モブ子の恋(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『モブ子の恋』とは、田村茜による漫画。『月刊コミックゼノン』(ノース・スターズ・ピクチャーズ)にて、2016年11月号に読切掲載後、2017年5月号から連載されている日常系恋愛漫画作品。
広島県を舞台に物語の”脇役”として、過ごしてきた主人公・田中信子の初めての恋を描く作品。大学生ふたりの片思いから、両思い、そして遠距離恋愛を経て恋を育むふたりの、もどかしくも応援したくなるような恋愛ストーリーで、2023年5月に実写映画化が発表されている。

『モブ子の恋』の概要

『モブ子の恋』とは『月刊コミックゼノン』(ノース・スターズ・ピクチャーズ)にて、2016年11月号に読切掲載後、2017年5月号から2018年9月号まで連載され、2018年よりウェブコミック配信サイト『コミックタタン』(コアミックス)で連載しているは田村茜による恋愛漫画作品。
舞台は、広島県広島市のとある街。20年間、ずっと片隅で“脇役”として過ごしてきた田中信子(たなかのぶこ)は大学に通いながら近くのスーパーマーケットでアルバイトをしている。物語はこの大学とスーパーマーケットを中心に進んでいく。アルバイト先で出会った同じ大学生の入江博基(いりえひろき)に芽生えた、初めての恋心。積極的な行動が苦手な中、勇気を振り絞って一歩ずつ距離を縮めようと努力し、恋を実らせた後、二人が恋を育む様子も描かれる。やがて二人は大学を卒業し、それぞれ就職先の愛媛松山市役所と広島の大学院に舞台が移る。

主なストーリーとしては、アルバイトをする大学生、信子と入江、二人のリアルな恋愛模様。
多くの恋愛マンガは、幼馴染や同級生に恋をして…が描かれがちだが、アルバイト先で出会うというのも大学生の恋愛としてリアルといえる。
奥手なモブ・脇役2人の恋模様。ふたりとも初めての恋・初めての恋人とのやりとりはすべてが可愛く思える一方で、読者としては「むずむず」しながら「きゅん」としてしまうシチュエーションが多くでてくる。例えば、LINE(作中ではRINE表記)のやりとり1つでも、「今送ったら迷惑かな?」「なんて送ればよいのだろう?」という信子の悩みは、好きな人ができたばかりのタイミングで誰しもが考えてしまったことがあるだろう。「好きな人にどう接したらよいかわからない」「嫌われたらどうしよう」「迷惑じゃないかな?」など相手を思うからこそ進展させることができないもどかしい登場人物たちの恋愛模様はきゅんきゅんしてしまう。
そして、「モブ子」の習性として度々でてくるのが人とのコミュニケーションも苦手であるという点。
それは、信子だけでなく、入江にとっても苦手であるということが度々描かれる。そのふたりが、バイト先の仲間・友人や同期や上司とどのような関係を構築していくのか、が描かれている点もリアル。

2023年5月に実写映画化が発表された本作。漫画で多くの男女を共感に包んでいる本作は、実写映画作品も注目が予想される。

『モブ子の恋』のあらすじ・ストーリー

両片想い編(1〜4巻)

水族館へ行ったことをきっかけに距離を縮めていく2人(左が田中信子、右が入江博基)

主人公である田中信子(たなかのぶこ)が入江博基(いりえひろき)と出会い、徐々に距離を縮めていく様子が描かれる。主な舞台は、二人のアルバイト先であるスーパーマーケット。
二人が自身の恋心に気づき、初めてのデートや告白までとても丁寧に描かれる。

