ウツロマユ(Hollow Cocoon)のネタバレ解説・考察まとめ

『ウツロマユ - Hollow Cocoon -』とは、2013年にNAYUTA STUDIOよりリリースされたホラーアドベンチャーゲームである。主人公の湊が疎遠になっていた祖母の危篤をきっかけに、自身のルーツや家族の秘密を知っていくストーリーだ。低価格にもかかわらず、実写さながらの高クオリティの映像と、予想のできないあっと驚かされる展開、更には隠し要素や複数エンドといったやりこみ要素も加わり、周回プレイするファンも多くおり、高コスパのゲームであると話題になった。

『ウツロマユ - Hollow Cocoon -』の概要

『ウツロマユ - Hollow Cocoon -』とは、インディーズゲーム制作スタジオNAYUTA STUDIOによって2023年に発売されたホラーアドベンチャーゲームである。10月に体験版のダウンロード配信が開始されると、実写さながらのグラフィックと1980年代の片田舎という誰もが懐かしさを感じる舞台に心奪われるプレイヤーが続出し、本編発売前にも関わらず日本国内で話題を呼んだ。12月本編の発売が開始されると、日本のみならず世界中で大ヒットし、ジャパニーズホラーの有名作となった。

物語は、下宿中の主人公・湊が夜中に突然父から電話がきたことにより始まる。電話の内容は、1度だけ会ったことのある母方の祖母・深山 絹(みやま きぬ)が危篤になったため急いで病院に来るようにとのことであった。母が生きていたころ、1度だけ祖母の家に遊びに行ったことがあるが、母が亡くなった時は葬儀にも来なかったためその後は疎遠になっていた。翌日、父を共に絹の病院に駆け付けた湊だったが、病状が思わしくなく1人で先に絹の家へ向かうこととなった。ダム建設の予定地となっている一ノ瀬村には、絹以外の住民はすでに引っ越しを済ませており、深山家以外は廃墟と化していた。慣れない土地に来た疲れからか絹の家で居眠りをしてしまった湊は、そのまま1人で1晩過ごすことになった。台所で水を飲もうとしているところ、裏庭に続く道を人影が通りすぎていくのを発見する。絹は1人暮らしであったし、近隣は誰も住んでいないはずだ。襲い掛かる恐怖をなんとか我慢し、湊が裏庭へ向かうと、そこには手足が異常に長く、蚕の背中にあるような模様の痣が入った謎の化け物が鶏を生きたまま貪っていた。

養蚕業を営んでいた祖母と自殺した母の秘密を探りながら主人公のルーツの秘密を知っていくストーリーは、プレイヤーにリアルなドキドキ感を与え、ジャパニーズホラー特有の不気味で陰湿な怖さを引き立てていく。主人公の一人称視点で進んでいくため、敵キャラクターである綾乃以外の顔も映らない。登場人物の顔をはっきり映さない点も、より不気味さを引き立たせている。
また、周回プレイのみでしか入手・使用できないアイテムや複数エンドの発生により、何度もクリアするプレイヤーも続出した。

『ウツロマユ - Hollow Cocoon -』のあらすじ・ストーリー

祖母の危篤の報せ

陣場 湊(じんば みなと)の元へ、真夜中に父・栄治(えいじ)からの電話が入る。ほぼ絶縁状態となっていた母方の祖母・深山 絹(みやま きぬ)が危篤になり、病院に来るようにとの内容であった。一ノ瀬村という山奥に住んでいる絹と陣場家は元々交流が少なかったが、湊の母・結(ゆい)の死をきっかけに疎遠になってしまっていた。湊は、実の娘の葬儀にも来ず連絡もよこさなかった祖母を憎んでおり「俺の知ったことじゃない」と1度は拒絶する。
翌日、父と共に言われたとおり湊は渋々病院に向かうが、絹の病状はあまり芳しくない。主治医から大病院への転院を勧められたため、栄治は転院の手続きのために病院に残り、先に湊1人で深山家へと向かうことになった。
湊はバスを乗り継いで、一ノ瀬村とやってきた。バス停から深山家への道中、遠くにある赤い鳥居の前に長髪の人が立っているように見えた。
家の中に入った湊は、亡くなった祖父・佐一(さいち)の私物を見つけて懐かしむ。絹は佐一が亡くなった際、陣場家に連絡を入れなかった。佐一のことが大好きだった湊は当然ショックを受けるのだが、湊以上にショックを受けた結は気を病んでしまいその後自殺してしまう。
家の中には"清明丸(せいめんがん)"という痛み止めがいたるところに転がっている。絹は、どこかの痛みに耐えて薬を飲み続けているようであった。台所には「1日の予定表」と書かれたものがあり、朝早く起きて鶏の世話など細かく時間が区切られている。しかし、夕食と入浴が2回書かれているのだ。

