それじゃあ吉田くん!(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『それじゃあ吉田くん!』とは『月刊コミックブレイド』にて2002年5月号から連載が開始された、よしむらなつきによるコメディー漫画作品。現代の日本を舞台に、魔界の住人や個性豊かなキャラが繰り広げるドタバタなギャグが魅力の作品である。ごく平凡に暮らしていたマイペースな男子高校生・吉田カオルは、ある日突然魔界の王から魔王として任命される。その日を境に、カオルの下には魔王の座を狙う魔界の住人達が襲来するようになり、幼馴染みの和泉あげはを巻き込んだ非日常的な生活が始まってしまう。

『それじゃあ吉田くん!』の概要

『それじゃあ吉田くん!』とは、『月刊コミックブレイド』に2002年5月号から2010年3月号まで連載されていたよしむらなつきによる現代の日本を舞台にしたコメディー漫画作品。単行本は全4巻が発刊されている。
2004年10月号から2009年8月号の間は原作者よしむらなつきが長期活動停止していた為、休載という形がとられ2009年9月号より連載が再開された。
休載中にデジタルイラストの技術を学び、単行本3巻の描き下ろし漫画や表紙イラストをアナログ作画からフルデジタルで描くようになる。よしむらなつきの連載作品3作目の漫画で、過去の連載漫画『御意見無用っ!!』と『里見☆八犬伝』がどちらも和風コメディだったのに対し、本作は初の現代コメディ作品である。
基本はギャグ中心のストーリーがオムニバス形式で描かれており、単話で読んでも楽しめる内容となっている。物語の終盤ではシリアスな展開が続くが、所々でよしむらなつきならではの独特のギャグが散りばめられていて、良い意味で気楽に読むことができる。

この世界には、人間達が住む人間界とは別に魔物達が住む魔界が存在していた。魔界の王・ダークフリートは、強大な魔力を持って魔王にまで成り上がった男であったが、戦いのない毎日に飽きてしまい魔王を辞任することを発表。自分の代わりとして、次期魔王を適当に「それじゃあ吉田くん!」と宣言してしまう。
人間界で平和に暮らしていた平凡な男子高校生・吉田カオル(よしだ かおる)は、ダークフリートの指名を受けてある日突然魔王となるのであった。魔界から魔王の座を狙って次々と魔族達が人間界に押し寄せ、カオルとその幼馴染み・和泉あげは(いずみ あげは)は、いつの間にか魔界の王座争奪戦に巻き込まれてしまう。

『それじゃあ吉田くん!』のあらすじ・ストーリー

プロローグ

この世界には、人間達が暮らす人間界と悪魔や魔族が暮らす魔界があった。力ある者が王として君臨する魔界では、強大な魔力を持つ魔物・ダークフリートが魔王として世界を治めていた。
しかし、戦うことが好きなダークフリートは魔王になった途端に誰も戦いの相手をしなくなってしまい、魔王でいることに飽きてしまう。そして、ある日ダークフリートは部下達の前で魔王を辞めることを宣言する。部下達から王の代わりを指名してほしいと頼まれたダークフリートは、咄嗟に「それじゃあ吉田くん!」と答えた。こうして、人間界に住む魔力を全く持たない普通の少年・吉田カオル(よしだ かおる)は、自分の知らない所で魔王となるのだった。

