その女、ジルバ(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『その女、ジルバ』とは有間しのぶが『ビックコミックオリジナル増刊号』2011年7月号から2018年9月号まで連載していた漫画、およびそれを原作としたドラマ作品。大型スーパーの倉庫で働く薄井新は40歳独身。老後の不安から高齢BARで見習いホステス「アララ」として働き始める。もう中年だと人生を諦めていたアララもお客からはヤングギャル扱い。皆で歌い、踊り、お店に溶け込むにつれアララは生きる希望を取り戻していく。第23回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞。2021年に池脇千鶴主演でドラマ化し高評価を得ている。

『その女、ジルバ』の用語

「ORD JACK&LOSE」に関連する用語

アララ

笛吹新の源氏名。お店の面接に来た新の名前の響きから「あらた」を「アララ」に聞き間違えられ命名される。語源はポルトガル語の「コンゴウインコ」で、昔ジルバが青い風船をみてつぶやいた青いアララとは「スミレコンゴウインコ」を指す。

ジルバ

星ちはまの源氏名。アメリカ南部発祥のダンス「jitterbug(ジッターバグ)」を語源とした和製英語である。2人が組み合わないで踊る4分の4拍子の速いテンポのダンスのこと。アメリカの大不況時代少年少女の間で流行する。ステップにはほとんどきまりがなく、アクロバット的な動きを取り入れ自由に踊る。

ORD JACK&ROSE

アララが勤務する高齢バーの名前。ジルバが40歳で立ち上げた頃のお店の名前は「Dance&Bar JACK&ROSE」で、最盛期には20人以上のホステスとダンサー達が働き住み込んでいた。現在は元ダンサーの高齢ホステスたちが歌い、踊る笑いの絶えないお店。

当店名物ラインダンス

(右から)ナマコ、ひなぎく、くじらママ、チーママ、エリー。(後方)アララ。

おめでたい事があるとチーママの音頭を取り始まる、ホステスたちによるお店の名物「ラインダンス」。高齢ダンサーならではの身体への労りから、椅子に座ったり、青竹をふみながらダンスを披露する。動きを表すオノマトペは「ヨボヨボ」が多い。
アララはおみそ(下っ端)なので楽器や照明でお姉さまたちをサポートする。

その他の用語

勝ち組・負け組

太平洋戦争終結時、ブラジルでも日本の敗戦を伝える玉音放送が流れたがほとんどの人が正しく内容を理解できなかった。逆に「日本の勝利宣言」と勘違いした人が「戦勝ビラ」をまき、日本移民の9割が日本戦勝を信じてしまう。この日本が戦争に勝ったと信じた人々を「勝ち組」、ポルトガル語を理解したりして日本の敗戦を認識した少数派の人々を「負け組」と呼ばれた。

アイドル演歌歌手 日川ひよし(ひかわ ひよし)

ジルバが生前おっかけをしていたアイドル演歌歌手。ブロマイドやグッズを買い、店のホステスたちと一緒に地方のコンサートに遠征に出かけたりとかなり入れ込んでいた。6月18日の「移民の日」にはお店の皆でジルバの写真をかこみ、カセットテープで日川ひよしの曲をかけ賑やかに過ごす。
代表曲は「ひよしの土性骨音頭(どしょうぽねおんど)」である。

『その女、ジルバ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

くじらママ「楽しめばいいのよ。この世には遊びに来たの。踊って転んだら笑ってそれで80年よ。」

オーナーのダンス教室に誘わるが、「でも、あたしオンチで運動神経ゼロ。物覚えも悪いんです。」と迷うアララにくじらママは「楽しめばいいのよ。この世には遊びに来たの。踊って転んだら笑ってそれで80年よ。」と言う。深みを感じる良い言葉だがナマコから「ボケ前提みたいな人生ね。」と突っ込まれると、「間はしょってるのよ!!色々あるのはいいじゃない!!」と立腹した。

人生の苦楽を経験したであろうくじらママが言うからこそ、ダンスを始めるのを躊躇するアララにとって説得力がある頼もしいセリフである。

アララ「もしかしたらよ?思いきって言うけど、40歳なんてすごく若いんじゃないかな。」

見習いホステスになっておしゃれと明るさをとり戻していたアララに感化され、身なりを気にしなくなっていたみかとスミレが久しぶりの化粧をし新しい服で出社する。照れて自分たちを卑下する言い方をしたみかとスミレに、「あたしね、ここに来た時もう人生終わったなと思ったし、オバサンと呼ばれてオバサンだと思ってたけど、」と前置きしてから、「もしかしたらよ?思いきって言うけど、40歳なんてすごく若いんじゃないかな。」と発言するアララ。

「爆弾発言?」と聞いたアララに「うん。」と返事をする二人。そしてスミレはカバンから黒酢を取り出し、「中高年の滋養と強壮に。」「爆弾発言に乾杯!!」と三人で盛り上がるのである。

世間一般ではオバサンの年齢である40歳に、若さを表明するというアララの勇気は世の中に賞賛されるべきであろう。

七子「母ちゃん!!」

施設にいた幼少の七子をジルバが面倒を見始めた頃。土手の上でジルバを待っていた七子は、ジルバの姿を見つけ間違えて「母ちゃん!!」と叫ぶ。驚いた表情の後「あんたの母ちゃんじゃないって言っただろ。帰るよ。」と七子の頭をなでスタスタと歩き出すジルバ。その顔は悲しみをこらえきれず大粒の涙が流れていた。
ジルバに「ごめんね。もう言わないね。」と大きな声で呼びかける七子。「そうしておくれ…」と言い涙目の七子を抱きしめるジルバ。

亡き我が子の事を想い、七子に対して「安心しな。あたしはあんたの母ちゃんじゃないよ。」と一線を引いていたジルバの葛藤と慟哭が現れているシーンである。

アララ「ええ!!私はあの時のタヌキです。」

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