終の退魔師―エンダーガイスター―(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『終の退魔師―エンダーガイスター―』とは、四方山貴史によるバトルアクション漫画。2019年より『サイコミ』にて連載スタートした。美麗な絵柄にて描かれる映画のようなアクションシーンとグロテスクな描写で話題と注目を集め、コミックスがミリオンセラーを記録している。万台市という日本の架空都市を舞台に、魔物が跋扈する社会においてそれを討伐する存在である退魔師の活躍が描かれている。主人公の黒沢アキラは魔人に憑りつかれたドイツ人男性で、彼が相棒女性・淡縞千景とともに魔物退治に乗り出す物語である。

『終の退魔師―エンダーガイスター―』の概要

『終の退魔師―エンダーガイスター―(ついのたいましエンダーガイスター)』とは、四方山貴史によるバトル・アクション漫画。Cygamesが運営するウェブコミック配信サイト『サイコミ』にて、2019年12月1日より連載スタートした。同作品のコミックスは、「サイコミ×裏少年サンデーコミックス」版で17巻まで刊行されている。コミックスの累計発行部数は150万部を突破しており、ミリオンセラーを記録した。

『終の退魔師―エンダーガイスター―』は、原作者四方山貴史の映画好きの一面が前面に出た漫画として有名であり、「まるでハリウッド映画を観ているようだ」との高評価を得てきた。特に流れるようなコマ割りで展開されるバトルシーンが、同作品の見どころの1つと言われている。また、ホラーやオカルトの要素も強く、人体破壊やおぞましい魔物などグロテスク描写が多いことでも知られている。また、四方山貴史の卓抜した描写力によるキャラクターには「生命力が溢れている」という評価も多く、特にエロティックな女性キャラクターの人気が高いとされている。『終の退魔師―エンダーガイスター―』は、四方山貴史にとって2作目の連載作品であり、前作『VS EVIL(バーサス イビル)』の第2部という位置付けである。しかしながら、『終の退魔師―エンダーガイスター―』の連載が長期化していることと、人気の高まりによって同作品がメインストーリーになりつつある。

魔人に憑りつかれたドイツ人と日本人のハーフ青年は、紆余曲折を経て退魔師(エクソシスト)になり魔物討伐の任務に就いている。彼に今度課せられた任務は、日本の万台市に出現した超常現象「闇の柱」の調査だった。彼は黒沢アキラ(くろさわアキラ)と名乗り、日本へ密入国し日本の女性退魔師・淡縞千景(あわしまちかげ)をパートナーにして様々な事件や魔物と対決していく。

『終の退魔師―エンダーガイスター―』のあらすじ・ストーリー

プロローグ

日本での任務で「黒沢アキラ」を名乗れることが決まったミヒャエル。

20××年8月、ドイツで名うての「黒の射手」として活動していた退魔師の青年ミヒャエルは、退魔協会より新たな任務を課せられた。それは、日本へ行き3ヶ月前に起こった超常現象「闇の柱」の謎を解くというものである。「闇の柱」によって日本国内に跋扈する魔物たちの凶暴化が顕著となり、人間の社会生活が脅かされていたからだ。ミヒャエルは10年前、魔人に取り憑かれて大暴れしていたところを師匠(ししょう)という謎の黒人女性に制止された後に、彼女の勧めで退魔師になった過去があった。ミヒャエルはドイツの最後の任務オーガとコボルト討伐を完遂すると、名を「黒沢アキラ(くろさわアキラ)」と改めて日本行きの飛行機に乗り込む。ところが、飛行機が離陸して間もなく1つ目の不気味な魔物にハイジャックされてしまった。アキラは魔物を瞬殺するが、魔物は事前にパイロットを殺害して操縦系統を破壊していた。アキラは「物質の再構築」という特殊能力で機器類を再生させ、アテンド役の木場(きば)と協力して飛行機を海に不時着させることに成功する。自力で泳いで近くの港に辿り着いたアキラを出迎えたのは、日本退魔協会の女性退魔師である淡縞千景(あわしまちかげ)だった。

