つくもがみ貸します(ラノベ・漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『つくもがみ貸します』とは2007年より、畠中恵が2007年9月25日に角川書店から出版している時代劇ファンタジー小説、およびそれを原作とした漫画やアニメ作品。江戸の深川にある古道具屋兼損料屋出雲屋を舞台に、付喪神と化した古道具達と彼らの声が聞こえる出雲屋の清次とお紅の奮闘を描く。江戸の文化も感じられる時代劇ファンタジー作品で、子供から大人まで幅広い人気を獲得している。原作シリーズの累計発行部数は、2017年10月現在60万部を超えた人気作品である。

『つくもがみ貸します』の概要

『つくもがみ貸します』とは2007年より畠中恵が2007年9月25日に角川書店から出版している時代劇ファンタジー小説、およびそれを原作とした漫画やアニメ作品。漫画版は、KADOKAWAの電子雑誌『B's-LOG COMIC』にて、Vol.66からVol.76まで連載された。キャラクター原案は星野リリィ、作画は小神奈々が担当下。原作は既刊3巻で、6060万部を売り上げている。アニメは、2018年7月から10月にかけてNHK総合にて放送された。
舞台は江戸の深川。仲町にて損料屋・出雲屋を営むお紅と清次という姉弟は、100年の時を経て付喪神と化した古道具の声を聞くことができた。噂話が大好きな付喪神は貸し出された先で、色々な話を聞いてくれる。噂話を元に大小さまざまな騒動をお紅と清次が解決していくという時代劇ファンタジーコメディ。江戸時代の文化についても触れられる作品だ。

『つくもがみ貸します』のあらすじ・ストーリー

利休鼠(りきゅうねずみ)

古道具屋兼損料屋出雲屋を営むをお紅(おこう)と清次(せいじ)。2人は血の繋がりはないが、姉弟として暮らしていた。出雲屋で取り扱う古道具の中には、100年の時を経て人語を操り噂話をする付喪神(つくもがみ)になったものもいた。お紅と清次は付喪神の声を何故か聞くことができて、町の騒動を解決していた。
ある時武家の次男坊である佐々木勝三郎が出雲屋を訪れる。勝三郎は、有力武家の蜂屋家に婿に入ることが決まっていたが、蜂屋家の跡取りに代々受け継がれてきた鼠の根付を無くてしまったという。勝三郎が言うには、「当時勝三郎宅には盗人が入って騒ぎになっていたが、鼠の根付が足を生やして逃げ出した」というのだった。勝三郎は町の不思議な騒動を解決しているお紅と清次なら、秘密裏に鼠の根付を探してくれると思った様子。清次は店の付喪神を貸し出し、情報を得ることにした。そこで蜂屋家が佐々木家よりも各上であることが発覚する。さらに勝三郎の婚約者である早苗には別の想い人がいる様子だった。
遊女が鼠の根付を持っているという情報を入手し、遊女らがいる岡場所から付喪神鼠の根付を取り戻した清次ら。鼠の根付は自分では逃げ出した訳ではないという。鼠の根付の証言から事件は、実家よりも裕福な家に養子に入る弟をねたんだ勝三郎の兄が仕組んだことだったと分かる。勝三郎は犯人が兄であることに気が付いていたが、縁談話が勝手に進む事に投げやりになっていたのだった。清次は付喪神から聴いた「早苗の思い人は別の人と結婚する」という噂を勝三郎に話す。「あなたと早苗はやはり縁がある」と諭された勝三郎は、縁談に前向きになって早苗とも上手くやろうと思うのだった。

梔子(くちなし)

古美術商の浜松屋宗右衛門(そうえもん)が、出雲屋を訪れる。宗右衛門は、店の蔵にある掛け軸の絵が毎晩入れ替わる事件を解決してほしいと依頼にやってきたのだった。清次らは宗右衛門の店に付喪神達を貸すことにした。宗右衛門の店の掛け軸の付喪神達らは、女の付喪神を巡って毎晩言い争いをしていたのだった。女の付喪神の正体は、竹取物語の絵物語のかぐや姫。かぐや姫の付喪神は、蔵から見えない月を毎晩求めていたのだった。
清次は出雲屋の満月が描かれた掛軸の付喪神である月夜見(つくよみ)を月に見立てて、かぐや姫の付喪神に月を見せることで、女の付喪神の気持ちを満たした。その結果かぐや姫の付喪神が毎晩出てくることも無くなり、他の付喪神達も争いを起こさなくなった。