魔族がやって来る日常

いつの間にか魔王となってしまったカオルは、人間界に住むごく普通の男子高校生。マイペースで少々天然な性格をした掴みどころのない少年である。そんなカオルには、良き理解者である和泉あげは(いずみ あげは)という幼馴染みの少女がいた。
ある日普段通りの生活を送っているカオルとあげはの前に、魔界から魔王の座を狙って人間界へとやって来た吸血鬼・ソニアとその下僕であるゾンビ・エクラタンが現れる。カオルは自分が魔王になったという自覚はないものの、襲い掛かるソニアとエクラタンを覚えたての手品を駆使して撃退し、魔王の座を守る。ソニア達の出現以降、カオルの周りには魔界から続々と魔族が襲いにやって来るようになるが、カオルは持ち前の天然さと運の良さで魔族達を返り討ちに遭わせていくのだった。
それから数日後、カオルの前に王室親衛隊長のランス・ハイランドと名乗る三つ目の魔族が姿を現す。ランスは、魔王任命されたカオルを魔界へ連れて行く為に人間界へとやって来ていた。ランスの案内で魔王として魔界へと連れていかれるカオル。しかし、飽きっぽい性格でもあるカオルは魔王としての暮らしを1日で飽きてしまい、結局人間界へと舞い戻って来る。ランスは魔王の親衛隊長として人間界に残り、カオルが再び魔王として魔界へ行く決断をするまで護衛の任務に就くことになるのだった。

ランスが人間界でカオルと共同生活を送るようになったある日、魔界ではカオルの命を狙う魔界反乱軍が行動を開始していた。魔界反乱軍に所属する猫耳少年の忍者・イデアが偵察としてカオル達と接触するも、返り討ちに遭ってしまい失敗。魔界反乱軍の司令官を務めるイシマという魔族は、次の作戦として人間界に住む魔女・オルフェにカオル抹殺を依頼する。
かつて魔界を恐怖に陥れる程の強大な魔力を持っていた魔女のオルフェは、200年も昔に人間界へと追放されて人間に化けて生活していた。その人物こそ、カオルやあげはのクラス担任である早乙女(さおとめ)という女教師だった。
早乙女は、イシマから魔王であるカオルを殺害する見返りとして魔界へ戻る手助けをするという交換条件を突き付けられ、悩んだ末にそれを承諾する。自分の教え子を殺害することに躊躇う早乙女だったが、魔界へ戻りたい思いも捨てられずカオルに自分が魔女であることを明かして、魔法でカオルを消し去ってしまう。しかし、早乙女が倒したカオルは本人になり替わった分身であった為、カオル本人は事なきを得るのだった。
魔女オルフェをもってしてもカオルを倒せないと知ったイシマは、カオルの弱点を探ろうと観察を始める。その結果、カオルといつも一緒にいるあげはを人質にとり、王位を譲るよう脅しをかけるという作戦を思いつく。イシマはあげはを捕まえ、カオルに取引を持ち掛けて魔界へと引きずり出すよう暗躍した。しかし、人質として捕まえたあげはを気に入ったイシマは、あげはを返したくない一心で逃亡。5階建ての塔にて魔界反乱軍四天王との戦いをカオルに強要するのだった。

魔界で反乱軍と戦うことになったカオルは、魔女オルフェこと早乙女、ランス、そして人間界に残っていたソニアとエクラタンを仲間に引き入れる。各階に1人ずつ配置された反乱軍の四天王と戦いながら、カオル達はイシマとあげはがいる最上階を目指した。四天王との戦いは激戦となり、1人ずつ仲間と離れながら上の階へと進んでいく。最上階に辿り着けたのは、カオルただ1人だけであった。カオルはイシマとの激戦の末にあげはを救出することに成功。あげはをつれて人間界へと戻るのだった。
作戦に失敗してしまったイシマだったが、王座を手に入れるよりもあげはを奪われたことの方がショックが大きかった。どうしてもあげはのことが忘れられないイシマは、その後、理科教師・石間紫麗(いしま しれい)として人間界へとやって来てあげはを付け狙うようになるのだった。

魔女・オルフェとエクソシスト・イグニスの因縁

一方、カオル達が住む街の商店街には、魔族と切っても切れない因縁を持つ家族が存在していた。カオルとあげはのクラスメイト・魚住美咲(うおずみ みさき)の家は代々勇者の家系で、美咲の父・千尋(ちひろ)はその勇者の後継者であった。人間界で魚屋を開業し長らく平和に暮らしていた為、魔王が現れた時は倒しに行くという使命をすっかり忘れていたのだが、魔族が次々に人間界に押し寄せていることを察知してその使命を思い出す。美咲からクラスメイトの吉田カオルが魔王であることを知らされた千尋は、単身吉田家に乗り込むが返り討ちに遭い敗北してしまうのだった。
それから数日後、魚住家の庭にある封印の石から邪悪な敵・イグニスが逃げ出したことが判明する。300年前に先祖が封印したというイグニスは、眠りから覚めるとカオル達の担任・早乙女の下へ向かった。300年ぶりの再会に喜ぶイグニスに対して怒りを露わにする早乙女。その後、2人の因縁についてが語られることになる。

