パンティ&ストッキングwithガーターベルト(パンスト・PSG)のネタバレ解説・考察まとめ

『パンティ&ストッキングwithガーターベルト(パンスト・PSG)』とは2010年に放送された日本のアニメ作品。パンティとストッキング、二人の天使のゴースト退治を描いたアクションコメディである。アメリカのカートゥーンアニメを彷彿とさせる絵柄と過度な下ネタ表現、様々な作品のパロディネタが盛り込まれ、エッジの効いた作風を特徴とする。第15回文化庁メディア芸術審査委員会推薦作品に選出された。

ストッキング「例え天界を敵に回してもいい あなたと一緒なら地獄に落ちても平気よ」

告白を受けるストッキング

エピソード17「ゴースト 〜ダテンシティの幻〜」にてストッキングが恋に落ちたパトリック・ファグリィに向けて自分の想いを伝えた言葉。ゴーストを好きになってしまったストッキングは、天使としての使命をパトリックに伝えた上で「例え天界を敵に回してもいい あなたと一緒なら地獄に落ちても平気よ」と自分の気持ちに正直に生きることを決めた。この言葉がきっかけとなりパトリックにも心境の変化が芽生えるが、恋が成就することは彼が成仏する条件であったため、ストッキングと彼が駆け落ちすることはなかった。

パトリックのクズな面が目立つため、クズ男を好きになってしまったストッキングの姿がコミカルに描かれるエピソードとなっているが、それでも一人の人を一途に愛するという点では、その他のパンストの物語とはかなり気色の異なるエピソード。パトリックが成仏したその後のラストシーンでは、変わらずゴースト退治へと向かうストッキングが描かれるが、彼女の部屋には彼からもらった指輪が今も飾られている印象的なシーンとなっていた。

ガーターベルト「いつしかワシは悟った この苦しみの中にこそ真の喜びがあるのだと」

過去の時代を生きたガーター

エピソード23「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ガーターベルト」にて、ガーターの回想ナレーションで発していた言葉。ありとあらゆる悪行を行いのし上がった彼は死後、天界から死ねない体にされた上で、地球の歴史を追体験させられる生き地獄を味わうこととなる。気性の荒かったガーターはこの試練に抗い続けるが、人類が幾度となく繰り返してきた繁栄と滅亡、創造と破壊、生と死をその身を持って経験したことで、考えが変わっていった。

その際に発した「いつしかワシは悟った この苦しみの中にこそ真の喜びがあるのだと」という言葉には、愚かな人類は争いを繰り返し滅んでいく運命にあるが、それを悲観せずに今を生きることが大事だというメッセージ性を持ち合わせている。人類史そのものという想像を絶する経験を経たガーターが言うからこそ、強い意味を持つ名言である。

パンティ「ビッチってのはな 何にも縛られねぇ いや、縛れねぇ自由な生き様なんだよ」

ビッチの生き様を語るパンティ

最終回となる13話の前半、エピソード27よりパンティのセリフ。前エピソード26にて、「リバイバル・バージン・シンドローム(通称:天使処女膜再結合症候群)」を患い天使としての力を失い、セックスすることができなくなってしまったパンティ。一度は田舎町の牧場で彼女らしからぬ純朴な生活を送っていたが、目を背けていたダテンシティの危機から逃げ出さないことを決め、ヘルズゲートを開けようとするコルセットたちの元へ向かった。
力を失った今何ができると煽るコルセットに対して、パンティは「ビッチってのはな 何にも縛られねぇ いや、縛れねぇ自由な生き様なんだよ」と自分が処女になろうと、天使の力を失おうともビッチであると自身のアイデンティティを宣言した。

品性下劣なパンティたちが暴れ回る「パンスト」というアニメ。しかし、そんな彼女らがルールを破りやりたい放題で地上を楽しむ姿は、見ている人に清々しさを感じさせる。パンティがビッチでありながらも自分の生き様に誇りを持つこのシーンは、一見自分にとって欠点に見えがちな部分すらも肯定してくれるような言葉である。加えて、正しさの良し悪しを超えて、痛快な面白さを追求した本作の魅力を表した名言だと感じる。

