灼熱カバディ(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『灼熱カバディ』とは、2015年7月2日より漫画アプリ『マンガワン』、同年7月9日よりウェブコミック配信サイト『裏サンデー』にて連載している漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。作者は武蔵野創。中学時代はサッカーの一流選手だった宵越竜哉が、高校でカバディというマイナースポーツと出会い、強敵との闘いや仲間との連携を通して成長していく物語。選手一人ひとりの感情、過去が丁寧に描かれており、『マンガワン』の看板漫画として人気を博している。

『灼熱カバディ』の概要

『灼熱カバディ』とは、2015年7月2日より漫画アプリ『マンガワン』、同年7月9日よりウェブコミック配信サイト『裏サンデー』にて連載している漫画、およびそれを原作としたアニメ作品である。作者は、『裏サンデー』の「連載投稿トーナメント」で第2回(2013年)、第3回(2014年)の2年連続で4位を獲得した武蔵野創。連載初期は月間連載だったが、2016年2月から隔週、2017年6月から週間連載となった。週間連載となると同時に『マンガワン』の火曜日看板連載作品となり、『マンガワン』の代表作と評されたこともある。2017年に「WEBマンガ総選挙」に初ノミネートされ、「このマンガがすごい!2017オトコ編」第19位獲得、2020年には「第66回(2020年度)小学館漫画賞 少年部門」に初ノミネートされた。2021年4月から6月までテレビ東京他にてテレビアニメが放送された。
持ち前の身体能力と才能で中学時代まで「不倒」の異名で有名だったサッカーの天才選手宵越竜哉が、能京高校でカバディ部副部長井浦慶の策略によってカバディを始める。初めはマイナースポーツだとバカにしていたが、同学年で同じくカバディ初心者の畦道相馬に倒されたことや最強の攻撃手である部長王城正人との出会いによってカバディの世界にのめり込んでいく。サッカーとの違いに困惑しながらも、持ち前の精神力と身体能力を活かし、他校からも一目置かれる存在となっていく。練習試合や大会を通して、各選手の葛藤や様々な感情を描いているスポーツ漫画である。

『灼熱カバディ』のあらすじ・ストーリー

宵越竜哉カバディ部入部

宵越はカバディ部に入部することに。

能京高校1年宵越竜哉は、中学時代まで「不倒」の異名で知られるサッカーの一流選手だったが、高校ではサッカーどころかスポーツ全般を辞めて動画配信サイトの生放送主として活動していた。サッカー部からの勧誘も全て断っていたが、ある日、同じく能京高校1年畦道相馬がカバディ部の勧誘にやってくる。その時は偶然部屋の鍵がかかっておらず畦道に玄関に入られてしまう。追い出そうとするも物凄い力で踏ん張る畦道を倒せず、宵越はその力に驚く。畦道のあまりに必死の勧誘を受け渋々カバディ部の練習を見学することになる。そこで能京高校3年副部長の井浦慶、2年生の水澄京平、伊達真司と出会い、カバディの基本ルールを説明される。宵越が生放送主であることを知っている井浦は、学校にそのことを広めるという脅しをかけ、畦道と勝負して勝てば神生主、負けたら入部という交渉を持ちかける。宵越は神生主に惹かれて勝負を受ける。
勝負のルールは2点先取。相手に倒される前に、相手にタッチして自分の陣地に戻ることができると点が入る。先取点は宵越が取ったが、それはカバディは格闘技という言葉を鵜呑みにしていきなり殴りかかって取ったものだった。周りから反則だと抗議が入ったが、温厚な畦道は油断していたとこのポイントを承認し、1対0となる。続く畦道の攻撃で宵越は畦道にタックルすることに成功するも倒すことが出来ず、掴んだまま自陣に戻られ畦道の得点となる。畦道の実家は高い山にある窯元で、生活の全てが筋トレのような環境で育ったため、小柄ながらに人並外れたパワーがあるのだった。対するスポーツの天才の宵越はこのわずかな時間でカバディのゲーム性に気づき、勝負に勝つために真剣になる。観戦していた水澄と伊達も顔が変わったと気づくほどであった。自らのリーチの長さを活かしたフェイントで畦道にタッチすることに成功し自陣に戻ろうとするも、足元を掴まれ勝利目前で引き戻されてしまう。結果、2対1で畦道が勝利し、宵越のカバディ部への入部が決まった。

