さくらん(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『さくらん』とは、安野モヨコによる漫画、およびそれを原作とした2007年公開の実写映画作品。江戸時代の遊郭・吉原を舞台に、美しい容姿と強烈な気性を持つ少女・きよ葉が花魁へと成り上がっていく姿を描く。原作・映画ともに、華やかな遊郭の世界の裏にある過酷な現実を背景にしつつ、既存の価値観や運命に抗いながら「自分らしく生きる」ことを模索する主人公や、その周囲の人物たちの生き様を軸としたヒューマンドラマとなっている。

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『さくらん』の概要

『さくらん』とは、安野モヨコによる漫画、およびそれを原作とした2007年公開の実写映画作品。原作は『イブニング』誌上で連載され、コミックスは全1巻が刊行された。江戸時代の遊郭・吉原を舞台に、美しい容姿と強烈な気性を持つ少女・きよ葉が花魁へと成り上がっていく姿を描く。
2007年には、写真家としても知られる蜷川実花の初長編監督作品として映画化。主演は土屋アンナが務める。極彩色のビジュアルや現代的な音楽表現を取り入れた独自の映像スタイルが特徴で、従来の時代劇とは異なる感性で遊郭文化を描いた作品として注目を集めた。
また、原作では花魁になる前の段階で物語が終了していたものの、映画版では原作コミックスのその後の展開も描かれた。きよ葉が花魁に上り詰め、本当に愛する人物の存在を受け入れるというハッピーエンドに、多くのファンが胸を撫で下ろした。
本作がノミネートされた第31回日本アカデミー賞では、主題歌を手掛けた椎名林檎が優秀音楽賞を受賞したほか、優秀美術賞も受賞している。

原作・映画ともに、華やかな遊郭の世界の裏にある過酷な現実を背景にしつつ、既存の価値観や運命に抗いながら「自分らしく生きる」ことを模索する主人公の生き様を軸としている。

『さくらん』のあらすじ・ストーリー

華やかな世界とその裏側

遊女のきよ葉は、同僚の遊女を蹴ったとして店から折檻を受けていた。しかし、きよ葉は周りにあるすべてのことが気に入らないとうそぶき、反省する様子を見せることはない。
きよ葉は子どもの頃、身を売られてこの吉原の町にやってきた。桜が綺麗に咲く中、花魁の粧ひが町を練り歩いていたことを覚えている。禿として粧ひの下に就くことになったきよ葉だが、女だらけの世界で自分も同じように女になるのだと考えると、恐怖を感じて逃げ出してしまう。あっさり見つかって折檻を受けるきよ葉に、周囲は「逃げられない、諦めろ」と言葉をかけたが、きよ葉は「廓の庭にある咲かない桜が咲いたら、店から抜け出す」と密かに誓うのであった。
きよ葉は粧ひと客の情事を見てしまい、花魁になることにさらに恐怖を感じるようになった。「花魁になりたくない」とこぼすきよ葉に対し、粧ひは、なろうと思ってもお前には無理だと冷たく言い放つ。きよ葉は嘲笑われたことに腹を立て、思わず「花魁になる」と啖呵を切るのであった。やがて、粧ひは身請けが決まり、店を出ていくことになった。きよ葉は彼女から櫛を手渡され、それを譲り受ける。

遊女・きよ葉の初恋

成長したきよ葉は、楼主から情事での客の喜ばせ方を教えられた後、同僚の遊女である高尾の客のご隠居を相手にすることになった。しかし、相変わらず減らず口を叩いたきよ葉に対して仕返しをしようと、ご隠居は高尾に「きよ葉が気に入った」と嘘をついて彼女を折檻させるのであった。
ご隠居と突き出しを終えたきよ葉は、自然と男を喜ばす術を知っており、店の中での地位を上げていくようになった。
そんなある日、きよ葉は座敷で惣次郎という客に出会った。優しく穏やかな惣次郎はとても魅力的で、きよ葉は徐々に彼に惹かれていくようになる。

その頃、自身の情夫である光信が会いに来た高尾は上機嫌で過ごしていた。しかし、女性を描かないと言っていた浮世絵師の光信が、きよ葉の絵を描いていた事を知り怒り狂う。
一方、きよ葉は惣次郎に心を奪われ、他の客との情事に身が入らない日々を過ごしていた。客からの苦情も入ったことで、困り果てた店の女将は「大名の坂口を相手にしないと惣次郎と会わせない」ときよ葉を脅す。
そんなきよ葉を高尾は呼び出して惣次郎がいる部屋に通し、高尾の仲間が大名の坂口の部屋の前で、きよ葉は間夫の所に居ると告げ口をした。怒った坂口は店中を捜し歩き、きよ葉を見つけると頬を殴りつけた。それを見た惣次郎は、きよ葉に声も掛けずに遁走。きよ葉は自分を置いて逃げた情けない惣次郎の姿に、強いショックを受ける。