黒沢アキラ&淡縞千景の活躍

アキラは千景に連れられて、上司の東森琴次郎(とうもりきんじろう)と彼が営む協会のアジト「天然温泉ことや」を紹介された。2人がバディを組んだ初任務は、万台市和泉区の廃遊園地にはびこっている魔物の討伐だった。同地には既に総勢7人の退魔師と結界師が魔物駆除に向かっていたのだが、ピエロの姿をした魔物によって全滅の憂き目に遭う。アキラと千景はコンビを組んでの初戦とは思えないコンビネーションで魔物を瞬殺してみせた。ところが、今度はアキラの住む予定だった家が何者かによって破壊される事件が起きる。飛行機の1件もあって、アキラは自分の任務を邪魔する勢力がいることに気づいていた。ほどなくして東森がアキラの家を破壊した者の手がかりを掴み、アキラと千景は「闇の柱」発生地点付近を訪れた。そこで2人は150人以上をあの世送りにした女性殺し屋の鵺(ぬえ)と彼女の相棒・貉(むじな)と遭遇し、戦闘を余儀なくされる。鵺と貉の強さに手を焼いたアキラだが、鵺に殺害されそうになった直前に封印されていた魔人が目を覚まし、大暴走することで鵺と貉を追い払った。しかし、見境が付かないアキラは千景も殺害しそうになる。そこへ東森が現れて、新たに封印をかけることでアキラを呼び戻すことに成功するのだった。

立ちはだかる強敵たち

師匠の肝いりで退魔師になったアキラだったが、魔人に取り憑かれている彼の存在を良しとしない退魔協会の勢力もある。そのため、アキラの魔人が再発動した際には駆除の対象となっていることが明らかにされた。東森はそのような教会の排他的な考えに納得がいっていない。一方、アキラは千景を殺しかけたことを大いに反省しており、自分が魔人に憑かれた経緯を包み隠さず彼女に話して、再度相棒になってほしいと願い出た。千景は彼の申し出を受け入れ、2人は再びバディとして任務遂行に向けて動き出す。アメリカでは2人を狙う殺し屋ジョーとジョンのキャッスル兄弟と対峙して激闘の末にこれを退けた。また、アキラは人類最強とも評される霊操者の老龍(ろうらん)とも死闘を繰り広げており、彼らの前に立ちはだかる勢力の強大さに感づいていくのだった。

深まる謎

アキラと千景の任務が進んでいくにつれて、敵勢力の正体がおぼろげに見えてきた。アキラは、魔人に取り憑かれた時ドイツ連邦軍特殊作戦師団に所属していたが、その時彼の上官だったフォルカー=リヒターなる人物が現在は「レッド・アイ」と名乗ってアキラたちの反対側の勢力にいることが示唆されている。レッド・アイは、ドイツ連邦軍に属するずっと以前に中国にてゴドーという魔人と出会っていた。魔人とは、かつて世界を恐怖のどん底に陥れていた「魔神」が8体に分割・封印されたものであり、ゴドーやアキラの魔人をはじめとして8人存在することが明かされた。ゴドーは8人の魔人を目覚めさせて魔神を復活させ、自身がその中心になることを目論んでいるようだ。反対勢力の間で四面楚歌状態のアキラと千景だが、アキラと知己の仲である退魔師のユリウス・グナエウス・クラッススや激闘の末に共闘することとなったジャーと彼に取り憑く魔人のママウ、そしてアキラが異世界で出会った仄白あさひ(ほのしろあさひ)&霊の怨(えん)など、仲間を増やしてきた。かつて敵対した鵺と貉、キャッスル兄弟、老龍とも共闘することもある。しかしながら、アキラの良き相棒であるはずの千景が少女時代に何者かに洗脳されていることが判明し、アキラに危難が訪れるのだった。