『パンティ&ストッキングwithガーターベルト(パンスト・PSG)』の裏話・トリビア・小ネタ

ストッキングが裏切るラストは海外ドラマのクリフハンガー由来

最終話にて究極のゴースト、ジ・アザー・ゴッズの封印に成功し難を逃れたパンティたち。しかし、ラストシーンでストッキングの裏切りが描かれ衝撃的な幕切れとなった。このシーンは海外ドラマなどで多用されるクリフハンガーをパロディにしたものだと言われている。非常にシビアなアメリカのテレビ業界は、シーズンの結末をあえて綺麗に完結させず、先の気になる展開にするクリフハンガーという手法が多々用いられる。この手法で視聴者の関心を引き、次シーズンを継続するかどうかの判断に影響を与える売り上げの向上を見込むことが可能である。
しかし、次シーズンの構想があったとしても売り上げ成績が悪ければ、もちろん作品は打ち切りとなり、物語の完結は視聴者の想像に委ねられてしまうというデメリットも存在する。こういったリスキーさも持ち合わせた手法で作品を終わらせた本作は、続編にGOサインが出ようとも打ち切りとなろうとも、どちらにせよパロディであると感じさせる「パンティ&ストッキング」らしさの詰まったラストであったと言える。

名作映画をパロディした各話サブタイトルと元ネタ

エピソード5のアイキャッチ

各エピソードのサブタイトルは、往年の名作映画やドラマタイトルをオマージュしたものとなっており、冒頭でサブタイトルが提示されるアイキャッチもその作品を意識したものが多い。それぞれのエピソードタイトルと元ネタを紹介していく。

エピソード1「仁義なき排泄」:深作欣二監督作『仁義なき戦い』。菅原文太が主演する任侠映画の金字塔的作品である。
エピソード2「デスレース2010」:ロジャー・コーマン製作のカルト映画『デス・レース2000年』。無名時代のシルベスター・スタローンが出演している。
エピソード3「ミツバチのざわめき」:名匠ビクトル・エリセ監督によるスペイン映画『ミツバチのささやき』。
エピソード4「セックス・アンド・ザ・ダテンシティ」:大ヒットテレビドラマシリーズ『セックス・アンド・ザ・シティ』。その人気を受け劇場版も公開された。
エピソード5「キャットファイト・クラブ」:デヴィッド・フィンチャー監督作『ファイト・クラブ』。アイキャッチも元ネタの石鹸にタイトルが印字されたものとなった。
エピソード6「パルプ・アディクション」:クエンティン・タランティーノ監督作『パルプ・フィクション』。ユマ・サーマンによる映画ポスターは非常に有名である。
エピソード7「ダイエット・シンドローム」:ジェーン・フォンダ主演作『チャイナ・シンドローム』。原子炉事故を描いた社会派サスペンス映画。
エピソード8「ハイスクール・ヌーディカル」:ザック・エフロン主演の人気ミュージカル映画シリーズ『ハイスクール・ミュージカル』。
エピソード9「ハナムプトラ」:ブレンダン・フレイザー主演の『ハムナプトラ』。3作品が公開されたシリーズものである。
エピソード10「ヴォミッティング・ポイント」:元祖カーチェイス映画『バニシング・ポイント』。
エピソード11「悪魔のような女たち」:ヌーヴェル・ヴァーグの生みの親アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督による『悪魔のような女』。
エピソード12「トランスホーム」:人気アニメシリーズ『トランスフォーマー』。2007年にはマイケル・ベイ監督により実写映画化された。
エピソード13「現金に裸体を張れ」:『現金に体を張れ』。『シャイニング』などの名作を産んだスタンリー・キューブリックのハリウッド1作目である。
エピソード14「…オブ・ザ・デッド」:ジョージ・A・ロメロ監督作『ゾンビ』。原題の『Dawn of the Dead』を由来としたサブタイトルになっている。
エピソード15「一匹の怒れるゴースト」:シドニー・ルメット監督による法廷サスペンス映画『十二人の怒れる男』。
エピソード16「天使が水着に着替えたら」: 馬場康夫監督による『彼女が水着にきがえたら』。原田知世と織田裕二が出演している。
エピソード17「ゴースト〜ダテンシティの幻〜」:ジェリー・ザッカー監督のロマンスホラー映画『ゴースト/ニューヨークの幻』。
エピソード18「インナーブリーフ」:ジョー・ダンテ監督のSF映画『インナースペース』。映画の内容と同様にパンティたちがブリーフの体内に入る展開が描かれた。
エピソード19,20,21「チャック・トゥー・ザ・フューチャー」:ロバート・ゼメキス監督作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。元ネタと同様に三幕構成で描かれる。
エピソード22「HELP!二人はエンジェル」:ビートルズの出演映画『ヘルプ!4人はアイドル』より。ミュージックビデオ風に曲と映像が流れるエピソードとなっている。
エピソード23「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ガーターベルト」:セルジオ・レオーネ監督によるギャング映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』。
エピソード24「ナッシング・トゥ・ルーム」:スティーヴ・オーデカーク監督のコメディ映画『ナッシング・トゥ・ルーズ』。ティム・ロビンスが主演を務めた。
エピソード25「D.C.コンフィデンシャル」:カーティス・ハンソン監督の『L.A.コンフィデンシャル』。ラッセル・クロウとガイ・ピアースの出世作となった。
エピソード26「パンティ+ブリーフ」:シェイクスピアの原作を現代風に甦らせ、レオナルド・ディカプリオが主演務めた映画『ロミオ+ジュリエット』。
エピソード27,28「ビッチ・ガールズ」:マイケル・ベイ監督のデビュー作『バッド・ボーイズ』。元ネタの続編を引用し28話は「ビッチ・ガールズ2ビッチ」となっている。

