人は見た目が100パーセント（漫画・ドラマ）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『人は見た目が100パーセント』の概要

『人は見た目が100パーセント』とは、大久保ヒロミによるコメディ漫画作品である。講談社の『BE・LOVE』で2014年の第1号から2015年の第23号まで連載していた。単行本は全5巻。
製紙会社の研究室に勤める理系女子の城之内純（じょうのうち じゅん）・佐藤聖良（さとう せいら）・前田満子（まえだ みつこ）の3人が、おしゃれや流行と無縁の生活を送る自分達に危機感を抱き、勤務終了後に「見た目の美」を研究するストーリー。研究対象は毎日変わり、日々様々なファッションアイテムやコスメの扱い方を知るべく奮闘する3人の様子がコミカルに描かれる。
1話ごとにテーマとなるアイテムは変わり、ストーリーは毎回その日のテーマの発表から始まる。話数を「実験」と表記しており、第1話は「実験1」となる。
ストーリーの進み方は毎話ある程度パターンが決まっており、はじめに研究対象となるアイテムやメイク方法について、3人それぞれが抱くイメージなどを打ち明ける。その後、雑誌などで得た情報を元に、自分達なりに研究対象を身につける。しかし、この時点では必ず失敗する様子が描かれる。初心者がやりがちなよくある失敗から、コメディ漫画らしく読者の予想の斜め上を行くような失敗まで、その状況は様々。時には自分達の未熟さに愕然としながらも、諦めない3人はインターネットでの情報収集を続け、新たに得た知識を駆使して再び研究対象に挑む。
研究者らしく正解を追求し続け、最終的にはいい塩梅に仕上がり、緊迫していた研究室はようやく明るいムードになる。
その後に成果を客観的に確認するため、研究室を出て男性研究員のそばを通過してみるなど、周囲の反応を見るという更なる「実験」を試みる場合もある。時折褒められることもあり、成果がきちんと現れているはずだが、流行のものを身につけることや褒められることに慣れていない3人は、照れからつい自虐に走ってしまう。
毎回実験のラストには、パソコンに研究結果が箇条書きでまとめられた1コマが描かれ、ストーリーが終了する。
ストーリー内では、ファッションアイテムの上手な取り入れ方やコスメの使い方が台詞によって丁寧に説明される。初心者の目線で描かれた研究場面は、読者も読みながらファッションやメイクの方法を学ぶこともできるようになっている。
2017年にはフジテレビでドラマ化し、桐谷美玲、水川あさみ、ブルゾンちえみが研究所の3人組を演じた。

『人は見た目が100パーセント』のあらすじ・ストーリー

ジョシモドキによるステキ女子研究

トライアンドエラーの繰り返し

とある製紙会社の研究所に勤める城之内純（じょうのうちじゅん）、佐藤聖良（さとうせいら）、前田満子（まえだみつこ）の3人は、その日の業務が終了するとこっそりと仕事以外の研究を開始する。その研究内容は「美容」「ファッション」「女子力」である。
眼鏡がないと弱気になってしまう城之内、オヤジ女子を地で行くぽっちゃり女子の佐藤、若い頃のメイクやファッションを引きずりアップデートできずにいる前田の3人は、日々研究室に籠りきりで仕事をしている。外部との接触が少ないために外見に気を遣わず、流行のおしゃれやメイクと縁遠い自分達を「ジョシモドキ」と自称している。ジョシモドキから抜け出したい気持ちはありながらも、流行のアイテムがなぜかしっくりこず、今時のメイクもよくわからない。街をゆくトレンドを上手に取り入れた可愛い女子達と自分達の差はどこにあるのか。身近なオシャレ女子達やネット情報を頼りに、3人は日々外見磨きに繋がる研究を続けている。
テーマとなったアイテムやメイクに大真面目に向き合う3人の研究はトライアンドエラーの繰り返し。つけまつげを台紙から外す段階でむしり取ってしまったり、柄パンツに合わせるために履いたヒールの高い靴で足をくじいてしまったりと、失敗の数は限りない。時にはどうしてそうなったのかと疑いたくなるような失敗も起こる。それでも何とか自分達なりの合格ラインに辿り着き、少しずつ新しい自分達を見つけていく。
しかし、急な変化による照れやこれまでのジョシモドキ期の習慣に負けてしまい、結局翌日には元通りのジョシモドキに戻ってしまう。それでもめげない3人は、新たな研究を続けていく。

