マダムたちのルームシェア(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『マダムたちのルームシェア』とは、中高年マダム3人の明るく楽しい共同生活を描いたseko kosekoによる日常系の漫画作品である。学生時代からの友人同士である栞、沙苗、晴子の3人が、普通の日常を自分達の手で楽しくする様子が描かれている。X(Twitter)・ピッコマなどで連載されており、歳を重ねた女性達ならではの心のゆとりと、年齢を理由にすることなく人生を楽しむ3人の姿に憧れる読者は多く、単行本はシリーズ累計25万部を突破している。

『マダムたちのルームシェア』の概要

『マダムたちのルームシェア』とは、seko kosekoによる漫画で、3人のマダム達がルームシェアを楽しむ様子が描かれた日常系コミック。X(旧Twitter)の作者のアカウントで公開されている。
主人公は3人のマダム、栞(しおり)沙苗(さなえ)晴子(はるこ)。性格もそれぞれに異なるが学生の頃から仲の良い3人が、ちょっとした工夫で日常を素敵に過ごす様子が描かれている。歳を重ねても童心に帰って夏祭りを楽しんだり、歳を重ねたからこそ楽しめる美味しいお酒や食事を味わったり、心が躍る場面が数多く登場する。付録目当てに幼児向け雑誌を購入したり、塗り絵を楽しむ場面もあり、歳を重ねた大人が童心に帰って楽しむ3人の姿が愛らしく描かれている。マダム達の工夫は決してゴージャスなものではなく、誰でも気軽に真似できそうなものが多いのも本作の魅力となっている。
1つのエピソードは6ページ程度の短いストーリーで構成されており、単行本では2~3ページ「Extra Episode」で後日談が続くこともある。「Extra Episode」は特に3人それぞれの個性が出ており、本編のその後のちょっとしたストーリーを楽しむことができる。
また、単行本では3人がルームシェアをする前の話や3人が若い頃の話も描かれている。晴子が息子から同居を提案される話や、沙苗の両親との別れ、夫との離婚を考えた栞が子連れで沙苗の家に泊まりにくる場面など、年齢の若いキャラクターが主役の漫画では描かれることのないようなストーリーも織り交ぜられている。
2024年1月にはYouTubeでボイスドラマ化し、井上喜久子、田中敦子、定岡百合子が声優を務めた。読者からは「こんな風に歳を重ねたい」と好評で、コミックスのシリーズ累計発行部数は25万部を記録している。

『マダムたちのルームシェア』のあらすじ・ストーリー

毎日を楽しくするアイデア

栞、沙苗、晴子の3人は学生時代からの友人同士。歳を重ねた彼女達は、ルームシェア生活を楽しんでいる。もともと栞と沙苗が一緒に暮らしていたところに、夫の一周忌を終えた晴子が加わり、初めて3人で過ごすクリスマスを迎えることになった。ドレスを着たいという栞の思いつきから、3人はそれぞれにドレスアップをしてリビングに集まった。
赤いアオザイに白いファーを巻き、サンタクロースのような栞。モノトーンのドレスの沙苗はどことなくアニメ映画の悪女のような雰囲気。そして初めて栞と沙苗と過ごす晴子は、ピンク色のお呼ばれワンピースにボレロとバラのコサージュを胸にあしらう。気合充分の3人によってリビングもパーティー会場に変身する。眠れない夜は1ピース1000円のちょっといいケーキを賭けて花札で勝負をしたり、突然のパジャマパーティーを開催して映画を観たりと、彼女達は日常をほんの少しの工夫で幸せにする才能の持ち主である。
外出する時にも楽しみを忘れず、美術館に行く時には絵画を意識したファッションに身を包む。夏祭りでは子供のようにはしゃいで、ほんの少しのムダ遣いを楽しむ。イベントごとには特に力を注ぎ、誕生日の飾りつけやハロウィンのコスプレも忘れない。
そんな3人だが、時には疲れたり体が重たい時もある。そんな時も美味しいものを楽しみ、時にはダンスを踊る。更には大吉しか出ないおみくじを手作りするなど、3人がそれぞれにお互いを気遣いながら過ごす様子には歳を重ねた大人の余裕も垣間見える。
朗らかでさっぱりとしている栞、クールでおしゃれな沙苗、おっとりして少女のような晴子。性格もそれぞれに違う3人だが、喧嘩もなくお互いの良さを認め合い、誰かの提案にはしっかり乗っかる。大人の女性達ならではの柔軟さと、少女のような発想によって、3人の生活はとても充実したものとなっている。

