荒くれKNIGHT(吉田聡)のネタバレ解説・考察まとめ

『荒くれKNIGHT(ナイト)』とは、吉田聡の漫画作品。1995年から2005年まで『ヤングキング』誌で連載され、2006年に『月刊荒くれKNIGHTマガジン』誌で再開。吉田の人気作品『湘南爆走族』と同じく、湘南を舞台にした暴走族をテーマにしつつも、生々しい暴力やセクシー場面がふんだんに盛り込まれ、より過激でアダルトチックな点が特徴だ。暴走族”輪蛇(りんだ)”の激しく残忍な闘争に背筋を凍らせながら、女子100人斬りを狙う輪蛇のリーダー、善波七五十(ぜんばないと)のお調子者的な言動も楽しめる。

『荒くれKNIGHT』(吉田聡)の概要

『荒くれKNIGHT(ナイト)』とは、日本の漫画家・吉田聡による暴走族をテーマにした漫画作品。1995年から2005年まで『ヤングキング』誌(少年画報社)で連載し、その後『月刊 荒くれKNIGHTマガジン』誌(少年画報社)で2006年1月号から再開され同12月号まで続いた。全28巻で完結。その後も『荒くれKNIGHT 高校爆走編(全11巻)』『荒くれKNIGHT 黒い残響 完結編(全20巻)』、『荒くれKNIGHT リメンバー・トゥモロー』など続編が続いている。また、同作品は、東映Vシネマの実写版『新・湘南爆走族 荒くれKNIGHT』が1998年にリリースされている(監督・成田祐介、主演・大滝純)。作品の中では”蛇”というモチーフが重要で、強さと戦いを象徴するものとして繰り返し強調されている。OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)化も行われている。

湘南最強最悪と恐れられる謎の暴走族チーム“輪蛇(りんだ)”と、輪蛇を取り巻く他の暴走族チームとの激しくも残酷な抗争劇と、輪蛇の3代目リーダーである善波七五十(ぜんばないと)のお茶目で破天荒な言動が物語の中心だ。“真夜中の太陽”という異名を持つ善波は、昼間は植木職人として真面目に働きながら、夜は神奈川県下の悪党の中の悪党を集めた超極悪チーム“輪蛇”を統率するストイックな顔を持っている。その一方、高校中退(後に休学と判明し、復学)の18歳でありながら、女性100人とのSEX(いわゆる“100人斬り”)を目指して日夜奮闘する“絶倫”お調子者の側面もある。”湘南界隈の全女性に愛されているはず”と善波本人は思い込んでおり、実際に自慢のバイクで公道を走れば、あちこちから女性たちの嬌声が起こる。実際に、少なくない女性たちからSEXを強烈にねだられる事もある。ただ、99人目のSEX相手だった一歳年上の妻で、箱入りお嬢さまの雛子(ひなこ)と結婚して以後も100人斬りの大台乗せを執拗に狙う善波だったが、雛子を慕う”輪蛇”の仲間や後輩たちに邪魔をされて、ことごとく失敗している。妻・雛子との間には、生まれたばかりの赤ん坊で一人息子のハジメがいる。

ストーリーは、高校生の春間勇樹(はるまゆうき)が身内のコネを使って(善波の妻・雛子の同級生が、春間の姉という関係)、強引に憧れの輪蛇に入ってからの、春間の目から語られることが多い。バイクテクニックと喧嘩に関しては一騎当千の強者が集まる“輪蛇”だが、それぞれが両親の離婚や貧しい生い立ちなど何らかの傷を心の内に抱えており、善波は時に「弱虫の集まり」と自嘲している。輪蛇の強みは、リーダーである善波の底抜けの明るさと圧倒的な喧嘩の強さ、それぞれのメンバーもみな番長格レベルの喧嘩の才能を誇っている事に加えて、頭脳明晰な大番頭の牧紅音(まきあかね)の巧みな戦略&戦術が挙げられる。さらに、所属するメンバーの実数を隠したり、輪蛇本体がピンチに陥ると何処からともなく幽霊のように出現する“裏輪蛇(うらりんだ)”と称する正体不明の別動隊を隠し持つなど、その得体のしれなさにも湘南最強神話の一端がある。また、輪蛇というチームは元々、湘南史上最強最悪の極悪チーム“がらがら蛇”を抜けたメンバーで旗揚げされているが、”がらがら蛇”からの脱出当初は、“がらがら蛇”に居残ったメンバーとの血で血を洗う闘争が行われた。折に触れて、その”がらがら蛇”の残党が、輪蛇に反感を抱く周囲の暴走族を煽って、あの手この手で輪蛇殲滅の罠を仕掛けてくる。

この作品はまさに1980年から1990年代初頭にかけて、現実社会において傍若無人にバイクを公道で走らせる、いわゆる暴走族がブームとなっていた影響を強く受けている。その周辺に存在する不良少年や不良少女を“ヤンキー”と呼んでいた時期もあった。