カバディ部に入って2日が経ったが、宵越は一度も先輩達を相手に攻撃を成功させることが出来ずにいた。井浦に守備練習もやるように言われるが、男同士で手を繋がなければならないため宵越は頑なに拒否する。カバディの守備は仲間同士で手を繋ぎチェーンを作るのが定石なのだ。攻撃に失敗した宵越は、続いて攻撃練習に入る畦道の様子を見ていた。スポーツ初心者でカバディ歴もほとんど変わらない畦道を下に見ていたが、畦道はギリギリで攻撃で成功させる。自分に出来ないことを畦道がやってのけたことを信じられず、井浦に手抜きをしたんじゃないかと問い詰める宵越。井浦は手を抜いていないこと、畦道は無駄が多くてやりづらいことだけを伝える。この言葉の意味が理解できない宵越は一人で帰り、落ちていた空き缶でリフティングをしながら、サッカーの経験と照らし合わせて考え始めた。汗をかくほど思考を続けた宵越はチェーンを躱す方法をひらめく。

通常練習中、宵越は真剣な眼差しで先輩組を観察する。過去の経験からスポーツが嫌いな宵越だったが、負けるのはもっと嫌いだった。伊達はスピードがないが、パワーが高く単独勝負では勝てない、水澄は伊達ほどのパワーはないがリーチが長い、井浦はパワーもスピードもないが先読みしてきてやりづらいなど、それぞれの選手の特徴について分析を始める。通常練習が終わり実戦形式の練習に移る。今までと同じ形式の練習だが、宵越は「決めてやるよ、ハットトリック!!」と宣言する。この宣言を受け守備の3人は警戒し、宵越を倒しに行くのが少し遅れることになる。さらに井浦に言われた「畦道は無駄が多いからやりづらい」の意味を理解していた宵越は、意図的に不安定なキャントを行い井浦にフェイントをかけた。そのフェイントを見抜いていた井浦だったが、宵越の狙いは井浦ではなく伊達であり、右足を使って伊達の足先をタッチする。そのまま足を滑らせて水澄もタッチし、井浦のキャッチを抜け自陣へと戻る宵越だったが、もう少しのところで靴紐がほどけてコケてしまう。自陣に帰れていたかどうか、審判をしていた畦道は「入ってたべよ。やっとな、少しずつ...。入ってきた感じだ。」と意味深な判定をする。真相は定かではないが、宵越は宣言通りハットトリックを達成した。

宵越入部の歓迎も兼ねて、部員全員でカバディ用のシューズを買いに行くことになる。立ち寄ったスポーツショップでカバディの試合の映像が流れており、マイナースポーツだからこそ必死な人間が多いことを知る。先輩たちに全国レベルであったサッカーを辞めた理由を問われた宵越だったが、答えをはぐらかす。宵越がサッカーを辞めた理由は、周囲との温度差があったためだった。自分がどんなに努力して強くなっても、周りの人間は宵越の力に頼るばかりで協力しようとしない。そのため宵越は仲間との連携や絆というものを否定し、スポーツを辞めていたのだった。買い物途中、小柄である畦道をバカにするバスケ部員を見かけた宵越は、畦道を背筋力を測定できるマシンの前に連れてきてバスケ部に畦道のパワーを見せつける。高校1年生の平均が100kgと言われている中、200kgという驚異の数値にバスケ部はビビり、追い払うことに成功する。続けて宵越もやるように求めてきた畦道に対し、今までのチームメイトと違って同じ立場で接してくることに少し喜びを感じていた。帰り道では、畦道にクラスメイトから届いた「宵越を紹介してくれないか?」という内容のメールから、部員達の恋愛事情の話になる。イケメンでスポーツも優秀な宵越だったが、彼女ができたことはなかった。それに反して畦道には故郷に美人の彼女が発覚し、畦道となら本当の仲間になれるかもしれないと思っていた宵越だったが、畦道に対して嫉妬しまくるようになる。

