マダムたちのルームシェア(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『マダムたちのルームシェア』とは、中高年マダム3人の明るく楽しい共同生活を描いたseko kosekoによる日常系の漫画作品である。学生時代からの友人同士である栞、沙苗、晴子の3人が、普通の日常を自分達の手で楽しくする様子が描かれている。X(Twitter)・ピッコマなどで連載されており、歳を重ねた女性達ならではの心のゆとりと、年齢を理由にすることなく人生を楽しむ3人の姿に憧れる読者が多い作品である。
悪天候で体調や気分が優れない晴子や疲れが出ている沙苗を目撃した栞が、2人のために自分が何かできないだろうかと考えたのが「おみくじ」。手書きで栞が作ったもの。その様子を見ていた晴子に「何か作ってるの?」と問われた栞は「全部大吉だから良いことしか書いてないわ」と自信たっぷりな様子を見せ、「元気を出したい時はこのおみくじを引いてちょうだい」と2人に説明した。
ちょっと元気を出したい時に引く用に、ということで、そのおみくじはリビングに置かれた。
おみくじが設置される様子を眺めていた晴子は「大吉しかないおみくじっていうのが栞らしいわねぇ」と笑顔になり、沙苗は「その考えだけで元気が出る」と晴子と同じく笑顔を浮かべた。
後日、天気が悪く元気が出ない晴子は、おみくじに書かれていた「おにぎりを拾うかも!」と言うお茶目なメッセージに思わず目を細めた。沙苗もまた、仕事の帰りが遅くなった日におみくじを引き「かわいい猫をみた」というおみくじと全く関係のないゆるいメッセージと猫のイラストに笑みがこぼれた。
後に、栞はおみくじの数が増えていることに気付く。試しにひいてみると、晴子と沙苗もおみくじを作っていたことを知る。2人を元気づけるために作ったおみくじによって、自分も元気をもらうことになる栞だった。
晴子「私から沙苗に使う気は 私が使いたくて使ってるから」
出典: pbs.twimg.com
若いうちに両親を亡くして間もない沙苗に、晴子が伝えた言葉。突然ひとりになってしまった沙苗を気遣い、栞も晴子も料理や菓子を差し入れに訪れていた。晴子は、沙苗が美味しいと話していた店のゼリーを買って持ってきたものの、どう伝えたら沙苗が気を遣わずに済むかと悩む晴子は、なかなか沙苗の家に向かえずにいた。だが、たまたま帰宅した沙苗に後ろから声をかけられ驚く。
晴子は咄嗟に「もらいすぎちゃったから」という理由を付けてゼリーを手渡した。そんな晴子に対し「気を遣ってくれてありがとう」と沙苗は感謝を述べた。そんな沙苗に対して晴子は「私から沙苗に使う気は 私が使いたくて使ってるから」と前置きをした後、「無理に元気出そうなんで思わないでね」と沙苗の心情を想いながら目を潤ませた。
大変な時期に沙苗が必要以上の気を遣わずに済むように、また、沙苗がこれ以上にひとりで抱え込むことがないようにという晴子の優しさが見える台詞である。
それぞれの個性が光るファッション
日常や季節のイベントを楽しむことが上手な3人。家の中でのクリスマスパーティーもドレスを着ようという計画を立てて、それぞれにドレスアップしてリビングに集まる。栞は赤いアオザイに白いファーでサンタクロースのような雰囲気に。沙苗のドレスはスタイリッシュだが、栞いわく「子犬で毛皮を作っていそう」なゴージャスな印象。ルームシェアを開始してから初めてのクリスマスとなる晴子は、ピンクのお呼ばれドレスにボレロというスタイル。3人の個性やキャラクターは、作中でファッションにもよく現れている。
クリスマス以外にも、美術館に行く時にそれぞれに絵画をイメージしたファッションでまとめたり、夏には家の中で3人でアロハシャツを着たりもしている。アロハシャツを着た際には、家の中もハワイのような雰囲気のインテリアにし、トロピカルジュースとハワイの映像も用意する徹底ぶり。そんなおしゃれなマダム達の暮らしぶりは、読者たちからも人気となっている。
花札に勝利する晴子
なかなか寝付けずにリビングに向かった晴子が、電気が付いていることに気付いてドアを開けると沙苗と栞が花札をしていた。聞けば1ピース1000円のちょっとお高いケーキ3人分を賭けて勝負をしているという。そんな2人の様子を眺めていた晴子は、自分も参加しようと説明書を見る。花札に自信のある沙苗は栞との勝負で勝利を収めており、晴子にも勝つ自信があった。内心、無害なレッサーパンダのような晴子を負かすことに罪悪感を覚えた沙苗だったが、結果は晴子の大勝。
沙苗だけでなく、栞も晴子の余裕を見て花札をするのは久しぶりではないのかと問うが、晴子は笑顔で「油断するかなって」と策士ぶりを見せるのだった。
いつもおっとりとした晴子だが、密かに策略家であるという意外性が見えた場面である。
夢を叶えた沙苗を祝う栞と晴子