あらかた探索を行った湊は、慣れない土地に来た事によりくたくたに疲れ切っており、父の帰りを待たずに深山家で休むこととした。
こたつで眠っている湊は、母が踏切に飛び込む夢を見てしまい飛び起きる。あたりはすっかり暗くなっており、部屋には時計の音だけが鳴り響いていた。家中の電気をつけて回っていた時、玄関を叩く音が響く。湊は玄関に向かうが、外には首だけになった鶏の死骸が落ちていた。
その時、黒電話がけたたましく鳴った。電話の先は父で、絹の首に絞められたような跡が見つかったため警察との話が長引いており今日中には帰ってこられないのだそうだ。知らない土地で不安になる湊は、喉の渇きを潤すために台所へと向かう。水を飲んでいる最中、台所のすりガラスに人影が映った。不審に思った湊は勝手口から裏庭へと向かう。そこには神社で見た、気のせいだと思っていたはずの黒い長髪の人のようなものが鶏を貪っていた。

突如遭遇した謎の化け物

深山家には化け物が徘徊している。

急いで家の中に戻り戸を閉めるが、全ての部屋の電気が急に消えてしまうのである。どうにか懐中電灯を探し警察に電話しようと受話器を取った湊に、先程の化け物が襲い掛かる。家の中を死に物狂いで逃げる湊は、一番奥の部屋へと進むことに成功した。ドアを棚で塞いだため、しばらくは入って来られないはずである。やっと安全な空間に来られたことに安堵した湊は、その部屋で絹が受診した病院の医師からの手紙を見つける。絹には脳腫瘍があり、そのためにひどい頭痛や物忘れが頻発していること、早々に受診を促すことが書かれていた。
その部屋の先は屋外となっていて、更にその先には古ぼけた蔵があるだけである。蔵には鍵がかかっていたが、絹が倒れた時に握っていた鍵で蔵を開けることができた。
蔵の2階の窓辺に差し掛かったところ、窓から化け物が顔を覗かせた。急いで窓辺から離れた湊は、蔵の奥に取っ手や鍵穴のない小さな扉を発見する。蔵の中にあったしかけの謎を解くと扉が開いたため、湊は化け物から逃れるように小さな扉の奥へと逃げ込むのであった。
蔵の中にあった隠された扉の先は地下に繋がっており、岩肌がむき出しの通路となっていた。通路の途中には座敷牢があり「わたくしの肉をあれにお与えにならないでくださいまし」という殴り書きが残されていた。一番奥には隠された回転扉があり、深山家の旧家へと繋がっていた。
旧家はかなり昔の作りで、長い間使われていないためか床にはゴミが散乱し、壁や扉なども劣化が激しい。しかし、誰も住んでいないはずの旧家はところどころに立てられたろうそくに火が燈っているのである。更に、巨大な旧家の中には絹や佐一の日記が転がっている。旧家の中を進みながらいくつかの日記を見つけ、絹には綾乃という姉がおり、佐一は元々綾乃の婚約者として深山家へやってきたということが分かった。

旧・深山家

1929年5月、佐一は深山家の長女・綾乃の婚約者に選ばれ婿養子となることが決まっていた。物静かだが美人な風貌の綾乃に、佐一は一目見た時から心を奪われていた。綾乃に気に入られたい一心で、佐一は様々なプレゼントを贈ることにした。時には綾乃と仲のいい絹にもお揃いの真珠のかんざしを贈ったこともあった。絹も佐一と交流するうちにひそかに佐一に思いを寄せていたが、姉の婚約者であると好意を必死に隠していたのである。綾乃は佐一にはさほど興味がないようで、むしろ絹に好意を抱いているようであった。絹はそんな綾乃に苛立ちを覚え始め、次第に意地悪をするようになってしまう。同年秋、結婚前に最後に2人で出かけたいという綾乃に、絹は紅葉狩りを提案した。山奥で紅葉を眺めている最中、佐一の件で綾乃と口論になってしまった絹は綾乃を置いて1人下山した。
体の弱い綾乃は1人で下山することができず、その後帰ってきたのはちょうど1か月後の晩であった。1ヶ月もの間山にいたはずの綾乃は土くれ一つついておらず、着物も髪も1ヶ月前の綾乃のままであった。しかし、綾乃は一切口がきけなくなってしまっていた。絹は綾乃を1人置いてきたことはひどく後悔していたため、2度と綾乃の手を放すまいと誓うのであった。
大伯母にあたる綾乃という人物がいた事を知った湊は、ふと絹の家の古い蔵に落ちていた写真を思い出す。写真の裏には「1930年11月13日没 綾乃」と書かれていたはずだ。絹の古い日記には1929年の秋に紅葉狩りに行ったことが書かれている。更に旧家内の探索を進めた湊は、佐一の古い日記も見つけた。紅葉狩りから約1年後の1930年11月に綾乃の父・久兵衛(きゅうべえ)から「綾乃は重病に侵されている。綾乃に会いたくば絹と結婚し、深山家の人間として生きる覚悟をせよ」と言われたと書かれてある。
湊が旧家で様々な日記を読み漁っていると、謎の化け物が再び襲ってくる。音や光に敏感であるために湊が捜索している物音に反応してくるものの、空の押し入れやつづらがあったため幸いにも隠れることができ、どうにか襲われずに探索を続けられていた。