畦道とのやりとりをきっかけにして守備練習にも参加し始める宵越だったが、コートの広さやボーナスラインの存在などサッカーとは勝手が違い苦戦する。守備がうまい伊達と水澄にアドバイスを求めるも、感覚的過ぎて全く参考にならない。畦道と2人で守備に入った際には仲間同士で衝突してケンカになってしまう。その様子を見た井浦は2年対1年の対決を提案する。結果は1年のボロ負け。宵越は勝てない理由を連携だと理解しているが、過去の経験から他人と協力することに戸惑いがあった。畦道との言い合いの中でサインプレーを思いついた宵越は、帰宅ラッシュの駅で人混みの中を駆け抜けるという特訓を提案する。初めは何度かかすっていた畦道だったが、最後は宵越のサポートもあり一度も触れることなく駆け抜けることに成功し、サインプレーを完成させた。2年組と再戦を行い、サインプレーを駆使して水澄の攻撃を阻止する。しかし、次の宵越の攻撃は連携された守備に阻まれ、サインのズレに気づいた伊達の前ではサインプレーは通用しなかった。2度目の水澄の攻撃の際、サインを出し忘れた宵越だったが、予想していなかった畦道のフォローに助けられる。初めて連携の感覚を知った宵越は心の中で興奮する。勝負の終盤、水澄の攻撃を防ぐため初めて畦道とチェーンを組む宵越。そのことを想定していた水澄はチェーンを飛び越え攻撃を成功させる。連携は一朝一夕では出来ないことを伝える水澄。試合は2年組の勝利に終わり、守備の重要さも知った宵越は本格的にカバディをやることを決意する。

部長王城正人登場~奏和高校との練習試合

井浦に最強の攻撃手になれと言われた宵越は、体力強化のためマスクを着けてマラソンなどのトレーニングをしていた。トレーニング中ひ弱そうな男と衝突する。偶然居合わせた水澄と伊達の口から、その男が部長の王城正人だと知らされる。部長の復帰祝いの会が行われるも宵越は納得がいかない。貧弱な王城がなぜ部長なのか問うと、「僕が一番強いから。」と答え、体育館で対決することとなった。王城の不規則なキャントや読めない動き、相手の力を利用して倒す「カウンター」の前に宵越は惨敗し、王城を強いと認めた。さらに、王城は中学時代カバディ日本代表だったことが明らかになる。
カバディの練習してきた宵越と畦道であったが、一度も試合経験がなかった。練習試合をさせたいという井浦に対して、王城は関東大会ベスト4の奏和高校との練習試合を提案する。普通なら万年最下位の能京との練習試合に応じることは考えられないが、今年の奏和の部長は、王城と同じく中学時代の日本代表選手六弦歩だったため受けてくれるはずだと言う王城。連絡を取り練習試合をすることが決まった。奏和高校の強敵は六弦だけでなく2年の高谷煉がいた。高谷は元水泳日本一の男で、強敵と戦うためにカバディに転向した。チーム内の練習でも強敵である六弦との練習しか真面目にやらない曲者である。練習試合に向けて、王城は宵越に、井浦は畦道に対して指導を行う。

練習試合は5対5で行い、ケガからの復帰が間もない王城は控えにまわる。高谷は王城を控えから引きずり出すために大量得点を取ると宣言する。高谷の攻撃から始まりいきなり畦道と水澄をタッチして2得点。対する宵越は王城から教わった「ロールキック」を使い3得点。能京有利かと思われたが、音で相手の動きや考えを見抜く高谷の攻撃を前に4得点を取られてしまう。コート外に出された宵越の代わりに伊達が攻撃に出るも、六弦のパワーの前に敗れる。守備では畦道が高谷の脚をキャッチするも一歩及ばず、能京はピンチを迎える。そのまま六弦と高谷を前に為す術なく大量リードを許し、ケガをした畦道に代わり王城が出場することになる。