『荒くれKNIGHT』(吉田聡)のあらすじ・ストーリー

敵だらけの輪蛇包囲網

息子のハジメを肩に抱く善波七五十(ぜんばないと)。

警察に追い回されながら、夜通しで行われた暴走集会が終わり、暴走族チーム”輪蛇”(りんだ)の幹部である野口日出夫(のぐちひでお)は、厳しい警察の追跡もまいて、路地裏で一人ホっとひと息ついていた。そこへ、謎の集団が襲いかかり、野口は大怪我を負わされ、病院送りにされる。次いで、同じく輪蛇の幹部である藤木佳三(ふじきけいぞう)も輪蛇の溜まり場であるカフェに、一人でいるところを、謎の集団に襲われる。警戒心を強める輪蛇のリーダー、善波七五十(ぜんばないと)や参謀格の牧紅音(まきあかね)ら幹部の面々。そんな中、輪蛇に加入したばかりの新参者・春間勇樹(はるまゆうき)の元に、中学時代の友人・天野が久々に顔を出して、旧交を温める。実は、輪蛇の情報を春間から執拗に聞き出そうとする天野の背後には、暴走族チーム”夜行蟲(やこうちゅう)”の副総長・知地岩(ちぢいわ)がいる事が判明する。かつて善波との喧嘩で病院送りにされた知地岩から、輪蛇の情報を盗んでくるよう命令されていた天野は、旧友の春間をおびきよせ、罠にはめようとする。だが、春間は輪蛇の仲間である野呂や土門に間一髪助けられる。焦る伊地岩は、善波に負けっぱなしの苦い過去を払拭するためにも、輪蛇潰しに血相を変える。だが、知知岩は姿を見せない輪蛇の伏兵たちに手を焼き、知地岩に愛想をつかした夜行蟲の総長、足立に最後の最後で見放されてしまう。総長の足立が、知地岩の支援に動かないという情報を牧経由でキャッチした善波は、知地岩への総攻撃を決断。知地岩は自分の手下たちとともに、善波とその仲間たちに囲い込まれて、全滅させられる事となった。この際、中学時代は自分より強かった天野を、春間は容赦ない頭突きの連発で倒して、成長の跡を見せた。

3代目誕生就任前夜

輪蛇(りんだ)が2代目リーダーの木原篤(きはらあつし)の時代。湘南で猛威を振るう輪蛇に対して、なにかと挑発を繰り返して対抗意識を燃やす暴走族チーム”百目小僧(ひゃくめこぞう)”。その百目小僧に、独断で殴り込みをかけては、リーダーの木原に「勝手な真似はするな」と殴られ続けていた、輪蛇の下っ端時代の善波七五十(ぜんばないと)。木原は勝手に動き回る善波を叱りつけるも、百目小僧の挑発に黙ったままの木原の言動には納得できない善波は、なおも”百目小僧”狩りを続けて暴れ回る。そうこうする内に、”百目小僧”は、謎の多い輪蛇に対して、素性のわかっている輪蛇のメンバーのみに的をまずは絞り、一人一人への集団攻撃を執拗に仕掛けるようになる。”百目小僧”の背後関係を警戒していた木原だったが、”百目小僧”を裏で操っているのが巨大組織の”南部連合”の総長・安岡であり、輪蛇内部の情報を漏らしていた裏切り者の存在も判明するや、ブチ切れた木原は単独で”百目小僧”の群れに突っ込む。そして、”百目小僧”のリーダーの福士を倒したが、自らも深手を負ってしまう。木原だけでなく輪蛇全体の危機一髪の場面に陥ったが、まだ輪蛇加入前の牧紅音(まきあかね)や野呂定治(のろさだはる)らが破天荒に動き回る善波への興味から、輪蛇の援軍に加わって、形勢逆転。善波はそのまま、”百目小僧”の背後で暗躍していた”南部連合”に突っ込み、総長の安岡を倒す。この件を機に、牧や野呂は輪蛇に正式に加入することになり、3代目リーダーである善波の時代に徐々に移り変わっていく。