早乙女が魔女オルフェであることを知るイグニスは、元は勇者と一緒に魔王と戦う仲間のエクソシストで人間である。時は遡り300年前、魔界の森で行き倒れていたイグニスをまだ幼かったオルフェが見つけ一緒に暮らしていた時期があった。オルフェは、3000年に1度誕生するとされる強大な魔力を持って生まれた魔女であり、時が満ちれば魔王に身を捧げる一族の生贄として大切に育てられていた。
暗い森の奥に匿われるようにひっそりと1人で生きてきたオルフェだったが、イグニスと出会って楽しい毎日を過ごすようになる。そんな生活を3年程続けるうちに、これまで死の運命を受け入れていたオルフェは死を恐れるようになり、いつの間にかイグニスを愛するようになっていた。イグニスは、そんなオルフェに森から脱出して人間界で一緒に暮らすことを提案する。2人が森からの脱出を試みようとした時、当時の魔王親衛隊長・メイベルが現れ、オルフェが魔王の生贄になる時が訪れたと告げた。
時間がないと悟ったイグニスはオルフェを連れて逃亡。オルフェの持つ魔女の力を借りて森の結界を破ることに成功するが、結界の外はオルフェの持つ強大な魔力を求める魔物達であふれかえっていた。一緒にいてはイグニスを危険に晒すだけだと感じたオルフェは、大人しくメイベルに捕まり、イグニスを助けるのだった。
メイベルはイグニスに、オルフェが呪いによりいつかは自身の持つ強大過ぎる魔力に体が付いていけず許容量を超えれば死は免れないことを説明する。魔王の生贄にならずとも、オルフェの死の運命は変えられないことを知ったイグニスは、それでもオルフェを助けたい一心で連れ去られたであろう魔王の城へ向かった。

魔王の城では、オルフェが既に魔王と接触していた。当時の魔王は強大な魔法で魔界を支配していた魔女・グレイスで、オルフェの母親であった。グレイスは、愛する娘を他人に生贄として捧げたくない親心で、自らが魔王となって無理心中を図ろうとしていたのである。
2人が死を覚悟した時、上空からオルフェを助けにきたイグニスが乱入し、オルフェの魔力の源であり呪いの原因でもある魔女の心臓を抜き取ってしまう。メイベルからオルフェの呪いを解く為には彼女の心臓を奪い取ることだと聞かされていたイグニスは、自らの体を犠牲にしてオルフェを呪いから救おうとしたのだった。
あまりに強大な魔力を受け入れたイグニスの体は凶悪な魔物の姿へと変貌し、自我を忘れて暴れ出す。グレイスは魔法でイグニスに致命傷を与えて倒すと、オルフェの呪いが消えたことを確認して、普通の魔女として生きていけるようになったことを告げる。結果として魔女の呪いは消え、オルフェとグレイスは死の運命から逃れることができたのであった。
一方、グレイスの攻撃を受けたイグニスは魔王の城から落とされ、辛うじて生きている状態だった。オルフェを助ける方法を教えたメイベルは、イグニスの体を人間の姿に戻すと魔女の親子を救ってくれたことに感謝しながら人間界へと返した。
人間界に戻ったイグニスは意識を取り戻すが、オルフェと離れ離れになった悲しみとオルフェから引き受けた魔女の心臓の力で大暴走を引き起こし、後に勇者一行に封印されてしまう。そして、300年の月日を経てオルフェの魔力を近くで感じ取ったイグニスは封印から目覚め、早乙女として人間界で暮らすオルフェの下へとやってきたのだった。