王城の活躍により点差を縮める能京高校。六弦は昔からのライバルである王城との1対1の勝負にこだわり、その状況を作り出す。結果は王城の勝利。この対決の中で、王城のケガの原因はオーバーワークによるものだと判明する。王城と高谷を中心に一進一退の攻防が続くが、経験の差から能京が徐々に点差を縮めて4点差まで追い詰める。しかし、これ以上のプレーは危険だと判断した井浦の指示により、宵越が攻撃に出ることになる。ロールキックをフェイントに使い高谷を追い出すことに成功。2点差まで迫る。残り時間はわずか、得点されれば能京の敗北が決まる六弦の攻撃を能京全員で阻止しようとするも、驚異の粘りを前に苦戦する。六弦が自陣にタッチする寸前でそれを読んでいた井浦が六弦の手を止めて守備に成功する。それと同時にタイムアップ。32対31で能京の敗北が決定した。試合終了後、六弦は井浦に名前を聞く。今まで王城の友人として眼中になかった井浦を強敵と認めたからだ。大量得点した王城、高谷に比べて得点が少なかった宵越は実力が足りないことを自覚しすぐに大会へと気持ちを切り替える。一方の何もできなかった畦道は一人悩んでいた。悩む畦道に対し宵越は実力を発揮できないことはスポーツではよくあること、畦道は「不倒」を倒したことがあるのだから自信を持てと励ます。同じ2年生に大量得点を許した水澄と伊達も焦りを感じていた。初試合で敗北し各々の課題を見つけ大会への決意を固める。

練習試合を観戦していた伴、人見、関が新たに加入する。新メンバーを迎え守備練習に励む能京。その内容は2チームに別れて王城からの攻撃をどれだけ抑えられるかという対決するものだった。中々うまくいかないことに焦る水澄と伊達は1年生の時の大会のことを振り返る。試合で何にもできず悔しがる水澄と伊達はケンカをしてしまう。カバディを始めるまでケンカに明け暮れていた水澄と野球に打ち込んでいたがケガで諦めた伊達。ケンカした後はいつしか協力し合うようになり、互いの守備には必要不可欠な存在となっていた。昔のことを思い出した水澄は伊達にどっちがうまくなるかのケンカだと言い、成長の為に競い合うようになった。宵越は1年メンバーと遊びに行く中で、一人で背負い込む傾向を指摘される。その日から周りとの連携を意識するようになり、少しずつ守備が形になっていく。それぞれが守備のヒントを掴んだところでこの練習は終わり、長所を伸ばしていく練習へと変わっていく。

世界組取材

大会に向けて王城や六弦などの元日本代表選手、通称「世界組」を集めた取材が行われることになり、サッカーで全国区だった宵越や水泳日本一の高谷も招集された。世界組の面々を前に宵越は強さを感じ取る。特に高校カバディ界の絶対王者星海高校のキャプテン不破仁からは圧倒的なオーラを感じ取っていた。頂点を見た宵越は一層気合を入れて練習に励むようになる。途中、野球部に体育館を乗っ取られそうになるが、マイナースポーツなりの意地を見せつけ阻止する。

合同合宿編

夏休みに入り能京高校は、去年新設ながら関東ベスト8の埼玉紅葉と関東準優勝の英峰と合同合宿を行うことになった。埼玉紅葉には王城たちの一つ下の代の世界組である佐倉と右藤が、英峰には世界組神畑がいる。佐倉と右藤は王城と井浦の弟子のような存在で、高校は能京に行く予定だった。開始早々自己紹介を兼ねてミニゲームが行われることとなる。そこで英峰の守備の堅さと紅葉の攻撃力の高さを目の当たりにする。宵越はミニゲームをきっかけに何かを掴み、夜も一人で特訓を始めるのだった。畦道も自身の才能である正確な距離感覚「センサー」を伸ばすことを意識し始め、それぞれに成長の兆しが出始める。
各々の練習に励み合宿最終日を迎える。最終日は3校での総当り戦を行う。まず、能京対英峰。サッカーで培ってきた脚捌きをカバディに落とし込もうとする宵越。合宿中も常に意識して練習していた成果を発揮し、新技「カット」を完成させる。全速力で向かっていき、ブレーキなしで直角に曲がるその動きに鉄壁の守備の英峰も対応できず、3得点を獲得する。しかし、神畑の戦略により宵越は追い出されてしまう。さらに神畑は能京に対し、「星海を殺す為の、通過点だ」と言い放つ。王城が宵越を戻すために積極的な攻撃を仕掛けるも、あと一歩のところで倒されてしまう。王城が倒されたことに動揺を隠せない能京メンバー。このまま敗北していくのみかと思われたが、畦道の攻撃で流れが変わる。合宿で英峰の八代から盗んだ先回りの技「後の先」を使い得点を重ねていく。

