轟世剣ダイ・ソード(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『轟世剣ダイ・ソード』(ごうせいけんダイソード)とは、長谷川裕一の漫画作品。同氏の代表作の1つである。1993年に『コミックコンプ 』で連載が開始されるが、同誌が翌年に廃刊となったため『少年キャプテン』に移籍。さらに終盤の物語をコミックス1巻分まるまる描き下ろしにするという方法で完結した。
「泡の中央界」という異世界に、校舎ごと転移してしまった九江州中学校の生徒たち。異世界の巨大ロボットこと「神の武器ダイソード」に選ばれた1年生の百地王太を中心に、彼らは地球への帰還を目指していく。

『轟世剣ダイ・ソード』の概要

『轟世剣ダイ・ソード』(ごうせいけんダイソード)とは、長谷川裕一の漫画作品。『マップス』や『クロスボーン・ガンダム』シリーズに並ぶ、同氏の代表作の1つである。
「多人数による異世界転移」という異色のコンセプトを持ち、「武器に変形する異世界の巨大ロボット」や「“異世界の物質”であるため大地に反発して浮き上がり、主人公たちの移動拠点となる校舎」など、長谷川らしい奇抜にして印象的なアイデアが多数詰め込まれている。長谷川はロボットの変形については「完全な変形にできなかった、構造的な嘘を描いてしまった」と悔やんでおり、この反省が同氏の後のロボット物作品に活かされることとなった。

1993年に『コミックコンプ 』で連載が開始されるが、その翌年に同誌が廃刊となったため1995年に『少年キャプテン』に移籍。1年ほど連載を続けた後、「そろそろ新作を描いてくれ」と編集部から打診されたため、物語の終盤をコミックス1巻分まるまる描き下ろしにするという方法で完結した。
単行本は完結部分まで発売されたが、この『少年キャプテン』も廃刊となったため、文庫版は講談社が発行する形となっている。都合3社に渡って発表された、非常に珍しい経緯を持つ作品である。

剣と魔法の世界「泡の中央界」では、「神の武器」(ゴッドフォース)を手に入れた北国が他国に対して侵略戦争を繰り広げていた。白き常魔の国テルテ・ウィタスは、北国の神の武器に対抗するため、最強の神の武器たるダイソードを手に入れようと画策。敵の目を欺くために異世界を通過しての移動を試みるも、北国にこれを捕捉されて追っ手を送り込まれる。
そんな「泡の中央界」の争いに巻き込まれる形となった九江州中学は、550人の生徒たちと校舎ごと地球から消滅。気が付いた時には泡の中央界で、「テルテ・ウィタスに与する者」として北国の攻撃を受けることとなる。この時、1年生の百地王太(ももち おうた)が偶然からダイソードの契約者(ソウル・マスター)となり、北国の部隊を撃退。生徒会長の千導今夜(せんどう こよい)を中心に、王太たちは地球への帰還を目指して大冒険を繰り広げる。

『轟世剣ダイ・ソード』のあらすじ・ストーリー

九江州中学校の異変

神の剣ダイソード(1コマ目)。頭部が操縦席になっており、目の間から王太の顔が覗いている。

剣と魔法の世界「泡の中央界」では、「神の武器」(ゴッドフォース)を手に入れた北国が他国に対して侵略戦争を繰り広げていた。白き常魔の国テルテ・ウィタスは、北国の神の武器に対抗するため、最強の神の武器たる「神の剣ダイソード」を手に入れようと画策。ダイソードは「かつて神に反逆し、その罰として“300年に1度人間と契約して7回だけ力を貸す”という呪いを受けた」存在であり、そろそろその「300年に1度の契約」が行える時期になるはずだった。
ダイソードとの契約という使命を受けて、テルテ・ウィタスから出立した少女ユーリナ・タ・カラは、敵の目を欺くために異世界を通過しての移動を試みる。しかし北国にこれを捕捉され、追っ手に追いつかれた現場でもある異世界(=地球)の建物とその中にいた人々ごと泡の中央界に転移する。