ルームシェアのきっかけ

沙苗と栞は、若い頃にも一緒に暮らしていたことがある。当時は、夫との離婚を考えた栞が娘の星奈を連れ、沙苗の家に泊めてもらうために訪れたのがきっかけだった。沙苗は両親を亡くしてから自宅で1人で暮らしていたため、栞と星奈を迎えてしばらくの間3人での生活を始めた。時には沙苗が星奈の勉強を見たり、忙しくてなかなかかまってあげることが出来ない星奈を連れ、3人で動物園に行くなど充実した同居生活を送っていた。その後は栞の仕事がうまくいくようになったことで、沙苗との同居を解消してそれぞれの生活に戻ったが、大人になった星奈が自立した頃に再びルームシェアを再開した。
沙苗は晴子もルームシェアに誘いたいと考えており、晴子が家にきた際に声をかけたいと考えており、栞も沙苗の意見に賛同する。
一方、主婦として夫と息子と生活してきた晴子は1年前に夫を亡くし、ちょうど一周忌を終えたタイミングで栞と沙苗の住むルームシェアを訪れた。この時に、自分の息子から同居を提案されていることを2人に打ち明けた。温厚な晴子は、嫁の負担や現状の良い距離感が崩れてしまうことを不安に感じており、同居を迷っていた。息子家族と同居しない場合はひとり暮らしになるという晴子に、沙苗は自分達とのルームシェアを提案する。
沙苗の言葉を聞いた晴子はすぐに「楽しそう」と感じたが、同居を断ることになるため、息子や義姉からの反応を想像して躊躇っていた。決めるのは晴子だという2人の言葉を胸に帰路に着くが、帰り道ではもし2人と暮らしたら…という楽しい想像が頭の中を駆け巡っていた。
それでも周囲の反対を考えると、それだけで疲れてしまう晴子。他人の目を気にせず生きている2人に比べ、他人の目を気にする自分。そんな晴子は「このまま生きていったら後悔するのかしら」と自問自答しながら駅へ向かう。だが、改札を通ろうとした時、料金不足のため改札が閉じてしまう。慌てて券売機を探して引き返すことになった晴子だが、その足は改札ではなく2人が住む家へと向かっていた。2人の元へ戻った晴子は、2人と住んでみたいという意志を沙苗に伝えた。息子や義姉のことは大丈夫かと晴子を気遣う沙苗だったが、駅から引き返してきた晴子からは迷いが消えていた。
その日、晴子は沙苗と栞の部屋に泊まり、ここから3人のルームシェアが始まったのだった。

互いを大切にしあう3人

栞と沙苗が若い頃に同居生活を送っていたのは、沙苗の自宅だった。当時、両親を突然亡くしたばかりの沙苗は、悲しみが癒えていない中で遺品整理や家族写真を見返す日々を送っていた。ある日栞が沙苗の好物のロールキャベツを差し入れに沙苗の元を訪れた。栞の心遣いに思わず涙がこぼれた沙苗に、栞は「ゆっくり休んで」とフォローをして去る。また別の日は、晴子がゼリーを持って沙苗の元を訪れた。人からもらい過ぎたからと言って渡されたゼリーは、沙苗が美味しいと言っていた店のものだった。栞も晴子もそれぞれが沙苗を気遣っていたが、それは決して形式ばったものではなく、沙苗を元気づけたいという想いからの行動だった。悲しみの底にいる自分を励ましてくれた友人の存在は、沙苗をほんの少しずつ前に向かわせていった。
なかなか悲しみは薄れないが、それでも仕事をこなし、少しずつ遺品整理も進む中、沙苗は自分が普通に生活できていることに気が付いた。
そんな中、ひとり娘の星奈を連れた栞が沙苗の家を訪れた。しばらくの間、栞と星奈との同居生活が始まり、沙苗は久しぶりに家に人がいる明るさに安心感を覚えていた。しばらくして夫と離婚し、新しい仕事も星奈と暮らす部屋も見つかりそうだという栞を見た沙苗は、自分も前に進まなければと感じるのだった。
栞に「十分頑張ってる」と励まされた沙苗は、両親に頑張る自分の姿を見せられず、親孝行も出来なかったことを打ち明けて涙を流す。それでも栞と晴子の優しさが背中を押してくれていたことで大丈夫だと思えた沙苗は、栞と星奈が出て行った家でひとり、自分の夢に向かって計画を立て始めるのだった。
その後、自分の店を持つという夢を叶えた沙苗の元には、やはり栞と晴子が立て続けに客として訪れるのだった。目まぐるしく変わる人生の中で、いつまでも変わらず応援し続けてくれる友人たちの存在の心強さを実感した沙苗は、今日も変わらず、いつも通りに開店時間を迎えるのだった。

