aus(Yasuhiko Fukuzono)の徹底解説まとめ

aus(Yasuhiko Fukuzono)とは2000年代エレクトロニカを象徴する東京出身の電子音楽家、レーベルFLAU主宰者。10代から実験映像作品の音楽を手がけ、2004年にaus名義で活動を始め、2006年にアルバム『Sonorapid』でインディーズデビューを果たした。2008年にアルバム『After All』を発売した後、自身の音楽活動は休止状態。2017年の空き巣被害を乗り越え、2023年に15年ぶりのアルバム『Everis』を発売した。

2023年2月22日に先行配信した、7thアルバム『Everis』(2023年4月26日発売)の収録曲「Swim」。Henning Schmiedt(ヘニング・シュミート)のピアノと横手ありさ(Arisa Yokote)のボーカルをカットアップし、通奏低音のドローンを響かせたフューチャリスティックなアンビエントジャズ作品である。

Until Then / それまで

2023年1月18日に先行配信した、シングル『Until Then / それまで』(2023年1月27日発売)のタイトル曲「Until Then / それまで」。Noah(ノア)のボイスと高原久実(Kumi Takahara)のストリングスが印象的な、7thアルバム『Everis』(2023年4月26日発売)収録曲「Past From」と同じ素材を使用している。

Landia

2023年3月8日に先行配信した、7thアルバム『Everis』(2023年4月26日発売)の収録曲「Landia」。ブルガリアン・ヴォイスの「Tebe Peem-za Ovchariya(羊飼いの歌)」を軸に、ヴィンテージオルゴールや祭り太鼓といったフィールドレコーディング音源、横手ありさ(Arisa Yokote)のボーカルなどを重ねている。

Make Me Me (feat. Grand Salvo)

2023年4月5日に先行配信した、7thアルバム『Everis』(2023年4月26日発売)の収録曲「Make Me Me (feat. Grand Salvo)」。オーストラリアのシンガーソングライターGrand Salvo(グランド・サルヴォ)をゲストボーカルに迎えている。

aus(Yasuhiko Fukuzono)の名言・発言

「最初は兄に聴かせることが目的でした」

UNCANNY(アンキャニー)のインタビュー記事[Interview]aus - “Everis”(2023年4月30日)での発言。ausは小学生の頃にエレクトーン教室に通っていて、ギターで曲作りを始めた兄の真似をして、鍵盤で曲作りをするようになった。

その兄とは映像作家TAKCOMこと土屋貴史(Takafumi Tsuchiya)。Perfume(パフューム)のMVやNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(2025年1月〜12月)のタイトルバックなどを手がけている。

「あの一件によって、音楽制作は完全にストップしてしまいました」

Mikikiのインタビュー記事「aus、残された音と記憶をつなぎ直して――15年の空白と窃盗事件の傷、総決算的新作『Everis』の裏側を明かす」(2023年5月25日)での発言。

2017年の事務所兼住宅の空き巣被害により、ausは機材と音源データをすべて失った。その機材とはYAMAHA(ヤマハ)のシンセサイザーEX5。10代で曲作りを始めたころから残していたデータを巻き戻せなくなったダメージが大きかったという。

「淡々となだらかな流れを追求しました」

UNCANNY(アンキャニー)のインタビュー記事[Interview]aus - “Fluctor”(2024年11月28日)での発言。

15年ぶりの復活を遂げた7thアルバム『Everis』(2023年4月26日発売)に続く8thアルバム『Fluctor』(2024年11月27日発売)は「様々な映像のために作っていたデモを再構築した作品」である。

そのアルバム『Fluctor』では「ダイナミックな展開を排除」することを意識し、「何も劇的に変わらない、ただ続いていく時間の中で静かに積み重なるものを表現」している。

aus(Yasuhiko Fukuzono)の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

アーティスト名ausの由来

aus(アウス)というアーティスト名をつけたのは早稲田大学2年生の頃。代表を務めていたサークルでコンピレーション作品を作ったときだった(発表の場は学祭)。

そのアーティスト名の由来はドイツ出身の女優&歌手マレーネ・ディートリヒ(Marlene Dietrich)の「Das Lied Ist Aus」(読み方:ダス・リート・イスト・アウス、意味:歌は終わった)という曲。ライブアルバム『Live at the Café de Paris』(1954年6月21日発売)の収録曲である。

空き巣の犯人は同業者

2017年、2回におよぶFLAUの事務所兼住宅の住居侵入罪・窃盗罪で逮捕・起訴に至った犯人は、2000年代のエレクトロニカを象徴する電子音楽家Ametsub(アメツブ)だった。

アルバム『Everis』は造語

6thアルバム『After All』(2008年12月12日発売)以来、15年ぶりのとなった7thアルバム『Everis』(2023年4月26日発売)。そのアルバム名『Everis』(エヴリイズ)は「ever+is」の造語である。「過去・現在・未来のすべてがどこかに存在している」といった意味が込められている。

高野文子の漫画作品集『棒がいっぽん』(1995年、マガジンハウス)収録の短編漫画「奥村さんのお茄子」、横光利一の短編小説『機械』(1931年、白水社)、黒澤明監督の映画『夢』(1990年、ワーナー・ブラザース)などの影響を受けて制作した。

渡辺和歌
渡辺和歌
@watanabe-waka

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