撫子(なでしこ)

勝三郎の許嫁の早苗は、まだ結婚して家庭に入るご婦人というよりも幼い娘のような気持ちでいた。嫁に行く娘を案じた母のおたつは早苗を一人前の女性にしようと厳しく接していたが、早苗にはそれが不満だった。蜂屋家の屋敷に道具を引き取りにきたお紅は、早苗から母のおたつとの関係について相談を受ける。
かつて懸想していた相手がいた早苗だったがそれは若気の至りの一目惚れで、今は早苗なりに勝三郎との結婚を意識していた。お紅は自分にも一目惚れの経験があると伝える。付喪神の噂話でお紅に一目ぼれした相手がいることを知った清次。清次は血の繋がらない姉であるお紅にひそかに恋心を抱いたので、ショックを受ける。お紅は日本橋の生まれであり、実家が大火で焼けてしまった為、深川でもらいっ子として過ごしていた清次の家に引き取られて共に暮らすようになったのだった。
そんな時おたつから、勝三郎の茶会で早苗が使うための扇子を用立てて欲しいと出雲屋に依頼が来る。依頼を受けた清次は、おたつと早苗がぎくしゃくしている様子を目の当たりにする。その頃お紅は、町で香炉「蘇芳(すおう)」の行方を探していた。蘇芳はもともとは日本橋の大店の若旦那の持ち物で、若旦那はお紅との結婚を希望していたが、突然行方不明になっていたのだった。蘇芳はこの時手に入らず、お紅は店に戻ってきた。
店では、清次が早苗親子を仲良くさせるにはどうすればいいか悩んでいた。清次は櫛の付喪神「うさぎ」の「元々自分の持ち主は母娘が髪を梳かすために自分を使っていた」という話を聞き、妙案を思いつく。翌日櫛の付喪神「うさぎ」を持って早苗親子らに会いに行った清次は、櫛の付喪神「うさぎ」の由来を説明して、元の持ち主の母娘のように2人にも楽しく語らう時間を作ってほしいとお願いする。早苗親子は、おたつは婿を迎える幼い娘を心配する気持ち、早苗は自分のペースで婦人になりたいというお互いの気持ちを語り合い、仲直りに成功した。お紅の一目惚れの相手が町で見かけた櫛だと移動可能な付喪神野鉄(のてつ)の報告から分かり、一安心する清次だった。

焦香(こがれこう)

両国の呉服屋・近江屋の若旦那の幸之助(こうのすけ)が、出雲屋に最近よく顔を出していた。清次は、粋な遊びをしていると噂の幸之助がお紅を唆すのではないかと心配する。幸之助と酒席を共にする浜松屋に付喪神を貸し出し、幸之助の真意を探ろうと計画する。出雲屋の煙管の付喪神の五位と蝙蝠の形をした根付の付喪神野鉄は、酒の席でもつまらない振る舞いをしている幸之助の悪口をいっていると、突然印籠の付喪神に襲われる。
印籠の付喪神は幸之助の持ち物で、自分の名は焦香(こがれこう)だと名乗る。翌日道具を返しに来た浜松屋の持ち物に紛れ込んでいた焦香は、いかに幸之助が堅物か出雲屋の付喪神に語る。付喪神から「人間にはこれ以上話を聞かせられない」と店を追い出された清次は、偶然幸之助と会う。
幸之助は実は付き合いが苦手で酒席も嫌いという人物で、面倒を避けようとお金だけを払って先に帰っていたら、粋なことをする遊び人だという噂が流れていたのだった。幸之助は想い人である甘味屋の看板娘お花にも声を掛けられないほどのシャイで、甘味屋によく行く出雲屋ならお花のことを知っているのではないかと思って通っていただけだった。じれったく思った付喪神の五位はお花に縁談が来ていたと嘘の情報をお紅に伝える。お紅からお花の縁談話を聞いた幸之助は、一念発起してお花の元に足を運ぶ。そんな時浜松屋がお紅が探す蘇芳の香炉を持って出雲屋を訪れるものの、本物ではなく模造品だった。