『マダムたちのルームシェア』の登場人物・キャラクター

ルームシェアの住人

栞(しおり)

出典: woman.mynavi.jp

眼鏡がトレードマークの栞は、発想が豊かで家の中を明るくする存在。

シェアハウス住人の1人。ショートカットに眼鏡姿のアクティブなマダムで、シェアハウスのムードメーカー的存在。
いつも元気ハツラツに動き回っており、ウォーキングや卓球をしている様子も描かれている。元気を出したい時には突然踊り出し、晴子を巻き込むことがある。花より団子派でよく食べる。ファッションは暖色系の服が多く、動きやすそうなシャツにパンツスタイルを好んで着ている。また、爪に色がつくのが好きという理由でマニキュアを塗ることもある。本は文字が大きくできることから電子書籍で読む派。最新のものもよく知っており、スマホから音楽を流したり、若者に人気の動画アプリにも詳しい。
明るくポジティブな性格だが、他の2人と比べてやや大雑把。沙苗いわく「自分のことを幼稚園児だと思っている」節がある。本屋では付録目当てで幼稚園児向け雑誌を購入し、子供番組の振付もマスターしている。
生活の中に季節感を取り入れるのが好きで、イベントごとにはいつも全力で取り組む。ハロウィンでは頭に包丁が刺さったように見えるカチューシャを付け、帰宅した2人にも仮装を勧めた。発想力と瞬発力があり、日常を楽しくすることを思いつくとすぐ行動に移したがる。過去には寿司を握りたいと思いつき、手ぬぐいと甚兵衛を着た大将風の姿で沙苗に寿司を振舞ったことがある。他にも、沙苗と晴子が元気になれるように大吉だけが入ったおみくじを作って2人を励ました。後に沙苗と晴子も大吉おみくじをこっそりと作っており、発案者の栞自身も2人から元気をもらう結果になった。シェアハウスの楽しい時間は、栞の思いつきから始まることが多く、沙苗と晴子がそこに便乗することで完成することが多い。
梅雨の時期や雨の日だけはいつもの元気がなくなり、動きが鈍くなってしまう。そのため、雨の日は沙苗と晴子の発案に元気づけてもらっている。
星奈(せな)という看護師の娘がおり、若い頃に夫との別居を考え、星奈を連れて家を出た過去がある。この時に沙苗の家に泊めてもらい、この件からしばらく星奈と共に沙苗の家に居候していた。夫との離婚後に仕事がうまくいき、沙苗の家から出ることになったが、しばらく経ってから沙苗とのシェアハウス生活を再開して現在に至っている。

沙苗(さなえ)

出典: cdn0.mynvwm.com

スラリとした長身の沙苗は自分の店を持つおしゃれなマダム。

シェアハウス住人の1人。自分の店を持つスタイリッシュなマダムで、シェアハウスではファッションリーダー的な存在。世の女性が憧れるおしゃれなマダムのイメージに最も近い印象。クールに見えるが、栞と晴子のことをいつでも気にかけている。長いグレイヘアをお団子で1つにまとめていることが多いが、3人でのお出かけ時には片三つ編みにするなど、アクセサリーなども合わせてヘアアレンジも楽しんでいる。緑色の服や小物を身につけてることが多い。髪のケアには気を遣っており、髪のパサつきに悩む晴子にアドバイスをしたこともある。スッとした顔立ちの美人ゆえか、ドレスアップすると魔女感が出ることが多い。
栞の発案に合わせた食べ物や飲み物を提案し、日常を楽しいイベントに発展させることが多い。
おっとりした晴子が醸し出す安心感を「レッサーパンダのよう」と例えていたが、その晴子に花札勝負で大負けして面食らったことがある。
チョコレートはビターな方が好き。自分が疲れている時でも、人が美味しいものを食べている姿を見て元気を出そうとすることがある。3人で出かけた美術館で買ったポストカードを眺めて疲れを癒やす可愛らしい一面もある。ボーイフレンドとのクリスマスデートに出かけたにも関わらず、その日に別れて帰宅するなど、若い頃も飄々とした空気を漂わせていた。
若いうちに両親と死別し、しばらく悲しみに暮れる日々を送っていたが、栞と晴子の気遣いに心を救われていた。両親の死後は仕事をこなしながら1人で生活していたが、夫との離婚を考え始めた栞と星奈を自宅に泊めたことがきっかけで、しばらく栞親子との同居生活を送ることになる。この頃からサンタクロースを信じている星奈のために、クリスマスになると栞と2人でありとあらゆる手段で星奈を喜ばせる計画を実行していた。星奈にとっては姉のような存在で、同居していた頃から「さーちゃん」と呼ばれている。後に栞の仕事が決まり一旦同居生活は終了した。
その後に「洋服と雑貨の店を持つ」という学生時代からの夢を実現させ、しばらくの時を経て再び栞とのルームシェアを再開した。更に、夫の一周忌の際に息子から同居を提案されていた晴子をシェアハウスに誘い、3人でのルームシェアを楽しんでいる。