信子は大学に入学し、アルバイトを始め、人見知りながら、仲間と仕事に慣れよう奮闘していた。そんな中、高齢のお客様に重い荷物を家まで運んでほしいと言われてしまった際、入江が代わりに運んでくれたことを忘れられずにいた。当初は、想っているだけでよいと感じていた信子だが、アルバイトの後輩安倍(あべ)から、そのまま想いを伝えないままでよいのか、と諭され告白を決意する。
実は安倍は、同じクラスにすごく仲の良かった友人に想いを寄せていたが「仲の良い友人のままでよい」と告白せずにいたところ、相手は別の女の子と付き合うことになってしまったという過去があった。信子には同じような経験をしてほしくない、と思い、安倍は信子を応援していた。
一方入江も、信子がいい人だとは思っていたが、ただの同僚としていい人だと思っていた。しかし、アルバイトの先輩である金子(かねこ)が、「誰かの事を考えてニヤニヤしちゃったら…それが恋だよ」と言われたことをきっかけに、信子を思うと自然と微笑んでしまう自分に気づいたのだ。
ふたりは、そんなアルバイト先の仲間とともに、水族館に行ったことをきっかけに、二人だけでデートをし、映画やカフェでのデートを重ね、お互いの気持ちを伝えで両思いとなる。信子・入江ともに付き合いたい、という思いではなく、自身の気持ちを伝えたいという思いから、想いを伝え告白し晴れて両思いであることが判明。めでたくふたりは付き合うこととなった。

初めての恋人編(5〜10巻)

晴れて両思い、恋人同士になった信子と入江の二人の様子が描かれる「初めての恋人編」。

付き合い始めてから、アルバイト終わりに二人で帰るようになるが、初めての恋に戸惑い、お互い思っていることを言えなかったり気まずい雰囲気となってしまうことも。不器用ながら、入江を元気づけようと大学での出来事や、早川芙美子(はやかわふみこ)の話をするが、うまく話すことができず、入江に気を使わせてしまうことも。その空気を打破するため、二人はお互い浴衣で花火大会に行く。そして初めて手をつなぎ、ハグをし、あらためてお互いが大切な存在であることと、初めての両思い・恋人で緊張してしまう、どうしたらよいのかわからなくなってしまっていたことを吐露し、絆を深めていく。

信子・入江ともにアルバイト先の仲間にもお互いが付き合い始めたことを伝える。二人とも、このような時は公にするべきか、と悩むのだが、相談してもらったお礼も兼ねて結果を伝えたのだ。
そして、時を同じくして、アルバイト先では、信子と同じレジ担当して、新しく男子高校生、大野(おおの)がアルバイトに入社し、信子が教育係になる。もちろん信子にそのような気はないが、大野は、優しく丁寧に教えてくれる信子に好意を抱くようになった。それに気づいた入江は、大野に「田中さんって彼氏いるんですかね?」と聞かれ、「田中さんは俺と付き合ってます」と堂々と伝えた。

大学4年生編(11〜13巻)

順調に関係を築いていく二人が大学4年生となり、卒業後の進路に悩む姿が描かれるのが「大学4年生編」。
もともと公務員志望だった信子は、民間企業の併願を決意し就職活動をスタート。
慣れないスーツやメイクに四苦八苦しつつ、就職活動のための勉強や試験に忙しくなる信子と、卒業に向けた研究・論文発表と、大学院進学準備に追われる入江はすれ違いが多くなる。だが、少しの間でも電話や会いながらお互いを励まし合う。信子は、民間企業の就職活動もしながら、短い期間に広島県庁と、地元愛媛の市役所の試験を受ける。その間に入江は広島県内の大学院に進学を決めたため、信子は卒業後も一緒にいられるように広島県庁を第一志望としていたが、残念ながら、広島県庁は落ちてしまった。卒業後は広島と愛媛の遠距離恋愛を続けていくこととなった。

卒業・遠距離恋愛を前に、二人は金沢に卒業旅行に行くことに。楽しい思い出を作ることはもちろんだが、そこで出会った社会人カップルの様子をみて、少し将来が不安になってしまった二人だが、お互いきちんと思っている事を伝える、話すことで乗り越え、入江が大学院を卒業したら結婚しよう、という約束をしたのだ。

社会人編(14巻〜)