大伯母の存在

湊は、さらに旧家内で佐一の日記を見つける。これまでに発見した日記は1920年代で佐一と絹が結婚する直前の物ばかりであったが、今回の日記は1960年、湊が生まれた頃のものでかなり年月が空いていた。日記には、結が生まれた際に佐一だけで結を連れて町に移り住み育児をしていたこと、成長した結が結婚をしたことをきっかけに再び山奥の深山家に戻ったことが書かれていた。そして次のページには、1930年に亡くなったはずの綾乃を、絹が30年間ずっと世話していたことが書かれてある。どうやら佐一は、「ヒメツキ」という綾乃が侵されている病に効く「ウツロ」というものを探しているようであった。
その後1952年の佐一の日記も見つかった。湊が生まれるずっと前、まだ結が幼い頃のものである。佐一が仕事から帰宅すると、結が泣いており、喉の渇きに耐えられず飼っていたカナリアの血を飲んでしまったのだというのだ。湊もよく喉が渇く性分で、それが結、そして佐一からの遺伝だということは知っていた。しかし、佐一の日記には「結を怖がらせたくないがために私譲りの性分だと偽った」とある。なぜ偽ったのか、嘘であるならば誰からの遺伝なのか、湊は混乱する。
その後訪れた旧家の文庫室の一角で1968年の絹の日記が見つける。佐一が綾乃を元の姿に戻す術を見つけてきたのだそうだ。佐一が綾乃に好意を抱いていたことを知っていた絹は、自分だけが世話を続けてきた最愛の姉を渡すまいと、佐一を殺していた。井戸に落とした簪を取ろうと身を乗り出した佐一を後ろから突き落としたのだった。

不可解な体質の真実

次に、湊は旧家の更に奥の離れへと足を踏み入れた。母屋とは違い、小さな中庭と絹・綾乃の部屋、そして玄関などがあるだけである。母屋と同じように離れにも灯りが灯してあり、綾乃と絹の部屋には月明りが差していた。絹の部屋にはこれまでなかった、深山家以外の人間の日記が置いてある。医師の島村である。
島村は、山から戻った綾乃を診察をした。綾乃は一言も発さず、食事も一切手を付けない。浴びるように水は飲むものの、排泄も全くしていないようなのである。水しか摂らない綾乃は当然やせ細っていくのだが、なぜか手足は伸び続け男性である島村の背も次第に越してしまった。食事も排泄も一切せず、喉の渇きだけを訴え暗闇で過ごし続ける綾乃は、その年の秋、ついに下女を噛み殺して血を飲んでしまう事件が起こった。島村は嘘の死亡診断書を書き、嚙み殺された下女の遺体とすり替え、綾乃は亡くなってしまったことにした。その後は動物や人間の血をすすりながら生きているものの、片方の目は潰れ昆虫の単眼のようなものができ、背中と腰には蚕の紋様のような痣ができていた。更には1936年、絹からの相談で島村が綾乃を診ると、お腹の中で何かがうごめいている。その後、綾乃が「ヒメツキ」になってから9年後の1938年、島村による帝王切開にて9年間お腹にいた子供を取り上げられたことが書かれていた。
その後の1968年、佐一が亡くなったあと結は1人で絹の元を訪れたため、綾乃がいる牢へ連れていく。「お前は私の子ではない。そして佐一の子でもない。あの化け物の腹を裂いて生まれたきた娘なのだ」と結へ全ての真実を告げてしまう。結はその真実を知り、深山家からの帰り道に線路に身を投げて自殺してしまったのだった。
「母さんが…化け物の娘…じゃあ俺も」と全てを知った湊は、呆然とする。異常に喉が渇く性分だったのも、魔除けの紅い御札に近づくと気分が悪くなるのも、全て「ヒメツキ」となった綾乃からの血を受けついでいたからであった。