この建物こそは九江州中学校(くえすちゅうがっこう)であり、中にいたのは総勢550人の中学生たちだった。北国の送り込んだ怪物たちとの戦闘の中、教職員は全員が死亡。生徒たちはパニックに陥るが、1年生の百地王太(ももち おうた)が偶然からダイソードの契約者(ソウル・マスター)となったことで北国の部隊を退けることに成功する。
ユーリナは彼らを巻き込んだことを詫びるが、「異世界への転移の魔法は自分には使えない、テルテ・ウィタスの魔法使いに頼むしかない」と説明。北国の攻撃をかわしながらテルテ・ウィタスまで行くしかないと判断した生徒会長の千導今夜(せんどう こよい)は、生徒たちをまとめ上げて適地を突破する大冒険を始める。“巨大な異世界の物質の塊”である九江州中学校の校舎は、泡の中央界の海や大地に反発して浮かんでおり、これが彼らの移動拠点となった。

頼れる大人も無く、強大な国家に狙われるという非常事態に誰もが恐怖を感じていたが、それ以上に未知の世界への好奇心にみんな胸躍らせていた。

神の武器の襲撃

「神の武器を手に入れて侵略戦争を開始した」とされる北国だったが、実際には「神の武器たちが北国の王や重鎮たちを殺害し、国を乗っ取った」状態だった。かつてダイソードが神に反旗を翻した際、神の側に立って立ち向かった神の武器はそのほとんどが打ち砕かれていた。長い時を経て再生を果たした彼らはこれを恨み、「人間を駒にして戦争を楽しみつつ、ダイソードに復讐してやろう」と考えていたのだった。
しかしダイソードへの恨みの強さは様々で、北国に与する神の武器の1つでありながら「どうしてあんなに簡単に負けたのか分からない、もう1度戦ってその理由を確かめたい」という程度にしか考えていない神の盾「ヨゴ」のようなものもいた。ダイソードに破れ、改めて彼の力を知ったヨゴは降伏し、敗者の義務として王太たち九江州中学校の生徒たちに協力するようになる。

一方、神の刀「サン・ジュオウ」はダイソードへの憎悪を燃やし、「どれほど時が経とうと、世界がどう変わろうと、ダイソードの存在を決して許さない」とすさまじい執念を発揮する。サン・ジュオウの力はダイソードとほぼ互角で、そのすさまじい力に王太たちは追い詰められるが、火山の爆発に巻き込まれたことでなんとか逃走に成功するのだった。
しかし、この時乗り込んできた北国の兵士たちにより、ユーリナと相当数の女生徒たちが拉致される。今夜は「このまま危険な旅を続けていいのか」と悩むが、一部の男子生徒が「女子を見捨てて地球に帰れない、彼女たちを救出したい、自分たちが北国に向かうことを許してほしい」と訴えたことで残った全校生徒が奮起。多数決の末、九江州中学校は連れ去られた女生徒の救出のためにテルテ・ウィタスではなく北国へと進路を取る。

ダイソードの過去

北国へと向かう旅の途中、王太はダイソードで敵と戦う中で今夜と一緒に九江州中学校の仲間たちとはぐれてしまう。目的地である北国に向かえばどこかで合流できると考えた王太たちは2人で旅を続け、これまであまり知らなかった互いの本来の姿を知り、次第に親しくなっていく。
旅の途中にあった村でシズクという女性神官を助けた王太は、彼女から「ダイソードはかつて神に反逆した際、神の武器の中でも特に親しい関係にあった神の聖杯タ・カラを真っ先に打ち砕いた」という話を教えられる。神の武器の中にユーリナと同じ名前の存在がいることに王太たちは驚くが、実は彼女こそはかつてダイソードと共に神に立ち向かったタ・カラの精神が生まれ変わった存在だったのである。