実家のある愛媛に戻り社会人となった信子と、広島に残り大学院で学ぶ入江。

信子は市役所内の「市民窓口課」配属となる。ここは転入・転居転出届や住民票・マイナンバーカード関連の手続きなどを行う窓口で市役所の顔とも言える場所。これまでのアルバイト先での経験や、入江とのやりとりで成長したとはいえ、多くの人と関わることになるため、信子は不安を覚えるが、同期や先輩に支えられながら信子は成長していく。
そして、同時に「遠距離恋愛」に関わる悩みも丁寧に描かれている。

初めての環境で、市役所の中でもとくに市民との関わりが多い「市民窓口課」ですぐに戦力に慣れないことが失敗してしまうことに落ち込む信子だが、同期や先輩に支えられ、徐々に社会人として成長していく。同期の青池芽衣(あおいけめい)、隅明日香(すみあすか)、塩谷朔也(しおたにさくや)とは、歓迎会で同じテーブルとなり仲良くなり、仕事終わりに一緒に御飯を食べにいったり、休日に一緒んいでかけることも。そこで仕事はもちろん恋愛の悩みを打ち明けていく。
一方入江も、大学院で研究を熱心に続けるが、悩む信子にすぐに会いに行けなかったり自分の知らない同期とのやり取りにモヤモヤしてしまう。しかし、オンライン通話や電話でのやりとりで、卒業旅行で話していたようにお互いの気持ちをきちんと伝えることで、距離を乗り越えて絆を深めていくのだった。

『モブ子の恋』の登場人物・キャラクター

主要人物

田中信子(たなかのぶこ)

本作の主人公。愛媛県出身の大学生。広島の大学に通いながら、近所のスーパーマーケットでアルバイトをしている。
地味で大人しく、目立つのが苦手、見た目もパッとしない。非常に真面目な性格な一方で、コミュニケーションが苦手で、人見知り。よくいえば「気を使いすぎ」でどうしたらよいかわからなくなって戸惑ってしまうことも多い。しかし、アルバイト先での仕事は丁寧で、店長や、お客さんからの信頼も厚い。
そんな彼女が、アルバイトを始めたばかりの頃、困っていた信子を助けたことをきっかけに、信子は彼に恋をしている。もちろん、奥手な彼女にとってこれは初めての気持ち・初めての恋であったため、最初は、信子自身も恋と気づいていなような淡い好意であったが、アルバイト先の仲間として距離が近づくにつれ、恋と気付き、悩みながらも成長していく姿が描かれる。

入江博基(いりえひろき)

信子と同じ大学で同学年。広島県出身で信子のアルバイト先の同僚。真面目で誰に対しても分け隔てなく優しく温和な性格。
入江自身も、そもそもの恋がどのようなものか、わかっていない、いわゆる「奥手」な男子大学生であったが、アルバイト先の先輩である金子の「誰かのことを考えてニヤニヤしちゃったら…それが恋だよ」という一言で自身が信子に恋をしていたことに気づく。自身でも気づかないほど長い間信子を目で追っていたこと、実際はもっと早い段階で恋に落ちていたことに気づく。恋人同士となった後、関係を深めたいと思う一方、信子を大切に思うからこそ、ゆっくり信子のペースに併せ二人の関係を進展させている。
大学卒業後は、大学院に進学研究の傍らインターンや就職活動も行っている。信子が愛媛で就職した今、結婚を考えたとき自分はどこで就職するのが一番よいのかを悩んでいる。

アルバイト先の仲間

安部(あべ)

信子のアルバイト先の恋バナ好きの後輩。とても明るく社交的な性格で人見知りもしないため、アルバイト先の先輩・後輩ともすぐに仲良くなっている。また、彼女発信で水族館に出かけたり飲みに行くなどアルバイト内での交流が活発に行われるようになった。ちなみに、この水族館に出かけたことをきっかけに、入江が信子を映画に誘い、二人は初めてのデートにいくこととなる。
最初は、安倍の明るい性格に戸惑っていた信子だが、徐々に距離が縮まり、恋愛に奥手な信子がたびたび相談を持ち掛け、安倍はその度に答えを導くヒントを示している。

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