高身長故に極限の減量を強いられていた神畑は、研ぎ澄まされた感覚で得点を重ねていく。対して畦道により攻撃に復帰した王城も点を取り返していく。英峰の若菜の攻撃で王城が再び追い出され、宵越が攻撃に出ることになる。先ほど出したカットの対策をされる宵越だったが、カットのその先、「バック」を使い自陣に戻ろうとする。勢いを落とさずそのまま真後ろに方向転換するバックは制御が難しく足を滑らせてしまう。その隙を見逃さなかった神畑はギリギリで宵越を止めることに成功する。そのまま試合は終了し、結果は24対33で能京の敗北となった。

英峰対紅葉の試合が始まるも、宵越は観戦せずに新技は間違っていたのかと悩んでいた。そこに現れた王城はバックは自分も目指した技だったことを明かす。宵越は目指した方向が間違っていなかったことを確認し、極めることを決意する。英峰対紅葉の試合。無意識のうちに手を抜く佐倉に対して神畑は激怒する。格上相手に本気を出せない佐倉だったが、合宿中の宵越の存在が佐倉を高揚させ守備3人をパワーで振り払う好プレーを見せる。一方の神畑の体力は限界を迎え離脱する。英峰若菜の緩急を生かした攻撃を佐倉は見ることなく「なんとなく」止め、その後の攻撃で逆転する。続く若菜の執念に攻撃で同点となり、最後の佐倉の攻撃は復帰した神畑の働きもあり失敗。1点差で英峰が勝利した。

最後の試合は能京対紅葉。佐倉の攻撃から始まる。英峰戦で活躍した畦道を警戒し、他を侮っていた佐倉は井浦、水澄に倒される。続く宵越の攻撃は右藤にバックを読まれバランスを崩すも運よく自陣に帰ることに成功する。技自体は失敗だったが、この失敗からバックに自らのパワーとスピードを活かす方法を思いつく。右藤は知識を武器に攻め、能京から2点を奪う。右藤は以前から、途中で選抜で抜けた佐倉がいつ帰ってきても良いようにカバディの知識を蓄えていた。王城の攻撃では右藤がカウンターを封じ、佐倉が裏をかいたプレーを見せたが、王城はその上を行き4点を獲る。能京リードの場面で紅葉は得点を犠牲にして佐倉をフィールドに戻す。佐倉は高校入学時のことを回想する。中学時代、途中でカバディを辞めカバディ部のない紅葉に進学。祖母に強い姿になった自分を見せて安心させたいという想いから始めたカバディだったが、その祖母が認知症になり佐倉のことを忘れてしまったからだ。何故か右藤も紅葉に進学しカバディ部を作り出した。佐倉は右藤にもう辞めたと言うが、右藤の言葉に復帰を決意したのだった。エースとしての自覚を持った佐倉の猛攻により、紅葉は7得点する。

能京が逆転されたところで前半終了。空気が悪くなるが水澄のおかげで重い空気が吹き飛ぶ。その後、佐倉と王城の点取り合戦が続き、残り時間1分半で35対37。佐倉の攻撃で王城を追い出した紅葉は時間稼ぎの作戦に出る。宵越は攻撃に成功するが、大量得点が出来ず、佐倉の攻撃に移る。ここで決められると負けがほぼ確定する能京。水澄のファインプレーにより守備成功。ケンカに明け暮れていた水澄がスポーツマンとして覚醒した瞬間だった。宵越の最終攻撃。創設以来地道に練習を続けてきた埼玉紅葉の守備に苦戦するが、土壇場で佐倉のプレーを真似し攻撃成功。44対40で能京が勝利した。初めての試合での勝利を噛みしめる能京メンバーの中、新入りの伴、人見、関は何もできなかったことを悔い、大会でリベンジを誓う。

