭に描いているようで、2003年9月25日放送のNHK『トップランナー』に出演した際、本人がそのことに触れている。ただこの時に、「依頼があったわけでも発表の当てがあるわけでもないし、実際に書くかどうかも分からない」とも語った。『週刊ヤングマガジン』の最終連載後のインタビューでは、「もし、銃を突きつけられて『続きを描け!』と言われたらすぐにでも描ける」と発言していた。しかしその後、2010年7月のインタビューにて、機会があれば描きたいと思っていること、しかし『ストッパー毒島』が終わって10年以上経過しており、当時とはプロ野球の仕組みも変わっていることに触れ、前回の続きとして描くことは難しいと言及。『ストッパー毒島』より描きたいものが出てきてしまったことも明らかにしている。

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