善波七五十、離婚の危機

何故かささいなことで、善波七五十と妻・雛子が言い争うようになっていた。自分のことを気にかけてくれない夫・善波七五十への不満を吐露する雛子だった。そんな折、父親が病で倒れたと聞き、実家に雛子は帰ることになった。そこで、知的な元彼と再会するなどして、それまで暴走族”輪蛇”のメンバーたちと交流していた波乱万丈の日々を遠い世界のように感じてしまう。かつての知的な環境に身を置いていた自分と、今の暴走族のメンバーに囲まれ生きている日常との落差に戸惑いを覚える雛子。一方の善波七五十は実は、頭が良くお嬢様だった雛子が、投げかけてくる日常のちょっとした会話が実は十分に理解できておらず、劣等感にさいなまれていた。雛子との会話を回避していたのではなく、馬鹿であることを知られて呆れられるのが怖かったのだ。当時、行きつけのカフェのマスターに「イタリアの首都は?」と問われた善波は大真面目に「ピザ」と答える場面がある。そんな時、善波は、高校の恩師・熊坂から、一般常識を身につけることで、元々地頭の良い善波はもっと人間として成長できるはず、と高校への復学を勧められる。悩んだ挙句、高校から放校される寸前だった旧友の国本が受ける退学回避のための特別試験を、善波も受ける事になる。だが、その運命の試験はわずか5日後に設定されているという。一念発起した善波は、雛子を喜ばせるためにも高校復学を決め、死の物狂いの猛勉強を始める事に。そして、その善波のやる気に、雛子も惚れ直す。試験の結果は善波92点、国本61点でそれぞれ合格。善波の高校復学と国本の退学回避、そして、善波夫妻も離婚の危機を乗り越えることが出来たのだった。

小田原事変、天空地獄編

小田原城下に位置する天山高校を仕切っている大鵬武蔵(たいほうむさし)が、かつての部下である海堂高の新田三郎(にったさぶろう)との勢力争いに、輪蛇の善波七五十を引き摺り込もうとする。全国の猛者1000人を倒す”千人喧嘩”という荒業をかつて達成した大鵬は現在、カツアゲなどのあこぎな手法で小田原城下を無慈悲な形で支配していた。だが、それに反旗を翻したのが新田だった。同じようにカツアゲで弱者から収奪する新田は、新たに千人喧嘩の荒業に挑戦しており、すでに998人まで達成している。大鵬は新田との勝負を決意して、表向きはその立会人として善波を呼び寄せたのだが、善波の付き添いで小田原に来ていた春間勇樹(はるまゆうき)がひょんなきっかけで新田の999人目の相手となり、空中で回転して相手を倒すという不思議な新田の技の前で破れてしまう。ちなみに、大鵬は実は、自分の代わりに善波を推挙して、新田と戦わせるつもりで、裏であれこれ策を練っていたのだが、善波はそれを承知で、新田との戦いに臨む。善波にしては珍しく1vs1の戦いだったが、なんとか新田を撃破する。ついでに大鵬も殴り倒して、その場を去る。

『荒くれKNIGHT』(吉田聡)の登場人物・キャラクター

暴走族チーム”輪蛇(りんだ)”

善波七五十(ぜんばないと)

真夜中の太陽。善波七五十。

輪蛇3代目リーダー。乗っているバイクは”KAWASAKI 750 RS-Z2”で、異名は”真夜中の太陽”。喧嘩最強で負け知らずだったが、輪蛇2代目リーダーの木原篤(きはらあつし)に喧嘩で敗れる。その後も挑戦を繰り返すが、歯が立たず、輪蛇へ加入する。一つ歳上の妻・雛子(ひなこ)との間に生まれたばかりの一人息子ハジメがいる。女性とのSEXに目がなく、”100人斬り”をライフワークに掲げているが、99人目の妻・雛子で記録はストップ中。コンドームの束を口にくわえ、バイブや大人のおもちゃを両手に握りしめながら、バイクで疾走するお馴染みのシーンに喝采を浴びせるファンは多い。晴山造園に勤務していたが、妻・雛子を喜ばせるため、約1年半ぶりに高校に復学する。18歳。

春間勇樹(はるまゆうき)

輪蛇の4代目リーダー候補。春間勇樹(はるまゆうき)

あだ名は”白骨街道のパシリ”。乗っているバイクは”HONDA LEAD”。中学時代は、湘南を我が物顔に暴走するチーム輪蛇(りんだ)に憧れて、”追っかけ”をしていた。高校に入ってから、姉のコネ(善波の妻・雛子が、春間の姉の同級生)を使い、強引に輪蛇入りを決める。自称「元気だけが取り柄」という春間だが、輪蛇入り後の成長は著しく、当初は喧嘩も負けてばかりのひ弱さが目立っていたが、徐々に力を蓄え、物語の後半部では善波の跡を継ぐ4代目リーダー最右翼に。

牧紅音(まきあかね)

悪魔の電卓。牧紅音(まきあかね)

あだなは”悪魔の電卓”。乗っているバイクは”DUCATI 900MHR”。善波の懐刀。中学時代の旧友によると「頭脳明晰で、成績はクラス1、運動神経は抜群で、文武両道」だったという。小学生の頃、授業中にお漏らしした女生徒の異変に牧だけが気づき、教室に設置されていた水槽をひっくり返して女生徒を水浸しにしてお漏らしを隠してあげた”武勇伝”がある。当時は先生に叱られ同級生から非難を浴びたが、牧は何も語らずポーカーフェースのままだった。ちなみに、その女性徒はそれ以来、ずっと牧を慕い続けていたという。

藤木桂三(ふじきけいぞう)

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