キラキラ女子達の秘密

総務課の益田（ますだ）と岸根（きしね）は、研究を続ける3人にとって最も近くにいる「オシャレ女子」だ。華やかで可愛らしい2人は、ファッションもメイクも毎日きちんとしており、トレンドもしっかり押さえている。彼女達から学ぶことはとても多く、3人にとってはお手本となる存在でありながら、自分達にはない彼女達の華やかなオーラには目を覆いたくなることもある。
流行感度と自己肯定感が高い益田と岸根は、3人の研究にもすぐに気づき、すかさず「かわいい」と褒めてくれる。自分達が頑張ってもうまくいかないおしゃれをサラリと自分のものにし、いつでも「可愛い」の代表のような彼女達は、もともと可愛いから自分達のような苦労をしなくてもいいのだと3人は思い込んでいた。が、その考えは改めさせられることとなる。
ヘアアレンジの研究時には、3人があまりの難しさから断念した編み込みヘアアレンジのコツを聞き出そうとするも、益田と岸根の回答は「慣れ」。勇気を出して聞いた答えに納得がいかない城之内達は、専属スタイリストや手先が器用な彼氏がいて、彼女達が苦労をしていないと思い込む。そんな3人のネガティブなボヤキを聞いていた益田と岸根は、3人を座らせ、自分達の努力がどれほどのものかを明らかにする。そもそも、彼女達と研究室3人では美に向き合う時間と熱量のレベルが遥かに違ったのだ。益田も岸根も、何度も何度も練習を重ねた上で編み込みをマスターしていた。更には自分達の顔のバランスや、ヘアアレンジに合うスタイリング剤といった細部に至るまで、何時間でも徹底して自分のものにするのだと打ち明けた。流行に敏感だからこそ、それを自分達のものにするために諦めない「根気」を持っていた。岸根と益田は声を揃えて、そのぐらいの根気を持ってやっているのか？と3人に笑顔で問いかけた。ほんの少しチャレンジして「できない」と投げてしまった城之内達は、2人の努力を目の当たりにし、何も言えなくなってしまった。
可愛い彼女達は苦労をしていないのではなく、人一倍努力をしていたのだ。自分達の努力不足と美しくなるまでの長い長い道のりに呆然としながらも、3人は彼女達から新たな学びを得た。

結婚願望が巻き起こす波乱

城之内の苦悩と淡い恋心

研究室の3人のうち、前田以外の2人は独身で、これまで男性とのお付き合いも経験がない。特に城之内は30代になり、従姉妹のユキの結婚も重なって結婚願望が強まっている。ユキのウェディングドレス決めの際、便乗してパーティードレスのレンタルのためにドレスショップを訪れた城之内は、男性ウケするドレスを探していた。プランナーの勧めで城之内が試着したドレスは佐藤と前田からも好評だったが、ユキからは他の独身女性達も皆、男性ウケするドレスを着てくるはずだと忠告される。プランナーから「新婦を祝福する気持ちが美しさとして現れる」とアドバイスをもらった城之内だったが、実際にウェディングドレスを試着したユキを見るなり、自分も着飾って男性の記憶に残りたいという本音が漏れ出してしまった。感情が爆発した城之内は、ドレスショップに並べられたゴージャスなドレスを気が済むまで試着するのだった。
ユキの結婚式当日、城之内は他の女性が香水をつけていたことに気付いた。二次会の前に佐藤と前田と共に香水を選びに行くが、どれがいいかわからず悩んでしまう。会場に戻りユキに会った城之内は、何もつけておらず無臭な上に元々地味な自分は、存在感もなく背景の一部になってしまうのではと不安に駆られて涙ぐんでしまう。ユキは城之内の逼迫した想いに寄り添い、二次会が始まる前に城之内に似合う香水を見つけてくれた。自分にも内面の可愛らしさがあることをユキから教えてもらった城之内は、香水をつけて二次会に臨む。そこで偶然ぶつかってしまった美容師の井上に、染めたことのない黒髪の美しさを褒められ、胸が高鳴るのだった。