深川鼠(ふかがわねずみ)

町に義賊のイタチ小僧が出現して、話題になっている。麻布の神社で願掛けすれば、イタチ小僧が何でも盗みだしてくれるという話だった。事件を追っていた岡っ引きの平蔵は、出雲屋を訪れ「出来心から出雲屋の姫人形・お姫が欲しいと願掛けしてしまった」と告白する。その日の夜出雲屋の姫人形・お姫はイタチ小僧に盗まれ麻布の神社に置かれるが、お姫も付喪神だった。
お姫は神様になって、イタチ小僧から義賊をしている理由を聞き出すことに成功する。イタチ小僧は、神社にお供えされていたサツマイモを勝手に拝借して生き永らえたという過去があり、恩返しで神社の願掛を成就させていた。付喪神のお姫は雑に扱われていた所を賊に盗まれたことで窮地を脱し、出雲屋に流れついたという過去があった。
イタチ小僧をかつて自分を救ってくれた賊に重ねて、肩を持つお姫。平蔵がお姫を麻布の神社から連れ帰った後もイタチ小僧に懸想するお姫を見て、お紅はお姫のことを心配する。お紅は清次に小僧のことを調べるようにお願いした。清次は、瓦版でイタチ小僧の活躍が実際の事件と異なることに気が付き、イタチ小僧の犯人が瓦版売りだと見破る。瓦版売りの元々の盗みの動機の真相は、瓦版売り上げアップだった。

碧瑠璃(へきるり)

ひょんなことから印籠焦香を川に落としてしまった幸之助とその場に居合わせた清次。焦香は代々幸之助の家に受け継がれてきた大切な物だった。慌てて探す2人だが見つからない。そこに焦香を拾ったという破落戸が現れ、「返してほしければ30両を用意しろ」と幸之助に要求する。お花によく思われたいと甘味屋で散財していた幸之助は、金の手立てがなかった。その話を聞いたお紅は、清次に何とかしてほしいと無茶ぶりする。
かつてお紅には、恋仲だった佐太郎(さたろう)がいた。しかし佐太郎には、親が認めた縁談相手がいた。縁談相手の娘は、「自分には値80両の蘇芳の香炉を佐太郎にプレゼントするだけの財がある」とお紅を挑発する。頭に来たお香は80両を稼ぐと宣言したものの、上手く行かず清次に頼っていたのだった。清次は、櫛からわらしべ長者のやり方で80両作ることに成功していた。今回も幸之助の私物をわらしべ長者方式で欲しい人と次々交換することで、わらしべ長者の作戦で30両を作った清次。焦香が無事帰ってきて一安心の一同だった。

裏葉柳(うらはやなぎ)

勝三郎から「自分の馴染みの料理人である徳兵衛が鶴屋という料理屋を出すことになったので、そのお祝いに出雲屋の道具を貸してほしい」という依頼を受けた清次たち。貸し出された付喪神達は、徳兵衛の店で女の幽霊を目撃する。話を聞いてた出雲屋の新入りの香炉の付喪神「裏葉柳(うらはやなぎ)」は、かつて自分が人間だったと語り、「日本橋の大火が原因で離ればなれとなった自分の妻が幽霊になったのではないか」と話す。
裏葉柳の妻は歌舞伎役者の中村菊之丞がする女形にそっくりの美貌だったという。日本橋の大火事といえば、お紅の実家も巻き込まれた事件だった。当時わらしべ長者方式の物々交換で80両の値打ちのある玉簪を用意していた清次は、店の再建資金に玉簪を売ればとお紅に提案したものの、玉簪を手放すことは縁談相手の娘の挑発に負け佐太郎との将来を断念することに繋がると断られた過去があった。そんな時再び出雲屋に徳兵衛が訪れる。徳兵衛は破格の値段で店を売ってくれた大久間屋をもてなすために品を貸してくれと依頼しに来たのだった。清次は幽霊の話を振るが、自分の妻を見間違えたのではないかと一蹴される。
しかし勝三郎に事情を聴くと、徳兵衛の妻は大火の後に長屋を追い出され、露頭に迷い妻を病気で失っていたことが分かる。実は徳兵衛を長屋から追い出したのは大久間屋で、徳兵衛は妻の幽霊が出る鶴屋をあえて購入し、復讐の機会を狙っていた。清次の「今を生きるべき」という説得で復讐を止めた徳兵衛。大久間屋は事情を知った出雲屋の付喪神達が幽霊の振りをして脅し、懲らしめた。その様子を見ていた徳兵衛の妻も成仏する。また清次は、当代の中村菊之丞が女形はしないことから、裏葉柳の妻が亡くなったのは相当な昔だったと推理する。人間だった頃の裏葉柳が体験した日本橋の大火は数年前ではなく、大昔の火事だった。そのことを知った裏葉柳も、成仏する。

