パージ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『パージ』とは、2013年に制作されたアメリカのホラー映画。年に一度、12時間だけすべての犯罪が合法化されたアメリカを舞台に、人々の心に潜む本性と社会の歪みが露わになる過程を描く。社会風刺を込めた挑戦的な舞台設定とテンポのいいストーリー、そして密室劇として高い完成度を誇り、公開当時の世界興行収入が9000万ドルを超えるヒットを記録した。監督は『交渉人』などのサスペンス作品で知られるジェームズ・デモナコ、主演はイーサン・ホークが務める。

パージ法

パージの開始宣言を見守るサンディン家の面々

「新しいアメリカ建国の父たち」を名乗る集団が設けた、1年に1度、夜7時から翌朝7時までの12時間は、殺人を含むすべての犯罪が合法化されるという法令。
パージ法の導入によって、鬱積している恨みや不満を合法的に発散できるようになることから、国民たちはこの夜以外はおとなしく過ごすことになり、結果、犯罪抑止、失業率の大幅低下、経済回復を実現。国内の犯罪率は1パーセント未満となった。作中では、この機に乗じて相手を殺害することを「パージ(浄化)する」といった形で、動詞のような形で使われることもある。
当日の政府から緊急放送で開始の合図が流れ、翌朝にサイレンが鳴るとパージ終了となる。この間、すべての警察、消防、救急、医療サービスは停止される。
パージへの参加はあくまで自由となっており、参加した住民のことは「パージャー」と呼ぶ。参加せずに平和を求める者は家に隠れていても良い。
どんな道具、武器を使用しても構わない。ただしレベル4以上の物は使用禁止、国に定められた政治家などの権力者の殺害を禁止するなど、いくつかのルールが設けられているものの基本的に制限はない。

青い花

「パージ法に賛同する」という意思表示として、パージの日に玄関先に飾る花。参加することはなくとも、賛同する意志を示すことで狙われにくくなるなどの一定の効果がある。

ティミー

チャーリーが所持しているラジコンのおもちゃ。暗視カメラを搭載しており、家の中に隠れたホームレスの男性の誘導などで活躍した。

『パージ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

パージャーたちの襲撃

作中屈指の恐怖シーンとして語られているのが、パージャーたちがサンディン家に訪問するシーンだ。1人を覗いて全員が仮面を着用しており、その1人もまるで張り付けたかのような笑顔で家を覗きこんでくる。そして身なりや口調こそ上流階級らしく品のあるものだが、言っていることは野蛮な獣のようで、そのちぐはぐさも恐ろしい。
表情も正体も不明の人間が大挙して押し寄せてくる、想像しただけで恐怖を覚える。

『パージ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ありえないとも言い切れない設定

年に一度行われる「パージ」によって犯罪率が低下し、秩序が保たれるという論理にはいささか疑問が残るものがあるが、その分を補ってあまりあるテーマがこの映画には潜んでいる。
パージにより排除されるのは社会的な弱者と、自分の身を守ることができない弱者である。本作の舞台設定は「弱肉強食の社会」を切り出している。
ここで言う弱者は、イコール富を持たざる者。金を持っていれば身を守る武器を買えるし、家に閉じこもることもできる。でも、それができない者は淘汰されていくしかないという、現代社会の縮図を描いている。
エンタテインメントを追求した設定にも思える本作だが、その裏には非道なほどのリアリズムが潜んでいる。生き残れない人間はすなわち生きる価値がなく、死んだ方が社会の為だ。パージという言葉の本来の意味である「浄化」とはこの真理を痛烈に批判しているものだ。作中ではこの政策によって経済活性化も達成されたと述べられているが、それは無駄が省かれたということと同義ともいえるのである。
本作は後味が悪く、決して明るいラストを迎えるわけではない。しかし、90分弱と、わりに短い尺の中に痛烈な社会風刺と恐怖を詰め込んでいることから、多くの視聴者からは「考えさせられる」「見ごたえがある」という声が上がっている。

keeper
keeper
@keeper

目次 - Contents