
『ネスト』とは、2014年のスペイン・フランスのサスペンスホラー映画である。アパートの一室で起こる猟奇的事件を描くサイコスリラー。1950年代のマドリードで仕立て屋の仕事をしているモンセは、妹とともにアパートで暮らしている。広場恐怖症で部屋から出られないモンセは妹を頼りにしていたが、ある時、アパートの階段から落ちてケガをした男に助けを求められ、男を部屋に招き入れる。製作はアレックス・デ・ラ・イグレシア。有名映画『エスター』を凌ぐ衝撃のラストという煽り文句により話題となった作品。
『ネスト』の概要
『ネスト』とは、2014年のスペイン・フランスのサスペンスホラー映画である。2014年9月に開催された第39回トロント国際映画祭で初上映され、日本では2014年10月に開催された第11回ラテンビート映画祭で『トガリネズミの巣穴』のタイトルで上映された。また、2015年5月から6月まで開催された新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2015/カリテ・ファンタスティック! シネマコレクション2015」でも上映されている。
本作は、アパートの一室で起こる猟奇的事件を描くサイコスリラーである。
1950年代のマドリードで仕立て屋の仕事をしているモンセは、妹とともにアパートで暮らしている。広場恐怖症で部屋から出られないモンセは妹を頼りにしていたが、ある時、アパートの階段から落ちてケガをした男に助けを求められ、男を部屋に招き入れる。
監督は、本作が長編デビューとなるファンフェル・アンドレスとエステバン・ロエル。製作は『気狂いピエロの決闘』のアレックス・デ・ラ・イグレシア。出演は『スガラムルディの魔女』のマカレナ・ゴメス。
有名映画『エスター』を凌ぐ衝撃のラストという煽り文句により話題となった作品。ラテンビート映画祭2014最優秀作品賞受賞作である。
『ネスト』のあらすじ・ストーリー
モンセの閉ざされた世界
舞台は1950年代のマドリード。自宅のアパートの一室で仕立屋を営む中年女性のモンセは、妹と共に2人暮らしをしている。母親は妹を産んだ時に亡くなり、父親は14年前に戦争に行ったきり帰ってこない。その後、妹を女手ひとつで育てたモンセだったが、その精神は疲弊してしまった。父親の幻影に苦しめられ続けた彼女は広場恐怖症となり、自宅から一歩も外に出る事が出来なくなっていた。アパートの一室に閉じこもり、外との接触を極端に恐れているモンセにとって、唯一の外との繋がりは幼い頃から一緒に暮らしている妹しかいない。モンセは妹が外の世界に興味を持つことを許さず、彼女を束縛した。
一方、妹は18歳になり、美しく成長した。しかし妹も、自分を生んだことで母が死んだことを責め続けている。ある時、妹はモンセの目を盗み外で男と会うようになる。偶然その様子を窓から目撃したモンセは、妹を鞭で叩き、異常なほど𠮟りつけたのだった。
崩れていく平穏
そんなある日、アパートの上階に住む若い男性・カルロスが階段から転げ落ち、足を骨折。モンセに助けを求めてきた。モンセはカルロスに恐怖を抱きながらも、妹に内緒でカルロスを部屋に引き入れ、看病を始める。それはモンセにとって初めて自分の世界への侵入者であり、同時に孤独なモンセにとっては予期せぬ希望の光のようにも見えた。
男性に恐ろしい父親の影を重ねてきたモンセにとって、カルロスは初めて出会った紳士的な男性だった。2人は信頼を抱き、親しくなっていく。しかしカルロスを看病するうち、モンセは歪んだ愛情と執着心を募らせていった。妹がカルロスの存在を知ることを恐れたモンセは、カルロスがアパートを出ていくことを許さなかった。
破滅の連鎖
モンセはカルロスを監禁状態に置いた。そんな姉の行動におかしいと気づいた妹も、カルロスの存在を知るところとなる。
夜、妹はカルロスの部屋に入り、姉が与えている聖水にモルヒネが入っていることや、医者を呼んでいないことなどを彼に教えた。そのころには、カルロスの右足は壊死し、傷が悪化する一方だった。
モンセの部屋に刑事がやってくる。カルロスが失踪したため、話を聞きに来たのだ。一方、カルロスの婚約者で妊娠中のエリスという女性がカルロスの部屋を訪れていた。カルロスの部屋でエリサに遭遇した妹は、カルロスが自分の部屋にいることを教えた。エリサは妹を部屋に閉じ込め、姉妹の部屋に乗り込んでくる。カルロスを見られたモンセはエリサを殴り殺し、体を切断した。刑事がカルロスの部屋を訪れた際に逃げ出した妹が部屋に戻ると、死体はすっかり片付けられていた。
トガリネズミの巣穴
モンセは妹に父親の話をした。母の死後、父親はモンセのことをレイプしていた。幼い妹がレイプされることを恐れたモンセは、父親を毒殺したのだ。話を聞いた妹はモンセと抱き合い、泣いた。妹がカルロスの様子を見に行くと、彼の壊死した右足はベッドに縫い付けられていた。
客のプーリ夫人が、姪のウェディングドレスを仕立てるために部屋にやってきた。叫び声をあげるカルロスを黙らせるためモンセがその場を離れた隙に、プーリ夫人とその姪がエリスのバラバラ遺体を見つけてしまった。モンセは2人を殺害する。
殺害された2人の遺体を見つけた妹は、モンセを殴り倒して、カルロスと逃げようとする。カルロスの縫い付けられていた右足の糸を切り、抱え上げようとするが、モンセが起き上がって襲い掛かってくる。妹は咄嗟に、モンセをナイフで刺した。モンセは命乞いし、あなたの母親はあなたを生んで死んだのではない、と真実を告げる。そして、父親の死体のそばにあなたと一緒にいるお母さんの写真がある、と続けた。
それは封印された暖炉だった。そこには白骨化した父親の遺体があり、その側にはモンセと赤ん坊が写った古い写真があった。妹の母親はモンセで、父親との近親相姦で生まれた子だったのだ。
妹はモンセの遺体を抱きしめた。そしてカルロスの遺体を廊下に出すと、部屋に戻り、扉を閉めた。姉妹が暮らす、陰鬱なこの部屋こそ、トガリネズミの巣穴だったのだ。
『ネスト』の登場人物・キャラクター
主人公
モンセ(演:マカレナ・ゴメス)

仕立て屋を営む中年女性。精神的な病気によってアパートとの一室から出ることができない。死んだ父親の幻影に今でも苦しめられている。妹に対して異常な愛情と執着心を抱く。
その他の登場人物
妹(演:ナディア・デ・サンティアゴ)

年の離れたモンセの妹。18歳。姉を気遣う優しさを持つが、姉が引き入れたカルロスの存在によって歪みを見せるようになる。
カルロス(演:ウーゴ・シルバ)
アパートの上の階に住む男性。階段から落ちて足を骨折し、モンセに助けを求めたことをきっかけに、物語は悲劇的な結末をたどることになる。
パドレ(演:ルイス・トサール)
モンセの父親。戦争に行ったきり、姉妹を残して蒸発してしまった。