失恋と花魁就任

きよ葉は抜け殻のようになって過ごしていたが、店はそんな彼女を許してくれるはずもなかった。いつものように仕事をさせられていたきよ葉は、間夫に弄ばれたことを高尾にバカにされ、つかみ合いの喧嘩になってしまう。
腹の虫が収まらなかったきよ葉は、惣次郎に一目会いに行こうと決めた。雨が降りしきる中、別の店から出てきた惣次郎に会うが、彼は笑ってきよ葉を見るだけだった。きよ葉は惣次郎の態度に深く傷つき、一人川辺で泣き崩れた。そんなきよ葉を清次が迎えに来る。きよ葉は、2度と泣かないと誓うのであった。
一方、光信のことを愛するあまり苦しくなった高尾は、光信にカミソリを振りかざして迫っていた。光信は必死に抵抗し、このもみ合いが元で、高尾は命を落としてしまう。
こうして、きよ葉は店のトップとして花魁の道を歩む事になった。そして、いつか見た粧ひのように町の中を練り歩く。
花魁就任と同時に日暮と名を変えたきよ葉は、地位が上がろうとも、気の強さと口の悪さは相変わらずだった。しかし、そんな彼女は徐々に受け入れられるようになり、着実に遊女としての人気は高まっていった。

日暮の身請けと清次の縁談

ある日、清次に楼主の姪との縁談話が持ち上がった。楼主は、清次に店を継がせたいと考えているため、押し付けるように縁談を勧めてくるが、清次はあまり乗り気になれずにいた。
その頃、日暮のことを気に入った倉之助が、彼女の身請けを申し出る。妾などではなく、妻として日暮を守ると誓うが、彼女は頑なに「吉原に桜が咲いたらここを出る」と言い張った。これに対し、倉之助はたくさんの桜の木を持ってきて日暮にアプローチをし、宴の席で「日暮を妻にしたい」と店の皆の前で宣言する。
驚いた日暮は、宴の席をこっそりと抜け出した。気づいた清次はそんな日暮を追い駆けるが、体調が悪そうな彼女が妊娠していることに気がついた。清次は子供を下ろすようすすめるが、日暮は倉之助からの身請けの話を断り、殺されようとも子供と運命を共にすると決心していた。
その夜、清次が一人夜空を眺めていると、そこに日暮が面倒を見ている禿がやってきた。禿から「誰が死んだら悲しいか」問われた清次は、考え込む様子を見せる。

その頃、日暮は「誰の子かわからないが、産むつもりだ」と倉之助に伝えていた。心から彼女を愛する倉之助は、子供共々身請けをしたいと申し出るが、その時、日暮は突然腹痛を訴え倒れてしまう。
日暮は流産してしまっていた。悲しみに暮れる彼女には清次が寄り添い、つきっきりで看病をする。日暮が目を覚ますと、そこには自分を看病したまま寝入ってしまった清次がいた。日暮は清次に毛布を掛けてやると、また一人泣き、悲しみ始める。目覚めた清次はそっと彼女を抱きしめ、その心に寄り添うのであった。

咲かない桜が咲いた朝

やがて、日暮が身請けされる日がやってきた。それと同時に、清次が楼主の姪と結婚することも決まる。
日暮の元に、久しぶりにご隠居がやってくる。ずいぶん歳を取った彼は、「咲かない桜はない」とエールを送ると、日暮の腕の中で静かに息を引き取った。
旅立つ準備を終えた日暮は、「一本立ちしたら付けろ」と言い残して、かつての粧ひが自分にそうしたように、自分に従ってきた禿に簪を贈った。

身請けされる前日の夜だった。日暮は清次の元を訪ね、二人はこれまでの日々を懐かしんだ。そして互いに「幸せになれ」と声を掛け合って別れる。
早朝、咲かないと言われ続けていたあの桜の木の前で、清次と日暮は遭遇した。
その木には、小さな桜が一輪だけ咲いていた。

日暮と清次が脱走したという知らせが店を騒がせたのは、それからすぐのことだった。

裏切りを知った楼主は怒り狂い、女将は馬鹿な子達だと笑った。日暮のことを想う倉之助は、静かにほほ笑むだけだった。
日暮と清次は、満開の桜の下を走り抜けていた。顔には、二人揃って子どものような無邪気な笑顔を浮かべている。

『さくらん』の登場人物・キャラクター

主要人物

きよ葉(きよは)/日暮(ひぐらし)(演:土屋アンナ/小池彩夢)

本作の主人公。幼い頃に身売りされ、「玉菊屋」に売られてきた。禿として「とめき」のと名付けられ、当時の花魁・粧ひに付き従うが、自分以上に性悪な彼女のことを嫌っていた。粧ひと客の情事を見たことで強い恐怖感を感じて一度は逃げ出すが、彼女の口車に乗せられる形で「花魁になる」と宣言してしまい、遊女としての道を歩むことになる。
性格はガサツで、世のすべてに怒りを覚えているきらいがある。また、不条理を感じたり、気に入らない点があると、どんな相手でも暴力に訴えることがあるなど、いわゆるヤンキー気質な一面も。
客として相手した惣次郎を相手に初恋を経験し、手ひどい失恋を経験。悲しみ尽くしたのちに「自分で戻って来た」と言い放ち、悔しさをバネに花魁への道を歩み始める。
映画版では花魁に就任し、自身を気に入った倉之助から身請けを申し出られるが、自身と同じく強引な縁談を推し進められた清次と駆け落ちする道を選んだ。

清次(せいじ)(演:安藤政信)

玉菊屋の男衆で、遊女たちを監視・管理する番人のような役割をしている。きよ葉が幼い頃から玉菊屋で働いており、彼女が逃げ出すたびに連れ戻す役目を担っていた。
映画版では、原作よりもきよ葉と深い絆を育んでいる姿がクローズアップして描かれており、彼女が流産した際には付きっ切りで看病し、心身の傷を癒せるように尽力した。
玉菊屋の一人娘との縁談が決まり、後を継ぐように迫られていたが、きよ葉の身請けの日に駆け落ちをする。

「玉菊屋」の遊女・関係者

三雲(みくも)

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