電脳都市OEDO808(Cyber City Oedo 808)のネタバレ解説・考察まとめ

『電脳都市OEDO808』とは、1990年から1991年にかけて、マッドハウスによりOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)として制作された近未来SFアニメである。小説やコンピュータゲームもメディアミックスとして同時展開された。『妖獣都市』などを手掛けた川尻善昭が監督を務めた。西暦2808年の近未来、巨大な電脳都市「OEDO」を舞台に、闇に蔓延る悪を追う元犯罪者「機動刑事」が活躍するハードなストーリーが展開された。特に海外での人気が高く、本作をサイバーパンクアニメの代表作とする声も多い。

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MOLCOS

MOLCOS

OVA第2巻に登場する日本軍が極秘開発した超能力サイボーグ。「Maintain of Law civanetic organism suath(法秩序維持用 サイボーグ・スーツ。若干のスペルミスあり)」のイニシャルから命名されている。日本軍幕僚長「マシバ」がOEDOの治安維持権限奪取のために開発させた。人間の新鮮な死体を軍用スペックの強靱なパワードスーツに組み込み、電気刺激によって制御している。「犯罪者を圧倒的な武力で殲滅する」という軍事的な思想が色濃く反映されており、過剰な攻撃能力を備えている。伸縮自在の手足による強力な刺突攻撃に加え、死体の脳を強引に活性化させて超能力(サイコキネシス)を発現する。特に超能力は強力で、人間を簡単に圧死させ、鉄骨を空中で折り曲げるなどの驚異的な威力を誇る。

開発者「城山和夫」により、法を無視して犯罪者を殺害するなどテストを重ねられ、ついに本丸である機動刑事との直接対決に臨む。対戦相手となったゴーグルをその戦闘能力で終始圧倒し、視力を奪うなどして追い詰めた。しかし戦いの最中、鉄骨を叩く反響音が制御システムに深刻なエラーを引き起こす欠陥が発覚する。その後もゴーグルに深手を負わせるなど驚異の粘りを見せたが、ゴーグルの怒濤の拳打を浴びてついに沈黙した。結果的に比較対象だった機動刑事にあろうことか素手で「ノックアウト」されたMOLCOSは存在価値を失い、その開発計画も頓挫したと思われる。

吸血鬼ウイルス

宇宙空間でバラバラの肉片にされるも、テレポートで戻ってきて再生する西園寺

西園寺が違法研究者に金を与えて作らせ、人工冬眠施設に眠る無数の患者を実験材料にして完成した人工ウイルス。投与された人間の細胞を常に復元し老化の停止や若返りを実現する。さらに人間の潜在能力までも引き出し、超能力をも発現させる。実験段階のウイルスを投与されたレミは持病を克服し、空中浮遊(レヴィテーション)や念動力(サイコキネシス)を発現させた。完成版のウイルスを投与された西園寺は自在にテレポーテーションを繰り返し、バラバラの肉片にされても生き返るという怪物と化した。ただひとつの欠陥はウイルスが造血幹細胞を攻撃してしまう点である。よって常に外部から血液を摂取する必要がある。実験体だった「マスダ=レミ」が脱走したことで西園寺の陰謀が徐々に露見していった。レミの復讐を恐れた違法研究者が必死に作ろうとした「ワクチン」をゴーグルが完成したことにより、完全体の「吸血鬼」と化した西園寺はベンテンの手で倒された。ちなみに「ワクチン」とは感染症を予防するため投与対象に抗体を獲得させる医薬品のことなので、作中に登場するワクチンとは正確には「ヴィロファージ」のことと思われる。

『電脳都市OEDO808』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

センゴク「後は地獄で計算しろ!」

鬼気迫る形相でアマチに十手を突き立てるセンゴク

OVA第1巻の終盤。電脳摩天楼倒壊が迫りOEDOが大混乱に見舞われる中、センゴクはついに犯人の潜伏先である電脳摩天楼の最奥に辿り着く。そこには無数のケーブルが突き刺さるミイラがいた。犯人の正体は15年前に謀殺された「アマチ・ヨシカズ」だった。アマチの怨念がシステムとつながり、復讐のために電脳摩天楼を乗っ取っていたのだ。立ち向かうセンゴクだったが全ての行動パターンを読まれ動きを封じられる。絶体絶命の危機にセンゴクの闘争本能が目覚め、「新しいパターンをインプットしてやるぜ」と吐き捨てると、全ての攻撃を躱さず一直線にアマチに迫る。その蛮行はシミュレーションを狂わせ、アマチの攻撃は精度を失う。アマチを目前にしたセンゴクは「後は地獄で計算しろ!」と叫んで、その脳天に十手を突き立てる。アマチは沈黙し、電脳摩天楼の倒壊はすんでの所で回避された。野生が理論を上回った瞬間だ。