泡の中央界を作った神は傲慢かつ獰猛にして血を好む性質で、彼が神の武器を作ったのも「人間の数がある程度増えたら、神の武器に命じてそれを蹂躙する」ためだった。ひたすらにその作業に従事していたダイソードだったが、ある時勇敢にして清廉な“冬の鳥”という人間の青年と出会う。家族を守るためにダイソード立ち向かった冬の鳥は、仲間たちと協力して彼にわずかながらに傷をつけ、「自分が人間に負けたのか」と大いに感服させる。
冬の鳥という人間に興味を持ったダイソードは、彼を通して人間について学び始め、「自分が負けたのは、冬の鳥が大切なものを守るために戦っていたからだ」と知る。改めて冬の鳥の、そして人間の持つ強さと偉大さに敬意を抱くダイソードだったが、その矢先に冬の鳥の村は全滅。ダイソードが冬の鳥と懇意にしていることを知った神が、それを不快だと判断して神の武器たちに村を襲わせたのだった。これに激怒したダイソードは、怒りのままに神に戦いを挑む。

タ・カラは「神の武器の修復」を担当する存在で、彼女が健在である限り神の武器たちは無限に再生する。ダイソードの「神を許せない」という意志を感じ取ったタ・カラは、真っ先に彼に倒されることでその戦いをサポートしようとしたのだった。神の武器をことごとく打ち破って神の前に迫るダイソードだったが、その前に“たった今完成した、最新の神の武器”であるサン・ジュオウが現れる。彼こそは、神が冬の鳥の魂から作り出した存在だった。
サン・ジュオウとなった冬の鳥は、「自分の村が襲われたのは、ダイソードが神の武器を招き入れたからだ」と信じ込んでおり、その冷たい殺意を前にダイソードは苦戦。ほぼ相打ちのような形で両者は倒れるも、ダイソードは最後の力を振り絞って神に一撃を加える。これに腹を立てた神は、「お前に人間の下らない本性を教えてやる」と言って、彼に“300年に1度目覚めて人間の下僕となる”呪いをかけたのだった。

北国での決戦

北国で九江州中学校の仲間たちと合流した王太たちは、生け贄用に連れ去られた生徒たちの救出作戦を決行。彼らがダイソードの存在のみを警戒していることを逆手に取り、首尾よくこれを成功させる。この時ダイソードの召喚回数はすでに7回目となっており、これが彼の力を借りられる最後の戦いだった。今こそ復讐を果たす時とばかり前に立つ神の武器をことごとく打ち破ったダイソードは、再びサン・ジュオウと対峙する。
サン・ジュオウは自分とほぼ互角のダイソードを確実に倒すため、今夜を人質にして自分の中に収納。本気を出せないダイソードを徹底的に痛めつける。ついにダイソードは大地に倒れ、その中にいる王太も致命傷を負う。サン・ジュオウはトドメを刺すために王太とダイソードへと近づくが、ここに「仲間を殺させてなるものか」と九江州中学校の校舎が突撃。彼らの勇気と友情に、かつて冬の鳥だった頃の自分と村の仲間たちの姿を重ねたサン・ジュオウは、九江州中学校を攻撃することができずに戸惑う。

ここでタ・カラの記憶が人間となった存在であるシズクが、その身を挺して一時的にタ・カラを復活させ、その癒しの力で王太とダイソードを復活させる。シズクの献身に報いるため、ダイソードもまた「絶対に不可能なはずの8度目の召喚」に臨む。息を吹き返した王太が今夜を救い出す一方、ダイソードもまたサン・ジュオウに猛攻を加え、奇跡の逆転勝利を果たす。
しかしこの時には、神の武器たちが密かに準備を進めていた“神の召喚の儀式”が成立していた。神の呪いに抗った結果半壊状態のダイソードと、己の憎悪が大切な家族と仲間たちの喪失に耐えられなかった心の弱さから生まれたことを認めたサン・ジュオウは、残った力の全てを使って神に挑むも翻弄される。勝ち目がないと悟ったダイソードは、王太たちを安全な場所まで避難させると、神によってサン・ジュオウ共々木端微塵に打ち砕かれるのだった。