合宿後のある日、宵越と畦道は奏和の高谷に誘われ関東ナンバー1の星海の偵察へ行くことになる。部長の不破との対決を目論んでいた宵越だが、星海の1年志場命と3対3で戦うことになる。宵越は自身の攻撃力の高さを見せるも守備の弱さが浮き彫りとなり敗北する。その後、能京に元カバディ日本代表で日本一の守備の久納栄治が能京の監督兼コーチに就任する。技術の足りなさを指摘し、宵越をレギュラーから外す久納コーチ。反発する宵越に対しては球拾いの練習を命じる。それでも反抗する宵越。久納は宵越の反応の速さが連携を乱し、攻撃は王城がいるから必要ないと言い放つ。返す言葉がない宵越はその日から球拾いに専念するようになる。球拾い練習の中で自分のキャッチに無駄な予備動作があることを発見し、素早いキャッチを身に着ける。

関東大会Bブロック1回戦VS伯麗

1回戦の相手は伯麗高校。世界組7番外園丈治が率いる外国人のチーム。序盤の男として宵越が活躍し10対1と大量リードする能京。しかし、それでも焦らない伯麗の部長外園は、部員一人一人にアドバイスを送る。外園の強さは個人の強さではなく、チームを導く強さだった。本領を発揮し始めた伯麗に点差を縮められていく。世界組外園に対し必殺技バックを使い攻撃に成功したと思った宵越だったが、穴だと思っていた他の選手に掴まり倒されてしまう。外園の攻撃を受け逆転を許したところで前半が終わる。後半は王城の攻撃で反撃開始し逆転。さらに関が外園を倒すファインプレーを魅せる。負けている状況でも仲間を鼓舞する外園。対する能京は点差を守るため時間つぶしに入る。そのままタイムアップ、30対23で能京が勝利する。

関東大会Bブロック2回戦VS大山律心

2回戦の相手は大山律心。前回大会で能京を倒した因縁の相手であるため、先輩組はかなり気合いを入れている。監督にも因縁があり、大山律心の監督である亜川は久納と日本代表時代の同期だった。選手としては久納に叶わなかった亜川だが、監督としては優秀で大学生チームを日本一に導いた経験もある。最初の攻撃は王城から始まる。大山律心の守備陣は鍛え上げられた体で王城にプレッシャーをかけていく。隙を見せない守備に対してカウンターを使って何とか1点取ることに成功する。カウンターに困惑する大山律心の選手たちに対して部長の大和は「考えるのは頭の良い人に任せましょう」と言う。それに素直に従う部員たち。そこには異様な雰囲気があった。大和の攻撃はリーディングレッグレイドと呼ばれるカニ歩きのような状態で行うものだった。大和は元々野球部の捕手であったが、1番になれそうにないから辞めたのだった。そして野球をきれいさっぱり忘れてカバディに転向。好きであることを原動力とせず、自分を俯瞰的に見て無駄のない選択を行ってきた男だった。攻撃は伊達にパワーで押し勝ち3点獲得する。

その後も亜川の作戦とそれを完璧に実行する大和に能京は点差を広げられていくが、王城が攻撃で追い上げ、取っては取られる泥仕合が始まる。膠着状態を破ったのは王城。大和の攻撃に対し避けるのではなく、掴みにいくという予想外の行動に出て隙を作る。その隙をつき水澄が意地で大和を倒す。能京5点リードで前半終了。ハーフタイム、大山律心の部員たちの過去が語られる。大和以外の部員は全員ラグビーをやっていたが結果が伴わず、廃部になった時も心のどこかで安堵していた。そんな部員達に自分の言うとおりにすれば勝てるとカバディに誘った大和。故に部員たちは大和の指示をすべて聞いていた。後半は大山律心の優勢。宵越が出場するも対策が為されており亜川の作戦通りの展開となっていた。伊達、宵越の活躍で同点に追いつき、さらに宵越が初めて守備での連携に成功して逆転する。その後王城がさらなる得点を重ね終了。43対40で能京の勝利となった。周りから見れば無機質だった大山律心だったが、心の中には熱い思いがあった。