魔王はやっぱり吉田くん

カオルが魔王になってからしばらく経ち、人間界にも魔王の座を狙って多くの魔物が出現するようになった頃、カオルは魔王であることに飽き始めていた。熱しやすく冷めやすい性格のカオルは、そろそろ魔王を引退して普通の高校生に戻りたいと言い出す。そして、漫画やゲームの物語のように勇者に倒されたいと考えたカオルは、勇者の末裔である千尋に倒してほしいと頼むも仕事が忙しいという理由で断られてしまう。
なんとしても魔王として倒されたいカオルは、「勝者には正式に魔王の座を譲ろう」と宣言し、人間界にいる魔物達を奮い立たせる。次々とカオルに襲い掛かる魔物達だったが、誰1人としてカオルを倒す者は現れなかった。
本気を出したカオルは、数日の間で人間界を制圧し、本物の魔王として君臨し始める。あまりにも悪ふざけが過ぎると感じたあげはは、カオルを倒す為に立ち上がり決闘を申し込む。ひとしきり戦うも決着がつかず、カオルはさらに調子に乗り魔王として悪さをしようと企んでいた。カオルの往生際の悪さに怒り心頭のあげはは、真顔でカオルを叱責。本気で怒るあげはを前に、カオルは恐怖を感じてあっさり敗北を宣言するのだった。

魔王であるカオルを倒したことで新しい魔王になったあげはだったが、自分には荷が重すぎると辞退する。ランスから魔王を辞退するならば別の人を指名してほしいと頼まれたあげはは、1番平和な解決策として「それじゃあ吉田くん」と答えた。
こうしてカオルは再び魔王へと返り咲き、元の賑やかな生活へと戻るのだった。

『それじゃあ吉田くん!』の登場人物・キャラクター

人間

吉田 カオル(よしだ かおる)

本作の主人公。
少々天然気味な普通の男子高校生。ある日、魔王ダークフリートから直々に指名されたことで魔王となった。
気に入ったものや関心を持ったものにはすぐに挑戦してみたくなるが、飽きるのも早い。何でもそつなくこなすことができる器用な性格。幼馴染みのあげはに好意を寄せているが素直になれずいつもからかっている。
大好物はかりんとう。
どんな服装でも上から半纏を羽織っておりトレードマークとしている。

和泉 あげは(いずみ あげは)

本作のヒロインでカオルの幼馴染み。
運動神経抜群でプロレスが好きな女子高生。将来はプロレスラーになりたいという夢を抱いている。
ショートカットで貧乳である為、イシマからは少年だと勘違いされていた。あげは本人も貧乳であることを気にしている。
作中では常識人であるが、カオルの言うことを真に受けるなど少々天然な一面もある。

早乙女(さおとめ)

カオルとあげはのクラスで担任を務める美人の女性教師。
肌のハリや化粧のノリを常に気にしている。
人間の姿をしているが、その正体はかつて魔界を支配する程の勢いで暴れ回っていた大魔女・オルフェである。魔界に帰る手助けをするという条件を出されて一時的にイシマと共闘関係を結ぶが、魔王とは言え教え子であるカオルを殺害することに躊躇してしまい、すぐに関係を解消している。

吉田 モモコ(よしだ ももこ)

カオルの母親。
職業は小説家で普段から部屋に引きこもっている。ヘビースモーカーである為、家の中ではよく咥えたばこをしているが、外では美人主婦として有名。
高校生の頃に夫と出会い同じ顔であることにシンパシーを感じて交際をスタートさせ、その後結婚した過去を持つ。

カオルの父

カオルの父親。
職業は貿易会社の営業ということになっているが、本当の職業は殺し屋。職業柄、背後に突然立たれるのが苦手で「殺すリスト」という物騒なノートを肌身離さず持ち歩いている。また、本名は明かせないのか作中では不明のままである。
高校生の時に偶然モモコと出会い、同じ顔であることに運命を感じて告白し結婚した。カオルが生まれた後、ちゃんとした職に就こうとして選んだ仕事が傭兵で、その時のツテで現在の仕事を続けている。

魚住 美咲(うおずみ みさき)

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