晴子(はるこ)

出典: woman.mynavi.jp

おっとりしてどこか少女のような可愛らしさのある晴子。

シェアハウス住人の1人。夫との死別後に、栞と沙苗が暮らす部屋の住人に加わった。丸みのあるボブヘアでいつもスカートを履いている可愛らしいマダム。話し方もやわらかく「優しいお母さん」という印象。いつも笑顔でおっとりした雰囲気だが、3人で花札をした時には沙苗を油断させて勝利するという意外と策士な一面も。沙苗いわく「無害なレッサーパンダ」のようなイメージ。
1年前に夫と死別。息子がおり孫もいる。
苦いチョコレートは苦手。ダンスは苦手だが、栞につられて手だけ動かすこともある。雨の日には気分が沈みがちな栞を元気づけるために、手書きのメニューを用意して喫茶店ハルコをオープンし、マスターとして栞と沙苗にホットケーキとピザトーストを振舞った。喫茶店ハルコは好評となり、その後も雨の日には喫茶店ハルコがたびたび開店することになった。
ハロウィンの仮装やには意外と乗り気になるなど、お茶目な面もある。更には部屋に置くために購入したガジュマルの名前候補を「脱走丸」か「逃げ太郎」のどちらかで迷うなど、たまに独特の感性を発揮する。
夫の一周忌の際に息子から同居を提案されていたが、嫁の負担や嫁との現状の良い関係が崩れてしまうことを心配し、同居については迷いがあった。その話を栞と沙苗に相談したところ、沙苗からルームシェアの誘いを受けた。栞と沙苗の生活を楽しそうと感じていたものの、息子や義姉など周囲の反対があることを想像すると即答はできずにいた。
だが、その日の帰り道に周囲の目ばかり気にしている自分に気付き、2人の家に引き返してルームシェアをしたいという本音に従うことにした。
決意した後も、はじめは自分が加わっていいのか、良い距離感が崩れてしまうのではという不安にも悩んでいた。しかし、栞と沙苗に連れられて海に向かった時、この2人となら大丈夫そうだと改めてルームシェアをすることを決めた。
夫が生前に使っていたカメラに残っていた写真を息子が印刷してくれたり、夫がいつも写真を撮ってくれていたエピソードなどから、家族仲がとても良いことが伺える。また、ルームシェアをする前は息子家族ともクリスマスを過ごしていたり、孫からパジャマをプレゼントされるなど、嫁や孫との関係も良好である。

マダム達の家族

星奈(せな)

出典: pbs.twimg.com

スッとした目元がクールな栞の娘。「かわいい」よりも「かっこいい」と言われたい女の子。

栞のひとり娘。現在は看護師として働いている。栞譲りの黒髪が魅力的な女の子。幼い頃に栞の離婚によって栞と共に両親を亡くしたばかりの沙苗の家に住んでいたことがある。
はじめは人見知りしていたが徐々に慣れ、髪の毛を乾かさずに栞に追いかけられていた時に沙苗から「カッコイイ髪」と言われて素直に髪を乾かすなど、沙苗の言うことはよく聞く。
かわいいよりもカッコイイと言われたいタイプというのを沙苗に見抜かれているが、サンタクロースを信じ続ける可愛らしい一面も持つ。そのため、栞と沙苗は全力で星奈を喜ばせるクリスマスを計画していた過去がある。沙苗と同居していた頃には、沙苗から勉強を教えてもらったこともあり、沙苗によくなついていた。成人した現在でも沙苗のことを「さーちゃん」と呼んでいる。
晴子とも面識があり、沙苗が自分の店を開店させたときにはお祝いに手作りのビーズネックレスを作って渡した。

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