城之内の恋心に振り回される研究室

井上との出会い以後、城之内は彼の美容院に客として通うようになる。ある日、ロングヘアをバッサリとベリーショートにした城之内が出張から戻り、前田と佐藤は突然の変貌ぶりに驚く。髪を切った城之内は、どことなく元気がなく、研究への意欲もあまり感じられなくなっていた。
髪型が気に入っていないのではと心配した前田と佐藤は、城之内の恋を応援すべくジーンズやアクセサリーなど、ファッション系の研究をしようと持ち掛ける。ジーンズの研究では、街中へ繰り出してみるも城之内は上の空。もしかしたら城之内が失恋したのではと思い込んだ佐藤と前田は、城之内を気遣いオシャレなデニムの試着を勧めた。しかし、2人から渡されたダメージデニムを履いた城之内には、更に暗いオーラが漂ってしまった。悲壮感が漂う城之内に困惑する2人だったが、城之内が落ち込んでいたのは失恋ではないことが判明する。城之内は、髪を切ったことで父親そっくりになり、女子よりも「おじさん」な外見に近づいたことに落ち込んでいると打ち明けた。結局この日、城之内がいつも通りの元気な様子を取り戻すことはなかった。
その後も城之内の表情が暗い日々が続く。ある日は、井上にメールを送ったが返事が来ないと落ち込んでおり、前田達が様子を聞くと10分前に送ったばかりだと言う。恋愛初心者にはメールの返信を待つ時間も辛いものなのだろうと城之内を気遣つつ、3人でアクセサリーを探しに街へ向かう。アクセサリーを買った女性客が「目が合った」「運命を感じた」と話しているのを聞いた3人だが、どのアクセサリーを見ても自分と目の合うような運命を感じるようなものに出会えない。そんな状況に城之内は、アクセサリーと相思相愛になれない者は現実でも相思相愛にはなれないのかと落ち込んでしまう。
そんな中、井上からの返信が届き、城之内は表情を一変させる。返信とはいえプライベートなものではなく美容院の予約メールだったのだが、それでも「お待ちしています」の一言で元気を取り戻した城之内は、研究意欲を取り戻して再びアクセサリー売り場を見回す。恋愛運が上がるというローズクォーツの石が付いたネックレスを購入した城之内は、幸せな気持ちで帰って行った。そんな城之内を見送る佐藤と前田には、恋愛感情に振り回されている城之内の様子にモヤモヤした気持ちが芽生え始めていた。
井上の美容院に通うようになってしばらく経ち、今度は突如マッシュルームカットになって現れた城之内。ベリーショートにしてからセットがうまくできなかった城之内が、簡単にスタイリングできるようにと井上が整えてくれたのだというが、恋愛対象からは遠のいている感覚が否めなかった。そんな中、総務課のステキ女子である益田も同じ美容院で井上にカットを担当してもらっていると聞く。同じくショートヘアになっていたものの可愛らしいスタイルになっている益田と、マッシュルームカットの自分を比較して落ち込んだ城之内は、研究が終わる前に家に帰ってしまった。

研究の末に3人が得たもの

3人の口論と和解

佐藤と前田は、城之内の恋愛が成就する見込みはないだろうと密かに思いながらも応援を続け、アクセサリー重ね付けの研究を始める。だが、ジーンズの研究の時と同様にやる気が感じられない城之内は、熱心に指輪の重ね付け研究を続ける2人の横でため息をつき始める。やる気なさそうにスマホをいじり始めた城之内が見ていたのはマリッジリングの画像だった。結婚願望の強い城之内は初めてつける指輪は結婚指輪がいいと2人に話す。城之内のためにと思って研究をしてきた前田は、研究を無視している城之内に対して、男に指輪をもらっても幸せにはならないと自身の経験談を話し始める。前田は、夫からもらった婚約指輪は夫の母から引き継いだものだったこと、更に結婚指輪は産後太りと主婦湿疹で付けられなくなったことを話す。
経験者からの現実的な話で夢を壊された城之内はフリーズした後、あくまで前田の経験談だろうと反論する。自分を悪い例のように言われた前田はそれでもフォローを続けようとしたが、気疲れによる脂汗でノーズシャドウが落ち、とうとう我慢の限界を迎えてしまう。前田は、自分と佐藤の気遣いが伝わらない城之内に、イケメン美容師と城之内がくっつく確率はゼロだと言い切ってしまう。
そんな前田の言葉に対し、城之内も「ノーズシャドウなんてない方がいい」とこれまで黙っていた本音を言い放った。更に、2人から失恋を決めつけられていたことや、前田によって結婚への夢をぶち壊されたことの怒りをぶつけた。続けて、これまで3人でしてきた研究はまったく成果が出ていないと怒鳴り、今後は1人で研究をすると言い放って研究所を飛び出してしまった。
城之内が出て行ってしまった後に冷静になった前田と佐藤は、城之内の放った「研究成果が出ていない」という発言に対して同じ想いを抱いていた。自分達が成果を出して見直してもらうことで、城之内に戻ってきてもらおうと考えた2人は、引き続き研究を続けることにした。そんな2人と距離を置いていた城之内は、総務課女子達とご飯に行く日が続いていた。ステキ女子達と一緒にいれば、自分も素敵になれるのではと思っていた城之内だったが、彼女達の会話から飛び出す「可愛い」「ヤバイ」が何をどういう意味で指しているのかが全くわからず疲れていた。
そんなご飯の帰り道、城之内の前を通り過ぎる前田と佐藤の会話に心が落ち着くのを感じた城之内は、2人に駆け寄り自分が八つ当たりをしていたことを謝った。無事和解した3人は、元通りまた3人で研究を再開することになった。