ゴーグル「お前らのチャンピオンはオレがノックアウトしてやる!」

対戦を前にノックアウト宣言するゴーグル。この後超能力サイボーグ「MOLCOS」を素手で本当に「ノックアウト」してしまう

ゴーグルのかつてのパートナー「サラ」は、軍に強要されゴーグルを裏切った上に、軍の差し向けた超能力サイボーグ「MOLCOS」によって殺される。全ては機動刑事であるゴーグルと、犯罪者を武力で殲滅せんとして造られたMOLCOSとの対戦のために仕組まれた陰謀だった。サラの無念を晴らすべく、ゴーグルは一見すると勝ち目の無いMOLCOSとの決闘に臨む。ゴーグルは高みの見物を決め込むMOLCOSの開発者「城山」を監視カメラ越しに睨み、「このカードの賭けは盛況か?お前らのチャンピオンはオレがノックアウトしてやる!」と不敵に言い放つ。超能力を振るうMOLCOSに終始圧倒されるゴーグルだったが、不死身を思わせる粘り強さで立ち向かう。偶然MOLCOSの弱点を発見し、ついに格闘戦に持ち込んだゴーグルは、鉄拳の猛打でMOLCOSを「ノックアウト」した。狂奔して駆けつけた城山をも斃し、サラの敵を取ったゴーグルだった。知性と腕力を併せ持つゴーグルの魅力がこれでもかと描かれた場面だ。

ベンテン「星の光と共に、旅をするがいい」

レミと別れのくちづけを交わすベンテン。そしてレミは星の光と共に旅立つ

ベンテンは宇宙に浮かぶ「冷凍治療施設」上で、完全体の「吸血鬼」と化した事件の黒幕、西園寺と対峙する。ベンテンは一度きりの切り札である対吸血鬼用「ワクチン」を使い、紙一重で西園寺を斃す。復讐が果たされたレミは吸血鬼の宿命から逃れるため、ベンテンに死を懇願する。苦悩の末にベンテンは、レミを睡眠カプセルで眠りに就かせる。ベンテンの脳裏にはレミと最初に出会った夜の思い出が浮かんでいた。星の光の不思議さに思いを馳せるレミに、ベンテンは「星の光は我々の元には留まってくれない。果てしない宇宙を飛び続ける」と語りかける。「暗い、孤独な旅路ね。終わりの無い」と顔を伏せるレミ。戯れのつもりだったあの夜のやりとりが、レミの孤独な心を抉っていたのを悟りながらも、ベンテンは彼女を永遠の宇宙の旅に送り出す。遠ざかるカプセルを見送りながら「だが、もう二度と眠りを妨げられることは無い。星の光と共に、旅をするがいい」と呟く。その目には悲しみと慈愛が浮かんでいた。クールを貫いてきたベンテンが垣間見せた人間らしさが印象的な場面だ。

『電脳都市OEDO808』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ハードロックにFワード連発が海外で大好評を得た『Manga UK版』

『Manga UK版』では、この麗人がまさかの下ネタを言い放つ

海外でも好評を得たOVA版だが、主に海外ファンが認知しているのは主に1994年にリリースされた『Manga UK版』である。オリジナルの日本版のBGMは「KAZZ TOYAMA」によるシンセポップが採用されているが、『Manga UK版』制作時にプロデューサーであるアンディ・フレインが、「おとなしすぎる」と物足りなさを感じた。新たにイギリスのセッション・ミュージシャン「Rory McFarlane」が起用され、彼の手によりBGMは全面ハードロックとメタル調に刷新された。そして英語に翻訳されたセリフも、「Fワード」や「Sワード」が飛び交う過激な意訳がなされた。結果としてこれらのアレンジはバイオレンスに満ちたサイバーパンクの作風と異様なまでにマッチし、英語圏で大勢のコアなファンを得ることに成功した。その後、約29年経過した2023年にリリースされたリマスター版Blu-rayでは、「UK版音声+UK版サントラ」が収録され、さらに「UK版サウンドトラック」が特典CDとして同梱された。このことからも『Manga UK版』の根強い人気がうかがえる。

過激な意訳の代表例としては、OVA3巻でのセンゴクとベンテンとのやりとりが非常に有名である。日本版では出動前の気の抜けた掛け合いに終始するのに対して、『Manga UK版』ではセンゴクが、「don't crap your pants if you see a Vampire out there(吸血鬼に出くわしてもビビってちびるなよ)」とからかい、それに対してベンテンが「Get lost. You wouldn't recognize a goddamn vampire if one jumped up and bit you on the end of your fucking dick. So just get off my back. (失せろ。お前は男性器の先に齧りつかれてもそれが吸血鬼だと気付けないだろうさ。オレにかまうな)」と涼しい顔でとんでもない返しをしている。このようなFワードやSワード満載のあまりに過激な意訳も、コアなファンのハートを掴んだ要因と思われる。

メディアミックスとしてギミックを最大限に活かしたゲーム&小説版

PCエンジンCD-ROM2用ゲームソフト『CYBER CITY OEDO 808 獣の属性』のタイトル画面

ゲーム版とOVAで脚本を手掛けた遠藤明範が執筆した小説版全3巻は、メディアミックスとしての強みを存分に活かし、高度に作り込まれた先駆的な展開を行っていた。小説版第1巻はゲーム版序盤の展開をなぞり、センゴクが機動刑事になるまでの顛末が描かれている。しかし続く第2巻・第3巻については、第1巻の裏で事件解決に奔走していたゴーグルとベンテンの姿が描かれており、第1巻およびゲームでは説明されなかった部分を補完している。すなわち、ファンにとってはゲームや小説第1巻の後に、小説2・3巻を読むことでこの物語の完成を見届けることが出来るという、凝ったギミックが搭載されていたのだ。このひとつの作品世界を複数のメディアによって立体的に相互補完するという手の込んだ展開は、1990年代としては非常に高度なクロスメディア戦略だった。

『メタルギア』シリーズの生みの親である小島秀夫も言及した本作の魅力

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