江戸紫(えどむらさき)

海苔問屋・淡路屋の主である半助(はんすけ)は、気前が良く幸之助や清次にも非常に良くしてくれる。しかしなぜ自分によくしてくれるのか分からない幸之助は、半助に関する調査を清次に依頼する。清次は貸し付けた付喪神の情報から、清次の周りには5年より前の半助を知る者はいないこと、5年前に突然浅草に現れて海苔問屋として成功したことを知る。
出雲屋で昔話をしていた五位は、自分がかつて芸者に買われたことを話す。その芸者を気に入っていたある男が妻を捨てて、芸者と駆け落ちしたというのだった。それは5年と少し前の話で、妻がその後どうなったのか知る由もないとのことだった。清次は五位の話からその妻が半助だと見破る。半助は夫に去られた後、男装して生きていたのだった。清次は五位を持って半助の元に向かう。半助は幸之助に恋をしていた。しかし半助は想いを伝えず、このまま自分は男として生きると清次に伝えるのだった。

秘色(ひそく)

月夜見とお姫は、再び貸し出された鶴屋で蘇芳を探す梅島屋の若旦那と遭遇する。話を聞いた清次は、もしかするとお紅と恋仲だった佐太郎が梅島屋の若旦那ではないかと肩を落とす。当時佐太郎は日本橋の大火で実家を失ったお紅を救うために、蘇芳を売り払った代金を与えたというわさが流れていた。焦った母親から婚約者のお加乃との縁談を急がされて、行方不明になっていたのだった。鶴屋を訪れた清次は梅川屋のことを尋ねるが、鶴屋も知らないと言われる。
梅川屋の若旦那と話をしていたという浅川屋の主人に会いにいく清次。佐太郎の名前を出すと、偶然居合わせた権平という若者と梅川屋を訪れるように伝えられた。
清次は梅川屋から話を聞き、若旦那は飯田屋の息子ではあるが、佐太郎ではなく弟だと知った。清次は権平と佐太郎の実家の飯田屋に行くも、突然行方をくらませた佐太郎の話は飯田屋ではご法度でこれ以上のことは分からなかった。権平に付喪神の品を貸し出し、情報を集めようとする清次だったが、蘇芳が無くなった理由が分からないまま。調査を進める清次は、権平がお加乃の実家である住吉屋の従業員で、お加乃を想っている様子だと気が付く。お加乃は佐太郎をまだ思っている。お加乃の家の親戚にあたる浅川屋はお加乃を心配し、佐太郎探しを権平に依頼していたのだった。

檳榔子染(びんろうじぞめ)

20両もの借金の返済期限が迫って窮地に立たされていた出雲屋。借金のことはお紅らには内緒にしていたこともあり金を工面が難しい清次だったが、品を売ることはしたくなかった。その折付喪神うさぎの付いた櫛を売ってほしいという高田藩の勤番武士である上川が現れる。故郷に残してきた娘のために金に糸目は付けないと言ってきたものの、悩む清次。
清次の様子がおかしいことに気が付いたお紅とつくもがみたちは借金のことを突き止める。「うさぎを売るとは」と怒る他の付喪神だったが、うさぎ自身は「櫛として生きたい」と覚悟を決める。数日前から、付喪神の気配を感じる自称霊媒師が店を狙っていた。自称霊媒師は、店の秘密を探ろうと付喪神や店を襲う。付喪神が霊媒師と交戦する場に居合わせた上川。清次は上川に付喪神のこと、大切な付喪神は売ることはできないと説明し、上川も納得した。

似せ紫(にせむらさき)

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