『終の退魔師―エンダーガイスター―』の登場人物・キャラクター

主要人物

黒沢アキラ(くろさわアキラ)

本作品の主人公。年齢は不明だが、ドイツ人の父親と日本人の母親との間に生まれたハーフの男性。現在はS級退魔師で、「黒の射手」の通称がある。過去にドミニク=エイキ=ケンプファーと名乗り、来日直前はミヒャエルの名前で活動していた。見た目は黒髪であることから日本人っぽさを醸し出しているが、基本的にはドイツ人であり日本での生活を異文化として楽しんでいる節が窺える。「闇の柱」の謎を解く任務のため日本で退魔師として活動するにあたっての名前「黒沢アキラ(くろさわアキラ)」は、彼自身の希望で付けられた。幼少時より「クラヴ・マガ」という近接格闘術を習得していたことで身体・戦闘能力共に優れており、ドイツ連邦軍特殊作戦師団に在籍していたことがある。その時の任務でアフリカのヨハネスブルグを訪れた際に魔人に取り憑かれてしまった。その後、魔人の状態で暴れていた際に師匠(ししょう)に簡単に捕らえられたことで退魔師になった。魔人に取り憑かれた影響で、倒した魔物から奪った「魔煙(クルゥム)」という物質を常に身体に張り巡らせていないと生きていけない。しかしながら、魔煙を用いて物質を再構築できる能力を身に着けていて、武器から食料に至るまで生成する。趣味は映画鑑賞で、好きな映画のセリフを口にすることがしばしばある。ちなみに、「黒沢アキラ」の名前の由来は世界的な映画監督の黒澤明だと言われている。

淡縞千景(あわしまちかげ)

本作品のヒロインであり、もう1人の主人公ともいえる女性。年齢は不明だが、20代前半と推察されている。銀髪をアシンメトリーのショートボブカットにしており、涼しげな表情が印象的な美女。日本退魔協会に所属する退魔師であり、来日した黒沢アキラの相棒になった。空山少龍寺にて武術を学び、優れた格闘スキルを有している。また、霊装という強化装置のオタクであり、自作した耳レーダーなどの霊装を用いて戦闘を行う。耳レーダーには約20メートルの範囲に及ぶ霊気検知、生体スキャン、動体検知、脚力などの身体能力向上などの効果があり、短時間であれば単独飛行も可能。相手の攻撃を受け流して倍にして返す「キックバック」という特殊能力の持ち主でもある。家族は千景の少女時代に亡くなっているが、その際に敵方にある暗示をかけられており、一度はアキラのことを裏切って彼を窮地に陥れたこともあった。ちなみに、「淡縞千景(あわしまちかげ)」の名前の由来は、女優で元宝塚歌劇団娘役スターの淡島千景。

退魔協会関係者

東森琴次郎(とうもりきんじろう)

日本退魔協会所属の退魔師。クリント・イーストウッドに酷似した容姿の中年男性で、「万台市のイーストウッド」を自称している。普段は退魔協会加盟店である銭湯「天然温泉ことや」の店長職にある。性格は人懐っこくおしゃべりであり、普段から冗談ばかり言っている。黒沢アキラとの初対面時には、ことやの浴場にて半魚人風の仮面を被って背後から彼を襲うというお茶目な一面を見せた。また、メッセージ入りの自分のブロマイドを千景に渡して秒で彼女に破り捨てられていた。しかしながら、戦闘能力は非凡であり、空山少龍寺でマスターした武術と特殊能力「封印術」を駆使して戦う。魔人状態になって暴走したアキラを制止したり、老龍(ろうらん)と激闘を繰り広げるなど活躍シーンも多い。名前の「東森」はイーストウッドの和訳だと推察されている。

ebikuso
ebikuso
@ebikuso

目次 - Contents