ダルちゃん(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ダルちゃん』とは、漫画家・はるな檸檬により資生堂のwebメディア『花椿』で2017年10月~2018年10月にかけて連載され、2018年に小学館から単行本が発刊されたコミック作品である。コミック作品としてはじめて「新井賞」を受賞したことで話題となった。「ダルダル星人」という本当の姿を隠し、ごく普通の派遣OL・丸山成美に〈擬態〉して生きる主人公・ダルちゃんが、詩作を通じて本当の自分や幸福を見つけていく過程が描かれる物語である。女性が抱える生きづらさを扱い、多くの人の共感を集めた。
ダルちゃんの会社の先輩で、経理部に所属している。社内の飲み会で営業部の先輩であるスギタさんに悪がらみをされていたダルちゃんを外に連れ出し、「あいつのマスターベーションに笑顔で付き合わされていた」「失礼なことを言う相手にあんな風に笑いかけちゃダメ」と厳しい言葉でダルちゃんを叱責する。それまでほとんど話したことのなかったサトウさんに厳しい言葉をかけられたことで、ダルちゃんは生まれてはじめて「嫌い」という感情をサトウさんに対して抱くことになる。
しかし、実はサトウさんも若い頃に勝手な恋人に翻弄されて妊娠と堕胎を繰り返すという経験をしており、昔の自分のようだったダルちゃんを放っておけなかったということが明らかになる。
寂しい時には詩集を読むことを習慣にしており、スギタさんにホテルに連れ込まれる一件で落ち込んでいたダルちゃんにも貸してくれる。その後、詩を介してダルちゃんと親しくなり、ダルちゃんがwebサイトに詩を応募する際には背中を押してくれる。
「堕胎手術を繰り返したことで妊娠できなくなってしまった」と語っていたが、物語終盤で婚約者のコウダさんとの間に子どもを授かることができた。
スギタさん
ダルちゃんの会社の先輩で、営業部に所属している。普段会社では目立たない存在だが、アルコールが入ると気が大きくなり、飲み会の席でダルちゃんを下に見る発言を次々に口にする。
後日ダルちゃんと2人きりで飲みに行った際には会社の愚痴を垂れ流し、共感して聞いてくれるダルちゃんに気を良くしてホテルに連れ込む。しかし、行為の直前でダルダル星人の姿になってしまったダルちゃんを見ると、舌打ちしてホテルを出て行ってしまう。その一件の後に会社を辞めた際には、「外回りをサボっている」「なんだかやな奴」と噂されており、社内での評判はあまり良くなかった。
フクダさん
ダルちゃんの会社で、派遣社員を取りまとめる事務方トップの女性社員。
仕事ができる上にいつも朗らかで、「みんなのお母さん」的な存在として社内で慕われ頼りにされていた。
第3子出産のために産休を取ることになり、その結果ヒロセさんが彼女の後任に配属された。
ヒロセさん
フクダさんの後任として出向先の関連会社から呼び戻された男性社員。
仕事はできるが足が不自由なため、営業などではなく事務職に配属されていると噂されている。
本人も足が不自由なことをコンプレックスに感じており、「同情されないように」と肩肘を張った態度をとったことで、女性派遣社員たちから反感を買ってしまう。ダルちゃんに指摘されたことで本来の穏やかな性格を取り戻し、女性派遣社員たちとも良好な関係を築けるようになっていく。
ダルちゃんのダルダル星人としての姿を受け入れてくれ、ダルちゃんと恋人関係になる。
しかし、不自由な足のことが詩作の題材にされたことで「自分とのことを詩に書くのはやめてほしい」とダルちゃんに頼む。ダルちゃんの詩作を応援する気持ちはあったため、自分の言葉のせいでダルちゃんが詩作そのものをやめてしまったことに罪悪感を抱いていた。その後、ダルちゃんに別れを切り出された際には、その気持ちを正直に伝えてダルちゃんとの別れを受け入れた。
その他
コウダさん
サトウさんの大学の後輩。かつて恋人との関係で傷つき、妊娠できなくなってしまったサトウさんの過去を知った上でサトウさんにプロポーズし、婚約する。
マイペースな雰囲気をまとっているが、実はダルちゃんと同じダルダル星人であり、しかもそれを隠そうとしない。驚くダルちゃんに「普通の人はいない」と諭し、ダルちゃんが「自分は自分のままでもいい」と気づくきっかけを与えてくれる。
物語終盤では、もう妊娠できないと思っていたサトウさんとの間に子どもを授かる。
『ダルちゃん』の用語
ダルダル星人
スライムのような形状の異星人。人間の姿に〈擬態〉することができるが、スライムの姿の方が落ち着く。集団の中で規律に従って生活することや、周囲の空気を読みながらコミュニケーションすることにストレスを感じてしまう。
ダルちゃんのように、ダルダル星人ではないごく普通の人間の両親からも生まれることがあり、なぜダルダル星人が生まれるのかは不明である。
ダルちゃんは、「人間に〈擬態〉しないと人間世界に受け入れてもらえない」というある種の強迫観念を抱いていたが、同じくダルダル星人のコウダさんとの出会いにより、思った以上に多くの人々がダルダル星人として生活を送っていることに気づく。
派遣社員
ダルちゃんの雇用形態。契約期間に定めのある雇用形態(契約期間の上限は3年間)であり、雇用主に直接雇われて契約書で定められた業務を行う。通常、賃金は正社員より低く設定される。
基本的に昇進もないため、責任の軽い業務を任されることが多く、正社員と比べて精神的ストレスの少ない気軽な状態で働くことができる勤務形態である。
詩の公募
新聞社やwebメディアが一般人から詩を募集すること。優れた作品は各媒体に掲載されることもある。詩人を目指している人、詩を書くのが好きな人などが自由に応募することができ、詩の魅力に魅せられたダルちゃんもweb公募に挑戦するようになる。
本作品が掲載されていた資生堂のwebメディア『花椿』でも、詩の公募が行われている。
『ダルちゃん』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
サトウさん「あなたの尊厳を踏みにじる奴らにあんな風に笑いかけたらダメだよ。簡単につけこまれて人生を支配されちゃうよ」
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目次 - Contents
- 『ダルちゃん』の概要
- 『ダルちゃん』のあらすじ・ストーリー
- 自分を隠して生きてきたダルちゃん
- スギタさんとの一件で心に傷を負うダルちゃん
- 新しい友人サトウさんと詩作の開始
- ヒロセさんとのはじめての恋
- ヒロセさんのために詩作を諦めるダルちゃん
- ダルちゃんの幸せとヒロセさんとの別れ
- 「自分は自分でいい」と気づくダルちゃん
- 『ダルちゃん』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- ダルちゃん・丸山成美(まるやまなるみ)
- 会社の人たち
- サトウさん
- スギタさん
- フクダさん
- ヒロセさん
- その他
- コウダさん
- 『ダルちゃん』の用語
- ダルダル星人
- 派遣社員
- 詩の公募
- 『ダルちゃん』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- サトウさん「あなたの尊厳を踏みにじる奴らにあんな風に笑いかけたらダメだよ。簡単につけこまれて人生を支配されちゃうよ」
- コウダさん「普通の人なんてこの世に一人もいないんだよ。存在しないまぼろしを幸福の鍵だなんて思ってはいけないよ」
- ダルちゃん「私を幸せにするのは私しかいないの」
- 『ダルちゃん』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 書店員が独断で選ぶ文学賞「新井賞」を受賞
- 「詩を書く女の子」のイメージから物語がスタート
- ダルちゃんの詩は作者・はるな檸檬の自作