7番房の奇跡(韓国映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『7番房の奇跡(韓国映画)』とは、2013年公開の韓国のヒューマンコメディ映画である。
知的年齢が6歳の父(イ・ヨング)と6歳の娘(イェスン)は仲睦まじく二人で暮らしていたが、ある日父ヨングは警察庁長官の娘を殺した罪で捕まる。事件によって離れ離れになった親子だったが、同じ刑務所の7番房の仲間たちの手を借り父と娘は再会を果たす。
一方、刑務所の課長(チョン・ジニョン)は、ヨングの事件は冤罪である事を確信するのだが、冤罪を晴らすべくみんなの協力もむなしく、死刑が求刑されるのであった。

『セーラームーン』のポーズを決めるイェスン

『セーラームーン』を知らない7番房のみんなに、『セーラームーン』の、「正義の名の下に、お仕置きよ!」の決め台詞に決めポーズをするイェスンである。愛らしいイェスンの『セーラームーン』のポーズと歌に、すっかりと癒される7番房の仲間たちであった。
その後、このセリフは重要な意味合いを持つのである。成長したイェスンはまさに『セーラームーン』の様に正義の名の下に父ヨングの冤罪を晴らそうとするのである。模擬裁判の時、イェスンは「正義の名の下に、父をこの場で許します」と言うのである。この「許す」とは、理由はどうであれやってもいない罪を認めイェスンを一人ぼっちにしてしまった事に対する言葉であると推測できる。

イェスン「私のパパになってくれてありがとう」

イェスンを抱きしめるヨング

これは、ヨングの死刑が決まりヨングとイェスンの最期のお別れの日に、イェスンが言った言葉である。7番房のみんなからプレゼントを貰い、ヨングから欲しかった『セーラームーン』のランドセルをプレゼントされ、幸せいっぱいのイェスンは「私のパパになってくれて、ありがとう」と言って、丁寧に頭を下げる。その言葉に、ヨングは「パパの娘になってくれてありがとう」と返すのだった。
日本語吹き替えでは、このような表現になっているが字幕では「パパのお陰で生まれました。ありがとう」という表現になっている。6歳の子供とは思えない賢さと優しさである。
この行動に涙が溢れる人も多いのではないだろうか。

気球に乗るヨングとイェスン

7番房のみんなが作ってくれた気球に乗るヨングとイェスン

誰しもがヨングは冤罪だとわかっているにも関わらず、ヨングは警察庁長官から脅され罪を認めてしまった。そのせいで死刑が確定してしまう。
7番房の仲間たちは何としてでも、ヨングを外に逃がしイェスンと幸せに過ごしてほしいと願っている。そこでみんなで協力し巨大な気球を作って、ヨングとイェスンを逃がそうとするシーンである。
空を飛ぶ気球に乗って、楽しそうに皆に手を振る二人であったが、その後すぐに気球から伸びたロープが塀の有刺鉄線に引っかかって脱獄は失敗に終わる。気球の上から見た夕日はとても美しく二人は一時ではあったが、心穏やかな時間を過ごした重要な名シーンである。
「この風景もパパのことも忘れないで欲しい」と願うヨングであった。

『7番房の奇跡』の裏話・トリビア/エピソード・逸話

元ネタとされている韓国の冤罪事件

親子で仲良くセーラームーンのポーズをする二人

実はこの『7番房の奇跡』には、元ネタがあるとされている。実際の事件を元にはしているが、物語自体はフィクションである。
元ネタとされている事件は、警察のでっち上げにより15年もの間無実の罪で服役した冤罪事件である。
1972年に、江原道春川(チュンチョン)で漫画喫茶を営んでいたチョン牧師は、駅前派出所長の10歳の娘を強姦し殺害した罪で逮捕される。警察の拷問に耐えられずやってもいない罪を自白した。15年の間刑務所で過ごし、70代になった2007年にようやく「真実・和解のための過去事整理委員会」(真実和解委員会)の決定と裁判所の再審を経て、冤罪を晴らした事件である。映画ではチョン牧師にあたるヨングは死刑になってしまうが、実際の事件では模範囚として15年で出所している。

『7番房の奇跡』の主題歌・挿入歌

挿入歌:キム・ヒョン「달의 요정 세일러문(月の妖精セーラームーン)」

劇中流れるイェスンが大好きな『セーラームーン』の曲である。イェスンが踊ったり、歌ったり決めポーズをするシーンはとても愛らしい。
この曲は他にも重要な役割がある。序盤、警察庁長官家族との最悪の出会いがあったのだが、ヨングが警察庁長官に暴力をふるわれている時、テレビモニターからはこの曲が流れている。「決して偶然じゃないわ奇跡のセーラームーン」と歌う部分が流れるのだが、まるでこの先の悲劇を予感させるような歌詞である。警察庁長官との出会いは偶然ではなく後に最悪の冤罪事件に巻き込まれる羽目となる。だが7番房の仲間や課長との出会いがあり、みんなが奇跡を何度も起こしてくれたのである。悲しい結果を迎えるも、正義の戦士である『セーラームーン』に憧れた一人の少女イェスンが、後に正義の戦士となり、決めセリフである「月にかわってお仕置きよ!」(韓国では「正義の名の下にお仕置きよ!」)の通り、模擬裁判では見事父の冤罪を晴らす奇跡を起こしたのである。

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