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3人が若かった頃、自分の店を持つという夢を叶えた沙苗を祝いに晴子と栞が沙苗の店を訪れた場面。両親からも夢を応援されていた沙苗だったが、両親との別れは突然訪れ、あまりにも急だった両親の死を受け止めきれずにいた沙苗は、しばらく悲しみに暮れる日々を送っていた。
栞と晴子は時折沙苗に差し入れをしながら沙苗を気遣い、どうにか普段通りに仕事をしていた沙苗は、栞が夫と離婚を決めた時期に栞とその娘である星奈と3人での同居生活を始める。人が家にいる楽しさを久しぶりに感じた沙苗だったが、栞は栞でしっかりと仕事を見つけ、星奈と住む部屋も探し、どんどん行動していた。栞親子との生活で少しずつ悲しみが癒えてきた沙苗は、ようやく自分の夢に向かって動きだし、とうとう自分の夢だったブティックをオープンさせた。
開店当日には、夢を叶えた沙苗のもとに栞と晴子が訪れた。悲しい時期をようやく乗り越えて新たなスタートをきった友人を心から祝う栞と晴子、星奈の笑顔に、沙苗もようやく明るい表情を浮かべる印象的な場面である。
『マダムたちのルームシェア』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
作者はイラストレーター
作者は漫画家ではなくイラストレーターで、本作の単行本の巻末にもマダム3人のファッショナブルなイラストが多数掲載されている。小さな頃から絵を描くのが好きで、子供の頃の夢が「漫画家」だったことから、絵の仕事を志してイラストレーターの求人にも応募した過去を持つ。ところが、就活で受からなかったため、絵を仕事にすることを一度諦めたという。
後に、初めて就職した会社から離れる際に「1年だけ本気で描いてみよう」と決めて、アルバイトをしながら絵を描き続けSNSにアップするようになった。
SNSで人気が出たことから、後に挿絵やイメージイラストの依頼も増え、イラストレーターとして活躍することとなった。
外国人のシニア女性がきっかけ
作者がマダムを主役として漫画を描くきっかけとなったのは、外国人の高齢女性が花柄のワンピースを着て自撮りをしている写真だった。少女っぽいイメージが強い花柄のワンピースや、若い女性が楽しむ自撮りを、高齢の女性も楽しんでいる様子に感動したことが今作の誕生につながっている。
アンチエイジングや歳を重ねることへのネガティブなイメージが未だ根強い昨今だが、歳をとる過程で得る経験や知識、思考は資産であると作者は考えている。
漫画を描き始める前にも、おしゃれな水着を着たマダムやスケートボードにチャレンジするマダムのイラストが多数描かれている。イラストを描くうちに徐々にメインの3人のキャラクターが出来上がっていき、漫画化の運びとなった。
憧れと自戒が込められた作品
作品は作者自身の憧れでもあり、作者本人が将来ありたい姿としても描かれている。また、朗らかで平和な日常を描く今作には「新しいことに挑戦することを忘れない」という作者自身の自戒も込められている。「歳は重なるけれど減ることはない」という考えのもと、漫画を描き続ける作者の元には「漫画を読んで『歳を重ねるのも良い』と思えるようになった」という感想が多く寄せられている。
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目次 - Contents
- 『マダムたちのルームシェア』の概要
- 『マダムたちのルームシェア』のあらすじ・ストーリー
- 毎日を楽しくするアイデア
- ルームシェアのきっかけ
- 互いを大切にしあう3人
- 『マダムたちのルームシェア』の登場人物・キャラクター
- ルームシェアの住人
- 栞(しおり)
- 沙苗(さなえ)
- 晴子(はるこ)
- マダム達の家族
- 星奈(せな)
- 晴子の夫
- 孝雄(たかお)
- 『マダムたちのルームシェア』の用語
- 喫茶店ハルコ
- おうち映画館
- 雰囲気
- 『マダムたちのルームシェア』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 栞「やりたかったらやりゃあいいのよ じゃないと動けなくなっちゃうわ」
- 沙苗「じゃあ今から生き終わるまでは花盛りってことね」
- 栞「全部大吉だから良いことしか書いてないわ」
- 晴子「私から沙苗に使う気は 私が使いたくて使ってるから」
- それぞれの個性が光るファッション
- 花札に勝利する晴子
- 夢を叶えた沙苗を祝う栞と晴子
- 『マダムたちのルームシェア』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 作者はイラストレーター
- 外国人のシニア女性がきっかけ
- 憧れと自戒が込められた作品