研究で得た気付き

無事に仲直りを果たし、今まで通りに3人での研究が再開された。ある日、佐藤が総務課女子から井上が同業者と結婚したという話を耳にする。城之内が知ったら落ち込んでしまい、研究は中断になるかもしれないと前田と佐藤は心配する。そんな中、おしゃれ眼鏡の研究をしていた城之内は、井上と眼鏡の話で盛り上がれるかもしれないと話し、佐藤と前田は思いきって井上の結婚話を知らないのかと聞く。意外にも井上の結婚の話を知っていたことをあっさりと明かした城之内は、2人が思っているより遥かに冷静な様子を見せた。はじめはショックだったという城之内だが、2人の前でお守りの袋を開け「すごくキレイな黒髪ですね」と書かれた紙を見せた。この言葉は、容姿を褒められたことのなかった城之内が井上と初めて会った時に言われた言葉である。城之内は、自分が想像していたより辛くなかった理由を考察した結果、自分が「褒められる言葉」にときめいていたことに気付いたと明かした。その言葉を聞いた佐藤と前田も、物よりも自分が褒められた時の方がテンションが上がることに気付いた。褒められることのパワーを知った3人は、引き続き前向きな気持ちで研究に臨むのだった。

『人は見た目が100パーセント』の登場人物・キャラクター

製紙会社研究室

城之内 純（じょうのうち じゅん／演：桐谷美玲）

製紙会社研究室に勤める30歳。ひとつに束ねた長い黒髪に眼鏡がトレードマーク。3人の中で一番長身で細身の体形。眼鏡をかけている時はキリっとしたクールな顔立ちに見えるが、眼鏡を外すとつぶらな瞳の持ち主で、急に弱気になってしまう。眼鏡は小学校低学年からずっとかけている。私服は黒やグレーでまとめた地味なファッションばかりだが、密かに着飾りたいという強い願望を抱いている。結婚願望も強いが、なかなか恋人ができない。
大学時代に男性と食事に行き、一度だけホテルに誘われたことがある。下着の上下がバラバラだったためその時は断ったが、その後ゼミの男友達に相談した際に「下着上下バラバラはありえない」と言われて以後、下着は地味でもきちんとしたメーカーのもので上下を揃えるようになった。
仕事は早く優秀だが、それ故に周囲から他の仕事を多く頼まれることがあり「ほっといても大丈夫な人」と放置されているのが悩み。2巻ではピンク色のアイシャドウを使い、放っておけない雰囲気を演出する「うさぎ顔メイク」に挑戦した。だが、流行に疎い職場の男性陣にはピンクのアイシャドウを結膜炎に間違われてしまい、研究は失敗に終わってしまう。
ユキという美人の従姉妹がいる。結婚を控えたユキのウェディングドレス試着に同行した際には、着飾って男性の記憶に残りたいという願望が爆発してしまい、ドレスショップのゴージャスなドレスを片っ端から試着するという暴挙に出た。その後、ユキの結婚式に参列していたオシャレ美容師井上と出会い、一度もカラーリングをしたことのない黒髪の美しさを褒められたのがきっかけで井上を意識するようになる。以後、客として井上の美容院に通うようになる。3巻では突如ベリーショートになり、佐藤と前田を驚かせる。髪を切ってからは元気がなく、研究にもやる気が見えない日が続いて前田と佐藤を心配させた。佐藤と前田には、髪を切ったことにより失恋したのではないかと勝手に勘違いされたが、元気がなかった理由は髪が短くなったことで父親にそっくりになってしまったためだった。