神を断つ剣

泡の中央界の神は、「命を増やしては食らう」ことを愉悦とする邪悪な存在で、久々にやってきた世界に命が満ちていることを知って歓喜。神が世界中の命を食らう中、王太たちは本来の目的地だったテルテ・ウィタスへと向かう。ここでは神の武器に対抗するための研究がいくつも進められており、その中の1つに「神の武器の複製を作る」計画があった。王太たちは、これを応用してダイソードを修復しようと考えていた。
砕け散ったダイソードの破片を鍛え直し、足らないパーツはサン・ジュオウの残骸を組み合わせ、神が世界を食らい尽くす前にダイソードは復活する。ダイソードから「一緒に戦ってほしい」と頼まれた王太は、「もちろんだ」とこれを承諾。生き残ったヨゴと、サン・ジュオウの体の破片から作り出した剣を装備したダイソードに乗り込む。

一方、今夜たちは「神の力を弱める一世一代の賭け」に出ようとしていた。九江州中学校が世界に反発する性質を持つのであれば、“この世界の命を食らう”神にとっては自分たち異世界の生命体は異物であり、毒のような効果を持つ可能性があった。彼女たちはこれを利用して、王太たちが戦い始める直前に九江州中学校ごと神に突撃し、わざと自分たちを取り込ませることでその力を奪う。
それでも暴れ続ける神に対し、王太とダイソードが最後の戦いを挑む。今夜たちの決死の行動で、神の実態がある種の精神生命体であることを悟った王太は、その中枢を切り裂く一撃により、ついに神を打ち倒す。

かくして泡の中央界は救われ、今夜たちを含む神に取り込まれていた無数の人々も復活。ダイソードは再び眠りにつき、テルテ・ウィタスの魔法使いたちによって王太たちは地球へと送り返されることとなる。「この世界に留まりたければ、世界の救世主として歓迎する」と言われて少数の生徒が地球に戻らないことを決める中、「ユーリナのためにこの世界に残ろう」とも考えていた王太は、彼女に別れを告げられる。タ・カラの精神が生まれ変わった存在である彼女は、本体であるタ・カラが消滅した時点で、その存在を保てなくなるのが運命だった。「人として生まれて、九江州中学校のみんなと大冒険して、あなたに恋をすることができて幸せだった」と言い残して消滅するユーリナを、王太はただ黙って見送ることしかできなかった。
九江州中学校は無事に地球へと戻り、生徒たちは自分たちの大冒険の終わりに歓声を上げる。これから大人たちに、世間に対して自分たちの経験したことをどう説明しようかと生徒たちが盛り上がる中、王太は1人屋上でダイソードやユーリナとの別れを噛み締めていた。そんな彼に、どこか遠慮がちに今夜が話しかけ、2人は泡の中央界での出来事について語り合うのだった。

『轟世剣ダイ・ソード』の登場人物・キャラクター

九江州中学校

百地王太(ももち おうた)

1年生の少年。快活で勇敢なサッカー少年だったが、魔法使いとしての高い素養を持ち、ユーリナが魔力に乗せて送ったメッセージを受け取ったことでダイソードと契約。その契約者(ソウル・マスター)となる。

千導今夜(せんどう こよい)

生徒会長を務める3年生。聡明で物怖じしない性格で、泡の中央界の王族相手でも堂々と交渉に臨む。年齢以上に大人びた印象がある一方、無類のアニメ好きであり、私生活はあくまで年相応の普通の少女。物語中盤から王太と急接近し、もう1人のヒロインとしても活躍する。

泡の中央界(あわのちゅうおうかい)

ユーリナ・タ・カラ

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