『天元突破グレンラガン』のメインスタッフたちによる打ち上げ旅行で生まれた企画

『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』は監督を務めた今石洋之をはじめ、GAINAX制作2007年放送のアニメ『天元突破グレンラガン』から多数のスタッフが参加した作品となった。それもそのはず、本作は『天元突破グレンラガン』メインスタッフが作品の打ち上げ旅行を行い、旅先で企画が生まれた作品である。旅行先のホテルで、冗談的に始まった企画会議では、野球を題材にしたスポ根ものの案が出ていたが、その端でプランナーの若林広海、コーディネートのコヤマシゲト、コンセプトアートの吉成曜などのメンバーが海外ドラマのような作品を作りたいと話しはじめたことが発端となった。次々と天使と悪魔が戦うカートゥーン風のアニメというアイディアが出揃い、副監督を務めた大塚雅彦がそちらの話に合流した際には、すでに企画書が出来上がっていたと当時のスタッフたちから語られている。

『パンティ&ストッキングwithガーターベルト(パンスト・PSG)』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):Hoshina Anniversary「Theme for Panty & Stocking」

パンティ&ストッキングwithガーターベルト OP(オープニング)

『パンティ&ストッキング with ガーターベルト』のOP(オープニング)ソング。軽快なテンポで本作のキャッチーなタイトル「パンティ&ストッキング」の歌詞フレーズが多用されるこれまたキャッチーな楽曲となっている。作詞作曲、歌はHoshina Anniversaryが担当した。

本作で使われる楽曲はBGM含めて全て音楽プロデューサーの☆Taku Takahashiが携わっており、作品全体を通してエレクトロみ溢れるダンスミュージックの傾向が強く出ている。

ED(エンディング):Mitsunori Ikeda「Fallen Angel feat.Aimee B」

パンティ&ストッキングwithガーターベルト ED(エンディング)

本作のED(エンディング)テーマ、「Fallen Angel」。作詞LISA、作曲LISA&Mitsunori Ikeda、歌をAimee Bがそれぞれ担当している。軽快で盛り上がるOPとは違い、ゆったりしたテンポでしんみりと歌い上げられる曲である。全編英詞の歌詞も、神からの救済を渇望するビターな内容である。

エンディングで挿入される映像は、本作よりもさらにデフォルメされたパンティとストッキングが恐ろしい怪物に襲われたり、巨大な回転刃で真っ二つにされそうになったりとポップな絵柄に反して残酷な描写が目立つ。曲の終盤には、飢餓状態になった二人が鳥の大群に襲われ天に昇っていく様子が描かれた。このことから、天使となるパンティたちの生前の記憶が描写されている説が浮上するが、それが公式から確定的であるという情報は流れていない。

ま
@miteru_you

目次 - Contents