関東大会Bブロック決勝戦VS奏和

2勝した勢いのまま3回戦を突破した能京はBブロックの決勝戦に駒を進める。同じBブロック3回戦のもう1つのカードは奏和VS紅葉。接戦の末勝ったのは奏和、さらに能京との練習試合の時にはいなかった1年生の司令塔がいることが明らかになる。宵越は佐倉から掴まった敵を振り払う「回転」を教わる。最初の宵越の攻撃は六弦に止められるが、高谷の攻撃を畦道が止め同点。いまだ公式戦では活躍していなかった畦道だったが、ここで実力を発揮する。続く王城の攻撃では昔から競い合ってきた六弦との闘いが繰り広げられる。連続のカウンターを使う王城に食らいつく六弦。王城は倒されたが、六弦もコートの外に出たため互いに1得点となった。1回目の世界組の戦いは引き分けとなった。伏兵伴の活躍で能京が優勢になるも、奏和の副部長片桐が伊達を力でねじ伏せる。宵越は視線を使った誘導で相手を出し抜き、その後の敵の奇襲にも反応して阻止する。佐倉に教わった回転も使い一気に点差を広げる。高谷の覚醒により奏和に流れを持っていかれるも、王城が世界組の強さを見せつける。前半終了直前、高谷に2点取られたところで前半終了を迎える。

リードしているのにも関わらず重い空気の能京サイド。久納は一人ひとりの良かったところを褒め空気を変える。後半は奏和の1年生の司令塔緒方が攻撃に出てくる。緒方の記者である父の影響で小さなころからスポーツ観戦が好きだった。そのため分析力、戦略に長けていた。相手の動きを読む攻撃で、能京から点を獲る。六弦も世界組の実力を出し始めて遂に逆転される。井浦に育てられた伊達の守備と合宿で身に着けた「後の先」を使った畦道の攻撃により同点に追いつく。読みを辞めパワーに集中する六弦、予想を超える宵越と交互に点を取り合い、奏和高谷は宵越と至近距離での戦いを始める。守備が終了すると同時に攻撃に切り替え、相手に呼吸をさせないようにしていた。満足に呼吸ができない選手たちはまるで水中にいるような感覚に陥った。水泳元日本一の高谷は自分がいた水泳の世界の戦いに引きずり込んだのだった。王城を追い出し、高谷の攻撃で5点差で奏和がリードする。残り時間は30秒、逆転をしようと意気込む宵越だったが、奏和は前進守備で時間稼ぎに出る。攻撃に来た瞬間押し戻すことで1点だけ与えて攻撃を終了させる作戦に出た。

時間稼ぎをされる能京。宵越、王城どちらが攻撃に出ても押し返されて終わってしまう状況になる。残り時間0秒、能京の最終攻撃に出たのは井浦だった。長年カバディを続けてきたものの、天才の王城、宵越がいるために後輩たちの指導に徹してきた井浦。攻撃手としての活躍は自分でも諦めていたが、ここしかない場面で飛び出す。今まで溜めてきた想いをぶつけ同点に追いつく。試合は延長戦に突入する。延長戦は各校5人ずつ順番に攻撃に出るサッカーのPKのような形式。互いに点を取り合い、8対9で奏和がリード、最後は宵越対高谷の戦いになる。宵越の攻撃、自陣奥まで下がり助走をした宵越の前に六弦が立ちふさがる。左右でのカットでスタンスを広げさせ、視線で上を警戒させた宵越は、六弦の股の間を潜り抜ける。これに反応する六弦だが、宵越はサッカーの動きで躱しさらに奥まで進む。自陣へと戻る最後に再び六弦と対峙、上下左右全てを警戒する六弦に真正面から突っ込み3点獲得。能京が2点リードする。高谷の攻撃、2点以上取りたい高谷を宵越が意地で食い止める。支援に来た畦道をタッチできたかできなかったか微妙なところで宵越に倒され帰陣する。奏和2点獲得のコールがされ再延長かと思われたが、高谷が畦道にタッチできなかったことを自己申告する。結果、能京が勝利。高谷の申告を責めるものは誰もいなかった。

関東大会決勝リーグ

関東大会決勝リーグ出場校が決定した。絶対王者星海、能京、打倒星海を目指す英峰、世界組山田駿率いる奥武、この4校で総当り戦を行う。初日は2連戦のため、1戦目でどこまで温存できるかもカギになってくる。燃える宵越だったが、監督に1戦目は温存するからほとんど出ないことを告げられる。

『灼熱カバディ』の登場人物・キャラクター

能京高校(のうきんこうこう)

宵越 竜哉(よいごし たつや)

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