いざ決戦の時

牢の中には、畳がいくつか敷かれ、屏風や桜の花が飾ってあった。天井の岩には首吊り用のロープがぶら下がっており、その下には倒れた踏み台が転がっている。血だまりの中に1冊の日記が転がっており、湊は手に取る。それは、絹の最期の日記であった。
綾乃は「ヒメツキ」になってからも絹にだけは以前と同じように優しく接しており、年老いて目も足も弱った絹が転ばないように毎日夜になると旧家に火を灯して回っていた。絹もまた綾乃を大事に思っており、自分が死んだあと綾乃が人目にさらされ好奇の目を向けられるくらいならば、と綾乃と心中を図った。何十年もの間、毎日体を洗い、爪を切り、髪を梳かし、大切に大切に扱ってきた姉に惨めな思いをさせてはなるまいと、承諾を得て綾乃には毒入りの血を飲み干してもらい、自分は首を吊ったのだった。しかし、綾乃は何度も血を吐く程毒を飲んでも死にきれず、首を吊っている絹を助け出し、誰かが気付くよう庭まで運んでいた。絹は誰かに殺されそうになったのではなく、自ら首を吊っていたのだった。
絹の遺言を読み終えたその時、湊の目の前に綾乃が現れる。牢の入り口に巨大な岩を落とされ、逃げ道を失った湊は綾乃と戦うこととなった。もちろん武器など持ち合わせていない湊は逃げる一方であったが、もろくなった天井の岩が落ちてこないように牢の四隅には縄を支えるための杭が打ってあることに気付く。飛び掛かってくる綾乃の衝撃を利用し、4つの杭を破壊した湊は、部屋の中央にぶら下がっている絹が首を吊った縄を引っ張った。強い衝撃の後、湊が目を開けるとそこには岩の下敷きになった綾乃がもがいていた。綾乃は低い声で何度も「きぬちゃん…」と呟いている。

エンディング

エンド1

湊は、足元に落ちていた岩で綾乃にとどめを刺す。
1年後、最後の住民であった絹がいなくなった一ノ瀬村は廃墟と化していた。絹の墓参りに訪れた湊は、綾乃の最期を絹に報告しようとする。しかし、湊がとどめを刺した後、綾乃の亡骸を埋葬しようと再度訪れた湊は信じられないものを目の当たりにした。綾乃がいた場所には穴のあいた巨大な繭があり、いるのは無数の蚕だけだったのだ。墓へ手を合わせた湊が帰路につこうと振り返ったとき、遠くの鳥居の前に綾乃らしき人物が立ち尽くしている。湊は、どんな血が流れていようと人として生きる決心をし、村を後にした。

エンド2

巨大な岩の下敷きになり、綾乃は全く身動きがとれない。絹の望み通りとどめを刺そうとした湊だったが、実の祖母を手に賭けることはできず、泣き崩れる。絹亡きあと、自分が綾乃の世話をすることを決心した湊は、大学も退学し、ダム建設の話も立ち消えになりそうになったこともあり絹の家を継ぎ移り住んだ。たびたび父から説得の電話がかかってくるも「父さんには分からないよ…父さんは人だから」と拒絶する。父からの電話を強制的に切った湊は、生前絹がやっていたように鶏を絞め、血を綾乃へと運んだ。絹を恋しがり泣く綾乃に「大丈夫だよ。これからは俺がばあちゃんと一緒にいるから」と優しく言うのであった。

エンド3

疎遠だった祖母・絹が倒れたという連絡を受け、見舞いの帰りに湊は1人で一ノ瀬村へ向かうことになった。バスを降りると、バス停の脇にタイヤやドラム缶などと一緒に人形が1体捨てられている。バス停から絹の家までの道中、謎の4桁の数字が落書きされていた。湊は興味本位で絹の家の電話からその番号にかけてみると、「メリーさん」と名乗る電話口の女の子は今ゴミ捨て場にいるのだと言うのだ。先程、バス停の脇のゴミ捨て場に捨てられていた人形を思い出した湊は、バス停まで戻ることにする。先程と同じように人形が捨てられているが、特段変わったことはない。湊は再び絹の自宅に戻ると電話がけたたましく鳴った。「私、メリーさん」と先程の電話口の女の子からの電話である。先程いたゴミ捨て場よりも少しだけ絹の家に近いブランコにいると言うので、湊は確認に向かう。確かに先程ゴミ捨て場にいた人形は、それよりも少し家に近づいた場所のブランコにいたのである。再度自宅に戻った湊に「メリーさん」は電話をかけてくる。湊がそれを何度か繰り返すうちに、だんだんと湊の元へ近づいてくるのだ。ついには玄関の前まで来たという電話がかかってき、湊は恐る恐る玄関の前へ向かう。しかし、そこには人形も人も何もいなかった。湊が「さすがにいたずらか」と呟いた時、再び電話が鳴る。「もういい加減にしろよ!」と湊が怒鳴って電話に出ると「私メリーさん。今あなたの後ろにいるの」湊の意識はそこで途絶えるのであった。

エンド4

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